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英国、2030年EV販売目標の引き下げを検討――80%から50~70%へ?|世界自動車朝刊2026年10月26日

    今日の結論

    世界の自動車産業では、販売市場に近い地域で生産することの重要性が一段と高まっている。

    ドイツのAudi(アウディ)は10月25日、米国ジョージア州に初の完成車工場を建設する計画を正式発表した。投資額は約40億ドル、計画年産能力は最大20万台である。

    同社は米国市場向けの車両を主に欧州とメキシコで生産してきたが、米国の関税負担が収益を圧迫している。

    今回の投資は、単に関税を回避するための工場建設ではない。アウディは北米を欧州、中国に続く第3の主要生産地域に位置付け、世界の生産体制そのものを再構築しようとしている。

    ただし、米国への生産移管がドイツ国内の雇用や既存工場にどのような影響を与えるかは、まだ明らかになっていない。

    英国では、EV販売比率を義務付ける規制の見直しが進んでいる。

    政府は2030年の新車販売に占めるゼロエミッション車の比率について、現行の80%から50~70%へ引き下げる選択肢を検討している。

    規制を緩和すれば完成車メーカーの短期的な負担は軽減される可能性がある。しかし、EV需要や充電設備への投資を減速させる懸念もある。

    今回の週末に浮かび上がったのは、自動車産業の競争条件が、車両の技術や価格だけでなく、関税、生産立地、雇用、環境規制によって大きく変化していることである。

    アウディ、米国初の完成車工場に40億ドル――年産20万台、欧州・中国に続く第3の生産拠点へ

    アウディは10月25日、米国ジョージア州に初の完成車工場を建設する計画を正式発表した。

    同社の公式発表によると、投資額は約40億ドル、計画雇用人数は約4,500人である。

    新工場はジョージア州中部の工業用地「Middle Georgia Mega Site」に建設する。

    計画年産能力は最大20万台で、北米市場向けの高級SUVを生産する。

    アウディは2027年に建設を開始し、2030年代初めの生産開始を目指すと説明した。

    一方、ジョージア州政府の10月24日付発表では、2027年に土地造成、2028年に工場建設、2031年に本格生産開始という、より具体的な工程が示されている。

    両者の説明には建設開始時期の表現に違いがあるが、2030年代初めの量産開始という方向性は一致している。

    なお、今回発表されたのは投資計画であり、工場の建設が完了したわけではない。Reutersによると、最終的な投資決定にはVWグループの監査役会による承認が必要である。

    北米を第3の生産地域へ

    アウディは今回の公式発表で、北米を欧州、中国に続く第3の主要生産地域に位置付ける方針を示した。

    これは重要な変化である。

    同社はこれまで、ドイツを中心とする欧州の生産拠点と、中国の現地生産体制を主要な製造基盤としてきた。

    一方、米国は世界有数の高級車市場であるにもかかわらず、アウディ自身の完成車工場が存在しなかった。

    米国向け車両は主に欧州とメキシコから輸入しており、関税や為替変動の影響を受けやすい構造だった。

    Reutersによると、米国の関税政策によってアウディが2025年に負担した追加コストは約12億ユーロに達した。

    今回の現地生産計画は、こうした負担を軽減するとともに、北米市場での商品供給と収益性を改善する狙いがある。

    ただし、工場建設には巨額の初期投資が必要であり、現地生産によって必ず利益率が改善するとは限らない。

    実際の収益性は、販売台数、車種構成、現地調達率、人件費、設備稼働率などによって決まる。

    生産候補はQ7、Q8、Q9

    Reutersは米政府関係者の情報として、新工場では大型SUVのQ7、Q8、Q9を生産する計画だと報じた。

    ただし、アウディの公式発表では個別車種を確定しておらず、北米市場向けの高級SUVを生産すると説明するにとどまっている。

    したがって、現時点では3車種を正式決定済みの生産モデルとして扱うべきではない。

    ここで注目されるのは、新工場が必ずしもBEV専用工場として発表されていないことである。

    アウディが米国市場で競争力を高めようとしているのは、大型SUVを中心とする高収益商品群である。

    欧州ではBEVへの移行を進める一方、北米では市場需要と収益性を重視して生産体制を構築する。

    今回の発表は、地域ごとに異なる商品戦略と生産戦略を採用する方向性を示している。

    ドイツの雇用問題と衝突する可能性

    今回の米国投資は、ドイツ国内でも議論を呼んでいる。

    VWグループはドイツで大規模なコスト削減と人員削減を進めている。

    前号で報じたように、VWの経営側と労働組合は労働協約の見直しをめぐって対立している。

    そうした状況で、グループ傘下のアウディが米国へ約40億ドルを投資することになった。

    ドイツ最大の産業別労働組合IGメタルは、アウディの米国事業拡大そのものを一律に否定しているわけではない。

    しかし、米国での成長がドイツ国内の雇用や生産能力を犠牲にすることへの懸念を示している。

    VWの大株主であるニーダーザクセン州のオラフ・リース州首相も、米国での事業拡大はドイツ国内の雇用や付加価値創出に貢献するものでなければならないという立場を示した。

