現代音楽は難しく聴こえるのか?

ウェーベルンの《弦楽四重奏のための6つのバガテル》作品9を聴き終えたあと、何を聴いたのか、うまく言えないことがあります。演奏によりますが、六曲を通しても四分ほどです。旋律を覚える前に一曲が終わり、何かをつかもうとしているうちに全曲が終わってしまいます。

それでも、あとに何も残らないわけではありません。弦の音が不意に現れて、すぐに消えた感じや、次の音までの長い間が残ります。四つの楽器が同じ場所にいながら、離れたところから交互に鳴るように感じることもあります。曲全体はつかめていないのに、その一音が気になって、もう一度聴きます。

ウェーベルン《6つのバガテル》を聴く
https://www.youtube.com/watch?v=WRHo-Prmc2Y

なぜこれほど難しく聞こえるのかと考えると、曲だけでなく、自分の聴き方にも理由がある気がします。私はベートーヴェンの交響曲やブラームスの室内楽を聴くとき、旋律の続きや盛り上がりを自然に待っています。どこで緊張が高まり、どう落ち着くのかを追いながら聴くことも多いです。もちろん、彼らの音楽もそれほど単純ではありません。それでも、その聴き方で曲の大きな流れに入れることが多いと思います。

同じつもりでブーレーズの《ル・マルトー・サン・メートル》を聴くと、私はすぐに迷います。声を追っていると楽器の音を聞き落とし、楽器に気を取られていると声の流れが分からなくなります。全体の形は、今でも一度ではつかめません。ただ、声が楽器の一部のように聞こえるところや、打楽器の一音が急に前へ出てくる瞬間には惹かれます。この曲を理解したとは言えませんが、「旋律が分からないから何も分からない」とも思わなくなりました。

ブーレーズ《ル・マルトー・サン・メートル》を聴く
https://www.youtube.com/watch?v=x2A30tJAH3s

作曲技法を覚えたからではありません。私の場合は、旋律以外にも気になるものが増えたからだと思います。

グリゼーの《パルシエル》では、冒頭の低い音のあとに別の楽器が重なり、響きの厚さや濁り方が変わっていくように聞こえます。私は倍音の仕組みをきちんと説明できません。それでも、澄んで聞こえた響きが次第にざらついていく変化なら追えます。作曲家が考えた構造と、私が聴いているものが一致しているとは限りませんが、曲全体の構成より先に、その変化が気になりました。いつの間にか、次にどんな旋律が出るかより、いまの響きがどうなるかを待っています。

グリゼー《パルシエル》を含む《音響空間》を聴く
https://www.youtube.com/watch?v=MXFdmyn45l8

ラッヘンマンのチェロ独奏曲《プレッシオン》は、音だけで聴いたとき、何をしているのかよく分かりませんでした。チェロがきれいに鳴らない時間が長い、とも感じました。ところが演奏映像を見ると、弓や指が楽器のさまざまな部分に触れる動きと、擦れる音、きしむ音、打つ音が結びつきます。それまで雑音のように聞こえたものにも、それぞれ違いがありました。私は映像を見たあと、音だけでも以前より聴きやすくなりました。

ラッヘンマン《プレッシオン》を見る
https://www.youtube.com/watch?v=hzXZZTWIz5E

ただ、ここから「現代音楽は音色や奏法を聴くものです」とまとめるのも違うと思います。ペルトの《フラトレス》や《タブラ・ラサ》では、私はむしろ、繰り返し現れる音型や、音が消えたあとの静けさに惹かれます。クルターグの《ヤーテーコク》にはごく短い曲もあり、鍵盤を強く叩いたり、触れるように鳴らしたりする動きが、そのまま曲の表情に感じられます。

同じ「現代音楽」の中に置かれていても、聴いて気になるところはそれぞれ違います。ブーレーズで迷う感じと、ペルトを聴いているときの静けさは、同じ言葉ではまとめにくいです。「現代音楽は難しい」という言い方だけでは、実際に何がつかみにくいのかまでは分かりません。

今でも、何度聴いてもつかめない作品はあります。単に自分には合わないと思うこともあります。背景や作曲技法を調べて、初めて聞こえてくるものもあります。ただ、曲の全体を説明できることと、実際に聴いて何かが残ることは、同じではないと思います。

私が繰り返し聴くのは、理解できた作品だけではありません。分からないまま聴いていても、ある一音だけが妙に気になることがあります。次に聴くと、前には気づかなかった間や響きが気になります。

現代音楽が難しく聴こえるのは、私の場合、旋律や大きな流れを探す自分の癖と、その作品で起きていることが、うまく合わない場合があるからだと思います。分からないままでも、次に確かめたい音が出てきます。私は、その感じがおもしろくて聴いています。

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