
東風日産、新N7正式発売――12万元級にLiDAR+Momenta、「最初だけ」問題への回答
[メンバーシップ限定]東風日産は2026年9月22日、BEVセダン「N7」の新型を正式発売した。
前日の記事では、新N7について一つの問いを立てた。
2025年の発売直後には月9500台規模まで伸びながら、2026年には1300台前後まで販売が落ち込んだN7は、LiDARとMomentaによって「最初だけ売れる」問題を解消できるのか。
9月22日の発表会で、東風日産側の回答が出た。
それは単にLiDARを追加することではなかった。
従来のN7が持っていた快適性や品質を残しながら、弱点だった高度運転支援を中国の技術で一気に補い、それを12万元級へ投入する。
東風日産は新N7を、特定分野で中国NEVを上回るクルマとしてではなく、快適性、品質、スマート化、安全、サービスをまとめた「オールラウンダー」として再構築した。
前日に予告されていた「運転支援の不足を補う」が、価格と商品構成を伴った実車になった。
33項目を改良、「運転支援」が正式に進化領域へ
東風日産は今回、新N7で合計33項目の中核的なアップグレードを実施したと説明した。
整理の仕方が興味深い。
N7が従来から持っていた快適性や品質などの長所をさらに伸ばす一方、「運転支援」と「サービス」を新たな進化領域として引き上げたのである。
これは前日に王騫副総経理が語った「今回は新N7で運転支援の不足を補う」という説明とそのままつながる。
旧N7にもMomentaのE2E型運転支援を搭載した上位仕様は存在した。
しかしLiDARは搭載しておらず、その後、中国市場では都市NOAをはじめとする高度運転支援が急速に低価格帯まで降りてきた。
N7の商品コンセプトが突然悪くなったわけではない。
市場側の「普通」が急速に変わったのである。
新N7は、その差を埋める改良となった。
LiDAR+Momenta、さらに8650Pへ
最も分かりやすい変化がLiDARである。
新N7はLiDARを追加し、Momentaと共同開発する高度運転支援を強化した。
発表会ではLiDARについて、単に遠くを見るセンサーとしてではなく、状況に応じて視野を柔軟に調節する感知能力として紹介。演算基盤には4nmプロセスのQualcomm 8650Pを採用すると説明した。
運転支援ではMomentaのR7世界モデルを中核とする高度機能を投入する。
発表会後の公式ライブでも、今後の機能として駐車スペースから駐車スペースまでをつなぐナビゲーション支援や、地図に依存しない走行支援などへの言及があった。
前日までに披露された山岳道路での「ゼロ介入」走行も、このシステムの訴求の一環だった。
重要なのは、日産が独自の高度運転支援を一から作り直したわけではないことである。
中国で既に開発速度と実走行データを持つMomentaを利用し、センサーと演算能力を増強することで、一気に市場水準へ追いつく。
中国における外資・合弁ブランドのスマート化で、繰り返し見られるようになった開発方法である。
しかも「12万元級LiDAR」にした
そして今回、技術以上に重要だったのが価格である。
新N7の期間限定価格は10.99万元から。
625 Proは12.99万元(約305万円)とされ、LiDAR搭載仕様も13万元前後から購入できる価格帯へ入れた。東風日産自身も発表会で「12万元級でLiDAR」を強く訴求した。
ここは昨日の段階では分からなかった。
LiDAR、より高性能な演算基盤、Momentaの高度運転支援を追加しても、それによってN7そのものを上級価格帯へ移すのではない。
N7がもともと戦ってきた10万元台前半から半ばの市場へ、そのまま高度運転支援を押し込む。
旧N7の問題を、「運転支援が弱かったのだから、高価な上級仕様を追加する」という方法では解決しなかったのである。
むしろ、「中国市場でいま求められる運転支援を、N7本来の価格帯の標準的な商品価値へする」方向を選んだ。
中国NEV市場でLiDARや都市NOAが急速にコモディティー化していることを象徴する価格設定でもある。
R7世界モデル、高度機能を「生涯無料」に
さらに東風日産は、LiDAR搭載仕様について、MomentaのR7世界モデルによる高度機能パッケージを生涯無料で利用できると説明した。
ここも単なる装備追加以上の意味を持つ。
高度運転支援では、車両購入後に機能をサブスクリプション化する方法もある。
東風日産は今回、少なくとも発表時点の対象機能について、それを購入後の追加課金要素ではなく、車両の商品価値へ組み込んだ。
昨日の記事で紹介した王氏の、「使ってみようと思える」「使いやすい」「やがて手放せなくなる」という考え方ともつながる。
機能を搭載するだけでは使われない。
追加料金を気にせず日常的に使わせ、その利用頻度を高めることまで含めて商品設計する。
東風日産が今回補おうとしているのは、運転支援の「有無」だけではない。
快適性は捨てず、むしろ増やした
一方、新N7はスマート化へ全振りしたわけではない。
後席にも通風・加熱機能を追加し、後席用のコントロール画面を装備。全域インテリジェント酔い止め技術、PDC適応型車体安定システム、22項目のアクティブセーフティなども訴求した。
ここはN7の商品戦略を理解するうえで重要である。
東風日産が狙っているのは、最新のAI技術を最優先するアーリーアダプターだけではない。
従来の合弁ブランド車に乗りながら、次はNEVへ移ろうとしているファミリー層である。
そうしたユーザーに、日産で慣れた快適性+ファミリーカーとしての安心感+中国NEV並みのスマート化をまとめて提供する。
したがってLiDAR+Momentaは、N7の商品思想を別物にするための技術ではない。
これまで欠けていた一辺を埋める技術という位置付けの方が近い。
「単項目のチャンピオンは目指さない」
その考え方を、東風日産自身が発表会でかなり率直に表現した。
現在の市場には、資料上では派手でも実際に道路へ出ると期待通りではないクルマもあると指摘したうえで、新N7について、「単項目のチャンピオンは競わない。オールラウンダーを目指す」との考えを示した。
ここに新N7の立ち位置が凝縮されている。
最長航続距離を争うわけではない。
最も高い演算能力を争うわけでもない。
中国で最も高度な都市NOAを持つ、と主張するわけでもない。
その代わり、家族が毎日使うクルマとして、快適性、空間、安全、品質、運転支援、価格、アフターサービスを大きく外さない。
中国NEVメーカーが猛烈な「内巻」を続ける市場で、東風日産はあえて総合点を商品価値にしようとしている。