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分担型判定(D&D5版用追加ルール)

【序文】

 こんにちにゃーん。セノにゃんです。
 今日はTRPGを遊んでてシナリオを作った時に「これは便利だ!」って思ったメソッドを紹介するよ。
 名付けて分担型判定! 複数の判定からプレイヤーキャラクターたちが自分の担当するものを選ぶタイプのミニイベントだ。気に入ったら君のシナリオやセッションにも取り入れてみてね!


【分担型判定の定義】

分担型判定の概要

 分担型判定とは、ゲームマスターが示した複数種の判定の中から、キャラクターたちがそれぞれどれを行うかをプレイヤーが選んで、各自の判定を行う形式のミニイベントである。
 通常の判定や集団判定との違いは、1つの判定に対してGMが指定した1人あるいは全員でダイスを振るのではなく、各人がそれぞれ判定を1つ選んでダイスを振っていくことだ。
 通常は、同一の判定を選べる人数には上限が存在する。また、結果的にどのキャラクターにも選ばれなかった判定が生じることになっても定義に問題はない。
 分担型判定の主旨は全員に何らかの行動をしてもらう事である。その場にいるのに何の行動もしないプレイヤーキャラクターがいる、というような事は原則的には推奨されない。(勿論、その上でなお必要性があって、判定に参加しないキャラクターが生じる事を認めるのは、GMやシナリオ制作者の権限と裁量の範疇だ)

メソッドの名称

 この判定メソッドの性質を的確に表す名称として、正式名称を「分担型判定メソッド(Assign and Roll Method)」と定める。
 しかし、より呼びやすさや語感を重視した他の名称候補も幾つか用意しておいた。好みで使い分けると良い。
アサイン型判定…上記の省略形。アサインは「分担させる」という意味。
コンフロント判定…コンフロントは「対峙する」という意味である。このメソッドの戦略性を強調するのではなく、この判定が冒険の中の見せ場である事を強調したい時に。
チャレンジ…この名称はソード・ワールドTRPGに登場する類似のメソッドから取り入れたものである。ただしD&Dの過去版には名称の似たメソッド(技能チャレンジ)が存在したため、古参プレイヤーからの誤解や混同を招く可能性がある。

★具体例:町での調査

 分散型判定が具体的にどんなものかを理解してもらうには、実際に具体例を見てもらうのが一番早いだろう。そこで以下に具体例を1つ用意した。

 冒険者パーティーが事件の謎を追って町で調査を始めた。
 この事件は複雑であるため、多角的な角度から調査することができるし、そうしなければ真相に辿り着けそうもない。
 そこで冒険者たちは手分けして同時並行で調査を進める事となった。
 GMは以下の判定の選択肢を示し、プレイヤー達には1人1つずつ判定を選んでダイスを振ってもらう。

分担型判定 ― 町での調査
a 町の人々に聞き込みをする … 【魅力】〈説得〉判定(難易度15)
b 裏路地で盗み聞きをする…【敏捷力】〈隠密〉判定(難易度16)
c 怪しい地区の目星をつける … 【知力】〈歴史〉判定(難易度13)
d 不審な足跡を追う … 【判断力】〈生存〉判定(難易度14)
e 魔法の使われた痕跡を追う … 【知力】〈魔法学〉判定(難易度14)
f 長時間の張り込みをする…【耐久力】判定(難易度13)

 このイベントでは冒険者たちは全ての判定に成功する必要はない。判定に成功するたびに情報が開示され、何種類の判定に成功したかによって後々の局面が冒険者たちにとって有利となる。事件の真相に迫る道筋は何通りも存在していると思ってもらいたい。
 なお、複数人が同じ判定を選んだ場合、2人以上が同じ判定に成功しても、1人が成功した時と同じ成果しか得られない(同じ判定の2人目以降の成功は無意味である)。この事件を解決するためには多角的な方面からの調査が重要なのである。

