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オウム返しだけではダメな理由|部下の本音を引き出すには“もう一言”が必要です

私は
「なんでこれがわからないの?」
「ちゃんと考えてる?」
「勉強不足だよ」

こう言われた瞬間、頭が真っ白になったことがあります。

何を言おうとしていたか飛ぶ。
言葉が出てこない。
そして、とりあえずこう答える。

「…大丈夫です。了解です。」

でも本当は、大丈夫じゃない。

むしろその瞬間から、
「この人にはもう話さない」
と決めています。

多くの上司はここで勘違いします。

「ちゃんと聞いている」
「オウム返しもしている」

それなのに、なぜか本音が出てこない。

実はこれ、珍しいことではありません。

「1on1をやっているのに深まらない」という悩みは結構あります。

オウム返しだけでは、なぜ浅く終わるのか

オウム返しは、相手の言葉を確認する技術だからです。

たとえば、部下がこう言ったとします。

「最近、ちょっと仕事がきついです」

これに対して、「仕事がきついんだね」と返します。

これは悪くありません。でも、部下の内側には、もっといろいろな感情があるかもしれません。

・期待に応えられない不安
・このままで大丈夫なのかという焦り
・誰にも相談できない孤独感
・評価を下げられる怖さ
・助けてほしいけど、迷惑をかけたくない気持ち

つまり、部下が言っているのは「きつい」という言葉だけですが、その奥には感情があるんです。

オウム返しだけだと、言葉は返せても、感情までは届きません。

だから会話が深まりにくいんです。

関連記事:
👉 ココロ翻訳術とは何か|部下の“本音”を引き出すためのシンプルな方法

これは、私がMicrosoft系のサポート業務をしていたときの経験です。

ある年配の女性から問い合わせがありました。

その方は、パソコンに詳しくなく、自分が何に困っているのかをうまく言葉にできない状態でした。

最初に言われたのは、こんな言葉でした。

「あの〜、その〜、いつも使っている緑色のものが出てこない」

普通に考えると、これだけでは何のことかわかりません。

ここで、「緑色のものが出てこないんですね」とだけ返しても、会話は進みません。

もちろん、その言葉を受け止めることは大切です。でも、それだけでは相手も困ったままです。

そこで私は、こう返しました。

「緑色のものが使えなくなってしまったんですね。それでは、その緑色のものが何か、そして今何がしたくて、何ができなくなってしまったのか、順番に確認させていただいてもよろしいでしょうか」

すると、お客様は少し安心したように、

「よろしくお願いいたします」

と言ってくれました。

さらに私は、

「どう聞いたらいいかわからないことは珍しいことではありませんので、どうぞご安心ください。

と伝えました。

この一言で、空気が変わりました。

お客様は、「あら、そう。それはよかった」と安心した声になりました。

その後、少しずつ質問していくと、その"緑色のもの"はExcelのことだとわかりました。

健康管理のために、体重や血圧を入力していたファイルを開きたかったのです。

サポートの後半で、

「恐らく、お客様のおっしゃっている緑色のものとはExcelのことで、それが今パソコンから消えてしまっているために起動しない状態だと思います」

と伝えると、

「あ〜そうそう、エクセル!」と、ようやく言葉がつながりました。

相手は、困っていないわけでも、話す気がないわけでもありません。

ただ、自分の困りごとを言葉にするための"橋"がないだけなのです。

その橋をかけるのが、聞く側の役割です。

1on1でも同じことが起きている

部下も同じです。

部下は、いつも自分の気持ちを整理して話してくれるわけではありません。

むしろ多くの場合、言葉は曖昧です。

「ちょっとしんどいです」
「最近、余裕がなくて」
「まあ、大丈夫です」
「なんとなくモヤモヤしてます」
「別に不満ってほどではないんですけど」

こういう言葉の奥には、まだ整理されていない感情があります。

でも上司が、

「しんどいんだね」
「余裕がないんだね」
「大丈夫なんだね」

と返すだけだと、部下はそこで止まってしまうことがあります。

なぜなら、部下自身もまだ自分の感情を言葉にできていないからです。

必要なのは、言葉を繰り返すことではなく、言葉の奥にある感情をそっと補うことです。

オウム返しに足すべき"もう一言"

たとえば、部下がこう言ったとします。

「最近ちょっときついです」

この一言の裏には、

・プレッシャー
・評価への不安
・助けてほしい気持ち
・言えないストレス

こういったものが隠れています。

オウム返しだけだと、言葉には触れられても、感情には触れられません。

関連記事:👉 話を聞いているのに信頼されない上司の特徴

ただし、決めつけてはいけない

ここで大事なのは、断定しないことです。

「それは不安なんだね。」
「つまりプレッシャーでしょ。」
「本当は助けてほしいんだよね。」

こう言い切ると、相手は押しつけられたように感じます。

だから、仮説として差し出すのが大切です。

たとえば、このようにイメージです。

「もしかすると、不安もありますか?」
「少しプレッシャーを感じている感じですか?」
「言いにくいけど、助けてほしい気持ちもあるのかなと思ったんですが、違いますか?」

