【地方創生 番外編⑨】タイパ世代の180度の大覚醒。「この人のために」という想いの種が、地域と学校の"痛み"を溶かす瞬間
◆ 休盆明け、届いた議事録に息を呑んだ
8月27日、エイサー班の定例ミーティング議事録が届いた。
宜野湾中学校との面談アポイント。ホテルとの連携交渉。大山自治会へのヒアリング。農作業体験のタイムラインも、すでに確定していた。
一つひとつのタスクが、迷いなく、しかし丁寧に積み上げられている。
これは、タックマンモデルでいう「Performing(機能期)」チームが最も高いパフォーマンスを発揮する段階に、完全に到達した姿だった。

◆ 最初の議事録から、180度変わったチーム
正直に言おう。
この班ほど、最初の議事録から180度変わったチームを、私は見たことがない。
開講したばかりの頃、彼らの議事録にはこう書かれていた。
「プライベート重視」「極力業務内完結」「だらだらしない40分Zoom」
スマートで、無駄がなく、隙のないタイパ戦略。当時の彼らは、そう名乗っていた。
なぜ、これほどまでに変わったのか。
答えは、一人の生産者との出会いにある。
志を持って農業に命を懸ける、荒川氏。その熱量に触れた瞬間、エイサー班の心の中に、想像以上のインパクトが走った。
「この人のために、役立ちたい」
タイパという言葉では測れない、想いの種が、確かに撒かれた瞬間だった。
◆ 学校の"痛み"に、寄り添う
彼らが本当の実力を見せたのは、ここからだ。
宜野湾中学校とのタイアップを進める中で、彼らはリサーチの過程で、ある事実を掘り当てた。
学校側には過去、「農家の協力が得られず、体験学習を断念した」という歴史があったのだ。
多くのチームなら、この事実を知った時点で怯んだかもしれない。「また断られるのではないか」と。
しかし、エイサー班は違った。
過去の失敗を知った上で、なお挑む。地域の未来を担う子供たちを、巻き込むために。
彼らが学校に持ちかけたのは、単なる「体験させてください」というお願いではなかった。
「私たちが間に入って、農家との調整・段取りを丸ごと引き受けます」
これが、エイサー班が生み出した介在価値だった。学校の負担を増やさず、学校の痛みだけを解決する、Win-Winの提案だ。
そのとき、チームの大手旅行社に勤めるメンバーが、こう言い切った。
「必ずこのイベントは成功します。子どもたちは喜んでやりますよ。私には成功体験があります」
その一言が、チームに漂っていた不安の雲を、一気に吹き飛ばした。

◆ 数字が支える、提案の背骨
エイサー班の提案には、もう一つ、知的なプロフェッショナリズムが光っていた。
大山地区の湧き水「大山樋川ガー」。
年間を通じて24.3℃という安定した水温。本土平均の7.4倍というカルシウム濃度。
この科学的データが、琉球蓮根特有のシャキシャキとした歯ごたえを生み出している。
情熱だけでなく、根拠のある数字を背骨として携えていること。これが、学校やホテルへの提案に、揺るぎない説得力を与えている。
◆ 今の若手たちへ、伝えたいこと
ここで、少し立ち止まって、現代のビジネスパーソンに向けて伝えたいことがある。
今の若手世代は、学生時代から生成AIを使いこなし、レポートを器用に仕上げる「ラクをして乗り切る成功体験」を積んできた世代だと言われる。
その器用さ自体は、悪いことではない。
しかし、ネットの検索画面でヒントや答えを「見つける」だけでは、本物の仕事は絶対にうまくいかない。
泥をかぶり、現場に立ち、人の懐に入って心を通わせる。その喜びを、実際に体で覚えること。
用意された答えをなぞるのではなく、仲間と泥まみれになりながら、自分たちで新しい答えを創り出すこと。
そしてそれらの活動の通して育つ当事者としての覚悟。
エイサー班の姿が、そのことを何よりも雄弁に物語っている。
9月4日、彼らは大仕事へと向かう。

その日、エイサー班自身が、自分たちの提案を体験する。
まだ、誰にも分からない。
その日を、私も心から楽しみにしている。
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