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経営理念の浸透「インターナルブランディング 」 #176

人が一人で成せることには、限界があります。
だからこそ、同じ目的を持つ人たちが集まり、組織をつくります。
そして、その組織の代表的な存在が企業です。

経済学者チェスター・バーナードは、組織を、
「意識的に調整された、2人またはそれ以上の人々の活動や諸力のシステム」と定義しました。

そして、組織が成立するためには、「共通目的」・「貢献意欲」・「コミュニケーション」の3つが必要だとしています。

■ 組織における経営理念

企業において、この「共通目的」にあたるものが経営理念です。

近年では「Purpose(パーパス)」という言葉も使われますが、企業が何のために存在し、社会に何をもたらすのかを示すという意味であり、これも経営理念と捉えて良いかと思います。

私が経営する会社では、経営理念をVision・Mission・Valueの3つで構成しています。

Vision(ビジョン)は実現すべき未来。
Mission(ミッション)は、その未来のために果たすべき使命。
Value(バリュー)は、その使命を果たすための価値観・行動基準です。

この中で、私が特に重要だと考えているのがValueです。
どれほど立派なVisionやMissionを掲げても、それを実現するのは社員一人ひとりの価値観を持った行動だからです。

■ 経営理念の生い立ち

2016年の分社化を機に経営理念を刷新しました。

その前年、2015年9月25日には国連サミットでSDGsが採択されています。
「持続可能な社会を目指す」という考え方に共感し、その思いを経営理念に反映させました。

● Vision(ビジョン)
社会における存在意義を高め〝サステナブル企業〟を目指します

● Mission(ミッション)
現在だけでなく未来を考えた 配管の開発と供給を通して 信頼あるライフラインの構築をご提案します

ミッション・ブランド

● Value(バリュー)
私たちは、Visionの実現に向けて〝誠実〟にMission遂行に取り組みます


このVisionには、私自身の過去の経験が込められています。
1999年末、私たちの会社は経営存続の危機に陥り、経営陣の退任とファンドによる買収を経験しました。

二度と同じ思いを後進たちにさせたくない。
その思いから、「サステナブル企業を目指す」というVisionを掲げています。
そして、それを実現するために、やるべきこととして、Missionを定めています。
また、Missionを遂行する上で、大切にしているのが、Valueが「誠実」であることです。

誠実ですが、「伝えたことを実現すること。あるいは、伝えたことを実現するために努力し続けること。」と定義して行動指針としています。

■ 理念を「行動」に変える

しかし、経営理念を掲げるだけで、社員の価値観や行動が揃うわけではありません。

理念を知っているだけではなく、「この判断はVisionに沿っているか」、「この仕事はMissionの実現につながっているか」、「この行動はValueである『誠実』と言えるか」と、一人ひとりが自分の仕事の中で考えられることが重要です。

つまり、経営理念は「会社が掲げる言葉」ではなく、社員が行動するための基準になって初めて、組織の力になります。

ここで重要になるのが、インターナルブランディングです。

■ インターナルブランディングという考え方

ブランディングというと、顧客や社会に向けて企業の価値を伝える活動をイメージします。

しかし、企業のブランドを実際につくっているのは、日々顧客と接し、商品やサービスを生み出している社員です。

だからこそ、社内に対しても、「私たちは何者なのか」、「何のために存在するのか」、「どのような価値を大切にするのか」を共有する必要があります。

私は、インターナルブランディングとは、単なる「理念浸透」ではなく、「経営理念を、社員一人ひとりの判断基準と行動に変えていくこと」だと考えています。

■ 経営理念勉強会の開催

これまで、経営理念を記載した携帯カードを発行し、私自身が講師となる経営理念勉強会を行ってきました。
5〜10人程度の単位で、毎年1回以上、理念の背景や意味を共有しています。
また、社員一人ひとりと向き合うため、1on1ミーティングも行ってきました。

しかし、続ける中で、一つの課題が見えてきました。
それは、私自身が理念の中心になってしまっていたことです。
私が直接理念を伝え、社員と話すことで、理念は伝わります。

一方で、管理職の経営意識が育ちにくく、社員が私を直接見る構造になり、結果として管理職の存在意義を弱めてしまうという問題もありました。
そこで、理念を「経営者が伝えるもの」から「組織で受け継ぐもの」へ変えていく必要があると考えました。

■ 「経営理念の日」の制定

その新しい取り組みとして始めるのが、「経営理念の日」の制定です。

現在の経営理念は、2016年の分社化を機に制定しました。
その前年、2015年9月25日に国連サミットでSDGsが採択されたことから、私たちは9月25日を経営理念の日として「ベンカン理念の日」とすることにしました。

この日は、理念を経営が社員に訴える、あるいは伝える日ではありません。
理念を振り返り、「私たちの理念とは何なのか」、「自分の仕事と理念はどうつながっているのか」、「これから、どう実践していくのか」などを、皆で考える日です。

当社には、様々な国籍や文化を持つ仲間がいます。
その多様性を大切にするため、「ベンカン理念の日」のポスターも、日本語版だけではなく、スペイン語版、ベトナム語版を作成しています。

同じ理念を、それぞれの言葉で共有する。
言葉や文化が違っても、目指す方向を共有する。
それもまた、私たちが目指すインターナルブランディングです。

日本語・スペイン語・ベトナム語

■ 「理念を伝える」から「理念でつながる」へ

配管は、配管と配管をつなぎ、流れをつくります。
それが、私たちの仕事です。
だからこそ、配管機材メーカーである私たちも、単に「モノをつなぐ会社」であるだけではなく、人と人、社員と社員、そして現在と未来をつなぐ会社でありたいと思っています。

「ベンカン理念の日」も、そのための機会としていきたいと思います。
理念を振り返り、考え、語り合う。
そして、それぞれの仕事に戻っていく。
そうした積み重ねが、組織としての力につながっていくのだと思います。

■ 理念を「組織のもの」にする

現在、私が講師となる経営理念勉強会は管理職までとしています。
一般社員への理念共有は、管理職から伝える形に変えました。

もちろん、私が直接伝えないことで、内容が歪んでしまう可能性はあります。
しかし、私がいつまでも直接伝え続けている限り、本当の意味で理念を「組織のもの」にすることはできないと考えています。
経営者ではなく、管理職が自分の言葉で理念を語る。
そして、その理念をもとに部下の行動を支援し、判断する。
「経営者が理念を伝える」のではなく、「組織そのものが理念を伝える状態を目指しています。

私は、組織の力を信じています。
だからこそ、理念も一度つくって終わりではなく、共通目的、貢献意欲、コミュニケーションを常に見直しながら、理念が組織の中で本当に生きているのかを問い続けたいと思います。
理念は、壁に掲げるためにあるのではありません。
社長が語るためだけにあるのでもありません。
社員一人ひとりが、自分の仕事の中で使うためにある。
そして、その積み重ねが、やがて顧客から見た「この会社らしさ」になっていく。
それが、企業ブランドなのではないでしょうか。
配管機材メーカーとして、モノをつなぐだけではなく、人と人をつなぎ、現在と未来をつなぐ。
そんな会社を目指して、これからもインターナルブランディングに取り組んでいきたいと思います。 

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