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マツダ、中国をグローバル電動車の開発・供給拠点に――統合報告書2026、長安との協業を経営戦略に位置付け

    [無料]マツダが2026年10月20日に公表した「統合報告書2026」は、電動化・知能化への対応と収益力の回復を両立させるため、従来の自前主義から脱却し、外部企業との協業を経営戦略の中心に据える方針を明確にしている。

    2030年までの電動化投資額は、従来想定していた約2兆円から約1.2兆円へ見直した。投資額を約40%圧縮しながら、ハイブリッド車、BEV、次世代エンジン、SDVなどへの対応を進める。

    その実行を支える重要な協業先の一つが、中国の長安汽車である。

    CHINA CASEは10月13日、長安マツダの2026年1~9月輸出台数が3万3160台に達し、すべてEZ-6とEZ-60の2車種で構成されていることを報じた。

    今回の統合報告書は、この輸出拡大が単なる中国合弁企業の事業転換ではなく、マツダ本体のグローバル電動車戦略と一体化した動きであることを示している。

    統合報告書2026の中心は「ブランド価値経営」と投資の選択・集中

    今回の報告書でマツダが経営の中心に置いたのは「ブランド価値経営」である。

    販売規模の拡大そのものを目的とするのではなく、マツダならではの価値を評価する顧客に選ばれ続けることで、持続的な成長と収益力の向上を目指す。

    マツダは自社の独自価値を「走る歓び」や「ひと中心」の開発思想に求めている。

    ただし、今回の報告書で重要なのは、こうしたブランド理念を掲げるだけでなく、それを実現するための投資構造を見直している点である。

    電動化、ソフトウェア、知能化、自動運転、コネクティビティなど、自動車メーカーが対応すべき技術領域は急速に拡大している。

    世界販売台数が年間約122万台のマツダが、すべての技術を独自に開発し、大手メーカーと同じ規模で投資を続けることは容易ではない。

    そこでマツダは、汎用的な技術基盤や規模の経済が必要な領域では外部企業との協業を進め、自社ならではの価値を生み出せる領域へ経営資源を集中させる。

    今回の報告書は、マツダが自動車メーカーとして何を自社で担い、何を協業先に委ねるのかという分業の考え方を、経営戦略として整理したものといえる。

    電動化投資は約2兆円から約1.2兆円へ、約40%削減

    最も具体的な変化は、2030年までの電動化投資計画である。

    マツダは従来、最大約2兆円規模の投資を想定していたが、今回の報告書では、2026年5月12日の決算発表と同様、ビジネスパートナーによる投資も含めた総額を約1.2兆円へ最適化したと説明している。

    削減幅は約8000億円、率にして約40%である。

    マツダはこれを、単なる投資削減ではなく、投資の質を変え、投下資本の効率を高めるための構造転換と位置付けている。

    電動化が急速に進む市場には協業による商品を投入する一方、ハイブリッド車の拡充、次世代エンジン、SDV(ソフトウェア定義車)の基盤整備などにも経営資源を配分する。

    ここで重要なのは、マツダがBEVだけに経営資源を集中させるのではなく、市場ごとの需要に応じて複数のパワートレインを使い分ける方針を維持していることである。

    ただし、投資額の圧縮そのものが競争力の向上を意味するわけではない。

    投資を減らしながら必要な商品を開発できれば成功だが、その代償として技術的な選択肢や開発能力が失われれば、将来の競争力に影響する。

    協業先の技術をどこまで活用し、マツダ自身がどの領域の開発能力を維持するのかが重要になる。

    「ライトアセット・協業戦略」はSDVにも適用

    マツダは今回、電動化だけでなく、SDVや知能化についても自前主義に固執しない方針を明示した。

    報告書23ページでは、SDVに必要となる膨大なソフトウェア領域について、協業や共創を通じて基盤を効率的に開発し、マツダ独自の技術開発に経営資源を集中させると説明している。

    協業先としては、中国の長安汽車に加え、トヨタなどとの取り組みも紹介されている。

    トヨタとの協業では、E/Eアーキテクチャ、ADAS、電動パワートレインなどが対象に含まれる。

    つまり、マツダは単一の協業先にすべてを依存するのではなく、技術領域や市場に応じて複数のパートナーを活用する戦略を採用している。

    この方向性は、開発投資の効率化という点では合理的である。

    一方、中国の自動車市場では、AIモデル、車載ソフトウェア、運転支援、データ活用などが商品競争力の重要な要素になっている。

    こうした領域で外部技術を利用する場合、マツダがどの部分を独自に開発し、何によって他社との差別化を実現するのかが課題となる。

    「走る歓び」という従来の価値を、AI・SDV時代の具体的な商品体験へどう結び付けるかが問われる。

    長安汽車との協業は、中国市場対策からグローバル戦略へ

    今回の統合報告書で、CHINA CASEとして特に注目したいのが中国事業の位置付けである。

    報告書81ページのASEAN・中国販売責任者メッセージでは、中国について、世界最大かつ競争の激しい市場であるとしたうえで、マツダにとって販売市場としての役割にとどまらないと説明している。

