
零跑B10、スペインで正式生産開始――Stellantisとの協業が欧州販売から現地製造へ
[メンバーシップ限定]零跑汽車(Leapmotor)は2026年10月12日、パリ国際モーターショーで、コンパクト電動SUV「B10」のスペイン現地生産を正式に開始したと発表した。
生産拠点はスペイン・サラゴサ工場で、株主でもある欧米自動車大手Stellantis(ステランティス)との協業によるもの。零跑は今回の生産開始を、欧州市場における現地化戦略の重要な節目と位置付けている。
同社は2024年に初めてパリ国際モーターショーへ出展した。それから2年。欧州向けの製品ラインアップを拡充し、販売・サービス網を構築してきた零跑が、今度は欧州域内での自動車生産に踏み出した。
今回の発表で重要なのは、新型車の欧州初公開ではない。
中国で開発した電動車を欧州へ輸出し、Stellantisの販売網を通じて販売するという段階から、Stellantisの製造基盤も活用して欧州で生産する段階へ移行したことである。
零跑が掲げる「在欧洲为欧洲(欧州で、欧州のために)」という戦略が、具体的な生産活動として動き始めた。

B10、スペイン・サラゴサ工場で正式生産開始
今回の零跑の公式発表で、最も重要な一文は次の部分である。
「零跑B10已在西班牙萨拉戈萨工厂正式投产」
零跑B10がスペイン・サラゴサ工場で正式に生産を開始した、という意味である。
これまでの生産計画や準備段階から進み、零跑自身が正式な生産開始を宣言した。
零跑によれば、サラゴサ工場ではStellantisグループが持つ製造経験と生産体系を活用し、欧州市場向けの完成車を生産する。
ここで注目すべきなのは、Stellantisが単に販売・流通を担うだけでなく、生産面でも零跑の欧州事業を支える存在となったことである。
ただし、今回の発表には、生産能力や初期生産台数、現地調達率などの具体的な数字は示されていない。
また、零跑はStellantisとの協力による工場整備を説明しているが、既存工場のどの設備を活用しているのか、新設ラインや専用設備の範囲はどこまでなのかについても詳細は明らかにしていない。
したがって、今回確認できるのはB10の正式生産開始であり、量産規模や現地生産の深度については今後の開示を待つ必要がある。

中国車の欧州展開が、輸出から現地製造へ
零跑の欧州戦略を理解するうえで、Stellantisとの協業は欠かせない。
中国の自動車メーカーが欧州市場へ進出する場合、一般的には中国国内で生産した完成車を輸出し、現地の販売代理店や自社販売網を通じて販売する。
しかし、この方法では輸送費、輸入関税、物流期間、現地サービス体制などが事業拡大の制約となり得る。
零跑はStellantisとの提携を通じ、こうした欧州進出の仕組みそのものを変えようとしている。
Stellantisが持つ欧州の販売・サービス網を利用するだけでなく、今回のB10では製造体系も活用する。
中国側は電動車の商品開発、電池・電動化技術、コスト競争力を提供し、欧州側は既存の製造設備、生産管理、販売・サービス基盤を提供する。
両社の強みを組み合わせることで、中国の新興メーカーが欧州市場で事業を拡大するための基盤を整える構造である。
零跑にとっては、欧州で一から工場や販売網を整備する場合とは異なる成長経路となる。
一方、Stellantisにとっても、中国で開発された電動車を自社の欧州事業基盤へ取り込むことができる。
今回のB10生産開始は、こうした協業が販売段階にとどまらず、実際の製造活動にまで及んだことを示している。

「欧州で、欧州のために」を掲げる意味
零跑は今回の発表で、「在欧洲为欧洲」という言葉を用いた。
欧州で生産し、欧州の消費者に提供するという現地化戦略である。
この表現は、単なる現地生産の説明以上の意味を持つ。
中国メーカーの海外進出では、輸出台数や販売国数の拡大が注目されやすい。しかし、海外市場で継続的に事業を運営するには、現地の需要に対応する商品、安定した供給、販売・整備サービス、そして地域ごとの規制や産業構造への対応が必要となる。
零跑は、欧州での販売網拡大と並行して、生産活動も現地へ移すことで、こうした事業基盤を強化しようとしている。
今回のパリ国際モーターショーでは、零跑科技創業者の朱江明氏と零跑国際CEOのダニロ・アンネーゼ(Danilo Annese)氏が登壇した。
アンネーゼ氏は、継続的なイノベーション、現地化の深化、消費者ニーズに基づく電動モビリティの提供を、今後の欧州展開の重要な方向性として示した。
つまり、零跑が目指しているのは、単に中国車を欧州で安く販売することではない。
欧州市場に根差した商品供給とサービス体制を整え、継続的に事業を拡大できるメーカーになることである。
