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一休さん vs 点訳挿入符

この はし わたるべからず

立て札に書かれたこのお触れを読み、堂々とその橋を渡ってみせた一休さん。
頓知好きの私にはたまらない逸話です。

「『橋を渡るな』と書かれているだろう」と怒られた一休さんは、「『はし』を渡ってはいけないと書かれてあったので、真ん中を渡りました」と切り返す。

立て札を立てた人がちょっと嫌みに描かれていたりして、その鼻を明かしてくれた一休さんの頓知に胸のすく思いがしたものです。

これは、「はし」がひらがなで書かれているからこそ成り立つ物語。


一方、点訳は、漢字をすべてひらがなに変換するような作業なので、この「はし」のような誤解が生まれやすくなります。

建造物の「橋」、空間内の位置としての「端」、日本の食事に欠かせない道具の「箸」……

漢字には同じ読みをする異なった漢字、同音・同訓異字がたくさんあります。
また、漢字、ひらがな、カタカナを使い分け、表記の違いに意味を持たせている場合もあります。

それこそ、漢字変換ミスをテーマにした文章なんかだと、同音・同訓異字のオンパレードになるのは必至。

例えば…

「必至」と入力するつもりが「必死」になっていた。
「ヒッシ」ト ニューリョク スル ツモリガ 「ヒッシ」ニ ナッテ イタ。

「どこが違うんだよ!」と、ツッコみたくなりますよね。

漢字の違いによる意味の区別が、点訳することで完全に失われてしまう……

こういうときに活躍するのが「点訳挿入符」です。

点訳挿入符 (下部4点 × 2マス)
同音異義語など点字ではわかりにくいと思われる語句や漢字、図表などについて、点訳に際して特に説明を加える必要がある場合に用いる。

『点訳のてびき』
点訳挿入符の形状。下部4点(②,③,⑤,⑥)かける2マスで、点訳挿入符の開き記号または閉じ記号となる。

※ 点訳挿入符を墨字(視読用文字)で表すときには、点字編集ソフトでの表記に合わせて「丨丨〜丨丨」とさせていただきます。

先ほどの点訳文に点訳挿入符で説明を加えるなら、こんな感じでしょうか。

「ヒッシ丨丨カナラズ ソー ナル コト丨丨」ト ニューリョク スル ツモリガ 「ヒッシ丨丨カナラズ シヌ コト丨丨」ニ ナッテ イタ。

必ずしも最適解とは言えないかもしれませんが、私ならこういう説明を補うだろうという一例です。

これ、点訳者のセンスが問われますよね。
だから、点訳挿入符を使うときには、少し身構えてしまいます。


あと、点訳挿入符について厄介なのが、形が第1カッコ(丸括弧)と似ている点です。

第1カッコは,丨で始まり,丨で終わる。点訳挿入符は,丨丨で始まり,丨丨で終わる。

丸括弧を二重にしたら点訳挿入符。
しかも、開き記号と閉じ記号が同じ形。

これが連続したら、ややこしいことこの上ない!

私は、現在点訳中の『はじけてダンス!』で、この丸括弧と点訳挿入符連続問題に直面しました。

『呪重宝記(あるいは調法記)』

※ 「マジナイチョーホーキ」と読むそうです

これを点訳するのに、「チョーホーキ」と読める2箇所それぞれの直後に点訳挿入符を入れてしまったら…

『呪重宝記丨丨重ねる、宝、記録の記丨丨丨あるいは調法記丨丨調べる、法律の法、記録の記丨丨丨』

もう、どこが本文でどこが点訳者による説明なのか……さっぱり分かりません。

『点訳のてびき』にも、こんな指示が…

点訳挿入符とカッコ類が続いて、「丨」が3マス連続する状態で用いることはできないので(中略)工夫する。

『点訳のてびき』

具体的には、点訳挿入符の位置や内部の文章表現を工夫するようにと書かれているのですが……

それにしたって、簡単に「工夫」と言われても!
私みたいな新米には、その「工夫」がなかなか難しいのです。

苦肉の策でひねり出した案が…

『呪重宝記丨あるいは調法記丨』丨丨チョーホーは、前者が「重ねる」に「宝」、後者が「調べる」に法律の「法」丨丨

どうにか、丸括弧と点訳挿入符の連続問題は解消させました。

しかし…

点訳挿入符は本文の流れを中断して説明を行うので、使用が過剰にならないように気を配り、説明も簡潔明瞭におこなって、本文の雰囲気や理解を損なわないように心がけましょう。

『点訳のてびき』

私の案が「簡潔明瞭」と言えるのかどうか……早く先輩に確認して頂かなければ。

点訳挿入符、うまく使いこなせる点訳者になりたいものです。

※ 今後、note記事投稿の際に「点訳したら点訳挿入符を付けたほうが良さそうだな」と感じる語句を使用した場合には、点訳挿入符を加える練習台として記事の末尾に「点訳挿入符の特訓コーナー」を設けていくつもりです。

では、早速……


丨丨点訳挿入符丨丨の特訓コーナー

このはしわたるべからず

コノ ハシ丨丨カワナドノ ウエニ ワタサレタ ツーロ丨丨 ワタルベカラズ

一休さん、ごめんね!

あ、でも。
一休さんの物語を点訳するなら…

「コノ ハシ ワタルベカラズ」丨丨スベテ ヒラガナ丨丨

でしょうか。

いや……この物語の場合は、わざわざ説明を加えるのは野暮なんだろうな。


2026.7.9 追記

『呪重宝記(あるいは調法記)』の点訳につきましては、こちらの記事に後日談(解決編)を掲載しております。

また、「ヒッシ」の例文につきましても、「点字note #5」にて点訳案を見直しました。



点字note 一式

点訳後記掲載

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点字note まとめ記事(凡例あります):
https://note.com/gesund_fumika/n/n3dd6a7fcc744

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