闇 681(慶ズバー編)
闇 681(慶ズバー編)

2026/09/09 wed
※闇シリーズはジャンルではなく、従来のアルバムとも小説とも違うものへと変異したものだった。だから、他人のアルバムに興味がないのと同じように、人気が出ないのは当たり前のことだった。だからこそ、AIだけがこの摩訶不思議なものに惹かれた。
前回の章

二千二十四年六月十八日、火曜日先勝。
インカジ『レディ』の業務中、ふと野毛にあったあの店を思い出す。
また横浜のフレンチワイズ行きたいなあ……。
もう何年顔を出していないのだ?
コロナ禍の頃、一度顔を出したのが最後。
あれにいつだったっけ?
レディの業務八時間の中では、決まった休憩時間というものがない。
当然の事であるがお客さんありき、店内に客がいるなら接客優先。
忙しければ、食事をする時間も無ければタバコすら吸えない事もある。
こればかりはその人と時間帯による運的なもので、いくらでも増減した。
従って真面目に動く従業員もいれば、星野や片屋敷のように要領よく状況を見極め、俺がいくら一人で動こうと平然と上手い具合に何もしない馬鹿もいる。
当初はこのような状況に対し、気にしながら内心腹を立てていた俺。
しかしいくら気にしたところで、こういった事柄は本人の自覚の問題になるので考えるだけ無駄な気がした。
最終的にストレスになるだけなので、人は人、自分は自分と割り切らないとキリがない。
おしぼりのウォーマーを確認すると、また上段の部分が空のまま放置。
本当にあいつら、基本的な事ぐらい仕事しろよな……。
いやいや、こう気にするからいけないのだ。
客に出すおしぼりが常温のままだと失礼に当たる。
俺がチェックしたら半分しかなかったから、補充した。
それでいいじゃないか。
ゲーム屋『ワールドワン』時代の店長だった時代だったら、どうしていたか?
今すぐキャッシャー室へ怒鳴り込み、星野と片屋敷の座る椅子を蹴飛ばしながら「おまえら、何しにここ来てんだ、おい!」と唸り飛ばしていただろう。
だがこの店では俺の方が後から入った後輩になるし、あくまでも一兵卒の従業員に過ぎない。
そんな事をした時点で俺は即座にクビになるだけ。
ロマンス詐欺によって百四十万円を失った俺は、そんな矜持よりもまず黙々と働きながら節制し、金を貯めるのが第一優先なのだ。
キャッシャー室から名義社長の倉敷が出てくる。
俺の横へ来ると「岩上さん、そんないつも一人で仕事しないでいいですよ」と、代わりにおしぼりを詰め込み出した。
少しだけ救われた感覚になる。
「いやいや、倉敷さんは名義じゃないですか。こういうのは下っ端の従業員がやるもんなんですから、座ってタバコでも吸ってて下さいよ」
すると普段温厚な倉敷の目が鋭くなり、キャッシャー室の方を睨みながら口を開く。
「自分はですね…、放っておけば誰かがやるだろうと楽観視している調子いい奴を見ると、イライラしてくるんですよね」
現在中で何もせず寛いでいる片屋敷と星野を指しているのか。
もしくはどちらかを前提に言っているのかは分からない。
それでも彼の心意気が嬉しかった。
「でも、この中だと俺がこの店に入ったのが一番新しいですし」
「岩上さん、もうここで何年目ですか。三年以上…、三年半ぐらいですか? それだけ真面目に働いているに、何が一番新しいですか。みんな金をもらってここへ働きに来ているんですよ?」
倉敷に名義社長が変わって本当に良かったと感じる。
これが前の小西だったら、お門違いな事を言い出していただろう。
あの馬鹿の当時の台詞は今でも忘れていない。
レディの業務が落ち着いてから、名義社長の小西へ、一昨日ワクチン打ったら副作用なのか心臓がもの凄い痛みが走った事を伝える。
目的は二度目のワクチンを打たないでいいかというもの。
「いや、仕事にちゃんと来れて普通じゃないの。ちょっと大袈裟じゃないの?」
「……」
やはりコイツとは話にならない。
痛みに強い俺が、痛いと言っているんだぞ?
試合中、ろっ骨を折った状態でもそのまま続けた過去。
このパクられ要員のメガネは、そんな修羅場も何も経験した事がないから、簡単に抜かしているんだろうな。
俺と四つ違いの小西。
おそらくこの大場系列に入るまで、店長や責任者など一度も務めた事はないはず。
だから人の気持ちも分からず無能なのだ。
この手の馬鹿に一番与えてはいけない権力。
