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2026年8月まとめ

 南極で氷漬けのペンギンが見つかった。探検隊は大喜びで解凍したが、ペンギンは氷と一緒にどろどろに溶けてしまった。


 新作3400字。組版後、当初の展開は差別と受け取られるのではと思い、ラストに少しだけ手を入れた。読み方によってはまだそう取られかねないだろう。しかし必然だった。書いた後で、実際にペットボトルを脇で持ち上げようとしたり、口でスマホを操作できないか試して、途方に暮れた。スマホは足指がタップしやすく、文字入力は音声認識がよさそうだとわかった。
 次1700字。ディストピアを描きながら、現実が軽々とそれを追い越すのでうんざりしてしまう。いま私が求めているのは、どこまでも続く地平線とか水平線とか高速で流れる雲とかどっしりした山とかだと思う。広い場所に行きたくて海のそばの旅館に泊まったが、宿泊予約を一日間違えてフロントで真っ青になった。結局海には行かず、景色がよくてもゆっくり眺めるでもなく考えごとばかりしてしまう。あるいは子どもたちの姿ばかり追っている。それはそれで幸せなのかもしれない。わからない。

 アンディ・ウィアー『プロジェクト・ヘイル・メアリー』上下巻。むちゃくちゃ面白かった。記憶喪失状態で宇宙船で目覚めた男が、徐々に過去を思い出しながら地球の危機を救う。ロッキーがよすぎる……! 未知との遭遇に納得のいく理由が語られるのは素直に感心したが、意志疎通ができてなおかつ友人になれるのはほとんど祈りに近いなと思った。どちらかというと『ソラリス』みたいなイメージが強いし、同じ地球人でも相容れないのに。ラストは最悪ではないが、それでもなかなかにエグい終わり方だと思った。
 戸田鳥「いまわのきわ」。生き霊となった女性が、この世からあの世へ踏み切るまでの語り。戸田鳥さんの話は安心感がすごい。視点がフラットで、語り手が不快な思いを抱いていたとしても、その感情描写は冷静だ。そしてその冷静さのまま跳躍する。日常や過去の思い出に基づいた伏線を回収してまっすぐ跳ぶ。裏切りやてらい、華美な脚色のない真摯な語りのなせる技かもしれない。水彩の風景画を連想する。
 伊藤なむあひ『蟹の理』。よかった。白なむあひさん。蟹が語り手の時点で面白いし、言葉遣いもかわいい。感動の裏に生と死が描かれ、それを超える方法も描かれている。

『さむわんへるつ』4巻。水尾さんがかわいすぎる……助けてくれ……。そして嫌味な新キャラ出てきたなと思ったら、ギャップで一瞬で好きになってしまってずるいだろとなった。
『隣のお姉さんが好き』全話。関係性の話だった。よかった。地雷を踏みまくるけど、相互理解のないときって本当にそうなるし、それでも尊重して修復していくしかない。それができない関係は長続きしない。会話をしよう。
 雉鳥ビュー『ここではない場所のこと』。示唆に満ちている。川のこちら側とむこう側は、常に変動する流行であり、世論であり、常識である。気づいたときには「川が増水していて渡れそうにない」。亀を殺す。亀は増水しても川を渡れるから。笑い声が追いかけてくる。ホラーでも不条理でもない、今が描かれている。
『部屋の中の部屋』。「ニック・エッグスクランブールの友人たち」「良い終末」がよかった。特に前者の、線が細くて絵柄が好みなのと題材が好き。私はたぶん、いなくなってしまったひととかものを描きたいんだと思う。なくなってしまう本を作りたい。

 エンディングに到達する前にどんどん新しいゲームをプレイしてしまう。月刊湿地帯「光だけしかない機械」笹幡みなみ「モカ連絡事務所。」がよかった。ゲーム作りたいな。そんな時間、捻出できるのかな……。