【分担型判定のルール】

分担型判定の大まかな流れ

 以下に分担型判定を行うための大まかな手順を示す。
 なお、分担型判定の基本的なルールをプレイヤーキャラクターに説明したい時は、手順1から手順3までの部分をコピーしてそのまま説明に使うことができる。

・手順0(シナリオ準備段階):シナリオ制作者は、「その分担型判定を行うキャラクターの人数+2」個程度の判定の選択肢を用意しておく。なるべくそれぞれ異なる内容の判定が望ましいが、少量なら内容が被っていてもあまり問題はない。(完全に内容が同じ選択肢は「この選択肢は最大何人まで選べる」といった注釈をつけて1つにまとめると良い)

・手順1:ゲームマスター(以下GM)はプレイヤー(以下PL)に、プレイヤーキャラクター(以下PC)が取る事のできる判定の選択肢を示す。それぞれの選択肢には、d20判定の種類と難易度が設定されている。時には失敗時のペナルティや成功時の個別報酬が同時に示される事もある。

・手順2:PLは相談の上で、どのPCがどの判定を行うかを決定する。特記無き限り、同じ選択肢を複数のPCが選ぶ事はできない。また、全員が何らかの選択肢を選ぶ必要がある。(逆に、誰も行わない選択肢があっても構わない。)

・手順3:各PCは判定を行い、その結果を処理する。判定や結果処理の順番はGMが任意に決めて指示してよい。

【分担型判定の作成方法】

選択肢の数の目安

基本は参加人数よりも少し多めに

 選択肢の数はその分担型判定に参加するキャラクターの総数+1~2個程度をひとつの目安とする。自分は現在のところ、人数+2を基本としてシナリオを作っている。
 プレイヤーキャラクターの人数よりも選択肢の方を多めに設定するのは、プレイヤー側に積極的な選択の余地を持たせるためである。
 とはいえ、これはシナリオ制作者の考え方次第だ。よりプレイヤーたちを悩ませたい! という場合は、選択肢の数をプレイヤーキャラクターの人数ぎりぎりにして、誰かは苦手な判定をしなければならないように仕向けるのも1つの手だ。

応用編:複数人が挑戦可能な選択肢

 「この選択肢は最大何人まで選べる」と注釈をつけて、複数人が選んでもよい選択肢を作っても構わない。その場合は全体の選択肢の数は少な目にしてもよいだろう。

応用編:必須の選択肢

 上記とは逆に、ある選択肢をパーティーのうち誰か最低1人は選ばなければならない、というパターンも考えられる。
 しかし、これをやりすぎると「そもそもこれは分散型判定じゃなくて代表者1人の判定で処理した方が話が早いのでは?」と本末転倒な事になってしまう可能性もあるため、乱発は推奨されない。
 筆者はシナリオのシチュエーション上「この作業を担当する人がいないと変な事になるな」といった違和感が生じてしまう場合にのみ使用している。(カレー作るのに誰も…火の番を…していないのである……!じゃ困るでしょ?)

選択肢に設定すべき項目

・判定の種類

 分担型判定の選択肢には、攻撃ロール、能力値判定、セーヴィング・スロー、どれでも設定してよい。また選択肢の中にさらに複数種の判定を設定することもできる。いずれにせよ、状況に即した判定を設定する方が良い。
例:「【判断力】〈知覚〉判定」「イニシアチブロール」「近接攻撃ロール」「〈説得〉【魅力】または〈ペテン〉【魅力】」

・判定の難易度

 判定の難易度(目標値)も当然決める必要がある。
 慣れているGMの方々はパッと決める事ができるだろうが、この記事ではGM慣れしていない方々を置いてけぼりにするつもりはない(なにしろ皆さんがGMをやりやすくするためにこの記事を書いてるんだから!)。なのでこの項目では計算の目安も紹介する。
 基本的には以下の判定基本難易度の計算式を使った上で、それぞれの判定の行いやすさ(キャラクターがその判定に習熟していたり有利を得られる可能性)や、失敗時/成功時のリスク/リターンに応じて多少上下させるとよい。

