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理想汽車、電池セルから充電網まで自社開発を統合――Power Dayで明らかになった電動化戦略

    [メンバーシップ限定]中国の理想汽車(Li Auto)は2026年10月20日、電動技術発表会「Power Day」を開催し、独自開発の電池・電動駆動・充電技術を統合した「連山」技術体系の全容を発表した。

    今回の発表は、単に新型電池の性能や超急速充電能力を紹介するものではない。電池の材料設計からセル、電池パック、駆動用半導体、モーター、充電設備、クラウドによる安全監視までを一体的に開発し、電気自動車の利用体験そのものを変えるという構想である。

    発表では、5C超急速充電への対応、レンジエクステンダーEV(REEV)の純電動航続距離430km、BEVの航続距離780km、電池の長寿命化、駆動効率の改善、全国4,200カ所を超える独自充電ネットワークなど、多岐にわたる技術成果が示された。

    特に注目されるのは、理想汽車が電池やモーターを個別の部品としてではなく、車両、充電設備、クラウドまで含めた一つのシステムとして最適化している点である。

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    5年をかけて構築した「連山」、電動化技術を全面的に自社開発

    理想汽車はもともとREEVを主力として成長してきたメーカーである。しかし、BEVへの展開を進めるなかで、電池容量や充電速度だけでは解決できない課題に直面した。

    充電を速くすれば電池の発熱や劣化が問題となり、航続距離を延ばすために電池を大型化すれば重量や車内空間に影響する。さらに、車両側の性能を向上させても、充電設備が不足していたり、充電開始に時間がかかったりすれば、利用者の利便性は改善しない。

    理想汽車は、こうした課題を個別の技術改良だけで解決するのではなく、システム全体の設計を見直す方法を選んだ。

    開発には約5年を費やしたという。

    2024年には、パートナー企業と共同で開発した5C超急速充電電池を大型BEV「MEGA」に搭載し、10分間の充電で500km分の航続距離を補充する技術を実用化した。

    今回の「連山」は、その後に進めてきた独自開発技術を電池から駆動システム、充電ネットワークへと拡張したものである。

    ただし、理想汽車がすべての材料や部品を自社工場で生産するという意味ではない。材料、構造、制御技術などを自社で設計し、重要部品については自社製造も進めながら、外部パートナーとの協力を継続する形である。

    5C超急速充電と長い航続距離を両立、REEVで430km、BEVで780km

    連山電池の主要な開発目標は、充電速度と航続距離を両立させることである。

    一般に、リチウムイオン電池の急速充電性能を高めるには、電極内部でリチウムイオンが移動しやすい構造が必要となる。しかし、イオンの移動経路を広げると、電極内部でエネルギーを蓄えるための空間が減少する場合がある。

    理想汽車は、この相反する要求を材料から電池パックまでの設計変更によって解決しようとした。

    特に負極には、表面側でイオンが移動しやすく、内部側ではエネルギー密度を確保できるようにした「勾配型細孔構造」を採用した。

    電極内部の細孔を一様に設計するのではなく、位置によって構造を変えることで、急速充電性能とエネルギー密度の両立を図る。

    発表された主な性能は次の通りである。

    • REEVの純電動航続距離:最大430km

    • BEVの航続距離:最大780km

    • 充電性能:5C超急速充電に対応

    • 冬季航続距離:従来比で30km改善

    • 電池寿命:8年または16万kmで健全度75%以上を目標

    430kmと780kmは、それぞれ異なる車両区分の航続距離であり、同一車両が430kmから780kmへ性能向上したという意味ではない。

    また、これらの数値は理想汽車が公表した設計・試験上の性能であり、実際の航続距離は車種、走行条件、気温などによって変化する。

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    正極・負極・電解液を再設計、急速充電による劣化を抑制

    連山電池では、セル内部の材料構成にも大幅な変更を加えている。

    正極には、リチウムイオンが出入りしやすい表面構造の制御や、イオン伝導性を高める被覆技術を導入した。

    電解液では、低粘度と高いイオン伝導性を両立する設計を採用した。さらに、電極と電解液の界面に形成される保護膜について、初期形成と使用中の修復を組み合わせる二つの配合技術を用いている。

