
米軍、嘉手納基地へのBYD車乗り入れを禁止――日米韓中で異なる車載データ規制、軍事施設の安全保障に新たな課題
米国は中国関連の車載システムを市場から排除、日本・韓国は販売を認め、中国は重要データの国外移転を厳格管理
[無料]2026年10月23日、米軍は沖縄県の嘉手納基地について、中国BYD製車両の乗り入れを26日から禁止する方針を明らかにした。米軍側は安全保障上のリスクを理由としているが、具体的にどの車載機能や情報管理上の問題を懸念しているのかは説明していない。
今回の措置は、日本国内でのBYD車の販売や一般道路での走行を禁止するものではない。米軍が管理する基地内部への車両のアクセスを制限するものである。
一方、BYD車の販売が日本より進んでいる韓国では、在韓米軍が現時点で同様の規制を導入していないことを明らかにした。ただし、韓国軍の施設では、中国製コネクテッドカーの入構実態が国会で問題視されている。
今回の問題を考えるうえで見落とせないのが、車両の収集データに関する各国の制度の違いである。
米国は、中国・ロシアと関係する車載通信・自動運転システムを国内市場から段階的に排除する。一方、日本と韓国は中国製コネクテッドカーの一般販売を認めており、車両データの国外移転も一定の条件下で可能である。
これに対して中国は、軍事施設周辺の情報や道路環境などを含む重要な自動車データについて、国内保存を原則とし、国外移転を厳格に管理している。
同じコネクテッドカーでも、どの国で走るかによって、販売の可否、取得データの管理、国外移転、軍事施設への立ち入りに関する条件が大きく異なる。
嘉手納基地の措置は、こうした制度の違いを改めて浮き彫りにした。
嘉手納基地、10月26日からBYD車の入構を禁止
10月23日、米空軍第18航空団の報道官は、嘉手納基地へのBYD車の乗り入れを禁止する方針を認めた。
ロイター通信の直接取材に対し、報道官のアリ・ストーマー中佐は、BYD車が基地の隊員と任務に対して、受け入れがたく、軽減できないリスクをもたらすとの認識を示した。
禁止措置は10月26日から実施される予定である。
米軍側は安全保障上のリスクを理由としているものの、具体的な技術的根拠は明らかにしていない。
車載カメラ、センサー、位置情報、通信機能などが懸念の対象になり得るが、米軍がどの機能を問題視しているのか、あるいは複数の要素を総合的に評価したのかは確認できない。
また、BYD車が嘉手納基地の機密情報を実際に収集し、中国などへ送信したという事実が確認されたわけでもない。
したがって今回の措置は、情報漏えい事件への対応ではなく、米軍が特定の車両について基地へのアクセスを認めないという予防的な判断である。
米国防総省、6月にBYDを中国軍関連企業のリストへ
今回の措置に先立ち、米国防総省は2026年6月、BYDを中国軍との関係があると判断する企業のリストに追加していた。
BYDはこの指定に異議を唱えている。
ただし、国防総省による企業指定と、嘉手納基地の乗り入れ禁止は、制度上は別の措置である。
中国軍関連企業のリストに掲載されたことが、そのまま米軍のすべての施設への乗り入れ禁止を意味するわけではない。
今回の嘉手納基地の判断が、この指定をどの程度根拠としているのかについても、公開された説明からは確定できない。
重要なのは、米国が中国企業との安全保障上の関係を問題視する政策を進めるなかで、実際の軍事施設における車両利用にも制限が生じたことである。
基地内への乗り入れは禁止、周辺の一般道路は対象外
今回の措置には明確な境界がある。
BYD車が禁止されるのは嘉手納基地への乗り入れであり、基地周辺の一般道路を走行することではない。
しかし、基地周辺の走行が禁止されていないからといって、米軍が周辺走行には安全保障上のリスクがないと判断したわけではない。
基地内部に入った車両は、外部から見えない航空機、施設、設備配置、関係者の移動などを記録できる可能性がある。
これに対し、基地周辺の一般道路から取得できる情報は、原則として外部から観測可能な範囲に限られる。
両者では、取得できる情報の性質や機微性が異なる。
さらに、米軍は基地への入構条件を管理できる一方、日本国内の一般道路について、基地管理権限だけで特定メーカーの車両の通行を一律に禁止できるわけではない。
