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建物をいろんな角度から眺めた9日間〜東京建築祭2025⑤〜

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「東京建築祭」とは、東京にある新旧さまざまな建物を味わいながら、建物そのものだけでなくそこに関わった人々の想いを感じていくというイベント。

2024年から始まって去年で2回目。これまで私は、2025年の「東京建築祭」で参加したイベントに関するノートを四つほど書いた。

◎グランドプリンスホテル新高輪
 (+明治生命館、第一生命日比谷ファースト)
◎帝国ホテル
◎旧東京中央郵便局
◎東京大学

さて、そんな「東京建築祭2025」について、ちょっとまとめてみよう。

2025年5月17日(土)から 25日(日)の期間中に、106件の建築が参加していて、以下のようなイベントがある。

●普段は入れない建物に入れたりする「特別公開」や「特別展示」…43件
●ガイドさんに案内されて回る「ガイドツアー」…85コース(211回)
●「公式イベント」…8件(11回)
●「連携企画」…14件

始まってまだ2年目のイベントとしてはなかなかの規模だ。中でも人数や回数に制約のある「ガイドツアー」は抽選制で、人気のツアーとなるとかなりの倍率になっている。

実は初年度、開催に気づくのが遅れた私は、応募が間に合わず抽選イベントに参加できなかった。そこで去年は、しっかりと応募した。結果、8件のイベントに応募して、当選は4件。当選率50%は、なかなかの高率である。

が、正直なことを言うと、当選した4件のうちの1件はクラウドファンディングによる獲得なので、実力で当選したのは3件だけだ!やっぱり狭き門である。

さて、

そんな東京建築祭2025、私はそれ以外にも「抽選の必要がない物件」を7件ほど訪ねている。そのうちの2件(「明治生命館」と「第一生命日比谷ファースト」)については、すでにこのページで紹介しているので、残りは5件。そんな5件についても、せっかくなので簡単に紹介しておく。

学士会館

千代田区神田錦町にある「学士会館」は、旧帝国大学(現在の国立7大学)出身者からなる学士会会員の親睦と知識交流を目的とした倶楽部建築として、1928年に竣工。関東大震災後に建設された<震災復興建築>の代表作としても知られる。設計は、「聖徳記念絵画館」や「帝国ホテル新本館」の設計でも知られる髙橋貞太郎さん。

神田錦町 学士会館
(1928年竣工/設計:高橋貞太郎)
Rのついたコーナーのメダリオンがかっこいい!
※画像引用

実はこの学士会館、震災前に「明治生命館」や「歌舞伎座」の設計でも知られる岡田信一郎さんによる別プランも存在したそうだが、震災後に改めてコンペが実施され高橋の案が採用された。当時若手設計家だった高橋のデビュー作とも呼べる作品。簡素にして質実、古典と近代が融合したデザインだ。

もうちょっと俗っぽいことを言うとこの学士会館、「半沢直樹に大和田常務が土下座した部屋」がある建物としても有名だ。下のイラストの部屋は、学士会館の「大食堂」をロケに使っている。

ドラマ『半沢直樹』で
大和田常務(香川照之さん)が半沢直樹(堺雅人さん)に土下座する場面
(イメージ図)

そんな「学士会館」だが、老朽化による再開発のため2024年末をもってすでに閉館(一時休館)している。しかし、その詳細な3Dデータから館内バーチャルツアーが作られており、今回はそれをオンラインでライブ配信しながら紹介するという東京建築祭2025唯一の有料配信コンテンツだ。有料。

■【ライブ配信】デジタルで蘇る名建築の空間、学士会館バーチャルツアー

まず、文化財保存計画協会の岡建司さんと豊永早織さんが進行役となり、プレゼンスタイルで画像やテキスト情報を見ながら、この学士会館とはどんな建物なのか?現在はどうなっているのか?という説明があってから、メインディッシュである「3Dデータによるバーチャルツアー」が始まった。

■学士会館バーチャルツアー(学士会館デジタルアーカイブ)