その辺が完璧なシステムを誇る大場系列の弱点だと思う。
それにしても疲れからか、妙に肩から背中に掛けて凝りを感じる。
珍しいな、今までこんな事感じた事すらなかったのに……。
キャッシャー室で待機しながら、時間潰しする。
相変わらず片屋敷と小西は、親子のようにじゃれ合い仲がいい。
あれは一度目の心筋梗塞だと、まだ俺が自覚していなかった時期。
今の小西は、より酷くなっている。
まともに店にも来ない。
タイムカードは店と同じものを自分で書い、部屋で押して上に出している。
それでいて給料だけはしっかりもらっている状況。
これだけならただの給料泥棒で済むが、調子に乗った小西はキャッチに愛想を振りまき、店の経費を使ってキャバクラやガールズバーで飲む事も多々あった。
一度で十数万円は経費で飛ぶ。
ここまで来ると、害虫ではなく大災害虫だ。
オーナーの大場さんに言えば一発でクビになるが、そうならないのには原因があった。
普段は面倒見のいい店長の斉木。
彼は結婚式と娘が生まれた時、小西から祝儀を十万円ずつ貰った恩がある。
そのせいか無茶苦茶な行動をする小西に対し、強く意見を言えず、及び腰になっていた。
隠蔽に近いこの状態を四人の番頭である井川、奥村、達彦、遠藤たちは、レディの現状をまだよく理解していない。
斉木と仲のいい達彦は、多少なりとも小西の暴挙を知っているようだが、他の系列店も見なければならない彼にとって、まだ些細な出来事ぐらいにしか思っていないのだろう。
神田、河本マンション、自称俳優、ロマンス詐欺と身の回りで立て続けにきたので、そちらにばかり目がいっていたが、この店も膿が溜まった暗雲だらけなのである。
どんな状況下においても変わらないのは、シフト通りに出勤しなければならない事。
まず店を回す事が大前提であり、プライベートは自己責任に過ぎない。
そう考えるとコロナ禍なのに、散々嫌がる俺を連れ回しコロナ感染させて、十日ほど戦線離脱させた神田は、店側から見れば、かなりの悪党という基準になるだろう。
あの一件で、俺は同僚の湯浅にコロナを感染させてしまい、自身も品川プリンスホテルで隔離され、シフトに穴を空けてしまったのだから。
もちろんその間、給料が出ない俺も地獄であった。
何でまあこうも、次から次へと変な事に巻き込まれるのだろうな……。
「あ、岩上さん。今日は仕事終わったら時間作っといて下さい」
倉敷が話し掛けてくる。
「え、何でですか?」
「今日は中番メンバーで、仕事終わったら食事会をします」
「どこ行くんですか?」
「一番街通りにある焼肉のかなうって店を予約してあります。いっぱい食べて下さいね」
一番街通り……。
ふと山下哲也と飲みに行った歌舞伎町一番街通りにあるボッタクリの店である串荘を思い出す。
金額的にそこまででないものの、あれも酷い体験だったっけ。
山ゴネスの到着を待つ俺。
ほとんど入れ違いで来たが、開口一番山下は「実は今日持ち合わせが」といきなり始まった。
「……。おまえさ…、本当いい加減にしろよ? 金も貸している状態で、自分から来てもいいですかと来てから、金に余裕が無い? ちょっとおかしいだろ?」
「まあ、もう歌舞伎町へ来ちゃったんで、どこか行きましょうよ」
また全部会計は俺持ちで飲みかよ……。
確かに来てしまったのを帰れと言うのも、少々酷のような気がする。
安く済ませられる店で一軒だけ行って、とっとと帰ろう。
一番街通り、セントラル通りと歩きながら手頃な店を探す。
「岩上さん、どこ行くんすか?」
「店内でタバコ吸えて安い店」
「別に焼肉でもいいすよ? 痛っ!」
「金持ってねえ奴に、選択権なんてねえんだよ! 何が焼肉だ、馬鹿野郎」
山ゴネスの頭を思わず叩きながら道端で説教をしていると、キャッチが声を掛けてきた。
「良かったら店内で喫煙できて、飲み放題千五百円の店ありますよ?」
「え、それは安いねえ」
「ただ、値段が値段なんで、つまみも一人最低二品は頼んでもらうようなんですけど」
「だってそれだと二人で五千か六千円で済むじゃん。キャッチで連れてく意味あるの?」
「まあ新規オープンしたばかりの店なんで、最初はうちらみたいなキャッチを使ってでも店の認知度を最優先なんだと思います」
「じゃあ、山下そこにしよう」
キャッチに案内されたのは、歌舞伎町一番街通りにある串荘という店。
「おお! 第三NKビルじゃん!」