つまり、今回の措置は車載センサーによる情報収集の可能性を全面的に排除するものではなく、米軍が直接管理できる区域へのアクセスを制限するものである。
米軍が基地周辺を走行するBYD車について、どのようなリスク評価を行っているかは公表されていない。
横須賀、横田、岩国などへの拡大はあるのか
次の焦点は、嘉手納基地の措置がほかの在日米軍施設へ広がるかどうかである。
横須賀海軍施設、横田基地、岩国基地、佐世保基地なども、重要な軍事設備や作戦活動を抱えている。
車載カメラや通信機能による情報収集を問題視するのであれば、嘉手納基地と共通する安全保障上の論点が存在する。
ただし、10月24日時点で、これらの施設がBYD車の乗り入れ禁止を正式に決定したという情報は確認できない。
今後、米軍全体の共通基準が導入されるのか、それぞれの基地が個別に判断するのかも明らかではない。
嘉手納基地で禁止されたことをもって、在日米軍のすべての施設でBYD車が禁止されたと解釈することはできない。
在韓米軍は規制変更なし、韓国軍では入構実態が問題化
韓国では、BYD車を含む中国製乗用車の販売が日本より進んでいる。このため、嘉手納基地の措置が在韓米軍にも広がるかが注目されている。
在韓米軍は10月23日、韓国メディアの問い合わせに対し、基地へのアクセスと安全保障措置を継続的に見直していると説明した。
そのうえで、現時点では入構方針の変更について発表するものはないと回答している。
したがって、キャンプ・ハンフリーズなどの在韓米軍施設で、嘉手納基地と同様の禁止措置が導入された事実は確認できない。
一方、韓国軍の施設では、中国製コネクテッドカーの入構実態が国会で問題となっている。
10月7日には、韓国国防部の資料に基づき、中国製コネクテッドカー135台が軍施設への入構登録を受けていたと報じられた。
内訳は、軍関係者の所有車両118台と、配送・工事・検査などに使用される業務車両17台である。
さらに、海軍施設では、入構登録されていない中国製コネクテッドカーによる入構記録も確認された。
10月16日には、別の国会議員による調査で、BYDなど約190台の中国製コネクテッドカーが軍関連施設への入構登録を受けていると報じられた。
二つの調査は対象範囲や確認時点が異なるため、単純に登録台数が増加したと判断することはできない。
ただし、韓国軍では中国製コネクテッドカーが実際に軍事施設へ出入りしており、その管理方法が政策上の問題になっていることは明らかである。
これらは韓国軍の施設についての調査であり、在韓米軍基地に同じ台数の車両が出入りしていることを意味しない。
日本と韓国、車両データの国外移転を一律には禁止せず
ここで重要になるのが、コネクテッドカーの収集データに関する各国の制度である。
日本では、車両が収集したデータについて、国外移転を包括的に禁止する制度は設けられていない。
個人情報に該当するデータを外国の第三者へ提供する場合には、個人情報保護法に基づく本人同意などの条件がある。しかし、車両の診断情報、利用状況、位置情報、走行映像などについて、すべてを国内サーバーに保存しなければならないという一般的な義務はない。
韓国も、国外移転を一律に禁止しているわけではない。
韓国の個人情報保護法は、個人情報の国外移転について、本人同意、契約履行に必要な処理・保管、法令上の根拠など、一定の条件を定めている。
条件を満たせば、韓国で販売されたコネクテッドカーが収集した個人情報を、外国のサーバーで処理することは可能である。
中国への移転だけを一律に禁止する仕組みでもない。
ただし、韓国には精密地図などの測量成果の国外持ち出しを、安全保障上の観点から管理する制度がある。
これは日本との重要な違いだが、政府の測量成果に関する規制が、そのまま民間車両のあらゆる走行映像や位置情報に適用されるわけではない。
日本と韓国は、コネクテッドカーの国外データ移転に一定の条件を課しているものの、中国製車両の収集データを包括的に国内へ閉じ込める制度にはなっていない。
もっとも、国外移転が法律上可能であることと、個別メーカーが実際にどのデータを海外へ送信しているかは別問題である。
米国はデータ移転の禁止ではなく、中国関連システムの市場排除へ