最初に、3Dデータによる学士会館「外観」を見ながらの解説から始まる。

まずは、旧館。

震災復興で大流行した「スクラッチタイル」が印象的な外観では、1階から4階まで各階ごとに窓の意匠を変えて独特のリズムを作っている。

そして、メインエントランスである古典的な玄関アーチをくぐると、天井のモールディングが格調高く迎えてくれる。

1階 広間@学士会館
モールディン(立体装飾)が印象的な真っ白な天井のと、
床の赤絨毯との対比が美しい!
※画像引用

そのまま玄関から館内に入ると、上の写真のように赤絨毯を敷き詰めた「広間」に進む。この部屋は、いくつかの建築様式が組み合わさったデザインで、中でも「鋲の打たれた12角形のセセッション風の柱」が印象的だ。内壁には、外壁と同様に大量の「富国石」が、赤絨毯が敷かれていない部分の床面には「泰山タイル」が敷かれている。この広間にある3つのドアからそれぞれ、「球戯室」、「談話室」、「新聞雑誌室&囲碁将棋室」へと進むことが出来る。向かって左側には上写真のように「エレベーター」と「大階段」がある。

1階の「談話室」や2階の「大食堂」(201号室)などの内装は、アカンサス模様がアクセントになった英国チューダー様式。中でも、ドラマ『半沢直樹』で大和田常務が土下座したロケ地としても有名な「大食堂」には、当時アメリカから大量のH鋼を輸入して、中央に柱が一本もない構造を実現している。

2階 大食堂@学士会館
ドラマ『半沢直樹』の撮影の際には、反対側から撮影。
椅子やテーブルも別のものが置かれていた。
※画像引用

この部屋には、中2階のような場所に楽団用のテラス(下写真)がある。このテラスの手摺子部分は金属製だが、戦時中に金属供出された「大階段」の手摺子と違って、今も手摺子部分が創建時のまま残されている。当時、「木材です」とか嘘をついて供出を免れたのかもしれないと説明していた。

2階 大食堂@学士会館
楽団用のテラスはフルバンドというよりは
三重奏とか四重奏という感じだろうか。
巨大な梁(中にはH鋼?)を支えるべく壁から伸びるコーベルのフォルムが美しい!
※画像引用

設計者の高橋貞太郎さんは学士会館の1階から4階を「ひとつの住宅」と見立てて設計した。つまり、1階はリビング、居間として、2階はお客様用のゲストルーム、3階は書斎や会議室、4階は寝室、宿泊室と考えたそうだ。

続いて、新館。

旧館(1928年竣工)と新館(1937年竣工)で建った時代こそ違うものの、どちらも文化財的価値が高い。関東大震災の復興建築であり、耐震構造になっており防災性能が高い。どちらも帝都復興を象徴するランドスケープだった。のち、敗戦後にはGHQに接収された歴史もある。

学士会館デジタルアーカイブ
デジタルで再現出された学士会館
右手前が「旧館」、左奥が「新館」だ!
※画像引用

<旧球戯室の3D復元について>

さて、後半は「旧球戯室の3D復元について」をテーマに、この作業を担当した三菱地初設計の喜久里尚人さんが語った。

旬菜寿司割烹「二色」(旧遊戯室だった場所)@学士会館
閉館する前に行っておきたかったなぁ
※画像引用

最終的に旬菜寿司割烹「二色」として使われていたこの部屋は、かつての旧球戯室時代の意匠が完全に失わていた。過去の意匠のヒントとなるのは、古い時代のモノクロ写真だけ。そのため、今回のバーチャルツアーのためにこの部屋の3D復元データを作るのは、他の部屋とは違った苦労があった。

1階 旧遊戯室(デジタルデータ)@学士会館
素直に、めちゃくちゃカッコいい遊戯室の面影が偲ばれる。
※画像引用

旧球戯室の詳細な3Dデータを作るため、当時の資料を徹底的に研究し、不明なところは部分解体してまで確認したという。この部分解体のおかげで、元の壁紙がワインレッド色だったことまで判明したという。

そんな、東京建築祭2025唯一のネットイベントで紹介された「学士会館のバーチャルツアー」は、下記のサイトでいつでも楽しむことができる。

■学士会館バーチャルツアー(学士会館デジタルアーカイブ)

なお、この学士会館は今後、「旧館」は曳家で移動してから免震化工事を行って保存し、「新館」は解体されることになっているそうだ。

今回のイベントのSpeakerの皆さん:
左から、喜久里尚人さん(三菱地初設計)、
豊永早織さん岡建司さん(文化財保存計画協会)