    さらに、中国で培った電動化・知能化への対応力をグローバルに展開し、各地域との相乗効果を生み出す方針を明示した。

    この記述は重要である。

    従来、日本の自動車メーカーにとって中国合弁企業の主要な役割は、中国市場向けの商品を生産・販売することだった。

    日本側が開発した技術や商品を中国市場へ適合させ、中国で製造・販売するという構造が中心だったのである。

    しかし、長安マツダの新世代電動車では、その流れが変化している。

    長安汽車の電動化・知能化技術を活用し、中国で共同開発・製造した車両を、マツダのグローバル販売網を通じて欧州などへ供給する。

    中国が単なる販売先ではなく、グローバル商品の開発・生産を担う拠点となっている。

    今回の統合報告書は、この構造をマツダ本体の経営戦略として明確に位置付けたものと読める。

    1~9月輸出3万3160台、長安マツダの役割はすでに変化

    この経営戦略の変化は、実際の輸出データにも表れている。

    CHINA CASEが10月13日に報じた易車掲載データによれば、長安マツダの2026年1~9月輸出台数は3万3160台だった。

    車種別では、MAZDA EZ-6が1万3492台、MAZDA EZ-60が1万9668台である。両車種の合計は長安マツダ全体の輸出台数と一致する。

    つまり、少なくとも今回の易車掲載データでは、長安マツダの輸出事業は、新世代電動車のEZシリーズ2車種によって構成されている。

    さらに、比較可能な1~8月の累計では、長安マツダ全体の輸出台数が2万6460台だったのに対し、中国国内の終端販売台数は2万2227台である。

    輸出が国内最終販売を4233台上回った。

    特にEZ-6は、1~8月の輸出が1万992台だったのに対し、中国国内の終端販売は879台にとどまった。

    EZ-60も、輸出1万5468台に対し、国内終端販売は4843台だった。

    これらの数値はマツダ統合報告書の記載ではなく、CHINA CASEが先に分析した易車掲載データによるものである。

    また、輸出台数は中国からの出荷を示すものであり、海外市場での最終販売台数と同じではない。

    それでも、中国国内での販売実績だけでは長安マツダの事業全体を評価できなくなっていることは明らかである。

    今回の統合報告書が示すグローバル協業戦略は、すでに中国からの輸出という具体的な事業活動に結び付いている。

    EZ-6とEZ-60、中国で生まれた商品を世界へ

    この変化は、2024年からの経緯を振り返るとさらに明確になる。

    2024年4月、マツダは北京モーターショーでEZ-6を発表した。

    当時の説明では、長安汽車との協業による新世代電動車を投入し、中国市場での事業を反転攻勢に転じさせることが中心だった。

    その後、EZ-6は欧州市場向けのMAZDA6eとして商品化され、2025年9月から欧州で販売を開始した。

    第2弾のEZ-60についても、欧州・豪州市場向けのCX-6eとしてグローバル展開が進んでいる。

    今回の統合報告書では、EZ-6/MAZDA6eが2026年の「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」を受賞したことにも言及している。