米国本土では、日本や韓国と異なる規制が導入されている。
米商務省産業安全保障局(BIS)は2025年1月、中国・ロシアと関係するコネクテッドカーの車載通信システムと自動運転システムについて、米国市場での利用を段階的に制限する最終規則を公表した。
主な適用時期は、規制対象となる車載通信・自動運転ソフトウェアと、中国・ロシアの管轄・支配下にあるメーカーによる対象車両の販売が2027年モデルから、対象となる車載通信ハードウェアが2030年モデルからである。
一部のハードウェアには2029年1月からの適用も定められている。
この制度は、中国製コネクテッドカーが収集したデータを中国へ送信する行為だけを禁止するものではない。
安全保障上の懸念がある車載通信・自動運転システムそのものを、米国市場から排除する仕組みである。
そのため、対象となる中国関連のシステムを採用していれば、日本や韓国のメーカーであっても規制の影響を受け得る。
逆に、日本メーカーが米国販売車から日本国内のサーバーへ診断情報などを送信することが、この規則によって一律に禁止されるわけではない。
つまり、米国の規制では、データの送信先だけでなく、車載システムの開発・供給主体や、企業がどの国の管轄・支配下にあるかが重要になる。
なお、米国には別途、大量の機微な個人データを懸念国へ移転する取引を制限する制度も存在する。したがって、米国が中国へのデータ移転を無条件に認めているわけでもない。
それでも、コネクテッドカーに関するBIS規則の中心は、データの国外移転そのものではなく、車両の供給網と車載システムへの規制にある。
中国は重要な車両データの国内保存と国外移転を厳格管理
これに対して中国は、車両が収集するデータそのものを管理する制度を整備してきた。
2021年に施行された自動車データ安全管理規定では、軍事管理区域や国防関連施設などの地理情報、人や車両の移動に関する情報、一定の車外映像・画像などを重要データの対象として定めている。
重要データについては中国国内での保存を原則とし、国外へ提供する場合には法令に基づく安全評価を求める。
さらに2026年2月には、工業情報化部など8部門が「自動車データ国外移転安全指針(2026年版)」を公表した。
同指針は、研究開発、生産、運転自動化、ソフトウェア更新、ネットワーク接続などの業務で発生するデータについて、重要データの判定方法や国外移転の手続きを具体化している。
一定の条件を満たすデータについては手続きの免除も認めており、中国がすべての自動車データの国外移転を禁止しているわけではない。
しかし、制度上の移転可能性と、実務上の利用可能性は同じではない。
自動運転AIの開発では、車外カメラの映像、道路環境、交通状況、位置情報などを大量かつ継続的に収集する必要がある。
これらのデータが重要データに該当する場合、分類、識別、保存、国外移転の安全評価などが必要になる。
移転先や利用目的、処理方法に重要な変更が生じれば、追加の手続きが必要になる場合もある。
そのため、国外移転の申請制度が存在するとしても、海外の研究開発拠点が中国で収集した大量の走行データを自由に利用できるとは限らない。
特に、軍事施設周辺の映像や地理情報など、安全保障上の機微性が高いデータについては、国外移転のハードルが大きい。
中国は、一般的な業務データの流通を円滑化する一方、重要な車両データの国内保存と国外移転については厳格な管理を維持している。
この制度は中国メーカーだけでなく、中国国内で対象となる自動車データを処理する外国メーカーにも適用される。
日米韓中、同じコネクテッドカーでも規制の重点が異なる
各国の制度を比較すると、規制の重点が異なることが分かる。
日本は、個人情報などを除けば、車両データの国外移転を広く認める制度となっている。
韓国も国外移転を認めているが、個人情報に関する条件に加え、精密地図などの地理空間情報について安全保障上の特別な管理がある。
米国は、中国・ロシア関連の車載通信・自動運転システムを市場から段階的に排除する方向へ進んでいる。これは単なるデータ越境規制よりも、車両の販売と供給網に直接影響する措置である。
中国は、車両が収集する重要データについて、国内保存と国外移転の安全評価を重視している。
