怪異ハ浸食スル④呪物編/ホラー小説部門
※本作は虫が出てきます。人によっては不快に感じる表現もあります。苦手な方はご注意ください。
第四話『中学二年生/呪物を生み出す』
一日の授業が終わり、掃除の時間も終わり、帰りのホームルームも終わると、ぼくは通学かばんをかかえてすぐに教室を出た。
渡り廊下をかけるように進んで別館へ行き、階段を上がり三階へ、文芸・新聞部の部室として使っている、あき教室のとびらを開く。まだ誰もいない。
席についてオカルト本を読んでいると、同学年の部員が入ってきた。とりとめのないことを話しながら、一時間くらい部活動を行って学校を出た。
あいつらにからまれることなく一日が終わったことにほっとしながら、通学路を歩く。とちゅう、井戸を探した神社に寄るのが最近の日課になっていた。井戸が出現していないかな、と思って。それから虫を捕まえるために。
鳥居をくぐって境内に入ると、小さい虫が顔にまとわりついたけれど、それはいらない。小さいのより大きい方が怨念は強そうだから。
木の根元にある大きめな石を持ち上げたらダンゴムシがいて、さわるとすぐに丸まった。百均で買った、カードサイズのジッパー付きポリ袋に入れる。満足していたら、鳥居の下に知らない人がいるのが目に入った。
散歩中のような雰囲気のおじいさんだ。中に入ってくる。話しかけられても面倒なので、ぼくは顔をふせるようにしてその人とすれちがい、神社から出た。再び通学路を歩く。
マンションの近くにある公園に入った。まんなかが走りまわれるように開けていて、ふちにブランコ、鉄棒、すべり台、砂場、ベンチ、それから公衆トイレがあり、大きな木や花の植え込みもある。すべり台で小学生が三人、遊んでいた。
ぼくは木の根元や植え込みで虫を探した。低木の陰にカメムシを見つけた。これも手で捕まえてダンゴムシと一緒のポリ袋に入れる。青臭い匂いが手についたけど気にしない。
チョウが飛んでいるけど捕まえにくそうだから、それよりも地面や手の届く範囲を探した。またダンゴムシを見つけた。木の幹にカナブンがいた。元気がない。死にかけかも。
四匹も捕まえられて満足したので、家に帰ることにした。公園を出て百メートルほど歩けばマンションだ。
道路から敷地内に入ると、エントランス手前の植え込みの縁石に、腰を下ろしている男の人が目に入った。
どこの部屋の人だろうと思いながらちらちら見ていたら、その人がぱっと顔を上げた。
「あれ、叔父さん?」
「悠、おかえり」
叔父さんは、軽く手をあげて笑顔で立ち上がった。ぼくはとたんにうれしくなった。
「どうしたの。こっちに来るなんて初めてだよね」
「ちょっと遊びに来ただけだよ。たまにはいいだろ」
「うちに入ればいいのに。萌が小学校から帰っているはずだけど」
「留守みたいだぞ」
「遊びに行ってるのかな。そうだ、チャイムが鳴っても無視するように言われてたっけ」
「最近ぶっそうだからな。それよりも悠、なに持ってるんだ?」
叔父さんは、ぼくが手に持つポリ袋を指さした。
「これは、えっと、虫。標本を作りたくてさ。そんなことより早くうちに入ろうよ」
エレベーターに乗って六階に上がり、外廊下の中ほどで足を止める。カギを開けて中に入ると、玄関の土間に萌の靴があった。やっぱり帰っている。
「萌、ただいまー。叔父さん来てるよー」
「おかえりー」
ぼくは自分の部屋に入り、荷物を置いて着がえを始めた。叔父さんは開きっぱなしのドアから遠慮がちにのぞいて、ゆっくり入ってきた。
「けっこうきれいにしているな。虫はどうするんだ?」
「とりあえず、この中に入れておくよ」
