クソどうでもいい『店長職』を、置くのをやめたらスタッフに感謝された。 | スタッフを「管理」するのをやめて「推し活」してる社長のnote ep.2
どうも、失敗と本からしか学べない男 タルイタケシです。
いまはサウナとマッサージのお店を経営してます。
私の得意なことはやめることです。
今回も職場でやめたことを書きます。
突然ですが、いま「管理職になりたくない」という人が、7割を超えているそうですね。

識学の調査だと、非管理職の会社員のうち、管理職に「なりたいと思わない」が70.2%。
日本能率協会マネジメントセンターの調査でも、一般社員の77.3%が「なりたくない」。
パーソルの調査では、20代で管理職を希望する人が、2021年の36.4%から2024年には28.2%まで落ちました。3人に1人もいないのです。
世間では管理職が「罰ゲーム」とまで呼ばれ始めています。
この数字を見て、
「今の若者は向上心がない!」
「責任から逃げているだけだ!」
と嘆く経営者が、たくさんいます。
ここで先に私の結論を書きますね。
私は、若い方の意見に賛成です。
なぜなら、管理職なんて、割に合わない「クソどうでもいい仕事」だと思っているからです。
こう書くと、
「管理職を馬鹿にするな💢」
と怒られそうですが。
少し待ってこの先をお読みください。
私が言いたいのは、管理職という人が悪い、という話ではありません。
管理職という仕組みが、ある種の人間を大量に生み出してしまう、
という話です。
前回に私は「クレクレ星人」の話を書きました。
「給料をクレ」「評価をクレ」「指示をクレ」
と、もらうことしか考えていない、現場のテイカーです。
「ウチの職場にいるな」
と思われたかもしれません。
でも、テイカーは現場だけにいるんでしょうか。
いいえ。もう一種類、いるんです。
しかも、もっとやっかいな『ヤレヤレ星人』がいます。
◾️ヤレヤレ星人とは何か?
「あれをヤレ。これをヤレ。」
口を開けば指示と命令。それなのに、自分では何もできない。企画も作れない、現場も回せない、お客様の顔も知らない。
これがヤレヤレ星人です。
管理職という役職に住みついた、もう一種類のテイカーです。
彼らの仕事は「命令すること」だけ。
部下が動いて、成果が出る。
その成果を「オレのマネジメントの成果だ」と吸い上げる。
労働はもらう、手柄ももらう。もらってばかり、という一点では、クレクレ星人と何も変わりません。
ここが面白いところなんですが。
クレクレ星人とヤレヤレ星人は、お互いを必要としています。

ヤレヤレ星人は、指示をクレという部下がいないと、命令する相手がいなくて存在意義を失う。
クレクレ星人は、命令してくれる上司がいると、自分で考えなくて済む。
だから両者は、口ではお互いの文句を言いながら、絶対に離れられない。
トップダウンの指示命令型の組織というのは、この二種類の星人が、お互いを共依存しあっている土壌になりやすいのです。
もう一つ、店長のような中間管理職が「割に合わない」と言われる理由があります。
責任と、実働が、まるで釣り合っていないんです。
上からは「店の数字に責任を持て」と言われる。
下からは「もっと現場を助けてください」と言われる。
板挟みのまま、売上の責任だけはしっかり背負わされる。
ところが、その責任を果たすための権限は、たいして持たされていない。
値段も決められない、人も勝手に採れない、方針も上が決める。責任は重いのに、動かせる範囲は狭い。

逆のパターンもあります。
プレイングマネージャーと呼ばれる人たちです。
自分も現場に立って施術やレジをこなしながら、シフトも組み、クレームも受け、部下の相談にも乗る。
実働はいちばん多いのに、扱いは「中間」。
上からも下からも都合よく使われて、いちばん疲れているのに、いちばん報われない。
責任だけが重くて実働がない人。
実働だけが重くて権限がない人。
どちらも、責任と実働のバランスが壊れています。
そして壊れたバランスの真ん中で、心をすり減らしているんです。
「管理職になりたくない」が7割を超えるのは、みんなこの不釣り合いに、うすうす気づいているからだと思います。
◾️それをブルシット・ジョブと呼ぶ
人類学者のデヴィッド・グレーバーが、『ブルシット・ジョブ』という本を書いています。日本語にすると「クソどうでもいい仕事」。
グレーバーは、どうでもいい仕事を5つの型に分けました。
その一つが「タスクマスター」。
他人に仕事を割り振ることだけが仕事で、自分がいなくても現場は勝手に回る人。
もっとひどい型になると、わざわざ要らない仕事を作り出して部下にやらせる。
もうお気づきでしょう。これはヤレヤレ星人そのものです。
さらにグレーバーはもう一つ、鋭いことを言っています。
「経営封建制」という言葉です。
管理職は、自分が偉い証拠として部下の数を必要とする。だから仕事をでっち上げてでも、部下を抱えたがる。
部下が多いほど偉い、という中世の領主みたいな論理です。
◾️人類300万年、上司はいなかった