もちろん、いずれの国も単一の規制だけで車載データを管理しているわけではない。個人情報、国家安全保障、地理情報、サイバーセキュリティなど、複数の制度が関係する。
それでも、米国はシステムの供給主体、中国は重要データの保存と移転、日本・韓国は個人情報などの法的条件を中心に管理しているという違いは明確である。
この違いが、嘉手納基地の問題を理解するうえで重要になる。
米国本土では、中国関連のコネクテッドカーを市場から段階的に排除する制度が整備されている。
しかし、日本や韓国ではBYD車を合法的に販売・利用できる。
そのため、米軍が自らの施設に特定車両を入れたくないと判断した場合、基地の入口で別途制限する必要が生じる。
嘉手納基地の措置は、米国本土と同盟国の自動車・データ規制の違いが、軍事施設の運用に現れた事例とも捉えられる。
中国自身は2021年、テスラ車の軍関連施設への立ち入りを制限
中国は、外国メーカーのコネクテッドカーについても安全保障上の懸念を示してきた。
2021年3月には、中国人民解放軍がテスラ車の軍関連施設への乗り入れを制限していると報じられた。
車載カメラやセンサーによって、軍事施設の情報が収集される可能性が問題視された。
その後、中国は自動車データの収集抑制、車内処理、重要データの国内保存、国外移転に関する制度を整備した。
この経緯は、今回の嘉手納基地の措置と比較するうえで興味深い。
中国が外国製コネクテッドカーの軍事施設への立ち入りを警戒したのと同様に、米軍も中国製コネクテッドカーについて、基地へのアクセスを制限する判断を下した。
ただし、中国の自動車データ管理制度は、単に外国車を排除するためのものではない。中国メーカーを含む国内の自動車産業全体に適用される制度である。
また、中国の制度が整備されていることと、実際にすべての企業が適切にデータを管理していることも区別する必要がある。
制度の厳格さだけで、情報漏えいの可能性がなくなるわけではない。
ノルウェー軍の事件、車載データ問題は中国車だけに限らない
10月には、ノルウェー軍の演習で、中国・長安汽車傘下のDeepalのレンタカーが軍事活動に関する機微な情報を記録していたことも問題となった。
ノルウェー国防相は議会への回答で、車載センサーによる情報収集リスクは、中国製車両だけでなく、現代のあらゆる車両に共通する問題だとの認識を示している。
この事件については、CHINA CASEが10月18日付の「ノルウェー軍の機密情報を中国EVが録画――問題は長安車ではなく、スマートカーのデータ管理にある」で詳しく検証した。
ノルウェー軍の事件で確認されたのは、軍事活動に使用された車両が機微な情報を記録していたことである。
中国メーカーが意図的に情報を収集したことや、中国へデータが送信されたことが確認されたわけではない。
今回の嘉手納基地の措置も、同様の区別が必要である。
車載カメラやセンサーが情報を取得できること、取得した情報が保存されること、外部からアクセスできること、国外へ送信されることは、それぞれ別の問題である。
国外移転を禁止しても、車両内部に機密情報が記録される問題は残る。
反対に、国外移転が制度上認められていても、すべての車両が機密情報を海外へ送信していることにはならない。
したがって、車両の製造国だけでなく、取得する情報、保存方式、通信機能、アクセス権限、利用場所を総合的に評価する必要がある。
自衛隊基地や原発など、日本の重要施設にも共通する問題
嘉手納基地の措置は、日本の自衛隊基地や重要インフラ施設にも共通する問題を提起している。
自衛隊基地については、防衛省・自衛隊が施設管理と情報保全の観点から、入構車両の条件を設定することが考えられる。
原子力発電所、電力系統の重要拠点、通信施設などでも、車載カメラや位置情報、通信機能によって施設内部の情報が取得される可能性がある。
ただし、これらの施設でBYD車の乗り入れ禁止が決定したという情報は、現時点では確認できない。
また、施設の管理主体や適用される制度は異なるため、米軍基地の措置がそのまま自衛隊基地や原発に適用されるわけではない。
対応方法も、特定メーカーの車両を禁止することだけではない。
重要区域への車両の進入制限、録画・通信機能の管理、業務車両の事前審査、取得データへのアクセス制限など、施設の性質に応じた対策が考えられる。