判定基本難易度 = (判定を行うキャラクターのレベル÷2)+このセッションに参加しているプレイヤーキャラクターの総数+8

※もしプレイヤーキャラクターと同様に選択肢を選んで判定を行う味方NPC(ノンプレイヤーキャラクター)がいるなら、便宜上その人数もプレイヤーキャラクターの総数に加えることを推奨する。

2024年版対応ルール:「ダンジョンズ&ドラゴンズ2024年版」や「フィフスエディションRPGアドバンス」のデータを用いて作成されたキャラクターについては、判定基本難易度にさらに+2する。これはこれらの版が従来に比べて多くの種類の能力値判定にプレイヤーキャラクターが対応しやすいバランス設計になっているためである。

・難易度調整の要点
 一般的には【耐久力】が高いキャラクターはそこそこ多いが、【耐久力】能力値判定には対応する習熟技能が存在しない点に注意すること。
 筆者の知るかぎり、プレイヤーたちに特に人気のある技能は〈隠密〉〈捜査〉〈知覚〉〈説得〉あたりだ。これらの技能はキャラクター作成時に習熟することを選ぶプレイヤーが多いため、判定の難易度を多少高くしておいても、キャラクターが成功する公算は大きい。
 逆に〈医術〉〈芸能〉〈歴史〉あたりは普段のシナリオで大活躍するような場面が少ない。また〈威圧〉〈手先の早業〉〈ペテン〉技能は、その性質上、失敗時にリスクが生じやすく、使いこなすのがちょっと難しいというハンデを負っている技能と言える。このような技能を使う判定は、難易度を少し下げるようにすると、良い調整となるだろう。
 他にも、君のいるTRPGコミュニティの中で人気のある技能と不人気な技能を調べてみると、より良い難易度調整ができるだろう。

・判定成功時に得られるもの

 判定に成功した時にキャラクターが得る利益。
 個人報酬とする必要はなく、「成功数に応じてシナリオ上の利益がある」という形でも問題ない。(もちろん「失敗したらダメージを受けるイベントで、成功したら被害を回避できるだけであり特にキャラクターが利益を得られるわけではない」といったケースも考えられる)
 また、「判定に5以上の差で成功した時の追加報酬」(大成功報酬)を設定するのもよいだろう。金貨や財宝、ポーションなどのアイテム、珍品奇品などを発見する、あるいはブレス呪文の恩恵を一定時間得られる、追加の経験値がもらえる、といった嬉しい報酬があれば、プレイヤー達は喜んで分担型判定に挑戦するようになるだろう。
 選択肢ごとに異なる報酬がある場合、分担型判定の戦略性は増すことになる。「この成功報酬は欲しいから、他の選択肢よりも成功率は低いけれども、挑戦するべきか?」といった選択の余地が発生するためだ。
 なお、こちらの別記事にて大成功報酬の例を掲載している。参考にしてみてもいいだろう。

・判定失敗時のペナルティ

 分担型判定メソッドには、判定に失敗したプレイヤーキャラクターがダメージを受けたり悪い状態になってしまうなどのペナルティを各選択肢に対して設定することもできる。この項目は必須ではないが、あるとプレイヤーに緊張感を与えることができるだろう。
 ペナルティを失敗した際に必ず発生させるようにする必要もない。「判定に5以上の差で失敗した時」(大失敗ペナルティ)といったように、判定そのものの成功とペナルティが発生する基準値とを分けても構わない。
 もし設定したペナルティが大きすぎるものになった場合、GMは失敗したキャラクターに適切な種類と難易度のセーヴィング・スローを行わせて、その結果次第ではペナルティを回避または軽減できるということにしてもよい。