 最近家事をしながらポッドキャストを聴いている。お二人で最近食べたもの、行った場所について話されており、非常になごむ。お互いにハンドルネームで呼び合い、敬語を使ってちょっと他人行儀に話しているなかで、ふと普段の呼び名が出たのか言い直したり、くだけた言い方になったりするのを聞きながらにこにこしてしまう。ウィットに富んだ相槌は深い知性に裏打ちされている。
 例えば戦争や平和へのスタンスについて、私と類似の方向性で、明確に言語化されて述べられるとそれだけで安心する。たぶん演説やライブの役割ってそういうことで、扇動されるのはよくないが、結局安心したいだけなのだろう。平和であるよう努力したい。

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    雨下雫『花筏』 C1講義室『告白しょーる?/なごしのはらえ』

    雨下雫『花筏』
     万年筆インクシリーズ2冊目。かわいらしい装丁からは想像もつかない、息が苦しくなるような物語だった。胡乱なおじさんの人物造詣がよくて、後半でおじさんに再会するシーンが美しく寂しい。社会から外れて歩こうにもうまく歩けない孤独。スペシャルな自分を喪失することの恐ろしさ。

    C1講義室『告白しょーる?/なごしのはらえ』
    ・小島宇良「告白しょーる?」
     アロマンティックというのか、恋愛がわからない立場から描かれる恋愛小説。すごい好き。恋愛に関するすべてのスタンスに真摯だ。金子さんと野田さんが二人で廊下の窓から見下ろしている、その距離感というか、ベクトルが違う感じがとてもよかった。何よりも野田さんが好きすぎて私はもうダメです。

    ・雨下雫「なごしのはらえ」
     マッチングアプリで知り合った男性と鎌倉に行き、意に反して夏越しの祓えに参加する女性の話。ギャグ方面の雨下さん作品だ。なんでひとの不幸ってこんなに面白いんでしょうか(酷い)。素行の怪しい男性を書くのがうますぎる。そしてクライマックスのイメージの美しさよ。鎌倉行きたいですね。ひとが多くなければ……。

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      2026年7月まとめ

      というか、腕たちがそれぞれの意思を持ってボイコットするという考え方がおかしいのではないか。ミギーがいるのならヒダリーがいてもいいかもしれないが、両腕がいなくなってしまったらシンイチも後藤には立ち向かえない。


      『夜に』発売、発送開始。予想以上にご購入いただき、早くも感想をいただいていて、感謝の舞を踊り続けている。ありがとうございます!
       また変な話が降ってきたので書いた。3300字。でもこれどこかで読んだことあるんだよな……。

       今さらながらプロジェクトヘイルメアリーを読んでいます。むちゃくちゃ面白い。
       あと今書いてる短編ネタ被ってないか検索したら乱歩「D坂の殺人事件」が出てきたので青空文庫で読んだ。幸いまったく被ってなかった。そういえば乱歩ってミステリでしたね。ハウダニットとワイダニットの話だった。

      『HUNTER×HUNTER』39巻。忘れてたので38から読み直したけどそれでもシーンしか覚えてなくてびっくりした。もっと前から読み直すべきか……王位継承編開始から……? 言うまでもなくゲームの見せ方が上手すぎるし結末の意外性が強烈すぎる。
      『クラピカ追憶編』番外だと知らなくて今までスルーしてたんだけど、読んでだくだくになってしまった。
       華倫変『カリクラ』上下。人選ぶしむしろ私も選ばれてない側だけど、泥のなかの花が美しい。汚泥にまみれた人形が美しい。グロとエロと暴力、低俗さにまみれた世界における美しさ。好きではないがわからなくもない。桶の女がよかった。あと殺し屋の話が、好きではないけど印象に残っている。
       日々の杏『あまたある光』。父親が自殺した青年が、自殺した友人の妹と、友人を殺した犯人を探す、遺された者たちの理由探しの話。終着点で突きつけられる救いのなさよ。死は選択の結果、事実でしかなく、それもまた正しく間違っている。ちゃんと生きるしかなくてよかった。生きててよかった。
       ヤマノエイ『さむわんへるつ』1〜3巻。良い……。水尾さんむちゃくちゃかわいい。何を考えてるかわからない不思議系ややジト目、仕草やその表情をこれでもかと丁寧に描かれていて素晴らしい。主人公のミメイくんがすべてのボケを拾っている漫才形式の会話が斬新。たまに元ネタわからん。第一話の深夜ラジオ一緒に聴くのからもうこんなん好きになるに決まってんじゃん!てなる。ラジオの選曲が話とマッチしてていい。登場人物がいいひとしかいない。風邪ひく回は神。ミメイくん追っかけ回も神。着ぐるみと夏祭り回も神。というか神回しかないぞ……? 特に抜きん出てるのがハガキ書く回。ネタ考えてるときの真剣な表情、ミメイくんが見てることに気づいた水尾さんが「なに?」って聞くシーン、その後のハプニングで思い切り笑うシーン。最高か。