どの方法が適切かは、実際の車両機能や施設の安全保障上の要求に基づいて判断する必要がある。
BYDだけを禁止すれば、情報収集リスクは解消するのか
今回の措置では、BYDという特定メーカーが対象となった。
しかし、車載カメラ、位置情報、通信モジュール、クラウド接続などは、BYDだけが採用している技術ではない。
テスラを含む多くのメーカーの車両が、同様の機能を備えている。
そのため、技術的な情報収集リスクを評価するのであれば、メーカーの国籍だけでなく、取得するデータの種類、保存場所、通信先、外部アクセスの可否なども確認する必要がある。
一方、安全保障上の判断では、技術仕様だけでなく、メーカーの統治体制、外国政府との関係、データへのアクセスを要求し得る法制度なども考慮される可能性がある。
したがって、すべてのコネクテッドカーにカメラがあるから、すべてのメーカーのリスクが同じというわけでもない。
問題は、米軍がBYD車を禁止する際に、こうした要素をどのように評価したのかを明らかにしていないことである。
その判断基準が公表されない限り、今回の措置がBYD固有の事情によるものなのか、ほかの中国メーカーにも共通するものなのか、あるいは車載システム全体の評価へ広がるものなのかは確定できない。
中国車の海外展開、販売規制とは異なる新たな制約
今回の嘉手納基地の措置は、BYD車の一般販売を禁止するものではない。
しかし、車両の利用可能な場所を制限するという点で、中国車の海外展開に新たな課題を示している。
特に、軍事施設や政府施設への出入りが必要な業務車両、配送車両、タクシーなどでは、車両の入構制限が利用者の選択に影響する可能性がある。
今後、同様の措置がほかの米軍基地や重要施設へ広がれば、一般市場で販売できる車両であっても、特定の用途では使用できないという状況が生じ得る。
ただし、現時点でそのような制限がBYDの販売実績にどの程度影響するかを示すデータはない。
また、規制がほかの中国メーカーへ広がるのか、車載通信システムの供給元にまで及ぶのかも不明である。
米国本土では車載システムの供給網を対象とする規制が導入されているだけに、同盟国の軍事施設で今後どのような基準が採用されるかは、自動車産業にとって重要な問題となる。
嘉手納の判断が問う、車載データ管理と安全保障の境界
今回の動きを整理すると、嘉手納基地ではBYD車の入構禁止が決定した一方、在韓米軍は規制を変更していない。韓国軍では中国製コネクテッドカーの入構実態が問題となり、管理基準の検討が進んでいる。
さらに各国のデータ規制を見ると、米国は中国関連の車載システムを市場から段階的に排除し、中国は重要な車両データの国内保存と国外移転を厳格に管理している。
これに対して日本と韓国は、中国製コネクテッドカーの一般販売を認め、車両データの国外移転も一定の条件下で可能としている。
こうした制度の違いが、軍事施設の入口における独自の入構制限という形で表面化した。
ただし、基地への乗り入れ禁止は、車載データの国外移転規制と同じものではない。
国外移転を禁止しても、車両が機微な情報を取得・保存する可能性は残る。一方、国外移転を認める制度が存在しても、実際に機密情報が海外へ送信されたことを意味しない。
今後の焦点は、嘉手納基地の措置がほかの在日米軍基地や在韓米軍施設へ広がるかという点に加え、車両の製造国による制限から、車載データの取得・保存・通信・管理体制に基づく評価へ発展するかという点にある。
中国車を禁止するかどうかだけでは、コネクテッドカーがもたらす安全保障上の問題を十分に説明できない。
世界の自動車産業では、車両の知能化とともに、カメラやセンサーが収集するデータの量と重要性が増している。
問われるのは、その情報を誰が取得し、どこに保存し、誰がアクセスでき、どの条件で国外へ移転できるかである。
嘉手納基地のBYD車乗り入れ禁止は、車両の安全保障上の評価が、販売の可否だけでなく、利用できる施設や場所を左右する時代に入ったことを示している。
同時に、日米韓中で異なる車載データ管理制度が、国境を越えて販売・利用されるコネクテッドカーにどのような影響を与えるのかを検証する必要がある。
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