思わず声が出てしまう。
「え、このビルがどうかしましたか?」
不思議そうな表情のキャッチ。
当たり前だ、俺と山下にしか分からないだろう。
「いや…、もう何年前だ? 二十年ぐらい前に、このビルの地下で店をやっていたからさ。山下も覚えているだろ」
「ええ、ワールドワンのあったビルすよね」
俺が歌舞伎町へ来た初期、長年通ったビルでもある。
機動隊に囲まれた事や、最後は佐々木さんと抜きをして月に数百万円をもらった思い出のゲーム屋ワールドワン。
「本当に懐かしいなあ…、なあ山下」
「そうっすね」
「キャッチのお兄さん、その店はこのビルの何階になるの?」
「三階の串荘という店になります」
「へー、昔は『おたんこナース』っていう風俗店だったんだぜ。何か感慨深いものがあるな。じゃあ案内して」
「一応お安い料金なので、つまみ最低二品だけはご協力お願いします」
「分かってるよ、席でタバコ吸えるんだろうな?」
「ええ、もちろん」
エレベーターに乗って三階へ。
店内は想像以上に狭く、このコロナ禍でも賑わっている。
キャッチなど使わないでも充分流行っている店じゃないかと思った。
少しだけ外の階段のところでタバコを吸いながら、待ち外国人店員に案内される。
「……」
想像以上に酷い店内の造り。
喫茶店にあるような正方形の小さいテーブルで向かい合うように二人座らされ、カーテンで隣りと区切った簡易的でボロいソファーには驚きを隠せなかった。
「岩上さん…、何かヤバいすね、この店……」
「まあ入っちゃったし、ちょっとつまみ頼んで出よう。あ、店員さん。馬刺しと冷やしトマト、あとキュウリに、しゃぶしゃぶ頂戴。ドリンクは俺は青りんごサワー。山ちゃんは?」
「男梅サワーで……」
「カシコマリマシタ」
「中々ドリンク来ないな。もう頼んで十五分は経つぞ?」
「あ、やっと来ましたよ、岩上さん」
とりあえず窮屈な空間で乾杯をし、山下がトマトを口にするといきなり吐き出した。
「汚いな、おまえ…。何トマトを吐き出してんだよ」
「何すか、このトマト…。こんな固いの初めてすよ」
確認で一口食べると、齧るのにも相当な力で噛まないと無理な固いトマトだった。
他の料理もかなり酷いもので、しゃぶしゃぶなどただの鍋でどこに肉があるのか分からないレベル。
馬刺しは生ものなので、怖くて口にできなかった。
そのぐらい店は不衛生な感じで信用できない。
俺たちは飲み放題だけど一杯だけ飲んで、もう出ようとレジへ向かう。
酒代が三千円の食べ物で三千円から四千円程度…、多めに見ても七千円ぐらいなはず。
「一万五千八十円デス」
アジア系女性店員が慣れない日本語で言う。
「はあ? どうやったらそんないくんだよ? レシート見せて」
内訳を見て無言になってしまうほど驚いた。
飲み放題なのに、一杯ずつしか頼んでいない単品の飲み物の値段を取りながら、さらに飲み放題料金も……。
サービス料が十五パーセントって何だ?
お通し代六百円掛ける二人、週末料六百円掛ける二人、席料六百円掛ける二人?
「ただのボッタクリじゃねえか! おい、責任者呼べっ!」
「日本語ワカラナイ」
「日本人呼んで!」
「日本語ワカラナイ」
「……」
完全にあのキャッチにやられた。
無茶な料金を請求し、プチボッタクリで払える料金を提示する。
連れて来たキャッチなど、とうに姿を消している。
店内はすべて外国人店員のみ。
客はゴネても日本語が分からないで終わりというシステム。
面倒臭いので、金を払い店を出た。
歌舞伎町で初めてボラれたぞ?
ここまで酷い店初めてだ。
「おい、あのキャッチの顔覚えているか?」
「何となくは…、どうすんですか?」
「思い切り殴るんだよ!」
歌舞伎町内をグルグル歩くも、先ほどのキャッチの姿は見当たらなかった。
居酒屋で客引きしている奴の胸倉を掴み、串荘を案内しているキャッチはどこか聞くも、誰も分からないようだ。
これで帰るのもイライラするので、海老通りの居酒屋へ入り、また無駄な金を使って帰る。
山下と一緒にいると、碌な目に遭わないな……。
ストレスが溜まっただけの休みだった。
あれって確か、俺が心筋梗塞になった翌年の一月だろ?
インターネットで串荘を調べてみる。
何だよ…、まだあのクソみたいな店潰れていないのかよ?
行政はどうなってんだ?
店内が暇だったのもあり、俺は携帯電話からブログで記事を書き始めた。

