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馭勢科技、限定領域の自動運転レベル4で生き残った10年の代償――創業者が語る「最後の1%」とAIドライバー100万台構想

    [日刊]中国の自動運転企業、馭勢科技(UISEE)の創業者兼CEO、呉甘沙氏が、創業から10年間の技術開発と事業経営を振り返り、限定領域での早期商用化が会社を存続させた一方、次世代技術への転換を難しくしたという認識を明らかにした。

    2026年10月8日、中国の自動車専門メディア『汽車商業評論』の創刊20周年を記念した特別対談で、同誌の賈可氏と約2時間にわたって議論した。対談内容は10月20日に同誌が掲載し、22日には馭勢科技も公式アカウントで紹介した。

    呉氏は、自動運転技術の完成に向けた最後の1%の難しさ、空港や工場といった限定領域を選んだ理由、2020年以降の経営危機、エンドツーエンド(E2E)やVLA(Vision-Language-Action)への技術転換などを率直に語っている。

    特に興味深いのは、2018~2019年という早い段階で商用化を進めたことについて、現在では必ずしも正しい選択ばかりではなかったと振り返っている点である。

    馭勢科技は、百度(Baidu=バイドゥ)や華為(Huawei=ファーウェイ)などの大手企業が注力する乗用車市場で正面から競争するのではなく、空港や工場などの限定領域で自動運転レベル4(L4)を実用化してきた。

    この戦略によって事業を継続できた一方、既存顧客へのサービス提供や初期の技術体系を維持する必要が生じ、新しいAI技術への投資を制約する側面もあったという。

    呉氏は、今後10年間でこの状況を変え、2035年までに世界で少なくとも100万の「AIドライバー」を提供するという目標を示した。

    ここでいうAIドライバーとは、車両に組み込んだ自動運転システムを、継続的な運転サービスとして顧客へ提供する構想である。

    単に自動運転車を100万台販売するという計画ではない。

    限定領域で生き残るための10年間から、AIによる運転サービスを世界へ展開する次の10年間へ。

    今回の対談は、中国の自動運転企業が直面してきた技術開発と商用化の難しさを、実際に事業を継続してきた創業者の視点から示すものとなった。

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    インテル中国研究院長から、自動運転企業の創業者へ

    呉甘沙氏は2000年に復旦大学を卒業後、インテルに入社した。同社で16年間勤務し、最終的にはインテル中国研究院の院長を務めた。

    2016年にインテルを離れ、馭勢科技を創業した。

    呉氏は技術産業の変化を、おおむね20年単位の周期として捉えている。

    1976~1996年はパソコンを中心としたデジタル化、1996~2016年はインターネットを中心としたネットワーク化、2016年以降はAIやロボットを中心とした知能化の時代という整理である。

    もちろん、こうした時代区分は呉氏自身の見方であり、技術の発展が厳密に20年周期で進むという意味ではない。

    それでも、2016年の創業を理解するうえでは重要である。

    呉氏は、AIがコンピューターの中だけでなく、現実世界で活動する時代が始まると考えた。

    その代表的な応用分野が自動運転だった。

    一方、インテルを退職した理由について、同社がその後直面する経営や技術上の問題を予見していたわけではないと明言した。

    当時は新しい技術の成長機会を感じていたものの、その後10年間の展開まで見通していたわけではなかったという。

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    自動運転は90点から99点まで進んでも、最後の1点が終わらない