    また、長安マツダの生産工場について、マツダ生産方式を採用する海外工場の中で、ICE、BEV、PHEVを混流生産する唯一の工場であると説明している。

    2026年5月には、欧州、豪州、タイのマネジメントやディーラー関係者計75人が長安マツダの工場を訪問した。

    これらは、中国で開発・生産された車両を海外市場へ展開するための体制が、商品開発だけでなく、生産や販売の面でも構築されていることを示す。

    中国合弁企業の役割が、国内販売を中心とするものから、グローバル商品を供給するものへと広がっている。

    中国市場を捨てたわけではない――EZ-60のLiDAR版にも注目

    ただし、長安マツダの輸出拡大を、中国国内市場からの撤退と捉えるのは適切ではない。

    CHINA CASEが10月13日の記事で指摘したように、長安マツダは中国国内ではEZ-60のLiDAR搭載版を積極的に訴求している。

    中国市場では、高度運転支援が商品選択の重要な要素となっており、LiDARの採用や都市NOAへの対応は競争力に直結する。

    一方、欧州などの海外向けモデルについては、中国国内向けと同じ高度運転支援仕様がそのまま採用されるとは限らない。

    市場ごとに求められる機能、法規制、価格競争力が異なるためである。

    ここで注目すべきなのは、長安マツダが輸出事業を拡大しながら、中国国内市場に向けた商品競争力の強化も進めていることである。

    輸出が事業を支える規模に成長したからこそ、中国国内では知能化技術を重視した商品展開を進める余地が広がる可能性もある。

    もっとも、輸出事業の収益が国内向け商品の開発にどの程度寄与しているかは確認できない。

    長安マツダが輸出と中国国内販売の両方をどのように成長させるのかは、今後の重要な観察点である。

    収益力の回復はこれから、営業利益率1%から5%以上へ

    マツダの協業戦略には、明確な経営上の背景がある。

    2026年3月期の売上高は4兆9182億円、営業利益は516億円だった。

    売上高営業利益率は約1.0%である。

    前期の営業利益1861億円、営業利益率3.7%から大きく低下した。

    グローバル販売台数は122万2531台であり、マツダが世界的な巨大メーカーと同規模の研究開発投資を続けることは難しい。

    今回の報告書では、2027年までに構造的な原価低減1000億円、固定費の効率化1000億円、合計2000億円規模の改善を目指す方針を示している。

    さらに2030年度には、売上高7兆円、営業利益率5%以上、ROE10%以上を目標としている。

    こうした数値目標を見ると、ライトアセット・協業戦略は単なる開発手法の変更ではない。

    投資負担を抑え、固定費構造を改善しながら、収益力を回復させるための経営改革である。

    長安汽車との協業による電動車のグローバル展開も、その改革を構成する重要な取り組みの一つと位置付けられる。

    ただし、長安マツダの輸出台数が増加していることと、マツダ本体の収益力が改善していることは同義ではない。

    輸出車の利益率、共同開発費用の負担、海外販売会社との取引条件などは、今回の資料からは明らかではない。

    輸出拡大がどの程度利益に貢献するのかは、今後の業績を通じて検証する必要がある。

    中国の技術を使いながら、マツダ独自の価値をどう残すか

    今回の統合報告書が示す戦略には、合理性と課題の両方がある。

    合理的なのは、限られた経営資源をすべての技術領域へ分散させず、外部企業の技術を活用して商品開発の効率を高めることである。

    中国の長安汽車との協業は、その具体例となっている。

    一方、課題となるのは、協業先の技術への依存が進むなかで、マツダがどのように独自の競争力を維持するかである。

    電動化や知能化の技術が進化するにつれ、競争の中心は車両の基本性能だけでなく、ソフトウェア、AI、運転支援、車内体験などへ広がっている。

    マツダは「走る歓び」や「ひと中心」を自社の価値として掲げている。

    しかし、中国メーカーもすでにデザイン、乗り心地、運転支援、スマートコックピットなどを組み合わせた商品競争を進めている。

    マツダに求められるのは、協業先の技術を採用するだけでなく、それを独自のブランド価値へ変換する能力である。

    同時に、技術の中核をどこまで理解し、自社で判断できる状態を維持するのかも重要になる。

    これは長安汽車との協業に限らず、トヨタなどとのSDV・ADAS開発にも共通する課題である。

    長安マツダの輸出拡大は、マツダ全体の構造改革を映している

    2024年、長安汽車との共同開発によるEZ-6は、中国市場での反転攻勢を担う商品として登場した。

    2025年にはMAZDA6eとして欧州市場へ展開し、2026年にはEZ-60をベースとするCX-6eの海外展開も進んだ。

    そして2026年1~9月、長安マツダの輸出台数は3万3160台に達した。

    今回の統合報告書は、こうした変化を、マツダ本体の経営戦略の中で理解するための資料となっている。

    電動化投資を約40%圧縮し、ライトアセット・協業戦略によって開発効率を高める。

    自社独自の価値を生み出す領域へ経営資源を集中させる一方、電動化・知能化の技術基盤には外部企業との協業を活用する。

    中国では長安汽車との共同開発によって新世代電動車を商品化し、それを世界市場へ供給する。

    これらは別々の取り組みではなく、一つの経営戦略としてつながっている。

    CHINA CASEが10月13日に報じた長安マツダの輸出企業化は、その戦略が実際の事業構造に表れ始めたことを示す事例といえる。

    ただし、輸出拡大だけで戦略の成功が確定したわけではない。

    今後は、海外市場での最終販売、収益性、中国国内での販売回復、そして電動化・知能化におけるマツダ独自の開発能力が問われる。

    中国でつくったマツダ車を世界へ売るという変化は、すでに始まっている。次に問われるのは、中国の技術を活用することで、マツダ自身がどれだけ強い自動車メーカーになれるかである。

    それが、今回の統合報告書と長安マツダの輸出実績を結び付けて見えてくる、最も重要な論点である。

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    急速に進む中国のCASE(Connected&Cabin,Autonomous,Shared&Service,Electric)やAIについての最新情報。2018年から1日1本以上のレポート配信。毎朝8:00日刊中国モビリティレポートと適時号外レポート

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