三井本館

日本橋 三井本館
(1929年竣工/設計:トローブリッジ・アンド・リヴィングストン事務所)
中央通り沿い、
この建物と日本橋三越本館が並んでる風景は、
どんな時間に見ても最高だ!
※画像引用

日本橋の真ん中で三越百貨店の隣にででーんと存在感を主張しまくっているのが「三井本館」だ。

ここは一昨年の東京建築祭2024でも「特別公開」されており、私も長い行列に並んできた。だが、その時見ることが出来たのは、裏手の日銀通り側にある「合名玄関」から入った「受付ホール」のみだった。それでも感動した。三井財閥全盛期の体力が余す所なく注ぎ込まれた受付ホールと、係の人が見学者のためにわざわざ呼んでくれた古式ゆかしい「エレベーター」の内部を遠巻きに見るだけで感動した。

合名玄関 受付ホール@三井本館
「合名玄関」の、いわゆる受付カウンター
床の模様といい、壁の模様といい、とてもスタイリッシュ!
※「東京建築祭2024」で撮影
受付ホールから見たエレベーター内@三井本館
当時、係の人が何度か「開」ボタンを押して
中を見せてくれた。
※「東京建築祭2024」で撮影

そして、この時もっとも印象的だったのは、受付ホールとエレベーターを見る数分間のためだけに、最終日など見学のための行列が建物を3/4周するほどになり、かなりの長時間待たされたにも関わらず、誰ひとり文句を言ってる姿を見かけなかったことだ。その風景を見て、東京建築祭の参加者さんたちの成熟度に驚いた。

さて、そんな三井本館が2年目の東京建築祭2025に、もう一段階進んだツアーを提供してくれた。題して、

■【三井本館】旧三井財閥の本拠、「東洋一の大金庫」と旧三井信託の社長室を体験

解説には以下のような文章がある。

今も現役のモスラー社製「東洋一の大金庫」や旧三井信託の社長室など、普段は入ったり見たりすることができないエリアを体験

URL

めちゃくちゃ行きたい!入りたい!

当然私は抽選に応募した。
が、あっという間に落選した。

でも、三井本館は太っ腹なことに、前年は合名玄関から「受付ホール」に入るだけだった「特別公開」の公開コースを、もうちょっとだけ広げてくれた。

つまり!

合名玄関から入った受付ホールに入ると、そのままエレベーターに乗って5階のオフィスフロアまで行ける。さらに5階では、建物を一周する廊下を巡回することが出来る。ただし、どの部屋にも入ることは出来ず、写真撮影も出来ない。ただただ廊下を一巡して、再びエレベーターに乗って一階まで降りてくるというコースだ。

それでも私は見たい!行きたい!回りたい!

■三井本館【特別公開】

早速、行ってきた!
ちなみにこのイベントは、抽選こそなかったものの「順番待ちの受付」(時間ごとにネットで予約)の必要はあった。決められた時間になると、おなじみ、日本銀行側にある「合名玄関」から中に入ることができた。

まず、一年ぶりに合名玄関から入った受付ホールで感動する。前回は短時間そこに滞在して、エレベーターの開閉を遠くから目撃したのち、あとは退場するだけの数分間だったが、今回はエレベーターに乗るための待ち時間としてそこに堂々と滞在することが出来る。しかも、数名のボランティアさんたちがこのビルについて簡単な解説もしてくれた。逆に言うと、最高のエレベーター待ち時間である!

合名玄関 受付ホール@三井本館
床のデザインのせいだろうか?
受付カウンターが「ルーク」みたいに見えるw
※画像引用

そして、エレベーターに乗った。このエレベーターがまた趣深い。緊張しながら内部をじっくりと見ている間に、目標階に着いた。そりゃそうだ。5階である。すぐに着く。

合名玄関 エレベーター@三井本館
階数表示板がめちゃくちゃカッコいい!
※画像引用

ここからは、かつて三井財閥の奥の院だった廊下が延々と続く。その、普段なかなか歩くことのない赤絨毯を、同社の重役になった気分で歩く。両脇から腰高の美しい大理石が出迎えてくれる。それだけで、意味もなく興奮する。

5階オフィスフロア 廊下@三井本館
両脇の大理石板だけでもとんでもない価格になりそうだ
※画像引用

両側にいつくもあるドアには、関連会社の社名プレートがついている。どれもが「なるほど、三井グループの中核企業だよね!」という名前ばかり。「おおっ!」とか「ああっ!」とか、思わず心の中で声が出る。どの部屋にも入ることは出来ないが、フロア全体の雰囲気がなんとも言えない威圧感を放っている。その空気に名前をつけるすると、「古典の風格」と「現役のリアリズム」の混合。なんとも言えない緊張感が最高潮に達する!