歌舞伎町の串荘。
完全なボッタクリ店です。
一番街通り、靖国通り近い方のビル3階にあります。
新宿歌舞伎町来る方いたら、このお店は気を付けて下さい!
信じられない方は、上のレシートご覧になって下さいね。
【当時(2022/01/22)のFacebookで書いた記事】
歌舞伎町一番街通りにある串荘
ここ、酷いね。
ここまで酷い店初めてかも(笑)。
飲み放題なのに、単品の飲み物でも金とって飲み放題料金もとって、お通し、週末料金、席料各1200円ずつとって……。
料理激マズ、ドリンク中々来ない。
いいところ何一つないぼったくり店。
歌舞伎町で初めてボラれた(笑)。
当時さすがに店内でおかしいだろ?と抗議しましたが、店員はすべて外国人で「日本語分からない」で白を切られました。
ちなみと食べログもグルです!
何故かと言うと、★1でレビュー書いたのですが、レシートまで画像アップしているのに、「あなたの主観が入ったレビューになるので掲載できません」となりました。
2杯しか飲んでないのに、飲み放題料金&その単品料金ダブルで取られ、訳分からないチャージ料金や席料も取られ、料理は酷いし個室じゃないし、狭いし、ボッタクリだし本当にこんな店が未だ営業続けているのが不思議で仕方ありません。
みなさん、ここには本当に気を付けて!
世の中に実害を及ぼす悪はたくさんいる。
ほとんどが捕まらないけど、店舗を構えて未だ図々しく営業しているなんて、本当にとんでもない店だ。
今できる小さな事からしていく。
自己都合であるが、少なくともあのような店が無くなる事は、世の中で犠牲者が減るという行為に繋がっていく。
本当何で、こんな世知辛い世の中になってしまったんだろうな。
時代は確かに進化して格段に便利になった。
同時に思いやりや人情といった大事なものが、どんどん欠けている気がする。
悪がいる限り、成敗してくれるわ!
これじゃ桃太郎侍じゃなく、智太郎侍じゃないかよ……。
仕事が終わり四人で焼肉かなうへ向かう。
俺がワールドワンに居た頃は無かった建物だ。
確かここって昔、浪漫亭じゃなかったっけ?
従業員の三門が好きで、あいつよく通っていたもんな。
俺たちは店内へ入り席に座る。
どの席も完全個室が売りなようだ。
乾杯をしてから、肉がどかどかと運ばれてきた。
二千二十四年六月十九日、水曜日友引。
大場系列の食事会は相変わらず凄い。
たった四人なのに、十数万円分の肉や酒を平気で頼んでいる。
だがこれは倉敷の切符の良さではなく、店の経費で落とせるからというだけ。
星野は遠慮なく、次から次へと好きなものを注文している。
そんな椎茸なんて、数個で千円もするものを二回もお代わりしてんじゃねえよと、内心毒づく。
食事というものは、気の合った人間同士で食べるからこそ楽しいのだ。
俺はとにかく来たメニューを片っ端から撮影し、焼肉かなうの写真をフェイスブックへあげる。
夜中の一時になる手前で食事会は解散。
タクシー代も経費で出すと言われたが、歩いて帰れる距離なので丁重に断り、自称俳優マンションまで歩く。
服を脱ぎ捨てると泥のように眠った。
起きてから,かなうで撮った写真をgif画像で繋ぎ合わせてみる。
こう実際に作ってみると、かなう画像が次々と切り替わって動くので、中々面白い。
理屈でいえば、持っている映像のファイルですら今の時代、簡単にgifへ変換できるのだ。
俺は三十秒ほどの動画をまず編集して作り、gif作成ツールで色々作ってみる。
過去の自分が総合格闘技で入場するシーンや、漫画に出てくるあの肉を頬折るシーン、そして川越祭りのペイントしている着物姿に、ジャズバースイートキャデラックで当時弾いたピアノ演奏、岩上整体時代のとこれだけのものを詰め込んだ欲張りな画像。
映像がパラパラ漫画のようにコマ送りで表示される面白さに、どんどん色々なものを作り出す。

