グレースケールからカラフルへ No.4~創作大賞2025 ファンタジー小説部門エントリー作品
第4章 迷い込んだ場所
朝から腹痛がする時もあれば、学校で腹痛がして帰宅することもあったが、午後まで学校にいることはなくなっていった。
家に居ても食欲はわいてこないので、芙美香はほぼ自室にこもっていた。腹痛があってもゲームにはなぜか集中できたのだ。最初腹痛を感じても、ゲームが始まり集中しているといつの間にか腹痛を忘れていた。
その日はゲームに集中すればするほど、いつも芙美香の手の中に納まっているゲーム機のコントローラーから感じたことのない振動を感じて集中できなくなる状態がくり返された。
不思議に思ってコントローラーを振ってみたり、ゲームおわるごとにパソコンを再起動したり色々試みたが、その症状は続き、そのうちその振動がある方がむしろ心地よく感じるようになった。
チャットで話しながら同じチームになった仲間達3人に、コントローラーのいつもと違う振動のことを聞いてみたら、
ミケ「私もそれ感じた!」
マリン「なんか変だよね!」
チョコ「うんうん、同じ!」
とみな同じようは状況だということが分かり、芙美香はみんなが一緒だったら、何かゲームのバグなのだろうと思っていた。あともう少しでその回のゲームが終わるという時のことだった。
雷のような音がしたと思ったら、感じたことのない衝撃が体中に走った。芙美香は目の前が真っ白になって、体は真っ二つに割れたのではないかと思うくらいの強い振動が頭のてっぺんから足先まで貫く感じがした。
「雷?外は確か晴れていたよね?なに?」
辺りを確かめようと思ったが、周囲がまぶしい光につつまれ、目の前は白っぽい明るい光以外何も見えなくなった。
芙美香は左手で目をこすり、当たりの様子を確認しようとしたが、何も見えない。そしてコントローラーは右手で持ち続けていたはずだったが、強い光でよく見えない。光りなのか霧なのか白一色で景色はまったく見えない。
「落ち着け、落ち着け」
芙美香は心の中でずっと唱えていた。すると光が薄れたのか霧が少しずつ晴れたのか、周りの景色が見えてきた。
「え、ここは?」
芙美香が辺りを見回すと、そこは、芙美香の部屋ではなく、さっきまで自分のパソコンのモニターで見ていたゲームの中の景色だった。
「そんなはず。。。ない」
どうやら、芙美香は地面にうつぶせに倒れているらしい。起きて立ち上がって周りを見回した。ゲームの陣地取りでカラフルなペンキがあちこちに塗られているが、辺りは静まり返っていた。ゲームは中断されているのだろう。
芙美香は右手にコントローラーを持っていると思ったが、今見るとゲームで使う武器だったことが分かった。
「うははーーー、この武器欲しかったんだよねー」
芙美香は右手でつかんでいる武器をうっとりと眺めていた。ライフルのように肩にのせて照準を合わせて引き金を引く。そうすると中に入った弾が相手に向かって飛ぶ。相手が倒れるとポイントが味方チームに入り、武器を使うと陣地を広げられ、弾の軌跡にペンキが塗られていく。2チームが反対側から弾を打ち、軌跡をペンキが追う。倒した相手のポイント数とそのペンキの面積の大きさを競うのだ。
そして確か同じチームには3人の仲間がいたはず、と思ったその時、
「誰かいるーーー?」
と声がした。
「ここにいるよーーー」
芙美香は大声を出して、自分の声の大きさにびっくりした。
「そういえば最近大きな声なんて出してなかった。ここは音が響く」
芙美香がそんなことを考えていると、
「おーい、こっちにもいるよーーー」
また別の声が聞こえた。芙美香は少なくとも自分以外にも、おかしな体験をした人物がいるのだと思い、念のため武器を持ったまま歩き始めた。もし、ゲームの続きが始まったらどこからか弾が飛んでくるかもしれない。芙美香は身を隠す建物の陰に隠れながら先ほどの声の主を探した。