ここで少し、話を大きくします。
人類の歴史をさかのぼると、面白いことがわかるんです。
進化人類学者のクリストファー・ボームが、世界中の狩猟採集社会を調べた研究があります。
それによると、狩猟採集の民は、威張るメンバー、獲物を独り占めするメンバー、仲間に命令したがるメンバーを、集団でイジってからかい、批判し、それでも直らなければ村から追放していました。
ボームはこれを「逆ヒエラルキー」と呼びます。
これは偉そうにする者を、みんなで下から抑え込む仕組みです。
これは余談ですが、いま世論では「おじさん」がイジられまくってますよね。
おじさんがハーフパンツを履くだけでギャンギャン言われる。
令和の世の中では人の見た目や年齢をからかうことを「ルッキズム」「エイジズム」と厳しく叩かれるはずなのに…
不思議なことに「おじさん」だと話は別なんですよね。
これこそが「逆ヒエラルキー」ではないでしょうか。
世間ではおじさんをまとめて「テイカー」とみなしている。
実際には住宅ローンに追われ、教育費にため息をつき、職場では上からも下からも突きつけられて、老後の不安を抱えて怯えている「ギバー」が大半なんですけどね。
今は耐えるしかないのかもしれません。
別の意味でヤレヤレです。
話を戻すと、人類はおよそ300万年、この仕組みで生きてきました。
つまりヤレヤレ星人は、人類史のほとんどの期間、村を追い出されていた存在なんです。
彼らが安心して暮らせるようになったのは、ここ百数十年に発明された「会社組織」という特殊な檻の中だけです。
命令する人がいるのが普通なんじゃない。命令する人を許してしまう組織のほうが、人類史から見れば異常なんです。
さらに日本ではこれに、年功序列という強力なブースターがかかりました。
プレイヤーとしての実力とは関係なく、年次で管理職に上がっていく。
「特に何もできないけど、長くいるから課長」という人事が、この国では何十年も繰り返されてきた。
世間で「働かないおじさん」と呼ばれている人たちは、こうして製造されたヤレヤレ星人です。
これは中小のオーナー経営者も、他人事ではありません。
むしろ危ない。
ガバナンスがガバガバでコンプライアンスがぷらぷらしてる日本の中小企業の社長には、命令を止めてくれる人がいないからです。
誰も「それ、おかしいですよ」と言えない。
だからこの国で一番強力なヤレヤレ星人は、実は中小企業の社長かもしれません。
正直に告白すると、私自身がそうでした。
コンサルタントをしていた頃、私は社長の命令を、もっと効率よく現場に通す、お手伝いをしていました。
ヤレヤレ星人に、より鋭い武器を渡していたわけです。
だからこの話は、他人を批判しているようで、半分は昔の自分に向けて書いています。
◾️指示・命令は、ヤレヤレ星人の鎧だった
ただ、私は彼らを笑う気にはなれません。
グレーバーの本でいちばん胸に刺さるのは、実はここなんです。
彼が集めた証言によると、ブルシット・ジョブに就いている本人たちは、自分の仕事が無意味だと薄々気づいていて、そのことに深く苦しんでいる。
楽して高給。うらやましい話のはずなのに、当人の魂は削れていく。
グレーバーはこれを「精神的暴力」と呼びました。
人間は、自分の存在が世界に何の影響も与えていないと感じることに、耐えられない生き物だからです。
きっとヤレヤレ星人も、同じです。
内心わかっているんですよ。
自分にはたいしたスキルがないことを。
命令をやめたら、何も残らないことを。
これ、けっこうな恐怖です。
「できない自分」がバレたら、居場所がなくなる。
だからどうするか。
命令する側に回り続けるんです。
評価する側に立てば、評価されずに済む。
指示を出す側に立てば、実力を試されずに済む。
「ヤレ」と言っている間だけは、自分の無能さと向き合わなくていい。
つまり命令とは、鎧なんです。
怠けているんじゃない。
怖いんです。