    負極では、イオンの移動経路を改善するとともに、電極内部の空隙構造を最適化した。

    理想汽車が重視するのは、急速充電そのものよりも、急速充電を繰り返した場合の寿命である。

    発表会では、5C超急速充電対応セルについて、2,000回の充電サイクル後も容量低下を20%以内に抑える設計性能が紹介された。

    一方、実際の車両では、充放電による劣化だけでなく、時間経過に伴う劣化も発生する。

    そのため理想汽車は、セル単体のサイクル性能とは別に、車両として8年・16万km使用した場合でも電池健全度75%以上を確保することを設計目標として示している。

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    電池の発熱を材料と冷却構造の両面から抑制

    5C超急速充電では大電流が流れるため、電池内部の発熱を抑えることが重要となる。

    理想汽車は、新世代の5C対応三元系セルについて、従来の2C対応セルと同じ5C相当の大電流条件で比較した場合、温度上昇を12℃低減できると説明した。

    さらに電池パックには、セル底面の冷却板に加え、正極・負極端子付近を直接冷却する構造を採用した。

    端子付近は電流が集中しやすく、発熱が大きくなる部分である。そこに冷却機構を追加することで、単に冷却面積を増やすだけでなく、発熱の大きい場所を重点的に冷却する。

    発表会では、この冷却構造によって熱交換効率を約30%向上させ、セル間の温度差を5℃以内に抑える技術が説明された。

    また、AIと電気・熱の物理モデルを組み合わせ、電池表面の温度センサーだけでは直接把握できないセル内部の温度分布を推定する技術も導入した。

    理想汽車によれば、温度推定の対象範囲をセル内部全体に拡張し、従来方式に比べて推定精度を80%改善したという。

    これは、AIを単なる車載アシスタントではなく、電池の熱管理という車両の基礎性能に組み込む取り組みである。

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    電池底部への500Jの衝撃、熱暴走時の延焼防止を強化

    電池の安全性についても、理想汽車は複数の新技術を紹介した。

    まず、車体底部に配置される電池パックについて、路面の突起物や落下物などによる衝撃を想定した保護構造を採用している。

    電池パックの底面には、高強度アルミニウム合金、衝撃吸収材、冷却板、緩衝空間などを組み合わせた多層構造を設けた。

    発表会では、150Jの衝撃に耐える基準との比較として、500Jの底部衝撃を受けても発火しない性能を確保したと説明した。

    さらに、電池セルの熱暴走が発生した場合に、周辺セルへの延焼を防ぐための対策も強化した。

    セル間には高性能の断熱材を配置し、高温ガスを排出する機構、緊急冷却、高電圧回路の絶縁対策などを組み合わせている。

    理想汽車によれば、50℃の高温環境で単一セルに熱暴走が発生した場合でも、電池パック全体で24時間以上、外部への火炎発生を防ぐ性能を確認したという。

    これは熱暴走そのものが発生しないという意味ではなく、異常が発生した際に被害の拡大を防止するための設計である。

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    車両・充電設備・クラウドを統合、AIが電池の異常を早期検知

    連山の特徴は、電池の安全管理を車両内部だけで完結させない点にもある。

    理想汽車は、車両、充電設備、クラウドを接続する独自の安全監視システムを開発した。

    車両側では、電池管理システム(BMS)が300項目以上の安全保護機能を実行し、電池の電圧、電流、温度などを監視する。

    充電設備側では、車両との通信を通じて電池の状態を分析し、充電のたびに異常の兆候を調べる。

    クラウド側では、製造時から蓄積されたデータと使用中のデータをAIで分析し、潜在的な故障リスクを予測する。

    発表では、充電時の安全検査について、次の数値が示された。

    • 潜在的な異常の検査項目:1,710項目

    • 異常原因を分析する観点:206

    • AI診断モデル:43種類

    • 充電設備による詳細検査:累計5万回超

    • クラウドによる重大リスクの早期警告:最大72時間以上前を目指す

    1,710項目という数字は、単純に1,710個のセンサーを搭載するという意味ではない。車両から取得したデータを複数の診断モデルで分析する仕組みである。

    理想汽車は、電池の製造段階から使用段階までのデータを長期間保存し、個々の電池の状態を継続的に追跡する方針を示した。

    電池の安全管理が、車両内部のBMSだけでなく、充電ネットワークとクラウドを含む継続的な監視へと拡張されている。

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    急速に進む中国のCASE(Connected&Cabin,Autonomous,Shared&Service,Electric)やAIについての最新情報。2018年から1日1本以上のレポート配信。毎朝8:00日刊中国モビリティレポートと適時号外レポート

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