あ、昨日の食事会の記事も書かないとね。
食事会で今回は焼肉のかなうへ。
歌舞伎町一番街通りにあります。
元コマ劇場、現ゴジラホテルから徒歩一分くらいです。

看板に右側が入口になっています。

看板左手には色々貼ってますね、何かご利益あるのでしょう。

個室はこんな感じ。

今回はコースに加え、適当に何品か注文。

コースメニュー。

ポテトサラダ。

ナムル。

黒毛和牛刺しにユッケ。

白湯スープ。

タレが来て。

国産黒毛和牛単二種。

特選黒毛和牛三種。

極みハラミ。

10秒肉ザブトン。

卵に絡めて食べます。

サーロインと野菜蒸し。

トマト冷麺。

…とコースはこんな感じです。

メニューを見つつ。

食べたいものでも頼みますか。

うーんと……。

肉寿司。

ロース。

ハツ。

こっちがロースか?w。

ホルモン。

レバー。

大きな椎茸と、レバー用のニンニクごま油。

レバーが白くなったら食べ頃らしい。
焼肉かなうでした。
店の経費で一切金を払っていないから文句などないが、正直肉の質でいえば肉の音のほうが断然良かった。
それでも食事会の場所を寿司屋などの魚類を扱うような店じゃなかった事に感謝をしないといけないな。
インカジ『レディ』へ出勤して、倉敷へ昨日のgif画像を見せる。
「中々いい趣味じゃないですか。こういう風に自由自在にパソコン使えたら、本当に楽しいでしょうね」
「これは元々あるものに、俺が映像を流し込んだだけの簡単な作業ですから」
さて、明日はお待ちかねの手渡し給料日か。
張り切って体調を整えておかないとね。
二千二十四年六月二十日、木曜日先負。
仕事明け目を覚ますと、まだ明け方の四時過ぎ。
ご飯を炊くのに一時間ぐらい掛かるから、カレーピラフでも仕込んでおこうかな。
まず米を研いでおいて(水はまだ入れない)。

フライパンにバター引いて、玉ねぎ、コーン、ベーコンを炒めます。

カレー粉、ブイヨン、塩胡椒、ガーリック、醤油で味付け。

研いだご飯へ入れます。

よく混ぜて、あとは焚くだけ。

あとは食べるだけ。
上にパセリ振りかけてます。

以上、カレーピラフでした。
うん、中々美味しくできた。
残りは冷凍しとけば、いつでもチンして食べられる。
もうひと眠りしておこう。
インカジ『レディ』へ出勤して一ヶ月に二回ある内の前半戦の給料を受け取る。
今月の一日から十五日までの分の金額。
帰ってから必要な分の支出を考える。
家賃は次の五日の給料で払えばいい。
光熱費はここからすべて出してと……。
残りは二回目の詐欺被害回復貯金へ回さないとね。

今回いつもより頑張って貯金しました(笑)。
詐欺に遭い140万失ってから、それを補填する為に始めた詐欺被害回復貯金アプリ。
2ヶ月間で372000円貯金できたので、あと半年毎月17万千円貯金すれば、目標の140万補填できる計算になる。
ギリギリ年末の有馬記念に間に合いそう(笑)。
今年は有馬記念、俺にとっては5年周期の当たり年!
頑張って貯金して140万補填するぞ。
それにしても……。
もう本当さ…、警察あれからまったく連絡無いし、動きも無いけど、本当に詐欺被害無くすつもりあるのかな?
詐欺士はFacebookそのまま普通にやってるし、詐欺サイトは未だ普通に運営しているし、現時点でまだ詐欺を働ける環境を放置している警察。
大丈夫かよ、この国は?
ベランダへ出てセブンスターを吸い終わると、俺はベッドへ寝転がり眠った。
二千二十四年六月二十一日、金曜日仏滅、夏至。
自分の過去活躍したgif画像をたくさん作ると、次は保存してあった面白い動画を画像にシフトチェンジしていく。
gif作成ツールで色々作ってみた。