ペナルティ回避セーヴの基本難易度 = (判定に失敗したキャラクターのレベル÷2)+10

 なお、こちらの別記事にて失敗時ペナルティの例を掲載している。参考にしてみてもいいだろう。

・選択肢の表題

 判定というものは単にサイコロを振ってキャラクターシートに書かれている数字と足し合わせるだけの行為ではない。その判定をするキャラクターが、ロールプレイ上では何をすることになるのかを分かりやすく表すタイトルをつけること。
例:「門をこじ開ける」「離れた敵を攻撃する」

【分担型判定の活用法と利点】

キャラクター全員に活躍の場を与える

 ある出来事を単純に一つの判定だけで解決する場合、その判定が得意な者しか活躍できないことになる。そのような事が続くと、活躍できないキャラクターを使っているプレイヤーは退屈してしまったり嫌気がさしてしまうかもしれない。
 その点、分担型判定は、より多くの種類の判定を用意することで、どのキャラクターにも活躍の機会を与えられる可能性が高くなる。
 例えば上の実例「町での調査」を見て欲しい。様々な能力値・技能での判定が用意されている事に気づくだろう。
 もし「【知力】8、【判断力】8、【魅力】8、常に着てる鎧は隠密不利のデメリットつきです!」な脳筋重戦士がパーティーにいても、調査のあいだ不貞寝しててもらう必要はない。そいつには選択肢fの【耐久力】判定を担当してもらえばよいのである。

セッション時間の短縮

 プレイヤー全員に用意した判定の全部をしてもらうという方法でも、キャラクター全員に活躍のチャンスが回って来ることは回って来る。
 しかし、プレイヤー全員がダイスを振って結果を確認する事を何度も繰り返せば、セッションにかかる時間が必要以上に伸びてしまうだろう。特にオンラインでテキストチャットでセッションをしている場合、問題はより深刻になる。多数のダイスが振られることでチャットのログが流れてしまい発言を追いづらくなるという副次的な問題も発生する。
 これらの問題点を、分担型判定では、1つの判定を行えるのを1人に制限することで軽減している。分担型判定なら、ダイスロールの総量は全員が1回ずつ判定を行った場合と変わらずに済むのである。
 分担型判定は、過去に発案された凝った判定メソッドのような「判定甲に成功すると判定乙の成功率が高まる」といった複雑な計算も必要としないため、セッションの進行スピードも早くなる。(もちろん、そういう凝ったギミックが好きならば、分担型判定には比較的簡単にそれを組み込む事もできる。このメソッドの拡張性は極めて高い!)
 また、この記事の終盤部分およびこちらの別記事「戦闘チャレンジ」では、この強みを活かしたさらに挑戦的なアイデアも紹介している。戦闘1つをまるごと分担型判定だけで済ませてしまう案である。

複雑な状況を分担型判定で処理する

 通常の判定(集団判定も含む)は、単純な状況に対するプレイヤーキャラクターの解決策として1種類の判定をゲームマスターが示し、キャラクター1人または全員がそれを行う。それに対して分担型判定は、1種類の判定1発で解決するようなものでない、より複雑な状況を扱うのに適している。

 君のパーティーのローグが扉の鍵を開けようとしていると敵の兵士に発見されてしまった! しかもその敵は高台に現れて弓を射かけてくる。どうする? といった複雑な状況を、複雑なマップやマップギミックを考慮した戦闘バランスを入念に考えずとも、技能判定と同じ要領の簡単な難易度計算によって比較的速やかに判定を用意してセッションを進行できる。
 扉の鍵を開けて避難場所を作る、遠隔攻撃で敵を倒す、崖をよじ登って敵に取りつく、回復や防御の呪文で味方を支援する、「おいウィザード! なんとかしろ!」……キャラクターによってその時に取る行動は異なるだろう。それを見越したそれぞれの判定を、分担型判定メソッドを心得ていれば比較的簡単に用意できるし、プレイヤーのアイデアを即興で取り入れて、それに応じた判定をその場のアドリブで追加する事だって(慣れたGMなら)可能だ!
 筆者の書いた別記事「戦闘チャレンジ」では、こうした様々な状況を盛り込めるより具体的な仕組みを解説している。