外れていてもいいのです。

大切なのは、当てることではありません。

「この人は、自分の奥にある気持ちまで理解しようとしてくれている」

そう感じてもらうことです。

次のサンプルの違いから考える

次の会話、問題が起きていないように見えます。

でも実際には、そう話しているその瞬間に「この人にはもう深い話はしないでおこう」と心の中で決まっています。

部下はその場では合わせます。でもそれ以降は
・無難なことしか言わない
・相談しない
・距離を取る

こうなります。

つまり、1on1は“機能していない状態”になります。


会話①

部下
「最近ちょっと余裕がなくて…」

上司
「余裕がないんだね」

部下
「はい…」

上司
「何が原因?」

部下
「まあ…業務が重なってて…」

上司
「優先順位つければ回せるでしょ」

部下
「…はい」

この会話は、形としては部下の話を聞いています。

でも、部下の感情には語る言葉で全く触れていません。


では、今のやり取りが次のように変わったらどんな違いが出るでしょうか。

会話②

部下
「最近ちょっと余裕がなくて…」

上司
「余裕がないんだね」

(ここまでは同じ)

上司(少し間を取る)
「業務量というより、ずっと気を張ってる感じもある?」

部下
「…あ、それはあります」

上司
「常にミスできない状態が続いてる感じ?」

部下
「そうです。最近チェックが厳しくなってて…」

上司
「なるほど。
“ちゃんとやらなきゃ”っていうプレッシャーが強くなってるんだね」

部下
「はい…正直、ちょっとしんどいです」

上司
「そっか。“ミスしたら評価下がるかも”って不安もある?」

部下
「…あります。結構それが大きいです」

この違いは、テクニックではありません。

上司がやっているのは、「言葉の奥にある感情を仮説として出している」だけです。

そしてもう1つ重要なのは、“当てること”ではなく“近づこうとしていること”です。

これが伝わると、部下は初めて話し始めます。この上司は、当てにいっているわけではありません。

頭の中ではこんな仮説を立てています。

・「余裕がない」=業務量だけではない
・間がある → 緊張している
・最近 → 何か変化があったか

こうして「プレッシャー」や「不安」を差し出していて、相手の言葉の奥にある感情を、仮説を使いながらそっと返しているだけです。

この相手の感情を表す一言があるだけで、部下は話しやすくなります。

関連記事:👉 部下の言葉の裏にある4つの感情

部下が本当に求めているのは、きれいな傾聴ではない

1on1で大切なのは、教科書通りに聞くことではありません。

部下が求めているのは、「自分のことをわかろうとしてくれている」という実感です。

だから、オウム返しは大切ですが、それだけでは足りません。

言葉を返す。
それも、その奥の感情を読んだ上で返す。
そして、決めつけずに仮説として返す。

この流れができると、1on1は少しずつ変わります。

オウム返しの後に付け加える一言

オウム返しは“入口”でしかありません。本音は、その先の「仮説の一言」でしか出てきません。

大切なのは、相手の言葉の奥にある感情を見に行くことです。

・部下の「きついです」の裏には、不安があるかもしれません。

・「大丈夫です」の裏には、諦めがあるかもしれません。

・「別にないです」の裏には、言っても無駄(無力感)という気持ちがあるかもしれません。

上司に必要なのは、正解を当てる力ではありません。相手の感情に近づこうとする姿勢です。

部下は、完璧な上司よりも、理解しようとしてくれる上司に心を開きます。

このまま続けるとどうなるか

このズレに気づかないまま1on1を続けると、最初は小さな違和感から始まります。

・なんとなく会話が浅い
・当たり障りのない話しかしない
・「大丈夫です」が増える

でも、あるタイミングで変わります。部下が“何も言わなくなった”時です。

そしてその頃にはもう相談されず、何を考えているのか全くわからない、その人が抱えている問題が全く見えない状態です。

さらに怖いのは、問題が“見えないまま進む”ことです。

そしてある日、突然「辞めます」と言われます。理由を聞いても「特に不満はありません。」とだけ返ってきます。

でも実際には、ずっと前から何も言えなくなっていただけです。これは珍しい話ではありません。

このような「突然辞めたように見えるケース」は珍しくありません。

管理職からすれば突然のように見えても、部下は「“話せない人になった時点から退職の2文字を考えはじめ”」ているわけです。

ここを間違えると、気づいたときにはもう手遅れになります。


では、どうすればいいのか

・感情を”翻訳して返す”こと
・オウム返しではなく、「その言葉の奥にある気持ちを仮説として一言添える」

これだけで、会話の深さは大きく変わります。

関連記事:
👉 アドバイスした瞬間に部下が閉じる理由|“正しさ”が逆効果になる本当の原因


私自身も、「ちゃんと聞いているつもり」でした。でも実際には、相手の言葉しか聞けていなかった。

「話しているのに、伝わっていない」というズレが起きていました。

私にも実際に似たような経験があります。

上司に相談したとき、「なんでこれがわからないの?」「ちゃんと考えてる?」と言われたとき、頭が真っ白になりました。

そして結局、「大丈夫です。了解です。」としか言えなくなりました。

でも本当は、全然大丈夫じゃない。むしろそのときに、ますます不安になったのに、「もう相談しない」と決めました。


明日の1on1でひとつだけ試してみてください。

オウム返しのあとに、「もう一言」を足してみる。
それだけで、部下の反応が少し変わるはずです。

ただ、もしあなたが、「そもそも自分の1on1のどこに問題があるのかわからない」「部下が本音を話してくれない原因を知りたい」と感じているなら、まずは現状を把握することから始めてみてください。

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部下は「正しい上司」ではなく、「わかろうとしてくれる上司」にしか本音を話しません。

そしてその力は、技術として身に着けることができます。

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