ぼくは、机の引き出しから電車のイラストが描かれた小ぶりの缶を取り出した。今年のバレンタインデーにお母さんと萌からもらった、チョコが入っていた缶だ。缶のふたを開いて、虫をポリ袋ごと入れて、ふたを閉めた。
「どうやって殺すんだ?」
「わざわざ殺さないよ。閉じ込めておけば、そのうち死ぬかと思って」
小さい虫はいいけれど、大きい虫を殺すのはちょっと勇気がいる。ぼくが手をかけなくても勝手に死んでくれた方がラクでいい。
叔父さんは、「ふうん」と言って、缶を手に取り軽くふった。かたいものが缶にあたる音がした。今日の虫を合わせて、十五匹くらい入っているはず。
「こどくみたいだな」
叔父さんがぽつりとつぶやいたその言葉に、ぼくの耳がカッと熱くなった。
「孤独じゃないよっ。かっこいい虫の標本を作るのを、友だちと競争してるんだ」
「ちがうちがう、そっちの孤独じゃなくて、呪物の蟲毒だよ。知らないか?」
「じゅぶちゅ?」
「じゅ・ぶ・つ。呪うもの。蟲毒は、中国の呪術だ。たくさんの生き物をひとつの容器に閉じ込めて共食いさせて、生き残った一匹を呪いの媒体として使う、いや、すりつぶして呪いたい人に飲ませるんだったかな」
「たくさんの生き物って、どれくらい?」
「百匹だったか。いや、同じ種類がいたらだめだったような。だから、百種類か。俺もネットで少し読んだくらいだから詳しくないけど」
あと八十五匹。種類で言ったらもっといる。先は長い。それだけ虫を集められる執念があったら、呪物なんてなくても人を呪えそうだけれど。でも、すごくいいことを聞いた。
「標本、できたら見せてくれよ」
「うん。でも、すぐに飽きちゃうかも。それよりもリビングに行こう」
LDKに入ると、いつものように萌がソファーにいた。
「こんにちは、萌ちゃん」
「こんにちは、叔父さん」
萌はちらっとこっちを見ただけで、すぐにテレビに目線を戻した。
幼いころから変わらず、叔父さんになんの興味もわかないようで、叔父さんも萌にどう接していいか分からないのか気まずそうにしている。このふたりがふたりだけで話しているところを、ぼくは見たことがない。
「叔父さん、なにか飲む? コーラか、麦茶か、牛乳か」
「しまった。こういう時は、手土産を持ってくるもんだよな。俺、ちょっと買ってくるわ。近くに店はあるか? なにがいい? ケーキか、それとも」
「萌はケーキがいい。大通りのケーキ屋さんのチョコレートケーキね。いつものやつ」
こういう時だけ、ちゃっかり会話に入ってくる。
「その店はどこにあるんだ?」
「ぼくが案内するよ。歩いて行けるところにあるし」
再び外に出た。マンションの前の道を右に行ってしばらくすると大通りに出る。そこを左へ十分ほど歩けば、洋風の外観がかわいいケーキ店が見えてくる。人気のお店で、我が家のバースデーケーキはいつもここだ。
店内に入ると、先客が二人いた。ショーケースには色とりどりのケーキが並んでいて、ぼくと萌は、これを見るだけでいつもテンションが上がる。
「萌ちゃんが言ってたチョコレートケーキはどれだ?」
「これだよ」
「悠は、どれがいい。兄貴たちは、どうしよう。悠が全部選んでくれないか」
「ぼくは、このいちごのショートケーキがいいな。お母さんは萌と同じチョコレートケーキが好きで、お父さんは、このチーズケーキがいいと思う」
「じゃあ、それで」
「叔父さんは?」
「俺はいいよ。すぐ帰るつもりだし」
店員さんに四つのケーキを箱に入れてもらって、来た道を引き返した。
「悠、一カ月前に電話くれただろ。あのとき言ってたこっくりさん、どうなった?」
「もうあきちゃった。ぜんぜん動かないから」
うそだけど。精度を上げたくていろいろ試そうとしているなんて、言えない。
「それで、今は標本作りか」
