【組織開発プロフェッショナルを目指す方へーVol.52】2.3 Training Delivery & Facilitation 統合・実践編ーーー「場を設計できる人」が、組織変革を前に進める
なぜ書くか
様々な情報が飛び交う現代において、人事(HR)に求められる役割は年々高度化しています。一方で、日本に住む約1億人の多くが、グローバルでの最新のHRの取り組みやアカデミックな知見に体系的に触れる機会を十分に持てていないのが現状です。
Every Inc.では「日本のHRをもっとグローバルに」というビジョンを掲げ、グローバルな取り組みや学術的文献、先端企業の実践事例をもとに、HRに関する知見を発信しています。
本ブログでは、「日本ならでは」「日本では難しい」という枠組みではなく、“グローバルスタンダードとしてのHR・組織開発"を軸に、
なぜ今、その理論が重要なのか
組織で何が起きているのか
HRはどのような問いを立てるべきなのか
を整理していきます。本ブログでは、CPTDの能力要件を軸に、
組織開発を支える理論と実務をつなぐ視点を提供しています。
少しでもこの領域を楽しんでくださる方が増えたら嬉しいです。
※CPTDとは
ATD(Association for Talent Development)は、世界最大の人材開発(Talent Development)に特化したプロフェッショナル団体であり、個人・組織の能力開発に関する国際的な標準をリードしています。そのATDが提供するCPTD(Certified Professional in Talent Development)およびAPTD(Associate Professional in Talent Development)は、人材育成・組織開発・学習設計・パフォーマンス改善といった領域において、実践力と専門性を証明する世界有数の資格です。
本記事は、CPTD能力要件
2.3 Training Delivery & Facilitation の統合編です。
1. なぜ同じ設計でも成果が変わるのか
同じスライド。
同じケース。
同じ時間設計。
それなのに、
ある回は深い対話が生まれ、
ある回は表面的な感想で終わる。
なぜでしょうか。
ある企業で「1on1スキル研修」を実施しました。
設計は同一です。
しかし結果は分かれました。
A回:参加者が本音を共有し、上司との関係改善につながった
B回:理論確認で終わり、「うちの会社では無理」で締まった
違いは何だったのか。
B回では、
管理職が複数参加していた
部下が発言を控えていた
トレーナーが沈黙を埋め続けた
つまり違いは、
Group Dynamics(集団力学)と Presence にあったのです。
2. ID × Delivery × Presence の三層構造
2.3 Training Delivery & Facilitation を実務に落とすと、三層構造になります。
第一層:Instructional Design(設計)
例:
「1on1を実践できる」をゴールに設定
ロールプレイを組み込む
フィードバックの型を設計する
第二層:Delivery(運営)
例:
ロールプレイ後に「うまくいかなかった点」を必ず共有させる
発言が偏ったら問いを投げ直す
時間配分を調整する
第三層:Presence(在り方・場の安定力)
例:
部下が本音を言った瞬間に否定しない
上司の反論をいったん受け止める
沈黙を急いで埋めない
三層が揃って初めて、
行動変化は起きます。
3. Group Dynamicsを扱えないと何が起きるか
役員同席のワークショップ。
テーマは「組織の心理的安全性」。
若手は沈黙。
役員が発言すると、場が固まる。
これを扱わなければ、
表面的な合意
本音の不在
「良い場でした」という形式的評価
で終わります。
しかし、集団力学を扱えるトレーナーは言います。
「役職が違うメンバーでの対話は、少し難しさがありますよね。」
この一言で、
見えない力学が可視化されます。
4. Difficult Situationは学習の入口
批判的参加者が言います。
「理想論ですね。現場では無理です。」
ここで防御すれば、場は閉じます。
しかし、
「無理だと感じるのは、どんな前提があるからでしょうか?」
と問い返すと、
評価制度の問題
リソース不足
上司の行動
といった構造が見えてきます。
抵抗は敵ではありません。
それは、組織の現実を示すデータです。
5. モダリティは体験設計である
対面か、オンラインか。
同じテーマでも、
対面:対立するケース討議で感情が動く
オンライン:匿名ツールで本音が可視化される
心理的安全性が低い組織では、
オンラインの方が深い対話になることもあります。
モダリティは形式ではなく、
目的から逆算する設計変数です。
6. Presenceが最終的な差を生む
問いを投げた後、沈黙が生まれる。
多くのトレーナーは、
追加説明をする
ヒントを出す
自分で答えを言ってしまう
しかし、Presenceが安定しているトレーナーは待ちます。
5秒後、
一人がゆっくり話し始める。
その発言が引き金となり、議論が深まる。
Presenceとは、
沈黙に耐える力
自分の不安を扱う力
場の感情を保持する力
でもあります。
7. HRに求められる専門性
HRに問われるのは、
講師スキルではありません。
この場は心理的安全か
発言は偏っていないか
認知負荷が高すぎないか
抵抗は扱われているか
を観察し、介入できる力。
これは、
組織開発の専門性です。
8. 2.3の統合まとめ
2.3 Training Delivery & Facilitationとは、
設計を実行に変える力
集団力学を扱う力
心理的安全性を守る力
理論キーワードで整理すると:
Group Dynamics
Psychological Safety
Instructor Immediacy
Active Listening
Cognitive Load
Emotional Regulation
Delivery Modalities
これらを統合できる人が、
組織の「学習する力」を高めます。
同じ設計でも成果が変わる理由は、
スライドではなく、場を扱う力にあるのです。
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執筆者紹介:松澤 勝充

神奈川県出身1986年生まれ。青山学院大学卒業後、2009年 (株)トライアンフへ入社。2016年より、最年少執行役員として組織ソリューション本部、広報マーケティンググループ、自社採用責任者を兼務。2018年8月より休職し、Haas School of Business, UC Berkeleyがプログラム提供する Berkeley Hass Global Access Program にJoinし2019年5月修了。同年、MIT Online Executive Course “AI: Implications for Business Strategies”修了し、シリコンバレーのIT企業でAIプロジェクトへ従事。
2019年12月(株)トライアンフへ帰任し執行役員を務め、2020年4月1日に株式会社Everyを創業。企業の人事戦略・制度コンサルティングを行う傍ら、UC Berkeleyの上級教授と共同開発したプログラムで、「日本の人事が世界に目を向けるきっかけづくり」としてグローバルスタンダードな人事を学ぶHRBP講座などを展開している。
保有資格:
SHRM-SCP(SHRM)
CPTD(ATD)
Senior Professional in Human Resources – International (HRCI)
Global Professional in Human Resources (HRCI)
The Science of Happiness(UC Berkeley)他
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