そんな、数分間の超豪華なお散歩を終えて、再びエレベーターに乗って日常世界である1階まで降りる。ああ、面白かった。そして私は誓った。今年(2026年)こそは、抽選で当ててきっと入るぞ、金庫と社長室!

NOVARE Archives(清水建設歴史資料館)

東京潮見 NOVARE Archives(清水建設歴史資料館)
2023年竣工/設計:清水建設
建物自体のデザインもとても素敵!
※画像引用

「NOVARE Archives」…まあ、まず読めない。
てゆーか、私も読めない。
さらに、いったいこの言葉が意味するものがなんなのか、さっぱりわからなかい。
場所は江東区潮見だという。
それを聞いてもまったくヒントにならない。

東京建築祭で行く、江東区潮見にある「NOVARE Archives」という名前の日本を代表する建物とは!?

調べたら速攻でわかった。

読み方は「ノヴァーレ・アーカイブス」。
「NOVARE Archives」とは、日本を代表するゼネコン、清水建設の歴史資料館であることがわかった。

それだけ著名企業の資料館であるにも関わらず、その名前を聞いたことがない。なんでだ?

さらに調べてみた。

実はこの施設、普段から完全予約制の上に、少人数しか入れない。つまり、いつでも誰でも入れる施設ではないのだ。

今回の「特別公開」では、そんなこの施設に入れる。
ただし、「順番待ち受付」だけは必要だ。そこで、ネットから予約した上で、指定された時間にJR京葉線の潮見駅に向かった。

駅を降りると、「NOVARE Archives」がいきなり駅前に建っている。

中に入ると、前半の展示ブロックには、清水建設の輝かしい歴史を彩る資料や写真、衣装、道具類が展示されていた。

清水文庫(NOVARE Archives)
式典用の古式ゆかしい衣装や大工道具なども揃っている!
※画像引用

後半は「エポック展示」と名付けられたスペースで、かなり広い空間の中に、清水建設がこれまで建ててきた日本の主要な建造物の模型が所狭しと展示されている。

エポック展示@NOVARE Archives
建築模型の周囲のモニタでは、
非常に貴重な当時の動画なども見ることができる!
※画像引用

「築地ホテル館」(1868年竣工)、「第一国立銀行」(1872年竣工)、「東大安田講堂」(1925年竣工)、「三井本館」(1929年竣工)、「服部時計店ビルディング」(1932年竣工)、「国会議事堂」(1936年竣工)、「第一生命館」(1938年竣工)「国立代々木競技場」(1964年竣工)…など20個ぐらいの建築模型が並ぶ。まあ、壮観である。

エポック展示 国会議事堂(建築模型)@NOVARE Archives
建築模型の真っ白な筐体も美しい!
エポック展示 国立代々木競技場(建築模型)@NOVARE Archives
この模型だけ特別な模型になっている。
つまり、俯瞰で見ると楕円の会場を等分で割って、
建設工事の初期段階からだんだんと完成に向かっていくようになっている。
そう、ひとつの模型の中に複数の時間がある。
上の写真だと、手前が初期段階で時計周りに工事が進んでいく。
なかなか見応えのある建築模型だ。

これらの建築模型の中には、今回の東京建築祭2025に参加している建物もいくつか混じっている。だから、これらを見ながら、まるで今回の東京建築祭の「まとめサイト」を見てるようなような気分になった。

そして、この展示スペースにいた「STAFF」の腕章をつけた男性についても触れておく。彼は、質問をしてきた見学者や、熱心に模型に見惚れている見学者にとても情熱的に、でも抑制された素晴らしい語り口でいろいろな説明をしていた。すべて、清水建設の工事についての解説だ。同社の元建築マンだろうか?彼の言葉も素晴らしかったが、その表情を見ているだけで彼が自社の仕事に誇りを持っていることが感じられて、それだけでなんだか嬉しくなった。