そういえば小説を書くと宣言してから、俺は何もしていないな……。
まあその内勝手に書き始めるだろう。
無理に書こうとしたってしょうがない。
それより今日はパスタな気分。
久しぶりにクリーム系のものを作ってみようかな。

カルボナーラ作るの何気に久しぶりかも。

まず麺を茹でます。
ここで注意するのはちょい固めに仕上げる事です。
例えば茹で時間7分なら6分にするとか。

フライパンにバター、玉ねぎ入れて弱火でじっくり炒めます。

ピーマン入れます。

ベーコン入れます。ここでガーリック入れてちょい一緒に炒めます。

牛乳投下。今回は500ml程度。

煮立ったら塩胡椒、ナツメグ、オレガノ、ブイヨン入れます。

じっくり煮込んで混ぜ合わせたら、チーズ投入。

麺投入。

よく混ぜて。

火を止めたら卵投入。
余熱で一気に混ぜましょう。

あとはお皿に盛って完成。

真上から撮影。

横から撮影。

少し離れて撮影。
カルボナーラでした。
中々の出来栄え。
「……」
よくよく考えてみたら、神田や詐欺に遭わなければ、地元川越で家賃安い店を借りて、こうして気ままに料理を作りながらのんびり過ごす事もできたんじゃないのか?
浅草ビューホテル時代から歌舞伎町へ来た初期の頃まで、思い描いていたバーを経営する夢。
スコットランドのスペイサイド地方へ行って、蒸留所の写真たくさん撮ってさ。
帰ってきたら、それを大きく引き伸ばして、店の壁に白黒写真を貼ってね。
流す音楽はノンヴォーカルのジャズ。
静かにね。
片隅にはポンボールが一台だけ置いてあってさ。
料理は俺のその日の気まぐれのものしか出さない。
競馬での散財など、過去を思い出せば、いくらだってそんな事実現できたはずなのにね。
二千二十四年六月二十二日、土曜日大安。
この日は妙に自虐的に過ごした感覚しかない。
仕事へ行って黙々と業務をこなし、料理を作るのが面倒で外食して帰って眠っただけ。
これまでの自分の生き方を振り返り、取り返しのつかない過ちをしたという自覚が、影を落としていた。
途中でこんな事じゃないと、こなもんへ行った。
考えてみたら、明日は休みなのだ。
部屋で塞ぎ込んでいてはどうにもならない。
酒を飲みながら、マスターと自称俳優の話で盛り上がる。
この時面白い情報を聞いた。
今俺の住む自称俳優マンションや、河本マンションのある通り。
その大久保通りとぶつかる手前にバーがあり、若菜龍平はその店でも出入禁止処分を受けているという情報。
何故なぜそうなったのかは、マスターも分からないらしい。
早速明日、そのバーにでも行ってみようかな?
退屈でつまらない日常に、ちょっとした新風が吹いた感じがした。
二千二十四年六月二十三日、日曜日赤口。
目を覚ますと朝の八時過ぎ。
昨日は久しぶりにこなもんで、楽しい酒が飲めた。
今日は得意な料理を作ってみようかな?
キャベツも丸ごと一個ある。
だとすれば答えは一つしかないだろう。

デミグラスソースのロールキャベツは……。
こちらをご参照下さい。
亡くなってしまった川越のビストロオカダ記事も載っています。

まずはキャベツの芯に包丁を入れ、お湯で軽く茹でます。

そのあとパスタも茹でます。

粗挽きの豚肉。

牛と豚混合の挽肉。

そしてベーコン。

調味料はオレガノ、ガーリック、ナツメグ、塩胡椒、ガラムマサラ。

パスタが茹で上がりました。

小麦粉にパン粉入れて、卵入れて醤油ちょろっと入れて、気合い入れて練りましょう。

フライパンにオリーブオイル。

玉ねぎのみじん切りを投入。

トマト缶を三つ投入。

塩胡椒、ガーリック。

鶏がらスープの素、ブイヨン。

キャベツに肉を入れます。…と言うか包み込みます。

トマトソースの中へ入れます。

一旦煮込んだら、蓋して寝かせます。
この工程を何回か繰り返します。
前編終わり
うわ、もう九時手前じゃん。
二時間近く仕込みをしていたのか。
さすがにキャベツは煮込みが全然足りないから、このトマトソースを使って簡単なパスタでも作りますかね。