    一方、アウディは公式発表で、ドイツと欧州が引き続き同社の産業基盤の中心であると説明している。

    関税による現地生産の促進は成功なのか

    今回の工場計画は、米国のトランプ政権が進める関税政策の成果としても注目されている。

    トランプ大統領は10月24日、ジョージア州で開催した集会でアウディの工場建設計画を発表した。

    しかし、関税政策が米国経済全体に与える影響と、特定企業による米国工場建設は区別する必要がある。

    関税によって輸入車のコストが上昇すれば、メーカーには米国内で生産する動機が生まれる。

    一方、完成車や部品の価格上昇は消費者や企業の負担となる可能性がある。

    また、工場建設が発表されても、実際の生産開始までには数年を要する。

    今回のアウディの計画も、生産開始は2030年代初めである。

    したがって、短期的な米国の自動車供給能力や雇用が、今回の発表によって直ちに増加するわけではない。

    今回のアウディの発表は、関税政策が自動車メーカーの長期的な生産立地の判断に影響している具体例である。

    今後は、VWグループによる最終投資承認、工場の建設開始、正式な生産車種、現地調達率、ドイツ国内の生産体制への影響を継続して確認する必要がある。

    英国、2030年EV販売目標の引き下げを検討――80%から50~70%へ、規制緩和の是非が焦点

    英国では、ゼロエミッション車の販売比率を義務付ける制度の見直しが重要な局面を迎えている。

    英国政府は10月23日、EV販売比率目標の見直しに関する意見募集を終了した。

    現行制度では、2030年までに新車販売の80%をゼロエミッション車とすることをメーカーに求めている。

    政府は今回、2030年の目標を70%、60%、50%へ引き下げる選択肢を含めて検討している。

    ただし、現時点で目標の引き下げが決定されたわけではない。

    英国政府は、2030年に純ガソリン車・純ディーゼル車の新車販売を終了し、2035年には新車販売を完全なゼロエミッション車へ移行するという長期目標を維持する方針である。

    今回の見直しは、その途中段階に当たる2030年の販売比率と、メーカーの規制対応方法を調整するものである。

    完成車メーカーは柔軟性を要求

    英国では、EV販売比率が上昇しているものの、現行制度が要求する水準との差が残っている。

    2026年1~9月の新車販売に占めるBEV比率は約26%であり、2026年の規制上の目標33%を下回っている。

    ただし、規制にはクレジットの取引や他の排出削減措置を活用する仕組みがあるため、実際のBEV販売比率が目標を下回ったことだけで、メーカーが直ちに規制違反となるわけではない。