「あ、『鉄仮面』みつけたー」
と声がして、ゲームで同じチームだった「ミケ」を見つけた。「ミケ」らしく三毛猫の帽子をかぶり、茶色い三つ編みで、白いTシャツにバックスキンの茶色いベスト、ブルーのホットパンツに茶色いカウボーイ風のブーツを履いていた。
「あ、ミケだ!初めましてだね」
と芙美香が答えた。芙美香はハンドルネームは「鉄仮面」だった。特に意味はないけど、中世の騎士が被っている鉄の甲冑が好きで、ゲームの中でもごつごつしたメタリックのヘルメットをかぶっていた。白いTシャツを着て首からは太い鎖のネックレスをぶら下げ、黒いスラックスと厚底の黒いブーツを履いていた。
「え、あんた女子なの?ずっと男子だと思ってたよ」
とミケは笑った。
「そういえば、ゲームの中では、男子のつもりだった」
と芙美香も笑った。そんな二人のところに、
「あーもしかして、『ミケ』と『鉄仮面』かなー?良かったよー誰もいないかと思った」
という声がして2人が振り返ると、ピンクのふわふわのニット帽をかぶり、ピンク色で長袖ミニスカートのワンピースに白いブーツを履いたハンドルネーム「マリン」がやってきた。
「あ、『マリン』だ。」
ミケと芙美香は同時に叫んだ。
「一体どうなっちゃったんだろうね。多分ゲームの中だよね。みんなアバターそのままだからすぐわかる。みんなちゃんと自分の武器もってるね、ってことはここからリアルでゲームが続くのかな?」
とミケが言った。
「うん、そうだね。でも他のメンバーはいないのかな?うちらのチームにもう一人『チョコ』がいたと思うんだけど、」
と芙美香が言った。
「私は結構歩いて来たけど誰もいなかったよ」
とマリンが言った。
「どうしよう。ここから出られないのかな?」
とミケが言った。
「うーん、わからないけど、みんなゲームをやっていてここに連れてこられちゃったんだよね。今日はやたらとコントローラーに衝撃が大きかったから変だなぁと思ったんだよね」
芙美香が言った。
「そうだね。確かにそうだった」
とミケもマリンも口々にいう。
「出口がないか探してみよう」
と芙美香が言って歩き始めると、ミケとマリンが付いて来た。
《ヒューン》
風を切る音がして、芙美香のすぐ目の前をかすめ、横の建物の壁に突き刺さった。
「びっくりした―」
芙美香が言うと、マリンが駆け寄って矢に巻き付いていた紙を取りながら言った。
「何かヒントが書いてあるかも。私こんなところにいるの嫌だもん。早く出口を見つけたい」
紙は丁寧に折りたたんで矢に結んであった。マリンが紙を広げながら読んでいたが、芙美香は矢が飛んできた方向が気になって、周囲を警戒し、持っていた武器を構えながらマリンの声を聞いていた。
「コノ世界ハ、秩序ガ乱レタ。本来アルベキデナイモノヲ3ツ探シ集メヨ」
3人はその紙を黙って見ていた。
「マリン、ちょっとその紙かしてもらってもいい?」
と芙美香が言うとマリンは紙を芙美香に渡した。紙を見ながら芙美香は2人に言った。
「よくわからないけど、矢が私たちめがけてきたってことは、ここにいるとまた矢が飛んできて危険かもしれない。どこか建物に入って安全なところで考えたほうが良くない?」
2人が賛成したので、すぐ横にあった黒い壁の四角い建物に赤いドアを見つけた。芙美香はドアノブに手をかけて引くと音もなくドアが開いた。芙美香が先に入り、マリン、ミケも続いた。
部屋の中は暗かったが、レンガ造りのような壁で、反対側に小さな窓があり、その下に机と椅子が置かれていた。入口の反対側には暖炉のようなものがあるが、火は燃えておらず暗かった。部屋の中央には質素な照明器具がぶら下がっていたが、電気はついていなかった。照明の下に小さなテーブルがあり入口を背に向けたハイバックの一人用の椅子があった。
「ようこそ。秩序が乱れた世界へ」