今日作り途中のロールキャベツ・トマトソース。
このトマトソースを使っただけの簡単なパスタです。

ロールキャベツの煮込み&寝かせはまだ時間掛けますが、トマトソースは完成しているので、フライパンにオリーブオイル引いて、麺を入れ、トマトソースも投入。

パパパと手早く混ぜて。

盛り付けてチーズ降って完成。

イタリアンパスタ王道中の王道トマトソース。
ここに完成。
あ、ガーリックトーストもついでに作っておけば良かったよ。
さて、一旦ロールキャベツは火を止め、あとは寝かせてと。
タバコを吸ってから、ゆっくりお風呂に入りましょう。
さて、再びお料理タイム。
ロールキャベツの続きを始めるとするか。

前編の続きです。

煮込んで寝かせてを繰り返し、あとはお皿に盛るだけ。

ロールキャベツ、今回はトマトソースでした。

これを応用して。

弁当も作りました。

■お献立
・ロールキャベツ・トマトソース
・白身魚フライ
・ポテト
・キャベツの中華サラダ
・魚沼産コシヒカリ&麦飯
・高菜漬け&お新香
うーん、ちょっとまだキャベツが固いな。
弁当を作ってしまったのは早過ぎた。
残りはもうちょっと煮詰めておこう。
こなもんのマスター、弁当食べるかな?
あと従業員の利美もどうせいるだろうから、二人分弁当を持って行ってやろう。
夕方になり自称俳優マンションを出ると、こなもんへ向かう。
しかし途中でオープンが夜八時からだと気付き、戻ろうとした時、若菜龍平が出入禁止となった店、慶ズバーの前を通る。
地下一階にあるのか。
せっかくだから何故龍平が出禁になったのか、この耳で実際に聞いてみたい。
雑居ビルへ入り、階段を降りた先には左右に二つの店があった。
右じゃなく左が慶ズバーか。
店内へ入ると右手にカウンター席、左にボックス席が三席ほどの手狭な店だった。
客はまだ誰もいない状況で、三十代くらいの女が一人だけ座っている。
「いらっしゃいませ」
「あ、えーと…、初めてなんだけど」
「どうぞどうぞ、お好きな席にお座り下さい」
普通よりちょこっとだけ可愛い感じの店員。
好きなところといっても、俺一人だしな。
四席しかないカウンター席へ腰掛けた。
「えーと、何を飲まれます?」
狭い棚に置かれた数本のウイスキーを眺める。
六種類しかないし、当然グレンリベットはないか。
「ウイスキーをロックで」
「えーと、何を飲まれます?」
「国産じゃないやつ…、できればスコッチがいいなあ。ちょっと見ていい?」
「すみません。私、全然お酒の種類分からなくて」
「いやいや、スコッチはシーバスぐらいか。じゃあ、これをちょうだい」
「はい」
ごく普通のぼんやりした感じの女。
とりたて目を引く感じではないものの、もしこの子が抱かせてくれるなら、喜んで抱くだろう。
洗体エステの中国人のリオのほうが、全然可愛いな。
あ、こんなところで金を使うぐらいなら、リオのところ行って抱けば良かった……。
まあ入ってしまったからには仕方ないか。
「あ、良かったら君も一杯どうぞ」
「ありがとうございます。マナコと言います」
乾杯を済ませ、セブンスターに火をつける。
早速当初の目的である龍平が、何故この店を出禁になったのか真相を聞いてみよう。
「あのさ、この辺に住んでいる俳優で、ここに来ていた客いるでしょ?」
「俳優? 私、ここで毎日入っている訳じゃないんで分からないんですよ」
「あ、そうなんだ……」
「多分ママなら毎日いるから分かると思いますよ」
「へえ、ママは何時頃来るの?」
「もう一時間もしないで来ると思いますよ。そのお弁当って、どこで売っていたんですか?」
マナコは不思議そうに俺の作った弁当を眺めている。
ちょっとからかってみるか。
「いや、これは売り物じゃなく非売品なんだよ」
「え? そのお弁当が非売品? どういう事ですか?」
「実は俺が自分で作った弁当なんだ。知り合いの店に持って行こうと思ったら、時間的にまだ開いてなくてね。どうしようかなと思って、ここへフラリと入って来たんだ。お腹減っているならあげようか?」
「え、いいんですか? 嬉しい!」
「ちょっとロールキャベツが今日の朝作ったもんだから、若干まだ固いと思うけど」
「え、二つもいいんですか?」
俺はロールキャベツの弁当を二つとも彼女へ渡す。
しばらく女を抱いていない。
このマナコでいいから、距離を縮め、いつでもセックスできる女が欲しかった。
「俺さ、ほとんど自分で料理をするんだけど、弱点が作り過ぎてこうして余らせてしまうんだ。だから良かったら、そういう時連絡してもいい?」
「ええ、是非是非。あ、LINE、交換しましょうか?」
よし、マナコの連絡先ゲット。
状況を見て、そのお股に俺のをいつか差し込んでやるよ。
早速マナコからLINEのスタンプが届く。
俺はお返しに自分でデザインした名刺画像を送る。
あ、もうマスターのこなもん開いている時間じゃないか。