    今回の対談で、呉氏が繰り返し強調したのが、自動運転技術の進歩を直線的に予測することの危険性である。

    創業当時、自動運転車はすでに道路を走行できる段階に達していた。

    技術的な実演を見る限り、残された課題を少しずつ改善すれば、比較的短期間で商用化できるようにも思えた。

    しかし、実際の開発はそのようには進まなかった。

    呉氏は、90点から95点へ進むのに2年、95点から99点へ進むのにさらに2年を要したと説明する。

    その延長線上で考えれば、残りの1点も1年程度で達成できると予想してしまう。

    ところが、実際には最後の1点に10年を費やしたという。

    これは、同一の評価試験で測定した自動運転システムの性能推移ではなく、技術開発の難しさを説明するための比喩である。

    重要なのは、最後に残る課題の性質が、それ以前とは異なることである。

    通常の交通環境で問題なく走行できるようになっても、極めてまれに発生する異常事象への対応が残る。

    例えば、予想外の位置に現れた車両や歩行者、通常とは異なる交通誘導、設備の故障、悪天候、複雑な作業環境などである。

    発生頻度が低いからといって、無視できるわけではない。

    むしろ、発生頻度が低く、重大な結果につながる可能性があるからこそ、十分な検証が難しくなる。

    呉氏は、100日に一度しか価値のある異常事象が発生しない場合、そのデータを待つ数百人の開発者にも継続して給与を支払わなければならないと説明した。

    つまり、最後の1%の問題は、アルゴリズムだけではない。

    まれな異常事象を収集するための時間と、それを待ち続ける企業の資金力も、自動運転の実用化を左右する。

    これは、中国で自動運転企業が相次いで創業した2010年代後半と、実際の商用化が進む2020年代との間に存在した、大きな認識の違いだったといえる。

    限定領域なら簡単という判断も誤りだった

    馭勢科技が選んだのは、一般道路を走る乗用車だけを対象とする事業ではなかった。

    同社は創業当初から、乗用車向け自動運転と、空港・工場などの限定領域向け自動運転の双方を検討していたという。

    その後、経営資源の制約から、限定領域への投資を優先した。

    呉氏が説明する理由は、成功確率である。

    巨大な乗用車市場に参入し、百度やファーウェイなどの大手企業と競争することは、事業規模の面では魅力的だった。

    しかし、限られた資金と人員で大手企業と正面から競争すれば、生き残れる可能性は低くなる。

    そこで、大手企業が優先しない領域で事業基盤を構築するという選択をした。

    呉氏は、空港や工場などの市場について、大企業にとっては小さすぎ、中堅企業にとっては投資リスクが大きく、小規模企業には必要な資金を確保できない領域だと説明した。

    市場規模が小さいからといって、開発費まで小さくなるわけではない。

    空港には、手荷物輸送、貨物輸送、旅客の移動、巡回など、多様な業務が存在する。

    それぞれに異なる車両、交通参加者、運行規則、安全要件がある。

    呉氏は空港を、一つの小さな都市に例えている。

    空港という限定された環境であっても、実際に無人運転を継続するには、その施設固有の複雑な業務を理解する必要がある。

    同氏は、乗用車の自動運転には大規模な開発組織が必要だが、限定領域なら100人程度で十分だろうと考えた企業もあったと振り返る。

    しかし、対象領域を絞っただけでは、必要な開発投資を大幅に削減できるとは限らない。

    十分な投入がなければ、限定領域でも実用化を完了できない。

    市場を限定することと、技術的な難易度が低いことは同義ではない。

    この認識は、工場物流、港湾、空港、鉱山などでL4自動運転を展開する企業全体に関わるものである。

    香港空港などで商用化、2020年以降には経営危機も

    馭勢科技は2018~2019年ごろから商用化を進めてきた。

    香港国際空港向けの無人車や、上汽通用五菱の工場内物流向け自動運転などが、その初期の事業を支えた。

    2026年1月の同社公式発表では、香港、ウルムチ、シンガポールなど、国内外21空港でAIドライバーが日常的に稼働していると説明している。

    また、2026年7月には、累計920万kmの無人運転による安全運行実績を公表した。

    いずれも同社が公表した実績であり、独立した第三者監査による安全性の証明とは区別する必要がある。

    それでも、研究開発段階の自動運転技術を、実際の顧客施設で継続的に運用してきたことは、同社の重要な事業基盤となっている。

    しかし、早期に商用化したからといって、経営が安定したわけではなかった。

    呉氏によると、2020年の新型コロナウイルス感染拡大後、顧客の開拓も資金調達も難しくなった時期があった。

    すでに納入した香港空港の無人車は運用を継続しなければならず、工場向けのプロジェクトも維持する必要があった。

    新しい売上を獲得しにくい状況でも、既存顧客へのサービス提供を停止するわけにはいかない。

    呉氏は、会社が実際に存続の危機に直面していると感じたのは2020年以降だったと振り返った。

    現在についても、経営上の危険が完全になくなったとは考えていない。

    企業の存続余力が数カ月なのか、数十カ月なのかという違いにすぎない、という厳しい認識を示している。

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    急速に進む中国のCASE(Connected&Cabin,Autonomous,Shared&Service,Electric)やAIについての最新情報。2018年から1日1本以上のレポート配信。毎朝8:00日刊中国モビリティレポートと適時号外レポート

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