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“安定した仕事の彼”を信じた結果、全部嘘でした。第二話

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第二話 違和感

結婚してから最初に感じた違和感は、保険証のことだった。

「まだもらえてないんだ」

彼にそう言われたのがはじまりだった。
最初はそんなこともあるのかなと思っていたが、それは一度では終わらなかった。
「事務の人が遅くて」
「仕事ができない人で」
「新しい人にやっと変わったんだけど、仕事がたまっちゃってて保険証まで手につかないらしい」
「最近結婚した同僚もまだもらえてないらしい」
理由だけが更新されていく
私はそのたびに「それはいくらなんでもおかしいと思う」
「急に病院にかかるときに保険証がないと困るから早くしてほしい」と何度も伝えた。
すると彼は「病院へは自費でとりあえず渡すからお前は心配しなくて大丈夫だよ。不便かけるけどもう少し待ってね」
安心させるような言い方だった。
それでも状況は変わらず、日常の中に小さな不安と不便が残り続けていった。
「何年ももらえないなんておかしい!」
気づけば数年がたっていた。
不満を募らせていると
ある日、彼の方から話をしてきた。
「事務の人を呼び出して説教したんだよね。遅いから早くしてもらわないとうちだって困るって伝えたよ。そしたら、むこうも謝ってて早くしますって言ってた。俺が結構怒ってたから他の人に聞こえてたかもしれないけど。だからもうすぐだと思う!待たせて悪いね。」
優しく、どこか誇らしげに話す彼を見ながら私は「本当に早くしてね!」それしか言えなかった。
待つしかない理由を納得させられていく感覚だけが残った。

_________どうしてまだ手元にないんだろう
その答えを私はまだ知らなかった。

違和感はあったのかもしれない
けれど私は彼を信じきっていた。

彼は“普通以上”に堂々としていてハキハキと話す。
思っていることをそのまま口にするような本音で話しているようにみえる人だ。
こちらが聞いてもいないのに、先回りするかのように安心させる言葉をかけてくることも多かった。
彼のこだわりである食や買い物は結婚してからも私に不便な思いをさせないように自然と気をまわしてくれているようにみえた。
私の両親にも得意の料理を振舞ったり、誕生日にはプレゼントを贈ったりしていた。
言葉だけじゃなくて行動で示してくれる人だった。

それに同級生だった。
どこの誰かもわからない相手じゃない。同じ時間を過ごした知っている人のはずだった。
だから私は疑わず、むしろ安心していい相手なんだと思っていた。



#創作大賞2026 #ホラー小説部門

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