◾️AI時代、ヤレヤレ星人はどう生きるか

さて、ここからが本題です。
AIの時代が来て、ヤレヤレ星人は絶滅するのか。
しません。
むしろ、生き残る道が一つだけあります。
命令する相手を、人間からAIに変えることです。
考えてみてください。
ヤレヤレ星人の唯一のスキルは「指示命令」でした。
人間相手には最悪のスキルです。命令された人は疲れるし、考えなくなるし、辞めていく。
でも、AIは違う。
命令されても傷つかない。
深夜に「今すぐヤレ」と言っても、嫌な顔ひとつしない。
何度やり直させても、やる気が落ちない。
指示命令を受ける側として、これほど完璧な相手はいないんです。
「的確に指示を出す仕事」には、プロンプトエンジニアという立派な名前までついています。
「あれをヤレ!」「これをヤレ!」と明確に言葉にできる力は、AI相手ならちゃんと価値になる。
部下に命令してきたその技術、ようやく正しい使い道が見つかりましたね、という話です。
でも、ここで一つ。ヤレヤレ星人に、残酷な事実をお伝えしないといけません。
そもそも「管理」という仕事そのものが、これからAIに吸い取られていきます。
シフトを組む。数字を集計する。在庫を管理する。誰がいつ何をやったかを記録して評価する。
こういう仕事は、正確さと根気がいるだけで、人間がやる必要はどこにもない。
むしろAIのほうが速いし、ミスもしないし、疲れて不機嫌になることもない。
これまで「管理職」という肩書きで食べてきた人の仕事は、その中身の大半がこの管理業務でした。それがまるごと、機械に移っていく。
これは、私の予想ではありません。もう始まっています。
アメリカでは、中間管理職の数がコロナ禍以降6%減ったという調査があります。企業が、余分な管理層を削って意思決定を速めようと動いているからです。
その結果、残ったマネージャー1人が受け持つ部下の数は、2017年と比べて平均3倍に増えたと、ガートナーは報告しています。
管理職を薄くしても、現場は回ってしまうということです。
さらにガートナーは、2026年までに5社に1社が、AIを使って管理層を半分に減らす可能性があると予測しています。
実際、Amazonの大規模な人員削減で、真っ先に対象になったのは、工場で働く人ではなく、オフィスの中間管理職でした。
AIに最初に仕事を奪われるのは、体を動かす人ではなく、命令していた人だった。
この順番は、象徴的だと思います。
「それはアメリカの話でしょう」と思うかもしれません。
でも、日本も、これから来ます。
日本は解雇の規制が厳しいので、アメリカみたいに「AIで何人クビ」という派手な形にはなりません。
代わりに、早期退職の募集、配置転換、新卒採用の絞り込み。
そういう静かなやり方で進みます。
上場企業の早期・希望退職の募集は、2025年は9月末の時点ですでに1万人を超えました。
しかも、その多くが業績好調な「黒字リストラ」です。景気が悪いからではなく、余っている人を整理するための削減が始まっている、ということです。
一部の大手は、もっと踏み込んでいます。
みずほフィナンシャルグループは、事務職5,000人分の業務をAIで置き換えると報じられました。
NTTの社長は、34万人の業務の半分以上がAIで代替できると発言しています。
減らしたいと思っている当の管理職自身が、次に減らされる番なんです。
管理職だけの話でもありません。決まった手順でこなせる仕事は、片っ端からAIとロボットに吸われていきます。
データ入力、伝票処理、経理の記帳、給料計算。決まったことを正確に繰り返す事務仕事です。
電話やチャットの定型的な問い合わせ対応も同じです。
上の意向を下に伝えるだけ、資料をまとめ直すだけ、という中間職の役回りもそう。
倉庫の仕分け、荷物の運搬、工場のライン作業、そして自動運転が進めば配送。ここはロボットが少しずつ引き受けていきます。
任せられるのは「決まった作業」
もう少し身近な例で見てみましょう。
例えば私の店ではシフト作成と勤怠管理など条件を入れれば、AIが数秒で組んでくれます。深夜まで表とにらめっこしていた、あの時間はもういらない。
売上集計、レジ締め、目標に対する進捗管理、経費のチェック。数字まわりは、そもそもAIが一番得意とするところです。
私がやると間違えるし、疲れる。でもAIは間違えないし、疲れない。
発注や在庫管理も、過去のデータから「この日はこれくらい売れる」と予測して、自動に近づけられる。
予約の確認や調整、営業時間・料金・アクセスといったよくある問い合わせも、システムとAIチャットでほぼ自動化できてます。
売上報告も、数字を自動でまとめてレポートにしてます。
ブログやSNSの下書き、POPやチラシのたたき台づくりも、AIに手伝ってもらってます。
こうして並べると、店長が毎日追われていた「シフト・数字・報告・伝達」の多くが、実はAIの担当領域だとわかります。
どれも、頭を使っているように見えて、じつはルールに沿って処理しているだけ。だから機械のほうが速いし、間違えないんです。
命令する相手も、管理という仕事そのものも、人間の手を離れていく。
ヤレヤレ星人の居場所は、どんどん狭くなっていきます。
だからこそ、命令したくてたまらない社長は、いっそ人を雇うのをやめて、AIとロボットに投資したほうがいい。
命令されるために作られた存在に、命令すればいい。ロボットは労基署に駆け込みませんし、AIは退職代行を使いません。
これは皮肉のようで、半分は本気です。
命令と管理で回る業種なら、人間を消耗させるより、機械に任せたほうが、人も社長も幸せです。
🔳それでも、接客業だけは違う
一方で、どうしてもAIに渡せない仕事があります。
クレームで怒っているお客様の気持ちを、少しずつほぐしていくこと。
一緒に働く仲間の悩みを聞いて、「大丈夫だよ」と背中を押すこと。
採用の面接で、「この人となら一緒にやっていける」と見極めること。
そして、お客様一人ひとりと、時間をかけて信頼を積み上げていくこと。
これらは、マニュアルにできない。
数式にもできない。
その場の空気を読んで、相手の表情を見て、言葉を選ぶ。
人間にしかできない仕事です。
奪われるかどうかの分かれ目は、「職業の名前」ではありません。
「その仕事が決まった作業なのか、それとも心が要るのか」。
ここで決まります。
同じ接客でも、マニュアル通りのレジ打ちは、セルフレジに変わっていきました。
でも、緊張してやってきたお客様の肩の力を抜いてあげる笑顔は、人にしか出せない。
だから「接客業だから安全」なのではありません。
「関係性でしか成り立たない仕事だから残る」
これが、正確な言い方だと思います。
そしてサウナやマッサージは、その"ど真ん中"にあります。
サウナで汗を流したあとの「ふう」という一息。
マッサージで体がゆるんでいくときの、あの安心感。
お客様が受け取っているのは、サービスの手順ではなく、人の手と、人の気配です。
ここはAIに置き換えられません。
置き換えた瞬間、その店の価値は消えます。

