未完成婚・セックスゼロで母になる!?#27 新婚旅行と成田離婚危機|カミングアウト前④
未完成婚でも、性の不一致があったとしても、夫がアセクシュアルかもしれなくても、それでも夫のことが好きだと自覚して、ますます悲しみや苦しみが増していった。
どんなに私が夫のことが好きでも、夫は私を自ら抱きしめたいと思うことすらないのだ。
母子同室を希望した義母への怒りも、おさまることはなかった。
↓前回からの続き
最初は、フォトウェディングを盛り込んだ、夫婦と2人の母親を交えた、新婚旅行兼家族旅行の計画だった。母子同室の一件から、2人の母親は旅行をキャンセル、離婚寸前まで荒れたことで、夫婦で海外旅行に行くこと自体にも暗雲が立ち込めていた。
でも、航空券はすでに予約済だった。
私たちは海外旅行が好きだ。とてもとても、旅が好きだ。全日程別行動になったとしても海外には行きたいと思うくらい、お互い旅好きだったのだ。
表面上は、普通の生活を取り戻していたことで、自然と旅行には行く流れになった。何よりも航空券がもったいない!!海外旅行ということを考えると、ギリギリすぎるくらいギリギリでホテルを決めた。
しかし、フォトウェディングのプランは立ち消えた。高い手数料を払い、海外ウエディングの業者に頼む気がそもそもなく、教会もヘアメイクも貸し衣装も、自分たちで調べて英語で交渉し、乗り切るつもりだった。失敗も含めて、すべてを楽しむことで合意していた。
こんなところは、夫と私の気はとても合う。
でももはや、そんな時間も労力も残されていなかった。そもそも、フォトウェディングをしたい気持ちは、1ミリも湧いてこなかった。ウエディングドレスを着て笑顔を作ることなんて、到底できるはずもなかった。
水面下に大きな爆弾を抱えながら、私たちは海外旅行へ出かけた。このときは、この旅行を「新婚旅行」と言いたくもなかった。
それでも、この旅は本当に楽しかった。ツアー会社をまったく使わない、完全なる個人旅行、いわゆるメジャーな国でもない、5か国をもまたぐ壮大な旅だった。
毎日20,000歩近く歩き、朝から晩まで一分の隙も無く観光を詰め込み、時間の許す限りそこにしかないものを観る、感じる、食べる旅だった。スマホの充電も、モバイルバッテリーの予備も、1日が終わる頃にはギリギリになっていた。
毎日ぐでぐでに疲れ、倒れこんで寝る。ロマンティックとは程遠い。たとえ未完成婚じゃなくても、セックスできたとは思えないくらい、未知なる土地への好奇心をいっぱいにして、全神経と全体力を捧げた。
夫婦2人の旅行が基本だったが、それでも長期のあいだに完全に別々の単独行動も何度かあった。無理して相手に付き合うくらいなら、海外であっても別行動して、自分の好奇心を満たしたい。
お互いに独身時代が長く、一人旅に慣れていたからこその感覚だった。
私と夫は、合っていた。合わないことへの対処の仕方も、合っていた。長期の海外旅行でも、違和感はまったくなかった。
だが、それがゆえに、ますます見過ごせなくなってきてしまった…
長期の海外旅行で味わう幸福感と安心感が増せば増すほど、絶対に相いれない、2人の大きな違いが際立った。水面下の爆弾が、チクタクと時限装置のカウントダウンを始めていた。
私は幸せを感じれば感じるほど、不幸せな気持ちが膨らんでいった。
海外旅行終盤、ついに私は我慢ができなくなった。
義母へ新婚旅行母子同室を提案したことの謝罪を求める、と夫へ伝えた。
夫への愛情や、夫と一緒にいることでの幸福感が増すほどに、夫が自ら私に触れることが一切ないことに悲しみ、苦しんだ。
新婚旅行母子同室に何の異論も捉えず、もしろ擁護したことは、夫が私を愛していない、何よりの証拠。夫がどんなに他の手段で愛情を伝えていても、私は夫から愛されていないと感じていた。
そして、義母はしっかり自分の夫から愛されていただろう。新婚旅行も、きっとラブラブだったに違いない。
その証拠に、夫の兄と夫という、2人の子宝に恵まれている。夫の育った家庭は、私が育った家庭とは違い、円満だった。
義母は、自分の夫から大事にされ、ちゃんとセックスして、子供を産んでいる…
対して、私はどうだろう…
夫は私を求めない…セックスはおろか、夫からキスをしてくれることも、抱きしめてくれることもない。
セックスをして、子供を作ることもできそうもない。
普通の夫婦が当たり前にしていることが、私たちの間にはなかった。
新婚旅行母子同室を求めた義母は、私が欲しくても手に入れられないものをすべて持っていた。私が抱いている不安も悲しみも、まったく味わったことのない、夫から愛された幸せな女性…
私が得られないものを、すべて持っている。それでも、まだ求めるのか?
こんなに苦しんでいる私が、やっと味わえそうだった小さな幸せを…女としての幸せのすべてを、すでに手に入れたあなたが、この私から、まだなお奪うつもりだったのか?
義母への嫉妬、憎しみが膨れ上がった。もう、止められなかった。
夫の母親……
自分の夫から愛され、セックスし、夫という子供を産んだ一人の女性…
うらやましかった。
悲しかった。
惨めだった。
私も、あなたのような、そんな女性になりたかった…。
私は、悲しみと憎しみと怒りを、夫へぶつけた。
義母へ直接言えない感情も、全部夫へぶつけた。
今思う…
夫も、とてもとても、辛かったに違いない…。
やっと結婚できた好きな女性と、自分を育ててくれた大切な母親に挟まれる苦悩…あのとき、夫は自分の気持ちを『断腸の思い』と綴った。
好きな女性が、自分の母親をボロクソにけなし、嫌悪感をあらわにする。自分が大切にしたい母親を、大切と思うどころか、嫌いと豪語し、許せないと宣言する。
その原因となったのは、性の不一致にほかならなかった。
アセクシュアルのグラデーションの中に位置するであろう夫は、自ら私に触れることは一切なくても、私のことが確かに好きだったのだ。
「好き」と「性的惹かれ」が、繋がらないアセクシュアル…
夫は、「好き」であっても、身体的な接触を求めることがまったくない、とゆーか、その発想がそもそもない。だから、新婚旅行母子同室でも、まったく何も思わない。
「新婚旅行母子同室を了承したのは、妻のことを愛していないから、妻より母が大事だから。」ということでは、全然なかったのだ。
夫がどんなに言葉を尽くしても、私は夫の思考回路を理解できなかった…
私がどんなに言葉を尽くしても、夫は私の思考回路を理解できなかった…
アセクシュアルと、そうではない人との、想像もできないほどの大きなズレ…
どっちが悪いとか、どっちが正しいとか、そんな次元ではまったくなかった。
でも、当時の私はわからなかった。
性の不一致、という夫婦を危険にさらす大きな問題の上にさらに、嫁姑問題という核爆弾が絡まった。
成田離婚は、すぐ目の前だった。
(成田離婚って、若い人は知ってんのかな?笑)