「友だちが見せてくれて」理科室で標本を見たとき「ぼくも作ってみたくなったんだ」虫たちの怨念がこもっていそうで「おもしろそうだから」こっくりさんに利用できないかなと思って。
「好きな子はどうなった?」
「ああ、あの子ね、ほ、他にも気になる子ができちゃって、なんか、うやむやになった」
「俺も覚えあるわ。中学んときなんて、ちょっと優しくされただけですぐ好きになっちゃって、気持ちがあっちいったりこっちいったりしたな。まあ、今もだけど」
叔父さんがくくくっと笑ったので、ぼくもつられて笑った。そのまま大通りを歩いて、マンションの前の通りへまがる道が見えてきたころ、
「あの学ラン、おまえと一緒だな」
叔父さんがあごで左前を示したので目を向けると、車道をはさんだ向こうの歩道に、学ラン姿の男子が三人いた。遠目でもすぐにわかった。クズと取り巻き二人だ。こっちに顔を向けている。ぼくはすぐに目をそらせた。
「悠のこと見てるみたいだな。友だちか?」
「友だちなんかじゃないよっ、あんな人間もどき」
大きな声を出してしまい、すぐにしまったと思った。こんな言い方をしたら、叔父さんがへんに思う。お父さんにもお母さんにも萌にも言ってないのに。知られたくないのに。
様子をうかがうように叔父さんを見ると、真剣な表情を浮かべていた。
「悠、よくあいつらの正体がわかったな。俺もあいつらは人間もどきだと思った」
え?
「オーラが素直じゃないんだ。よく見るとねじまがっている。知っているか? あいつらはたまにへんな匂いがする。ところどころくさっているからな。あんなもん人間じゃねぇ。さすが悠。よく見やぶった」
ぼくに話を合わせてくれている?
「俺も地元で見たことがある。こっちにもいるんだな。三人ともそうなのか?」
「えっ、うん。そうだよ。三人とも人間もどきだ」
「ボスはどれだ? やけに体が大きいやつがいるがそいつか? 他は取り巻きっぽいな」
「叔父さんの言うとおり、大きくてえらそうにしているやつがボスだよ」
「やはりな。取り巻きは自分で判断せずにボスの言いなりだ。ボスもちやほやしてくれる取り巻きがいないとなにもできない。あいつらはひとりじゃなにもできないくせに、集まるととたんに強気になって他者を攻撃する。人間もどきの、みにくい習性だ」
「そのとおりだよ。さすが叔父さん。よく知っているね」
「悠は、あいつらをどうしたい?」
「ぼくの世界から消えてほしい」
本音がするっと口から出ていた。叔父さんはぼくの肩をぽんぽんっとたたいて、にっこり笑った。
「悠。俺は用事を思い出した。今日はここでお別れだ」
「どうしたの、急に」
「いいから、悠はケーキを持ってすぐに帰れ。人間もどきを見るな。ほら行け」
背中をおされたので、とまどいながらも歩き出す。後ろを向くと、叔父さんが手を振っていた。首をかしげつつも、大通りから右にまがってマンションへ戻った。
「ただいま。萌、ケーキ買ってきたよ」
「やった。あれ、叔父さんは?」
「用ができたって帰っちゃった」
「ふうん。なにしに来たんだろう」
それはぼくにもわからない。萌とふたりでケーキを食べた。甘くておいしかった。
「よもかたぁ。昨日、キモイじじいと一緒にいたな」
次の日の朝、さっそくもどきたちにからまれた。
「おまえの父親か? だっせぇじじいだったな」
「貧乏くさいかっこうしてたな」
自分のことを言われるより、叔父さんのことを言われる方が腹立たしい。カッとなって立ち上がったけれど、もどきたちの方が背は高く、とたんに勇希がしぼんでしまった。
「どうした、四方。もう終わりか? 弱っちいな」
「……まえらの方が弱いくせに」
「あ? なんか言ったか? 声が小さくて聞こえねぇな」