 この記事内でも既に幾つかの応用形(基本形からの改変)が示されているように、分散型判定は応用性が非常に高いメソッドである。シナリオ制作者の好みやGMの取り回しやすさに応じていくらでもアレンジ可能で、シナリオやセッションで生じる様々な状況に適応できるだろう。

判定に戦略性をもたらす

 分担型判定には「誰にどの判定を分担してもらうか?」という戦略性が存在している。単にGMが指示した判定をプレイヤーがするのと比べて、プレイヤー側に考える必要が生じるため、プレイヤーはより深くセッションにコミットする(※片手間や数合わせや暇潰しなどではなく、より深い意味でセッションに参加してゲームを堪能してもらう)ことになる。
 多くの場合、プレイヤーキャラクターたちは「誰がどの判定を得意としているか?」を足がかりに相談を進めてくれることだろう。これだけでも「皆で協力して問題解決方法を考えている感覚」を比較的短時間で味わってもらうことができる。
 さらに、ここでGMが提示する選択肢を上手く調整することで「一番得意な判定ではなく二番目や三番目くらいに得意な判定を、誰かが引き受けなければならない」とか「この選択肢は成功時のリターンも大きいけど失敗時のペナルティも大きい。どうしようか?」といった戦略性を、望むだけゲームに加えることもできる。このメソッドには、いくらでも奥深く拡張できる余地があるのだ。
 その上で、分散型判定はある程度の簡便さを持つ。言い換えれば、分担型判定はゲーム性と時間管理とのバランスを比較的自由に調整できるやり方なのである。

【分担型判定の使いどころ】

戦闘以外でやりごたえのあるイベントを用意したい時

 戦闘のルールがしっかりしているRPGによくあることだが、戦闘以外の場面の印象が薄くなってしまう問題はたびたび生じる。特に物語のクライマックスが戦闘ではないようなシナリオの場合、最も重要な場面が判定1発で終わってしまう、というのは物足りないものだ。
 そんな時に分担型判定ルールを用いたシナリオとすれば、プレイヤーたちはゲーム中の選択や自分のキャラクターの得意分野での判定を存分に楽しむことができるだろう。
 そもそも、筆者がこの分担型判定を思いついたきっかけは、シナリオのクライマックスが非戦闘シーンとなった際に、技能判定1発で重要なところの全てが決まってしまうのは味気ないと思ったためである。そこで、筆者がカレー大会のシナリオを作った際に、これまでに集めてきた食材を使ってカレーを作ってもらう判定を、調理道具を用いた判定一発ではなく、調理工程を「水を運ぶ(【筋力】判定)」「食材を切る(【敏捷力】判定)」「スパイスを調合する(【判断力】判定)」など幾つもの判定に分解した上で、プレイヤーキャラクターたちに分担してもらうようにしたのだ(むろん、調理道具習熟者にはそれなりのボーナスは与えた)。この試みは上手く行き、遊んでもらったプレイヤー達にも好評だった。
 なお、上述のカレーを作るパートを整理・一般化したものを別記事「料理パート(D&D5版 判定イベント用テンプレート)」にて公開している。興味のある方はそちらも参考にして欲しい。

戦闘を簡略化したい時

 正式な戦闘ルールでゲームを進めるとセッションをするための時間が足りない、あるいは戦闘ルールで処理するにはモンスターの数が多すぎる、といった事態はよくある話である。
 そんな時、分担型判定のルールを使うことにより、短時間で戦闘イベントを終わらせる事が可能となる。

