
中国、自動車の高速開発に「二冬一夏」の安全検証――隠しドアハンドル禁止、サプライヤー任せも認めず
[メンバーシップ限定]中国工業情報化部、公安部、生態環境部、国家市場監督管理総局の4部門は2026年10月10日、自動車製品の革新的設計と研究開発・試験検証に対する管理を強化する通知の意見募集稿を公表した。
今回の規制案は、全隠蔽式ドアハンドルや折り畳み式・フレキシブルディスプレイの禁止だけではない。ゼログラビティシートや回転シートの走行中使用制限、物理操作部品の確保、音声による車両操作の制限、運転支援・自動運転ソフトウェアの実車検証など、近年の中国車が競って採用してきた革新的な設計を広く対象としている。
さらに、完成車の環境適応性検証には1年以上、厳寒期・高温期・厳寒期を通過する「二冬一夏」を要求。信頼性検証では3万km以上の走行試験を求める。
注目されるのは、完成車メーカーがサプライヤーの検証報告書をそのまま信用することを認めず、自社の責任で重要なソフトウェア・ハードウェアの検証を実施するよう求めていることである。
中国では、新エネルギー車(NEV)やスマートカーの急速な普及とともに、新技術の採用や新車投入の速度が競争力となってきた。反面、品質や耐久が疎かになっているものもあるのではないか、つまり「速成車」問題も勃発した。
今回の規制案は、その速度を一律に否定するものではない。しかし、新しい技術をどれだけ早く採用できるかだけでなく、その安全性を誰が、どのような試験で、どこまで立証したのかを問う内容となっている。
2027年1月1日から新規申告車種への適用を予定し、既に製品公告を取得した車種についても2027年7月1日までに関連資料の補充を求める。
なお、現段階では意見募集稿であり、正式な規制として確定したものではない。
4部門が問題視した「新車投入の追随競争」と検証不足
今回の文書は「自動車製品の革新的設計および研究開発・試験検証に関する管理業務をさらに強化する通知(意見募集稿)」である。
本文冒頭では、中国の自動車産業で技術革新が活発化し、新技術の車載採用や製品の更新速度が加速していることを評価している。
その一方で、一部メーカーが流行を追って新製品を投入し、試験検証が不十分となる問題が発生していると指摘した。
これは単なる技術的な問題ではない。
中国では、新しい車載機能や内装構造が市場で注目されると、競合メーカーが短期間で類似機能を採用することがある。
ゼログラビティシート、回転シート、大型ディスプレイ、電動ドア、特殊形状のステアリングなどは、いずれも商品差別化の要素となってきた。
しかし、これらは同時に、乗員保護、衝突安全、故障時の対応、長期間使用した場合の耐久性などを検証する必要がある。
今回の通知は、こうした革新的設計の安全性と、製品開発全体の試験検証を分けて管理する構成となっている。
附属文書には、51項目の追加技術パラメータ、革新的設計の技術ガイド、研究開発・試験検証の技術規範が用意された。
全隠蔽式ドアハンドルを明確に禁止
革新的設計に関する技術ガイドでは、全隠蔽式ドアハンドルの装備を禁止することが明記された。
ドアハンドルに新しい設計を採用する場合には、極端な環境下での機能安定性、緊急時の操作性を十分に検証し、機械的な冗長構造と手を掛けるための操作空間を確保するよう求めている。
関連する技術要件として、国家標準GB 48001「自動車ドアハンドル安全技術要求」が挙げられている。
中国では、車体表面と一体化したドアハンドルが、NEVを中心に広く採用されてきた。
空気抵抗の低減や外観デザインの面では利点がある一方、衝突事故や電源喪失時に車外からドアを開けにくくなる問題が指摘されている。
今回の規制案は、単に電動式ドアハンドルを問題視しているわけではない。
緊急時に機械的な操作が可能であること、実際に手を掛けられる空間が存在することを重視している。
ただし、禁止対象は「完全に隠れてしまう」ものであり、すべての格納式・半隠蔽式ドアハンドルが一律に禁止されるという意味ではない。
折り畳み式・フレキシブルディスプレイも禁止
車載ディスプレイについても、明確な制限が示された。
技術ガイドでは、センターコンソールのエンターテインメント画面、大面積ディスプレイ、複雑なヘッドアップディスプレイなどについて、運転安全への影響、極端な環境下での機能信頼性、衝突安全性を評価するよう求めている。
そのうえで、折り畳み式ディスプレイとフレキシブルディスプレイの採用を禁止すると明記した。
中国のスマートカーでは、車載ディスプレイの大型化や多画面化に加え、可動式、収納式、変形可能な構造などが提案されてきた。
こうした装備は、車内の娯楽機能やユーザー体験を差別化する手段となる。
しかし、自動車では、画面の視認性だけでなく、衝突時の乗員への影響、構造物の固定状態、極端な温度環境下での信頼性なども問題になる。
今回の規制案は、デジタル機器としての新規性だけでは、自動車への採用を正当化できないという考え方を示している。
物理ボタンを要求、音声による操作にも制限
今回の規制案は、車内の操作系にも踏み込んでいる。
タッチ操作や感圧式ボタンなど、従来の物理ボタンを代替する仮想操作部品については、操作の信頼性、誤操作防止、操作結果のフィードバックなどを評価するよう求める。
さらに、灯火、ワイパー、デフロスター・デフォッガーなど、運転安全に関係する重要機能について仮想操作を採用する場合、物理的な操作部品も併設することを要求している。
非常脱出装置、緊急制動装置、駆動システムの電源遮断装置などについても、物理操作部品と目立つ表示を備える必要がある。
これは、車両の主要機能を大型タッチスクリーンに集約する設計に対して、安全上重要な操作手段を確保するよう求めるものである。
また、音声やジェスチャーによる新しい操作方式についても、制限が設けられる。
走行中、運転手以外の乗員が音声などによって、デフロスター、ヘッドライト、ワイパー、ドア、ボンネットなどを直接操作できないようにすることが要求されている。
音声アシスタントそのものを禁止するわけではない。
問題となるのは、誰が、どのような状況で、安全上重要な機能を操作できるかという権限管理である。
スマートキャビンの機能が高度化するほど、単に自然な対話ができるだけでなく、操作権限や誤認識時の安全対策が重要になる。