「はいはい、みんな席について。チャイムなったわよ」
担任の先生の声がして、ようやくやつらから解放された。
いすに腰を下ろして親指の爪をかみながら考えた。こっくりさんを成功するのを待ってはいられない。早くなんとかしないと。鎮痛剤の三文字の言葉を心の中でくりかえした。
放課後、すぐに学校を出て神社に行った。鳥居をくぐって奥に進みながら虫を探す。ダンゴムシ。アリ。ハサミムシ。見つけたものをかたっぱしからポリ袋に入れた。
手水舎の奥にある、地面に短い竹がささっているあたりは、よく虫が捕れる地点だ。期待しながら大きな石を持ち上げたら、ムカデが出てきた。逃げてしまうと思って、あわてて持っている石をぶつけた。石の下から半分はみでた体がもぞもぞしている。それを見て体がぞわっとした。
どうしようか少し悩んで、ビニール袋を手袋にして、ムカデのまわりの落ち葉や土もまとめてつかんで、ビニール袋をひっくり返した。手にムカデの感触をあまり感じることなく、中に入れることができた。ムカデも元気そうだ。念のため袋を二重にして、虫探しを再開した。
マンションに帰って、虫がしまってある缶を開けた。ポリ袋の中の虫は、動かない。酸素が足りなかったのだろう。ほとんど死んでしまったようだ。
なにかいい容器はないか考えてから、ぼくはLDKに行き、冷蔵庫からコーラのペットボトルを取り出した。コップ一杯分くらい中身が残っている。それを飲み干して、洗って、部屋に戻った。
ペットボトルの真ん中あたりをカッターで切り取った。ビニール袋のムカデをなんとかして中にいれた。わさわさ動いているのを見て、また体がぞわっとした。今日、捕まえた他の虫も中に入れた。
ペットボトルの切り取ったところをはめ込んで、つなぎ目をガムテープで止めた。空気穴をあけようとしたけれど、アリが逃げてしまいそうだから、安全ピンを取り出して、アリよりも小さな穴をペットボトルの上の方に三つあけた。満足して、作業を終えた。
死んでしまった虫はどうしよう。せっかく捕まえたんだから、活用したい。
次の日、またもどきたちにからまれたけれど、計画を思うと不思議と平気だった。
放課後になると、ぼくはいったん部活に出て、一時間くらい時間をつぶしてから教室に戻った。室内に誰もいない。
机にするか、後ろの壁面に造りつけられた、個別の棚にするか、どっちにしようと考えて、まずは机に決めた。カメムシの死骸をクズの机の奥につっこんで、すぐに教室を出た。笑いがこみあげた。
帰りはムカデのエサを探すために神社に行った。
マンションに帰ってペットボトルを見た。ムカデは元気に動いている。なれたのか、ぼくの体はぞわっとしなくなった。虫が減っているような気がした。ムカデが食べたんだろう。さっき捕まえた虫もそこに加えた。
次の日。クズはカメムシに気づいてくれない。残念。机の中でこなごなになっていそうと思ったらおもしろかった。ばれないなら今度は、後ろの棚に入っている、体操着袋の中にダンゴムシの死骸を入れておいた。取り巻きの机の中にも入れておいた。
虫を捕まえてムカデのエサにして、死んだのはもどきたちの机の中や棚にある私物にひそませた。ぜんぜんばれなくて、どうなっているんだろうと不思議に思っていたら。
「うわっ、なんだこれ。虫が、なんでこんなに」
休み時間、クズがさわぎだした。机から、教科書やくしゃくしゃのプリントを取り出して、奥にたまっている虫にようやく気づいたみたいだ。ぼくは、図書室から借りてきた本を読んでいるふりをしながら様子をうかがった。
「よもかたぁっ」
クズの声がして、ぼくは顔を上げた。
「おまえだろ。こんな根暗なことするやつは、おまえしかいない」