       仕事用にノートPCを購入した。いまどきSSD1TB+メモリ32GBで20万切ってるからまあいい買い物だったのでは。当たり前だけど今ってCPUの内蔵GPUもそれなりのスペックがあって、flowerくらいのゲームなら普通に動くんだな……先月買ったGPUはもったいなかったかも。でもまあ、結局古い方のPCでゲームやるんですが。
       ABOVE THE SUN。ギャルがジェット噴射の脚をつけて塔を登るというコンセプトが面白い。中身はシンプルな縦スクロールアクション。昔友だちの家のパソコンで降りてくやつやったな〜と懐かしくなる。しかしシンプルなゲームほど難しい。タイミングを一瞬ミスると真っ逆様、酸の海にダイブしてゲームオーバーだ。キャラの脚を半ずらしして飛ばないと届かなかったり、移動床のタイミングで届かなかったり、たまに次の足場に頭をぶつけて落ちたりする。結構悔しい。
       九日ナインソール。冒頭からグロ鬱ディストピアじゃねーかとちょっと引いてしまった。タオパンクの世界観はむちゃくちゃカッコいいし映像きれい、ストーリーも今のところよさそう(ムービーがマンガなのいいな)なんだけど、何分にも私アクションが下手すぎまして……。ストーリーモードでもボスで五回以上リトライする。パリィできない。ボタン多過ぎて押し間違える。如羿とか山海9000とかロボットや人工知能たちがかわいい。

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        2026年6月まとめ

        父さんは今もまだ人間のままなんじゃないだろうか。



        『夜に』告知をした。たくさんの方にリポストいいねをいただき、すでにご予約もいただいており感謝の舞を踊っています。初めてのことが多すぎて何も! わからん! けど何とかなりそう。ってか何とかする。よろしくお願いします。
         宣伝にかまけてあまり書けていない。中編19000字を修正。人物像がブレブレ。

         素晴らしい小説を読んだ。Beatlesのジョン・レノンの自伝形式で語られる時間遡行歴史改変SF。平和の象徴としての彼らの語り直しであるとともに、押し流される現実への抵抗、そして祈りでもある。まさにトリックスターといったJの奇抜な言動とその背景、感染する物語、偶像崇拝、その行き着く先である現在への警鐘。ときに笑い、ときにひどく残酷で、少年のように頼りない、魅力あふれる語りを書くにあたって、どれほどの取材がなされているのか見当もつかない。疑問符を根こそぎ伏線と化して回収し、注ぎこまれた圧巻のラストシーン。回想によって時代を飛び越える描写は映画のようでもある。遅読のためいただいてからかなり時間が経ってしまい、申し訳ありません。とても面白かったです。
         イシュマエル・ノヴォーク「レツノム」。好きなやつ、というか、自作とモチーフかぶりしていて、しかもちゃんとSFをやっていらっしゃる……と愕然とした。モンスターである少女とそれを助けるロボット、しかし彼女を待つ残酷な結末は。語らせなくても動作で感情を表すのがうますぎる。
         雨下雫『花筏』、C1講義室『告白しょーる?/なごしのはらえ』。積ん読してました。これは感想記事書きます。

