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なぜ、力を抜いた方がうまくいくのか

退職前の数年は、ある重役の発表資料や、数年先までの技術戦略を策定するのが主な仕事でした。重役が答えに行き詰まると、相談される。そういう立場です。

相談される内容は、複雑なことが多かったです。他のスタッフに相談しても答えが出ないようなことを、最後に持ち込まれるわけです。だから、直線的な思考や、頑張って考えるだけでは、よい解決策にたどり着けません。

そんなときは、聞いた問題をいったん置いて、何か思いつくまで待ちます。

自分でも、ふざけた仕事のやり方だと思ったことはありました。ところが、不思議とうまくいくのです。降りてくる、と言ってもよいかもしれません(笑)。

私にとっては、これが「力を抜く」ということでした。 流れに身を任せる、と言ってもよいかもしれません。

なぜ、置いておくとうまくいくのか

考えてみると、力を入れると、選べる道が減るのだと思います。

まっすぐ考えるほど、人は過去にうまくいったやり方をなぞります。それがいちばん確実に見えるからです。ですが、なぞれるのは自分が通った道だけです。

答えが自分の体験の外側にあるとき、その道はなかなか見つかりません。この習性に気づいたのは、失敗した事業やプロジェクトをいくつか観察したからです。

困ったとき、壁にぶつかったとき、人はどうしても、自分の専門分野や得意な知識、経験に頼ります。

力を抜くと余白ができて、そこに意識の外にあった方法が入ってくる。 そういうことではないかと思っています。

働かないアリの話があります。アリの群れには、ほとんど働かないアリがいます。

北海道大学の研究では、アリは「どれくらいの刺激で働き出すか」の基準が、一匹ずつ違うことが分かっています。 普段は働かないアリも、よく働くアリが疲れると、代わりに必要な仕事を始めます。

シミュレーションと実際の観察から、働かないアリがいる群れは、短期的な能率は低くても、疲労がある状況では長く存続できることが示されました。

働かないアリは、群れを守る余白だったわけです。

私たちの頭の中にも、少し余白があった方がいいのかもしれません。


「心と体の力を抜く」という習慣は、私の人生にとって大きな転機となりました。 もちろん、頑張ってうまくいくこともありました。ですが人生には、「非まじめ」が必要なときがきっとあると思います。

前半の人生で学んだこと

一.変化のスタートは、力を抜くこと

心を落ち着けようとしても、うまくいかないときは、まず体の力を抜いてみましょう。

体の力を抜けば、心もゆるむ

二.自分を縛っているものを見つける

親や上司、時代から受けた影響は、簡単には消えません。だからこそ、いまも自分を縛っているものは何かに気づくことが、手放すための入り口になります。

私を縛っていたのは、母そのものではなく、母への怒りを手放せずにいた私自身でした

三.いつもと違う視点で問題を眺める

与えられた問いを、そのまま受け取らない。 問いを疑い、それでもやると決めたら、自分で引き受ける。

不真面目はやらない理由を探し、非まじめはやる理由があるかを考える

四.分かってから変わるまでには、時間がかかる

「愛か恐怖か」を知ったのは35歳。母を許せたのは50代。笑い方を思い出したのは58歳です。理屈で分かった瞬間に、人は変わりません。

「頭では分かっているのに、変われない」と自分を責めておられるなら、変化には時間がかかることを思い出してください。

理屈が先に着いて、感情はずっとあとから歩いてくる


心と体の力を抜くことから、私の探究の旅は始まりました。

壁に行き当たったときに、この第1章を思い出していただければ嬉しいです。そして、よかったら、いったん力を抜いてみてください。

心と体の力を抜く|第1の習慣を順に読み返すなら

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これまでの記事は、マガジン「70年かけて検証した――心と体、お金と人間関係、見えないもの」にまとめています。連載完結まで1年以上かかる予定ですが、週4回更新しています。


次回から、第2の習慣「よい食事と口腔ケア」に入ります。まず、私が栄養の重要性を認識した「自宅出産」の話です。


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