ガイド:お名前は不明だが「STAFF」腕章の男性@NOVARE Archives

あと、この施設「NOVARE Archives」にはもう一つ素敵なオマケが付いていた。館内からガラス越しに、最近この地に移築されたばかりの「旧渋沢家住宅」をすっかり見渡せることだ。(下の写真)

旧渋沢家住宅@NOVARE Archives
和と洋が混在したとても魅力的なお屋敷だ。
是非一度潜入してみたい!

この建物は「日本近代資本主義の父」とも称される渋沢栄一とその子孫が四代にわたって暮らした住宅。1878年竣工。設計施工は、清水建設の二代目店主の二代清水喜助。その後、数度の移築や増改築を経て、今回江東区潮見の地に3度目の移築を行い、江東区指定有形文化財に指定されている。

施設の人に「渋沢さんのお家、中に入ることは出来ないんですか?」と質問したら、「毎週木曜日だけ、少人数ですが見学を受け付けています。募集しているので、ネットから応募して下さい。ただし、倍率はかなり高いので、くじけないで応募し続けて下さいね」と、妙な応援をされてしまった。

「NOVARE Archives」をすっかり楽しむことは出来たが、次回はこの「旧渋沢家住宅」も見学してみたい!


泰明小学校

有楽町 泰明小学校

銀座数寄屋橋にはよく行くので、その学校のことはずっと気になっていた。

泰明小学校。

数年前にアルマーニの制服を発表してニュース記事にもなった都会の小学校としても有名だ、蒲鉾型の大きな穴が空いた独特な塀のせいで、校舎の雰囲気はその前を通るたびにいつもちらちらとは見えるのだが、現役小学校ということで普段は写真を撮ることさえ憚られる。

でも、今回の特別公開では、しっかりと校内に入ることも出来るという!
父兄でもないのに。

■泰明小学校【特別公開】

泰明小学校は、関東大震災後に建設されたいわゆる「復興小学校」のひとつ。震災から6年後の1929年竣工。当時の最先端技術だった鉄筋コンクリート造。復興小学校の特徴でもある、ドイツ表現主義の影響を受けたシンプルながらも美しい校舎は、東京都選定歴史的建造物に選定、および経済産業省近代化産業遺産に指定されている。

さて、まずは、正面から向かって左手にある入口をくぐる。(下写真)

アレは何と呼んだらいいんだろうか?校舎のデザインでも使われている、六角形の物体を5つ積み上げた独特なフォルムの柱がココには4本並んでいる。で、その中央の2本の間を抜けると校舎の中に入ることができる。

有楽町 泰明小学校(1929年竣工)
「フランス門」と呼ばれる壮麗な鉄門が塀の中央あたりにあるが、
こちらの入口が校門の役割を果たしていそうだ。未確認。
中央を進めばそのまま校舎に、右に折れると校庭に出る。
※画像引用

そこから右に折れて校庭に出ると、あの蔦の絡まる特徴的な校舎が目の間に広がる。この伸びまくってる蔦のせいでわかりづらいのだが、校舎の窓は3階だけがアーチ型の窓で、1階と2階は四角い窓になっている。

ところで、少し気になっていることがある。

1924年竣工の甲子園球場、1926〜7年竣工の青山同潤会アパート、そしてこの、1929年竣工の泰明小学校はいずれも大量の蔦に覆われている(いた)が、これって狙いだろうか?それとも、およそ100年近く前に建てられた鉄筋コンクリートには蔦が生えやすいんだろうか?必然か、偶然か。ちょっと気になっている。

校舎@泰明小学校
校舎の中央、中二階のあたりにバルコニーがついているが、
これは何目的だろう?
朝礼とかで校長先生がここから挨拶するのか?
それにしてはちょっと高すぎるだろうと思う。
※画像引用

一方、校舎に向かって立った時、背中側には蒲鉾型の大きな半円の穴がいくつか空いた塀が続く。この塀が校内と銀座の街とを区切っているのだが、大都会の真ん中の狭い敷地の中で、この半円アーチの穴がとても気持ちの良い開放感を演出している。今どきだと、ちょっと危なっかしい気もするが、塀自体はそれほど古くない。

壁越しに見る校舎@泰明小学校
ちょうど道の対面に建つカフェ「オーバカナル」のテラス席で
お茶をしていると、この風景がとても気持ちいい!