    完成車メーカー側は、EVの需要拡大が規制の要求する速度に追いついていないと主張している。

    特に、EVの価格、充電環境、販売奨励費用などが負担となっている。

    そのため、メーカーや販売店の一部は2030年の目標を50~60%程度へ引き下げるよう求めている。

    一方、充電インフラ事業者や環境団体などは、目標を引き下げれば投資計画に不確実性が生じると懸念している。

    目標引き下げによる排出量増加を試算

    10月25日付の英紙ガーディアンは、英国の研究機関Energy and Climate Intelligence Unit(ECIU)による新たな分析を報じた。

    同分析によると、2030年のEV販売比率目標を50%へ引き下げた場合、将来的な温室効果ガス排出量が追加で約1億4,700万トン増加する可能性がある。

    ただし、これはECIUが設定した条件に基づく推計であり、政府による確定的な予測ではない。

    実際の排出量は、EVの販売比率、車両の使用期間、年間走行距離、発電構成、ハイブリッド車の普及状況などによって変化する。

    また、ガーディアンが紹介したEV利用者調査では、回答者の94%がガソリン車やディーゼル車より維持費を節約できていると答えた。

    これも調査対象となったEV利用者の回答であり、英国のすべての自動車利用者がEVへ乗り換えれば同じ経済的効果を得られることを意味しない。

    規制緩和が産業競争力を高めるとは限らない

    今回の英国の議論には、二つの異なる産業政策上の考え方がある。

    一つは、EV販売比率の義務を緩和し、メーカーが市場需要に合わせて商品構成を調整できるようにする考え方である。

    もう一つは、規制目標を維持することで、EV開発や充電設備への投資を継続させる考え方である。

    前者は短期的な収益性の改善につながる可能性がある。

    一方、後者は中長期的な電動化投資の予見可能性を高める。

    ただし、どちらが英国の自動車産業にとって有利かは、規制目標だけでは判断できない。

    中国メーカーを含む海外企業との競争、英国国内の生産能力、輸入車の価格、EUとの通商関係なども影響する。

    特に英国はEUの域外にあるため、EUが検討している域内生産優遇策との関係も重要になる。

    今回の新規性は、政府の意見募集が終了し、2030年のEV販売目標を実際にどう変更するかという政策判断の段階に進んだことである。

    政府は2027年初めまでに見直しを進める方針であり、今後の正式決定を確認する必要がある。

    今日の小さな変化

    アウディ、米サウスカロライナ州でも年産2万5,000台を検討

    Reutersは今回、アウディがジョージア州の新工場に加え、サウスカロライナ州でも年間約2万5,000台を生産する計画があると報じた。

    生産拠点として挙げられているのは、VWグループ傘下のScout Motorsが建設を進める工場である。

    ただし、この計画は米政府関係者の説明に基づくものであり、アウディの10月25日付公式発表には具体的な記載がない。

    ジョージア州の年産20万台計画とは区別して扱う必要がある。

    実現すれば、VWグループが米国内の生産設備を複数ブランドで活用する新たな事例となる。

    今後は、正式な生産委託契約、対象車種、生産開始時期を確認する必要がある。

    ホンダと三菱自動車、初の四輪車相互補完へ

    HondaとMitsubishi Motorsは、三菱自動車のピックアップトラック「トライトン」をベースとするホンダ向けモデルの開発について覚書を締結した。

    2028年中の発売を予定している。

    ホンダはASEAN地域で不足しているピックアップトラックの商品群を補完できる。一方、三菱自動車はタイ工場の生産台数を増やし、設備稼働率の改善を目指す。

    今回の協業は、2024年にホンダ、日産、三菱自動車が締結した戦略的提携の枠組みに基づくものである。

    重要なのは、EVや車載ソフトウェアだけでなく、既存のエンジン車を含む商品開発・生産でも、日本メーカー間の協業が具体化していることである。

    ただし、今回は開発に関する覚書であり、供給台数や価格、具体的な販売国は明らかになっていない。

    今日の読み筋

    10月26日の世界自動車朝刊では、米国と欧州の産業政策が、自動車メーカーの経営判断に与える影響が浮かび上がった。

    アウディの米国工場計画は、その中でも重要な意味を持つ。

    同社は米国市場で販売を拡大するため、これまで欧州とメキシコから輸出してきた車両の一部を現地生産へ移す構想を示した。

    ただし、工場建設の理由を米国の関税政策だけに求めることはできない。

    米国は世界有数の高級車市場であり、アウディにとって事業拡大の余地がある地域でもある。

    関税負担の軽減と、現地生産による商品供給体制の強化という二つの目的が重なっている。

    一方、ドイツ国内ではVWグループの大規模な事業再編が進んでいる。

    新たな米国工場への投資が、ドイツの既存工場や雇用にどのような影響を与えるかは、今後の重要な検証項目となる。

    また、今回のアウディの米国投資を、中国事業の縮小と単純に結び付けることも適切ではない。

    同社は中国でも新商品と現地開発体制を拡充している。

    北米で新工場を建設することと、中国で新世代車両を投入することは、同時に進められる戦略である。

    それぞれの市場で何を開発し、どこで生産し、どれだけ販売できるかを分けて評価する必要がある。

    英国のEV規制見直しも、同じように単純な結論を出せない問題である。

    規制を緩和すればメーカーの短期的な負担は減る可能性がある。しかし、規制緩和によってEVの価格競争力や商品力が自動的に改善するわけではない。

    反対に、厳しい規制を維持しても、消費者が購入できる価格帯のEVを十分に供給できなければ、販売目標の達成は難しい。

    必要なのは、規制目標と市場需要の両方を確認することである。

    今回のホンダと三菱自動車の協業も、企業が経営資源をどのように配分するかという点で共通している。

    すべての車種を自社開発するのではなく、既存の競争力を持つ商品を他社と共有することで、開発費と生産設備の負担を抑える。

    このような商品・生産面での協業は、電動化投資と既存事業の収益確保を両立するための選択肢となる。

    今回の週末が示したのは、自動車メーカーの競争力が、技術開発能力だけでなく、地域ごとの生産体制、規制への対応、既存設備の活用、企業間協業によって左右されるということである。

    アウディの米国工場が計画どおり稼働するか。英国がEV販売目標をどこまで変更するか。ホンダと三菱自動車の協業が実際の商品供給につながるか。

    今後は、発表された計画と実際の事業成果を区別しながら追跡する必要がある。

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