【ミス防止】できる人ほど、陥りやすいリスクとは?
こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。
仕事ができる人は、基本的にミスをしない――。それはそうかもしれません。だから、数々の成功をおさめ、まわりから「あの人は仕事ができる人」と思われるのでしょう。
ただ、「できる人ほど陥りやすいリスク、いわゆる落とし穴がある」と忠告する人がいます。
日本を代表する保険グループ、SOMPOホールディングス株式会社グループで39年間、経営の最前線でリスク管理に携わり、グループCRO(最高リスク責任者)を務めた伊豆原孝(いずはら・たかし)さんです。
伊豆原さんは、新刊『仕事のミスは、この思考で9割防げる』の中で、できる人ほど陥りやすいリスク、注意点について詳しく解説しています。今回のnoteでは、同書の中からその該当箇所を一部編集して公開します。

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過去の成功は、判断力を鈍らせる
過去の成功は、人に自信を与えます。自信は、挑戦を続けるためにとても重要な要素です。
しかし、過去にうまくいった体験は、時に人の判断を曇らせることもあります。
環境が変わっているにもかかわらず、同じやり方を続けてしまう。私はこれを「過去の栄光リスク」と呼んでいます。
この典型例が、写真フィルムでかつて世界を席巻したイーストマン・コダックです。
コダックは長年、写真フィルム市場で圧倒的なシェアを誇っていました。
ところが、デジタルカメラの時代が到来したとき、同社はその変化に十分対応することができませんでした。皮肉なことに、デジタルカメラの基本技術は、コダック自身が開発したとも言われています。それでも同社は、フィルム事業という成功モデルを手放すことができず、最終的にコダックは経営破綻に追い込まれます。
この出来事が示しているのは、とても象徴的な事実です。
過去の成功が大きいほど、人はその成功を手放せなくなる。環境が変わっているにもかかわらず、人はその成功モデルに縛られてしまうのです。
気づいていたのに、なぜ変われないのか?
この現象は、企業だけの話ではありません。組織の中でも同じことが起こります。
私が運用部門にいた頃、似たような光景を目にしました。
当時、私は国内債券の運用を担当していましたが、ずっと不思議に思っていたことがありました。
低格付けなのに、社債より利回りの低い企業向け融資が優先されていたことです。
合理的に考えれば、その資金で社債を購入したほうが、より低いリスクで高いリターンを得られます。にもかかわらず、企業向け融資は当然のように続けられていました。
そこには歴史的な経緯があります。かつて国内の社債市場は十分に整備されておらず、社債投資が必ずしも容易ではありませんでした。一方で顧客でもある車のディーラーやリース会社などの取引先には資金ニーズがあり、保険会社の運用ニーズと合致して融資が拡大してきたのです。
しかしその後、社債市場の発展に伴い、社債投資のほうが合理的な運用となる場面が増えていきます。それでも融資部門の人たちは、従来のやり方に強くこだわり続けました。彼らにとって融資は、長年築き上げてきた「聖域」でした。そして「旧来型の融資は今後も運用の中心的なポジションを占める」という信念を持っていました。
最終的に、私が運用企画部門に異動した際、債券より不利な条件で融資を実行できないルールを設けました。その結果、企業向け融資は大幅に縮小することになります。
一方で、同じ融資でも新規分野である証券化市場に着目したチームは、新しい市場を開拓し、収益を安定的に拡大していきました。
守旧派の融資部門の人たちも、この変化に気づいていなかったわけではないでしょう。ただ、彼らには拠りどころとなる「過去の栄光」がありました。その栄光にしがみついた結果、新しい分野への転換が遅れ、ビジネスは縮小していったのです。
同じ組織でも、過去に固執する人と、変化に適応できる人がいる。この違いを生むのは能力ではありません。過去の成功との向き合い方です。
過去の栄光にしがみつかないために
この問題は企業や組織の話にとどまりません。私たち一人ひとりにも当てはまることです。
例えば、社内で特殊なスキルを持つ人材がいたとします。ある分野で高い専門性を持ち、長年その仕事を任されてきた人は、組織にとって貴重な存在です。
ところが、そのスキルに依存しすぎると、変化への適応が遅れることがあります。
新しい技術や新しいやり方が出てきても、
「それは本質ではない」
「今までのやり方で十分だ」
と考えてしまうと、かつては不可欠だった専門性が、いつの間にか
「プライドだけ高くて使えない人材」
という評価に変わってしまうことさえあります。
過去の成功は確かに資産です。しかし、その成功体験にしがみついた瞬間、それは未来の判断を曇らせるリスクにもなります。
だからこそ、自己研鑽によって自分自身の価値を更新し続けることが大切です。
スキルを磨き続けること。新しい領域に果敢に挑戦すること。そして、自分の価値が陳腐化しないよう、常に自分自身をアップデートし続けること。
これこそが、過去の栄光リスクから自分を守る最も確実な方法です。
〈著者プロフィール〉
伊豆原 孝(いずはら・たかし)
元SOMPOホールディングス株式会社グループCRO執行役員(最高リスク責任者)。元・一般社団法人日本損害保険協会常務理事。大阪府立北野高等学校を経て京都大学文学部卒。国際大学大学院国際経営学研究科(MBAコース)修了。日本を代表する大手保険グループおよび業界団体の第一線で39年間にわたって活躍し、特にERM(統合的リスク管理)を専門とする。米国格付会社Standard & Poor’sによるERM評価では、日本の保険会社として当時最高ランクとなる「Strong」の獲得に貢献した。「月曜日が待ち遠しい社員であふれる社会」の実現を目指し、60歳にして社会保険労務士の資格を取得。現在は、企業の組織づくりや管理職育成を支援するマネジメントコーチとして活動するほか、リスク管理・コンプライアンスと組織マネジメントを融合した研修・講演を全国で行っている。人が生き生き働く組織づくりを学ぶオンライン講座「ひといき会」主宰。一般財団法人日本プロスピーカー協会認定シニアプロスピーカー。神奈川県藤沢市在住。休日は妻と合唱や海辺のランを楽しんでいる。
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いかがですか?
著者の伊豆原孝さんは言います。
仕事で本当に差がつくのは、「問題が起きた後の対処」ではありません。問題が起きる前に、その兆しに気づける人です。仕事で成果を出し続ける人ほど、「見たくない現実」を冷静に見つめています、と。
本書で身につくのは、単なるミス防止術ではありません。人生とキャリアを長く守り、成果を積み重ねていくための「一生使える思考法」です。
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