校舎を守るため、東京建築祭のスタッフさんが配ってくれる靴カバーを靴の上から履いて、校舎の中に入る。そんな泰明小学校の校舎の中は、できるだけ狭さを感じさせないような工夫が各所に施されたデザインになっている。

校舎内@泰明小学校
URL

岡本太郎さんのオブジェ「若い時計」でおなじみ「数寄屋橋公園」から見える泰明小学校は、まるで円形校舎のような顔をしているが、実はコレ、例の校舎の東側の壁だ。

数寄屋橋公園から見た泰明小学校
有楽町交差点に建つ東急プラザのちょうど裏手にあるのがこの公園。
いかにも岡本太郎なオブジェが立っている。
※画像引用

で、この東側の円形校舎みたいな顔をした壁の内側は、1〜2階の吹き抜けで「屋内体操場」になっている。そのRを描いた壁面に沿ってとっても狭い階段があり、それを登っていくと3階の「講堂」に着く。都会の狭い空間を有効活用した構造だろうと想像する。

屋内体操場@泰明小学校
右奥の跳び箱横にチラッと見えているのが、3階に上っていく階段の入口だ。
蛇腹式の引き戸を開けると、Rのついた壁に沿って階段がある。
窓からは数寄屋橋公園と岡本太郎作のオブジェが見える。
※画像引用
講堂@泰明小学校
狭い空間を有効に使いながらステージを作っている印象。
前面の赤い緞帳から赤い1幕までの間隔が、2間なかったように思う。
そこから奥のグレーのホリゾント幕までが1間あったかなかったか。
しかも、ホリゾント幕は壁に沿ってゆるやかな曲線。
※画像引用

都会のど真ん中に奇跡的に残った、古風だけど斬新、そんなとっても不思議な空間。この学校に今もなお、小学生たちが通い続けていることも素敵な奇跡だな、と思う。


タイムリープクルーズ

タイムリープクルーズ(航行Cルート)
船上から見上げた日本橋と首都高。
首都高裏面の照明が美しい!

と、ここまで急ぎ足で「東京建築祭2025」のイベント6件を訪ねてきたが、会期最終日の夜にたまたま空き時間が出来た。そんな夜、たまたまネットというツアーに若干名だが空きがあることを見つけた。

■【連携企画】タイムリープクルーズ ー 水辺から見る建築の変遷 ー

慌てて、若干名の空きが表示されていたこのイベント最終回のツアー(航行Cルート)を予約した。予約した途端に「満席」になったような記憶がある。日曜の夜20時に「日本橋桟橋」を出発して21時15分に「竹芝桟橋」に着くという、かなり遅い時間のコースだ。

このツアーの解説役は、二人の男性。一人は「JR東日本社員」の方(だったと思う)。もう一人はクルーズ側の関係者さんだったと思う。

解説役の男性お二人@タイムリープクルーズ
お名前を失念しました。
屋根のないクルーズ船で、おまけに小雨が降り始めて、
とてもメモとかしてる場合じゃなかったんです。
ごめんなさい。

日本橋のたもとにある桟橋からオープンタイプのクルーズ船に乗って、日本橋からツアーはスタートした。最初に少しだけ日本橋川を上って常盤橋、さらに新常盤橋をくぐった。

JR新常盤橋(外濠アーチ橋/1917年竣工)@タイムリープクルーズ
解説役の人が手持ちの照明で、同橋のコンクリートアーチについてる
「動輪エンブレム」を照らしてくれた。
この演出のおかげで、気分はTDLのジャングルクルーズ!