◾️だから、ウチは店長職を置かない
うちの店には店長という役職を置いていません。
理由は2点、シンプルです。
店長という仕事の中身をよく見ると、AIに任せられる「管理」と、人にしか任せられない「関わり」が、無理やり一人に押し込められているからです。
責任は重いのに、値段も方針も自分では決められない。数字に追われて、いちばん疲れて、いちばん報われない。
そんなポジションを、最初から作らなければいい。
管理はAIに任せる。
人と人との関わりは、仲間に委ねる。
そう分けてしまえば、店長という「割に合わない真ん中」で、誰かがすり減ることはなくなります。
もう一点、働くスタッフの子も、伸び伸びと働いてくれます。
私の店には、前職で、意地悪なヤレヤレ星人の店長のせいで、適応障害になって離職してしまった子もいます。
面接時に店長職を置いていないと説明したら感謝されました。
そして、ここが今日いちばん言いたいことです。
接客業では、人を「管理」してはいけない

接客業では、人を「管理」してはいけないんです。
管理するというのは、相手の判断を奪うことに繋がります。
あれをやれ、これはやるな、勝手に決めるな。
そうやって細かく縛った瞬間、その人は自分の頭で考えるのをやめます。
次にやることは一つだけ。
上司の顔色をうかがうことです。
顔色をうかがっている人の手から、温かさは出ません。
お客様は敏感です。
この人、なんだか緊張しているな。
無理して笑っているな。
それは、口では言わなくても伝わってしまう。
管理で締め上げた分だけ、現場から笑顔が消えていきます。
うちの店で言えば、お客様が本当に受け取っているのは「笑顔」です。
笑顔こそが商品です。その笑顔は、推しメンが心にゆとりを持って、自分の意思でお客様と向き合っているときにしか、生まれません。
管理は、その笑顔を殺すんです。
だから接客業の答えは、AIへの置き換えでも、命令の強化でもなく、推し活経営です。
管理をやめて、推す。
命令ではなく、依頼と信任で任せる。
うちの店では、一緒に働く仲間を、スタッフではなく「推しメン」と呼んでいます。
整理すると、こうなります。
命令はAIへ。管理もAIへ。推しは人へ。
事務も、分析も、集客の仕組みも、シフトも数字も、どんどんAIに任せればいい。
私も毎日AIに命令しています。
そうやって浮いた時間とお金と心の余裕を、人を推すことに全部つぎ込む。
それが、AI時代の接客業の生き残り方だと、私は考えています。
あなたの会社のヤレヤレ星人に、そっと教えてあげてください。
命令する相手、間違えてますよ、と。
そして、人を管理するのは、そろそろやめましょう、と。

本日のまとめです。

最後まで読んで頂きありがとうございました。
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