「なにが?」
「しらばっくれるな。おれの机の中に虫を入れたのは、おまえだろう」
ぼくは首をかしげた。心底、意味が分からないといった雰囲気で。その演技にだまされたのだろう、クズは、ぼくを犯人だと決めつけていた気持ちがゆらいだように、とまどいを見せた。チャイムが鳴ってさらに勢いをなくしたのか、「っち」と舌打ちしたものの、それ以上は何も言わず、おとなしく席に戻った。
クズはぼくがそれをやったと疑った。ぼくに恨まれている自覚があるからだ。それなのに、ぼくをからかい続ける。これがいじめだと分かっていないわけじゃなかった。だったら、もう遠慮はしなくていいよね。
呪物を作るとは。作り上げることが目的じゃない。作る過程で、己の恨みつらみを増幅させることが目的だ。復讐する動機を強固させることが目的だ。自ら動けるように。
だったら、目的は達成されつつある。
マンションに帰って、ペットボトルを見た。虫がたまっている。動いているもの、動かないもの。ハエ、コバエ、クモ、ダンゴムシ、カメムシ、アリ、ミツバチ、カミキリムシ、ハサミムシ、ベンジョバチ、アブ、カナブン、ゲジゲジ、他、名前も知らない、虫。
その世界を、覇者のようにムカデがうごめいている。
さあ、どうしよう。
ぼくはマンション近くの公園に走り、石を三個ほど拾って帰った。
ペットボトルの切り取った部分を、虫が逃げないように注意しながら外して、素早く石を入れて、再びはめ込んだ。ガムテープでしっかり封をして、それから思い切りふった。かさかさごとごと、かさごとごとかさかさ。石と虫が中でぶつかる。
もっとふる。もっともっとふる、ふる、ふる。
手を止めて、見る。ちぎれた脚。頭。つぶれた体。ペットボトルにへばりついた汁。もとがなんだったのか分からないものが、かすかに動いている。もっとふる、ふる、ふる。
あれ、蟲毒の作り方って、これじゃないよね? まあいいや。
へんなの。呪われるなら、蟲毒を作った張本人じゃないの? これを作っているぼくじゃないの? それなのに他の誰かを呪えるのかな。へんなの。あははっ。
ぼくは呪われても平気。だって、呪いそのものになってしまえば、人間もどきも、きっとぼくに手を出せなくなるから。あははっ。
もっとつぶしたい。
部屋を見まわす。勉強机の引き出しをあさる。棒状のなにか、なにか。
LDKに行って食器棚の引き出しをあさって、割り箸を三組持って部屋に戻る。
ペットボトルを開けて、割り箸を束ねて持って、中のものをつぶす。手に感触が伝わる。でも平気。ぜんぜん平気。むしろ楽しい。
黒色や緑色の、つぶつぶでぐちゅぐちゅしたものができあがった。悪い魔女が作った、怪しい薬みたいだ。
これを、クズと取り巻きに飲ませたい。どうやって。あいつらの机や持ち物に塗ってやれ。気づかずに手で触れて、そのまま給食のパンでも食べてくれれば、それで口の中に入る。
次の日の放課後、さっそく実行にうつすことにした。誰もいなくなった教室で、もどきたち三人の机といすの、手でよく触りそうなところ、それから机の中や後ろの棚に入っている持ちものぜんぶに、魔女の薬を塗った。あまり目立たないように気をつけながら。ばれない程度に、少しだけ。
ペットボトルの中身がなくなるまで、何日かそれをくりかえした。
もどきたちになんの変化もなかったけれど、十一月の終わりごろになると、クズがいきなり学校に来なくなった。
ぼくの呪いがきいたんだ。ざまあみろ。取り巻き二人はふつうに学校に来ていたけれど、クズがいなくなったことで、おとなしくなって、ぼくにからむことはなくなった。
ぼくは、ようやく平和な中学生活を取り戻した。
『呪物編』完
『怪異ハ浸食スル』⑤自己責任編へ続く