 特に前座との戦いのくだりを速やかに終わらせて、シナリオの中心となるボスとの戦いに注力したい時に、このメソッドは有用だ。

 また、普通の戦闘ルールでは処理が非現実的になってしまうような複雑な戦闘シーンを作る事もできる。100人単位の部隊が衝突する合戦の中をプレイヤーキャラクターたちが駆け抜けるといった大規模戦闘も、実際に100体とか1000体とかのキャラクターを動かさずとも分担型判定を使うことで表現可能となるのだ。

 そして、分担型判定のメソッドを用いれば「セッションの進行が予定よりも遅れてしまって、戦闘パートを行う時間がない!」といった緊急事態にも対応可能だ。
 特に単発シナリオをしていて次にプレイヤーたちといつ予定が合うか分からないような場合、戦闘パートを中止して無理やりエンディングに入ってしまうよりも、分担型判定で戦闘を表現してプレイヤーキャラクター達にそれぞれの活躍の機会を与える方が、皆喜んでくれることだろう。この場合、プレイヤーキャラクターが強力な呪文や1日1回のみの特徴などを使ったなら、GMは惜しみなく判定に有利やボーナスを与えるのが良い。
 ちなみに、筆者が実測してみたところ、分担型判定ルールを使った戦闘が初めてのプレイヤーに対して、この方法によって、フルテキストセッションにて合計25分で敵対的なクリーチャーとの遭遇イベントを終了させることができた。もし普通の戦闘だったら1時間近くかかりそうだったところ、所要時間を半減できた計算になる。
 以下の実践例がそれである。

★実践例:ランダム式戦闘チャレンジ

これは2026年7月25日0時45分から1時10分までの間に行われた、ダンジョンズ&ドラゴンズの戦闘遭遇を筆者が分担型判定のメソッドを用いて処理した最初のケースである。

(0:45)GM:ゲームマスター(GM)が示す複数種の判定の中から、プレイヤーキャラクター(PC)は自分がどの判定を担当するかを決めてから各人の判定を行う

(0:45)GM:ということでちょっと今判定の内容をランダムに決めるぜ

(0:49)GM:今回の選択肢はこれだ。(基本難易度は17)
他の人と同じ選択肢を選ぶことはできない。

a 離れた位置の厄介な敵を倒せ!:60ft(18m)遠くの敵に対する任意の攻撃ロール(射程に注意すること)
b 乱戦を制せ!:5ft(1.5m)以内の敵に対する任意の攻撃ロール
c 戦線を維持せよ!:【耐久力】判定。装備している盾のACボーナスを達成値に加えることができる。
d 冬狼たちと上手く連携せよ!:【判断力】〈動物使い〉判定(言葉が通じるなら【魅力】〈説得〉判定でも可)
e 敵の猛攻をかわせ!:【敏捷力】〈軽業〉
f 敵の不意を討て!:【敏捷力】〈隠密〉または【魅力】〈ペテン〉。ただしいずれにせよ難易度は基本値から+1

ちなみに失敗するとダメージなどのペナルティを受ける。あと達成値が高いとなんらかの恩恵を得られたりするぜ!
分担を決めてどうぞ! 
1人1種やればOK(ちなみに全部の判定をする必要はありません。勝利への道すじは何通りもあるのだ)

(0:50)PL4:不意を討ちます 隠密で
(0:50)PL1:判定の用意が早い! 盾も足せるし耐久力判定、使ってよいならガイダンスな感じです
(0:51)PL3:離れた位置の敵に狐火を飛ばしに行こう [note筆者注:エルドリッチ・ブラストのこと]
(0:52)PL2:近距離攻撃ロールですかね
(0:52)GM:ガイダンスはできないが そうだな。
1Lv以上の呪文を使って挑む場合は、呪文発動レベルを達成値に足せる。
たとえば攻撃ロールの判定に攻撃呪文を使うとかね。
[note筆者注:ガイダンスを不可としたのは、通常は戦闘中に使っても有効な場面がそう多くはない呪文であるためである。もし「敵を突き飛ばせ!」などの選択肢だったなら、ガイダンスを呪文高速化と組み合わせれば有効と裁定しただろう。また、ファイアーボールなどの攻撃ロールを行わないでダメージを与える呪文を使っても、呪文レベル分のボーナスを得た上で攻撃ロールをしてもよい、という裁定もするつもりであった。(今思えば、高レベル帯での冒険を考慮すると、ボーナスの量は呪文レベルの半分(端数切り上げ)くらいの方がゲームバランスは取れると思われる)]