と老婆のしゃがれた声が聞こえ、頭にフードを被り、床まで届くような黒っぽいローブを着ている老婆が一人用の椅子からゆっくり立ち上がった。
「すみません、お邪魔します。勝手に入ってすみません!」
と芙美香が言った。
「あ、それは気にしないでいい。それより私の手紙を見てくれたかい?」
と老婆が言った。
「もしかして、この紙ですか?」
と芙美香が持っていた紙を老婆に持っていった。
「そう。これが私からの手紙。この世界は元々は静かな山間の村だったんだよ。でも、どういうわけか、ゲームの世界と繋がってしまったみたいで、武器を持った侵入者たちと村人の間で争いが起きることが多くなった。ゲームの世界とこの山のふもとにある村が切り離されれば元の静かな暮らしに戻ることができるんだが」
と老婆はため息をついた。
「どうしたらゲームの世界とこの村が切り離されるんですか?私もゲームをしていたんですが、ここに来てしまいました」
と芙美香がいうと、
「そう。私も色々調べましてね。そして3つの手がかりを見つけてくれる『外の勇者』に委ねるしかないということになった。手がかりというのは手紙に書いたように「あるべきでないもの」。でもそれ以上詳しい事はわかっていない。それを一緒に調べた村の長老もこのところの争いで大けがをしてしまった。命を縮めた事だろう」
と老婆が静かに言った。
「何か私たちにできることはあるんでしょうか?」
とミケが言うと、
「それをお前さん達3人で探してほしい。私らではもうお手上げで、やっとお前さん達を招くことができたというわけなんじゃ」
老婆は困ったように言った。
「そうですか。では私たちがここに来たのは、おばあさんが招いたからなんですね。とはいっても3つの手がかりはあまりなさそうですね」
と芙美香が言った。
「もしいえることがあるとしたら、それはただ一つ『自分の感覚に従う』こと。私は、お前さん達3人が必ずやってくれるという『自分の感覚』に従ってここに呼んだんじゃ。お前さん達も『自分の感覚』で例えば好きなことや得意なこと、気になって仕方ないことから先ほどの手がかりを探してほしい」
老婆は静かに答えた。3人はポカーンとして話を聞いていたが、どうやら、自分たちは手掛かりを探すため呼ばれたらしい、という事だけはわかった。おそらく、ヒントは老婆の言った「自分の感覚に従う」ことで、「好きなこと、得意なこと、気になること」で何かできないか考えるしかないというところまで理解した。
ミケとマリンと芙美香は互いに顔を見合わせた。
「実は、私、プログラマーなの。いつも仕事でストレスがあって、そのストレス発散のためにゲームをしていたんだけど、私ができることって、ゲームのプログラムを読むことかな、って思う。今パソコンがないからどうしたらいいかわからないけど」
とミケがまず最初に言った。
「パソコンならあるよ」
と老婆が割って入った。
「え?そうなんですか?じゃあお借り出来ますか?」
とミケがいうと、老婆は部屋の隅から埃をかぶったノートパソコンを出してきて言った。
「これは使えるかな?」
「わからないけどやってみます」
ミケは持っていた武器を床に置き、窓のそばにある机に老婆から受け取ったノートパソコンを置くと、主電源をコンセントに差し込みパソコンを開いた。老婆となにやら話しながら、作業を進めている。
それを見て、マリンが言った。
「呼んでくれたのはいいけど、私何かできることあるのかな?」
芙美香もマリンと同じ気持ちだった。マリンと芙美香はミケがパソコンに向かって何かやり始めた様子を尊敬のまなざしで眺めていたが、自分たちが何をしたらいいのか見当がつかなかった。
☆ドキドキしながら創作大賞に初エントリーします。もしよかったらスキやフォローお願いします💛
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