         木々津克久『名探偵マーニー』。とてもよかった。基本的に単話読み切りで謎が解決され、各話の密度が高い。それでいて新鮮で読み応えがある。謎の新規性もあるがどちらかというと動機に重きがおかれている印象で、ヒューマンドラマが合わさって時に感動的、時に恐ろしい読後感を与えてくれる。しかもこれが週間連載だったというから驚きだ。途中から探偵もののお約束である宿敵も現れ、マーニーの過去を絡めた大きな物語が展開される。素晴らしい。
         松本大洋『東京ヒゴロ』。Webで読めたので一気読みした。むちゃくちゃ良かった……。雑誌が失敗した責任を取るために辞めたベテラン編集者が、自分が描いてほしい漫画家たちに声をかけて雑誌を立ち上げる。斜陽化した出版業界、紙書籍の売れ行き、売上至上主義の編集者、といった苦しい現実のなかで、年老いた大御所の漫画家たちの描く漫画の美しさよ。
         ながいけん『第三世界の長井』。実質半額セールにかこつけて、4巻なんてあったっけ?と思って買ってしまった。あったし読んでた。これ結局打ち切りなんですか?
         山素『時間跳躍式完全無劣化転送装置』。だくだく泣いてしまった。びっくりした。好きなのは「サバイバーズゲーム」、ぶっささったのは「うさぎの本」。半分くらいは似た動機で書いてるので俺か……?みたいになった。幸せって何だろうね。

         十五年くらい前に自作した低スペックPCに、一応ゲーム用のグラボが載るということがわかり(今更)、初めて取り付けた。ディスプレイ表示されないぞ?あるあるや、デュアルディスプレイの片方がVDIのため接続できずデュアルじゃなくなったりしたけど、今は元気でやってます。3Dは無理だけど処理性能向上によりコントローラー操作のラグが解消され、ようやくアクションができるようになった。GRIS,
        Sheepyをクリアし、Rez infinite, flower をプレイ。描画速度が上がってもプレイヤーの反応速度が下がっているのであまり変わらないかも。昔はRezこんなに死ななかったんだけどなー。スレスパ1は一通りのキャラで一回はクリアできた。この先は修行と思うとモチベが下がるが、コンボをキメてるときの脳汁出る感覚が病みつきでやってしまう。怖いゲームだ。

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          『夜に』7/18発売!



           捲った紙の上で青い海が白い歯を立てる。
          (「プラネタリウム・ダイアログ」より)

           一夜文庫さん主催のZINE「読みたい夜に」「よむヨル」に掲載した連作短編集。ZINE掲載の八作に公募作品一作、スピンオフ的な千文字小説三作、書き下ろし一作を加えた全十三作を収録。
           ZINE、本、詩、校内冊子、神話、ログ、手紙、日記、契約書、昔話、童話、プラネタリウム解説。移り変わる形式と繋がる物語の向こうで、あなたはどこから来てどこへ行くのか。奇想、幻想、SF(すこしふしぎ)の短編書きによる初の作品集。


           というわけで、本です。主に私が作りました。生産者のブログです! ご予約はboothにて受付中です。発送は七月中旬を予定しています。→追記:7/18に発売開始しました!

           一月に目標を立て、四月に取りかかり、二ヶ月くらいこねこねしていましたが、ようやく形になりました。見本の一冊を手にしたときはむちゃくちゃ嬉しかった。
           インデ、見積、入稿、ネットショップ開設、値段設定、梱包資材と初めてだらけでした。とにかくググってひたすら先人の知恵を拝借。感謝と自分用メモとしてどこかにまとめようと思います。

           素敵な表紙はいちのへみのるさんに描いていただきました。蛸、林檎、波、それ以外にも小説に出てくるモチーフをたくさん描いて下さっています。また、写真はありませんが裏表紙は表紙と対になっています。ぜひ読みながら、読んだ後にも表紙絵を見て楽しんでいただければと思います。

           よろしくお願いします!

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