(0:54)PL2:ダメもとで、DMに相談。【弊PC】がシールド切ったら+5できませんかね?
(0:55)GM:まあシールドも+1扱いとするし、そもそもあれ対象自分だからな
[note筆者注:この質問はPL2がPL1(戦線を維持する)を助けようとして行った質問である。シールド呪文を使うとリアクションを消費してしまうため術者は機会攻撃ができなくなり、戦線を維持する手段としては本末転倒感もある。とはいえ、今回の敵が浸透戦術を行うほど頭の回る敵だとする必然性もなく、PLのアイデア出しの意欲を積極的に認めたいGMの思惑と、PLの言い得ではなく有限なリソースを切る必要があるという点を鑑みて、ここでは前言の追加ルール通り呪文レベル分だけのボーナスを与える裁定としている。]

(0:55)PL3:【ホームブリューのサブクラスの特徴】を使ったことにして有利を得ることはできますか?
(0:55)GM:ボーナスアクションのバフはOK
(0:56)PL1:相手の命中判定にデバフを与えるBAで目標値の低下は見込めます? タンク判定ですし。>担当
(0:56)GM:OKとしよう。

[note筆者注:この後、プレイヤー各位が判定を行い、ロールプレイをしている間に、GMは失敗者へのペナルティと達成値が高かった者への追加報酬をランダム決定し、それらの結果を発表する。]

(1:10)GM:君たちは猟兵団を制圧!

(発言者名や発言の一部には匿名化・一般化を施してある。また、読者が理解しやすいように説明に必要のない会話をカットしていたり、この記事を書く際に書き加えた注釈も含まれている。)

 なお、上記の分担型判定を作成する際に用いたランダム表はこちらの記事「戦闘チャレンジ」で公開している。興味のある人はお見逃しなく!

【あとがき】

謝辞

 実は、上記の戦闘チャレンジを筆者が思いついたきっかけは、ダンジョンズ&ドラゴンズではない。
 筆者がソード・ワールドTRPGを遊んでいた時に、特にボス敵でもない前座的な魔物の襲撃を短時間で処理するために、分担型判定に類似した形式のメソッド(あちらのシステムでは「チャレンジ」と呼ばれていた)が登場したのだ。
 これは自分にとって衝撃的で、自分がファンタジーTRPGに対して持っていたある種の固定観念を良い意味で破壊してくれた。自分も似たようなメソッドのアイデアをそのシナリオに触れる前から持っていたが、非戦闘の場面でしか使っておらず、戦いの場面に応用するという発想は全く持っていなかった。
 考えてみれば、戦いを必ずしも戦闘ルールで処理しなければならない必要性はどこにもない。参加者皆が納得するのであれば、TRPGはどこまでも自由なゲームなのである。
 素晴らしいメソッドを考案して世に提示した株式会社SNE、そしてそもそも豊かなTRPG文化の土台を作ってくれたダンジョンズ&ドラゴンズのゲームデザイナー、両者に改めて敬意と感謝の意を表明したい。
 そして、この記事を読んでくれた君たちTRPGerには感謝と激励の言葉を送る。読んでくれてありがとう。この記事が君たちの何かのヒントになったら幸いです。これからもTRPGを楽しんでください。にゃーん!

関連記事リンク

・戦闘チャレンジ(D&D5版 判定イベント用テンプレート)

・料理パート(D&D5版 判定イベント用テンプレート)

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