記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

沁みるセリフノート:『アドレセンス』より──「俺はジム用品のサイトを見てただけだ」

※本記事は Netflixドラマ『アドレセンス』の内容に触れています。

“I was only… I was only looking for something for the gym, weren’t I?”
── 俺はジム用品のサイトを見てただけだ。

Netflixドラマ『アドレセンス』エピソード4

ジェイミーが事件を起こす前、
「親として、もっとできたのではないか」と悔やむ母マンダに、
父エディが静かに返す一言だった。

スマホでスポーツグッズを少し検索しただけで、
“女の扱い方”だの、“男らしさ”だのを語る男たちが次々と現れる。
子どもが部屋で何を見ているかなんて、ずっと見張っていられない。

そのセリフは、事件の本質を鋭く照らしている。
有害な思想を育てたのは、誰かひとりではない。
──日常のアルゴリズムだ。

「本物の男になれ」と叫ぶ動画が、
“あなたへのおすすめ”として流れ込み続ける。
父はそれを苦笑まじりに眺め、
息子のタイムラインでは、それがいつのまにか“正義”へと変わっていく。

第2話で名前の挙がったアンドリュー・テイト。
あの象徴的な存在は、ここでも影のように漂っている。
マノスフィアを刺激する情報商材は、怒りと憧れを巧みに操り、
いまも世界中で巨額の利益を生み出している。
その言葉は、思春期の少年たちの孤独をやさしく撫で、
ゆっくりと支配へと変わっていく。

たった一度のクリック。
それが好奇心でも、ほんの“間違い”でも、
その瞬間から、動画は途切れなく押し寄せてくる。

人は選んでいるようで、
すでに“選ばされている”のかもしれない。
真実を見ているのか、
バイアスのかかった真実を見せられているのか。
クリックひとつで価値観が設計されていく時代。
AIはますます賢くなり、
人間はその影を追い続ける。
──振り回されているのは、大人も子どもも、たぶん同じ。

“I should’ve done better.”
── パパの力不足だった。

Netflixドラマ『アドレセンス』エピソード4

「もっとやれたはずだった」。
その言葉には、「もう間に合わなかった」という絶望も滲んでいる。

愛情だけでも、
「いい親」でありたいという努力だけでも、
子どもを守りきれない。
それが、いまの現実が抱える痛みなのだと思う。


最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
少しでも響くものがあれば、“スキ”で教えていただけるとうれしいです。

────
「沁みるセリフノート:アドレセンス」3回シリーズで、
物語の奥にひそむ“静かな揺れ”を、少しずつ辿ってみました。

よろしければ、ほかの回もあわせてどうぞ。

▶ 第1回 男子生徒たちの“ささやき”から始まったこと

▶ 第3回 父と子のあいだに流れていた、触れられない気持ち


いいなと思ったら応援しよう!

瑞稀あさ いただいたお気持ちは、これからの記事づくりの力になります。ありがとうございます。