
BMW、中国向け次世代コックピットにDeepSeekとAlibaba AIを統合――17.9インチ画面、パノラマiDrive、Huawei HiCarまで現地最適化
[メンバーシップ限定]BMWは2026年10月19日、中国市場向けに展開する次世代インテリジェントコックピットの機能を紹介した。運転者の視線移動を抑えるパノラマ表示、17.9インチのセンターディスプレイ、AIによる画面生成、音声アシスタント、中国のデジタルサービスとの連携を組み合わせる。
特に注目されるのは、Alibaba(アリババ)の大規模言語モデルを活用した車載AI機能に加え、DeepSeek(ディープシーク)による高度な対話機能、高徳地図によるナビゲーション、華為(Huawei=ファーウェイ)HiCarなど、中国のAI・デジタルサービスを幅広く取り込んでいる点である。
BMWは、独自の車載インターフェースを中核に据えながら、中国市場の利用者が日常的に使うAI、地図、音楽、スマートフォン連携サービスを統合する方向を打ち出している。
今回の資料は主に機能紹介であり、各機能の量産車への搭載時期や対応車種、ソフトウェア更新(OTA)による提供範囲などは明示されていない。

運転者を中心に再設計したパノラマiDrive
今回のコックピットは、BMWが掲げる「視線を道路から離さない」という設計思想を基礎としている。
従来のセンターディスプレイへの情報集中から、運転者の視線方向や操作距離に応じて情報を分散配置する方式へと進化させる。
BMWが説明する表示・操作体系は、大きく3つの領域から構成される。
第一は、フロントガラス下部に沿って横方向に広がるパノラマ表示である。
第二は、運転者の前方視界に情報を投影する3Dヘッドアップディスプレイである。
第三は、運転者側に傾けて配置した17.9インチのセンターディスプレイと、ステアリングホイール上の操作系である。
BMWはこれらを、遠方、中間、近距離という視線の移動に対応させて配置している。
道路状況の把握、ナビゲーション情報の確認、詳細な機能操作を、それぞれ適切な表示領域に振り分ける構成である。

17.9インチ、3K超のセンターディスプレイを採用
センターディスプレイには、17.9インチの液晶パネルを採用する。
BMWが示した主な仕様は以下の通りである。
画面サイズ:17.9インチ
解像度:3K超
操作距離の短縮:約50mm
運転者側への傾斜角度:17.5度
視認距離の短縮:約15%
ディスプレイは運転者側へ傾けた配置とし、操作時の腕の移動や視線移動を抑える設計となっている。
また、センターディスプレイは情報表示だけでなく、音楽、動画、ナビゲーション、空調、車両設定などを操作する中核的なインターフェースとなる。
BMWは、車内で撮影した写真やMy BMWアプリにアップロードした画像を、画面の背景などに活用する個人化機能も紹介している。

パノラマ表示は約43インチ相当、視線の先に情報を配置
フロントガラス下部に広がるパノラマ表示は、約43インチ相当の表示領域を持つと説明されている。
BMWは、この表示技術について次の仕様を示した。
表示方式:3Dパノラマ投影技術
表示領域:約43インチ相当
解像度:4K
表示幅:約1.2m
偏光反射率:従来比2倍と説明
表示領域には、車速や航続距離、音楽、天気、車両情報などのコンテンツを配置できる。
中国市場向けの専用コンテンツとして、中国の伝統的な意匠、季節行事、キャラクターなどを取り入れた表示も紹介された。
例えば、クラシックBMW M3のイメージを取り込んだ表示や、中国の縁起物をモチーフにしたアニメーションなどがある。
単に運転情報を表示するだけでなく、コックピット全体を個人化できるデジタル空間として設計している。
なお、約43インチという数値は投影表示の相当サイズを示すものであり、同サイズの物理的なディスプレイパネルを搭載しているという意味ではない。

3Dヘッドアップディスプレイ、道路と案内情報を重ね合わせる
3Dヘッドアップディスプレイは、ナビゲーション情報を運転者の前方視界に表示する。
BMWは、投影する虚像の距離を4~9mと説明している。
進行方向や車速、交差点までの距離などの情報を、実際の道路と自然に重なるように提示することを目指す。
紹介画像では、道路上に進行方向を示す矢印や誘導ラインを重ね合わせる表示が確認できる。
BMWは、運転者が視線を大きく移動させることなく、走行情報と経路案内を確認できる点を訴求している。
また、ナビゲーション画面には高徳地図の中国向け地図データを活用する。
センターディスプレイ上の地図と運転支援機能の表示を組み合わせ、経路案内と車両周辺情報を統合的に提示する構成である。
ただし、紹介画像に示された3D表示について、すべての道路条件で同様の表示が行われるかは明らかにされていない。

AIが音声指示から画面を生成、表示内容を個人化
今回の資料では、BMW独自のAI表示コンポーネントも紹介されている。
利用者が音声で指示すると、AIがその内容を解釈し、対応する画像やアニメーションを生成する機能である。
生成したコンテンツは、パノラマ表示領域に配置できる。
BMWは、自然な対話によって利用者の発想を取り込み、車内の表示空間を自由にカスタマイズできる点を訴求している。
従来の車載ディスプレイでは、メーカーがあらかじめ用意したテーマや壁紙から選択する方式が一般的であった。
これに対し、AI生成機能を利用すれば、利用者の指示に応じて表示内容を新たに作り出すことができる。
車載AIの用途が、情報検索や音声操作から、コックピットの表示コンテンツそのものの生成へ広がっていることを示す事例である。
一方、生成処理を車載側とクラウド側のどちらで実行するのか、使用するモデルや処理時間などの技術仕様は、今回の画像資料からは確認できない。

Alibabaの大規模言語モデルを活用、DeepSeekで高度な対話機能
BMWは、中国向けの車載AI機能として、Alibabaの大規模言語モデルを活用することを紹介している。
AIアシスタントには、車両操作を支援する「用車専門家」、移動計画を支援する「外出パートナー」、幅広い質問に対応する「百科達人」などの機能が用意されている。
用車専門家は、車両の状態確認、窓の開閉、空調調整などを音声で操作する機能である。
外出パートナーは、目的地や経由地の提案、充電設備のある駐車場の検索、飲食店の提案などを担う。
利用者の意図を理解し、地図上の地点情報と組み合わせて移動計画を支援する。
さらに、百科達人ではDeepSeekによる高度な推論・対話機能を訴求している。
資料では、車載AIの音声認識率が99%を超えると説明されている。ただし、認識率の評価対象、試験環境、対応言語、騒音条件などは明示されていないため、あらゆる運転環境で同じ認識率を保証する数値ではない。
また、AlibabaのモデルとDeepSeekが、システム内部でどのように役割分担しているかについても詳細は示されていない。
今回確認できるのは、BMWが中国向け車載AIの機能体系に、複数の中国AI技術を組み込んでいるという点である。