そこから再び日本橋経由で、江戸橋、豊海橋をくぐって隅田川に向かう。

日本橋ダイヤビルディング(2014年竣工)@タイムリープクルーズ
かつてここにあった「三菱倉庫江戸橋倉庫ビル」(1930年竣工)の外観を
下層部に保存したしている。
腰巻きビルの一種だが、この風情は最高に素敵だ!
日証館(1928年竣工)@タイムリープクルーズ
旧渋沢邸(渋沢事務所)跡地に
「東株ビルディング」の名前で建てられた。
このビルは窓の配置の軽やかなリズム感が大好き!
永代橋(1926年竣工)@タイムリープクルーズ
2007年重要文化財に指定される
照明の青と緑のコントラストが暴力的に美しい!
中央大橋(1993年竣工)と佃島マンション群@タイムリープクルーズ
絵に描いたような風景だが、中央大橋のシルエットは最高だ!
このあたりは羽海野チカさん作「3月のライオン」の聖地でもある。
浜離宮越しに見る東京タワー(1957年竣工)@タイムリープクルーズ
この日は天候があんまり良くなかったおかげで、
東京タワーが淡いオーラを放ってた!
ウォーターズ竹芝(2020年竣工)@タイムリープクルーズ
今回のツアーのゴール地点

夜間ならではの怪しい美しさも含め、東京の街を普段とは違った角度から眺める、とっても楽しいツアーだった。とくに、終着点の竹芝桟橋に近づくと、ウォーターズ竹芝内のオープンクラブから激しい重低音の音楽とDJの声が聞こえてきて、ことさら「現代に帰ってきた!」感を高めてくれた。この日がイベント最終日、時間は21時を回っており、こうして私の「東京建築祭2025」は独特の高揚感とともに終わった。


東京建築祭2025のまとめ

…と、いろんなイベントに参加してきた昨年の「東京建築祭2025」だが、テーマである建築物の魅力はもちろん、その建築物を紹介してくれた人たちの魅力が非常に強く印象に残った。建築物はとても雄弁にその魅力を主張するが、その魅力はあくまで見た目の範囲に過ぎない。結局のところ、建築物の物語性や居住感、あるいはその意味を教えてくれるのは、やっぱり人間である。

極論だが、
人間に建築物が欠かせないように、
建築物にも人間は欠かせない。

そこで、今回の「東京建築祭2025」のイベントで出会った人々のことを、改めて思い出しておく。

1、【グランドプリンスホテル新高輪】
建築史家と村野藤吾の名作ホテルを見学、和食ランチ付き

ガイド:笠原一人さん
京都工芸繊維大学 建築学科准教授
(近代建築史・近代建築保存再生学)

2、【帝国ホテル東京】
日本最高峰のホテル、村野藤吾の茶室「東光庵」へ

今回のツアーの解説役:
帝国ホテル・ホテルマンの山田さん(左)と、
同レストラン担当の福田さん(右)

3、【旧東京中央郵便局】
建築史家&改修設計者と、モダニズム建築の保存と再生を辿る

ガイド:
三菱地所設計チーフアーキテクトの大西康文さん(左)と
日大理工学部建築学教授の田所辰之助さん(右)

4、【東京大学理学部2号館】
紡がれてきた知の風景ー東京大学キャンパスの建築を読み解く

Speaker:東京大学教授の加藤耕一さん
(大学院工学系研究科建築学専攻)

こうしたガイド役の人たちだけでなく、イベント会場の各所で出会ったボランティアスタッフの皆さんたちのことも忘れられない。行列の待ち時間を使って建物のちょっとした解説をしてくれたスタッフさん、建物を汚さないために靴カバーを配ってくれたスタッフさん、私が予約の確認をうまく出来なかった時に忍耐強く付き合ってくれたスタッフさん、「実は私、このツアーに応募して落選したんですよ。でも、スタッフとして参加できました。ラッキーです!嬉しいです!」と私にこっそり教えてくれたスタッフさん…など、たくさんの顔が浮かぶ。

あと、東京大学のイベントでは参加者に混じって加藤耕一さんの話を聴いていた倉方俊輔さん(大阪公立大学教授)の姿も見つけた。「東京建築祭2025」の実行委員長である。この素敵なイベントを作ってくれたことに大感謝!

倉方俊輔(東京建築祭実行委員会・実行委員長)

さて、今年もこのイベントの開催が決まっている。

第三回目になる今年は、2026年5月16日(土)〜24日(日)の9日間。
参加物件数150件と発表されている。
今からもう楽しみで仕方ない。
詳しくは、こちらで。

■東京建築祭 2026

2026-01-17


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