
問界、2027年秋の欧州進出を正式発表――SERES康波氏がパリで語った「Huawei後」の高級ブランド戦略
[メンバーシップ限定]賽力斯(SERES)傘下の高級スマートEVブランド「問界(AITO)」は2026年10月12日、パリモーターショーで、2027年秋に欧州市場へ正式参入すると発表した。
会場には問界M6、M7、M8、M9に相当する海外向け名称「AITO 6」「AITO 7」「AITO 8」「AITO 9」の4車種を展示。SERES集団の董事・副総裁である康波(Clifford Kang)氏が登壇し、欧州進出に向けた安全認証、運転支援技術の現地適合、販売後のサービス体制、ブランド戦略を説明した。
今回の発表が重要なのは、単に問界の欧州進出時期が決まったからではない。
9月15日、問界は華為(Huawei=ファーウェイ)鴻蒙智行(HIMA)との協業モデルを変更し、商品定義、商品設計、ブランドマーケティング、販売チャネル、サービス体系をSERESが主導する新体制へ移行すると発表していた。
9月18日のCHINA CASEでは、この変更を「Huaweiが売る車」から「SERESが経営する高級ブランド」への転換と位置付け、次の問界発表会で誰がブランドを語るのかに注目した。
その約1カ月後、パリで欧州戦略を説明したのはSERESの康氏だった。
Huaweiとの技術協業を維持しながら、SERESが問界のブランド経営と海外展開を前面に立って担う。今回のパリ発表は、その新しい役割分担が具体的な市場参入計画として表れた最初の重要な機会となった。
2027年秋に欧州市場参入、時期を初めて明示
9月の段階で、SERESは問界の海外展開を進める方針を示していた。
康氏は当時、問界を高級車ブランドとして海外市場へ展開する考えを説明し、10月のパリモーターショーへの出展を予告していた。
今回、その構想が具体的な日程へと進んだ。
問界は2027年秋に欧州市場へ参入すると正式発表した。
会場で披露したのは、AITO 6、AITO 7、AITO 8、AITO 9の4車種である。
いずれも中国国内で展開している問界のSUVシリーズに対応する海外向け名称となっている。
ただし、今回の公式発表では、最初に販売する国、発売車種、価格、販売目標、現地生産計画などは明らかにしていない。
4車種を展示したことと、4車種すべてを2027年秋に欧州で発売することは同義ではない。
現段階で確定したのは、問界が2027年秋を欧州市場への正式参入時期と定め、そのための認証と現地化を進めているということである。
欧州WVTAを基礎に、Euro NCAP 2026の5つ星を目標
今回の公式発表で、問界が最初に説明したのは安全性と法規対応だった。
問界は、欧州連合の車両型式認証制度であるEU Whole Vehicle Type Approval(WVTA)への適合を基礎として、欧州市場向けの商品開発を進めている。
さらに、Euro NCAPの2026年評価基準において、最高評価の5つ星を獲得することを目標に掲げた。
ここで注意したいのは、5つ星の獲得を発表したわけではないという点である。
あくまでも、欧州向け車両開発における目標として示されたものである。
問界は今回、「安全こそ最大のラグジュアリー」という考え方を強調した。
高級車として欧州市場へ進出するにあたり、内装や快適装備だけではなく、欧州の安全基準への適合をブランド価値の中心に置く姿勢である。
中国国内での高級車販売実績だけでは、欧州の消費者に対する信頼の証明にはならない。
そのため、欧州で広く認知されている第三者安全評価を目標として明示したことには意味がある。
運転支援と駐車支援も欧州向けに再調整
今回、技術面で特に注目すべきなのが、運転支援機能の現地適合である。
問界は、欧州の道路環境、運転習慣、生活様式に合わせて、車両全体のローカライズを進めると説明した。
その一環として、パートナー企業と協力し、インテリジェント運転支援と駐車支援の機能を欧州の道路条件や走行場面に合わせて調整しているという。
中国国内で問界の商品競争力を支えてきた重要な技術の一つが、Huaweiの乾崑ADSをはじめとする運転支援システムである。
しかし、中国国内で蓄積した走行データや運転支援機能を、そのまま欧州へ持ち込めるわけではない。
道路標識、交通規則、運転習慣、駐車環境、法規制などが異なるためである。
今回の発表では、運転支援と駐車支援を欧州向けに調整することが明確に示された。
ただし、欧州仕様で採用する具体的なシステム構成、Huaweiの担当範囲、利用可能な機能、現地での走行検証規模などは公表されていない。
9月の協業モデル変更では、SERESがブランド経営を主導する一方、Huaweiの最新技術を引き続き活用すると説明していた。
今回の欧州展開では、その技術を誰が現地仕様へ適合させ、誰が認証と顧客対応の責任を負うのかが、今後の重要な確認事項となる。
部品供給から診断まで、欧州サービス網を構築
問界は今回、欧州向けのサービス体系についても説明した。
現地のパートナー企業と協力し、車両診断、モビリティサービス、交換部品の供給、専用顧客サービスチームを含む体制を構築するという。
これは、9月の協業モデル変更と直接つながる部分である。
従来のHIMAモデルでは、Huaweiが商品企画だけでなく、販売やユーザーサービスにも深く関与していた。
しかし、新体制では問界の販売チャネルとサービス体系をSERESが主導する。
中国国内でSERESが問界専用の販売・サービス網を整備するのと並行して、海外でもSERESがブランドとしての顧客接点を構築していくことになる。
高級車の海外販売では、納車後の修理、部品供給、保証、ソフトウェア更新、故障診断などがブランドへの信頼を大きく左右する。
とりわけ問界のように、電子制御やスマート機能を商品価値の中心に据えるブランドでは、販売後の技術対応が重要になる。
今回の発表は、欧州で車両を販売するだけでなく、保有期間全体を支えるサービス体制を整える方針を示したものといえる。
ただし、販売店数、サービス拠点数、部品倉庫の所在地、提携先企業など、具体的なネットワーク計画はまだ示されていない。