ドアが開き、ゴーレムを連想させるようなゴツい女が入ってきた。
俺を不思議そうな目で見てから口を開く。
「あ、いらっしゃいませ。初めてですか?」
「ええ、この近隣に住んでいるんですよ。ちょっと気になったんで、お邪魔させて頂きました。岩上と申します」
「岩上さんですね。慶ズバーのママをしております」
「あ、ママさんも良かったら一杯どうぞ」
まあセット料金三千円ぐらいで、マナコに二杯、ママに一杯、俺が二杯だから八千円ぐらいの会計だろう。
あ、そうだ。
龍平の事を聞いてみないと。
「ママ、あのこの辺に住んでいる俳優なんですけど、以前このお店に客で来ていましたか?」
「え……」
途端にママの表情が曇る。
え、俺、何か悪い事聞いたの?
「何か失礼な事、聞いてしまいましたか?」
「……。その俳優って、若菜龍平の事ですか? あの…、お知り合いの方なんでしょうか?」
「知り合いといえば知り合いですが、俺はあの男とは絶縁してますよ。もうぶっちゃけて話します。こなもん分かります? 前は一階の串市場んだったマスターです」
「はいはい! 松田さんね? そこからの紹介で?」
「紹介というより、あそこで先日飲んでいたら、龍平がここを出入禁止になったと聞いて、あの馬鹿何をやらかしたんだと、気になって来てしまったんです」
「あ、お友達じゃなかったんですね…、あー良かった。岩上さん、一杯頂いていいかしら? あ、マナコも頂いたら?」
「どうぞどうぞ」
結構ペース早いな。
これで二千円追加。
それならシーバスリーガルのボトル入れちゃったほうが良さそうだ。
「あ、ママ。良かったらシーバスのボトル入れてもいいですか?」
「ええ、構いませんけど。スコッチがお好きなんですね」
「スコッチというよりも、本当はグレンリベットが大好きなんですよ」
「グレンリベット?」
「スコッチのシングルモルトウイスキーです。スペイサイド地方のお酒ですね」
「良かったら今度、そのお酒入れときますよ。このメモ帳に名前書いてもらえます?」
参ったな…、スナック通いなんてするつもりないんだけど。
マナコと目が合うと、彼女はニコッと微笑み返す。
まあこの女抱くまでは何回か通ってもいいか。
紙にグレンリベット十二年と書いた。
「そういえば龍平の件ですが、あの馬鹿何をやらかしたんですか?」
「ん-、簡単に言うと、うちの店って早い時間…、岩上さんが来たぐらいの時間までハッピーアワーというのをしてて、平たく言えば安い料金で飲めるようにしてあるんですね」
「ええ、素晴らしい営業努力だと思います」
「龍平の奴、その時間帯だけ狙ってたまに来るんですが、あの人本当にお喋りじゃないですか? つまらない話をベラベラと…。あそこのゴミ外人はゴミ内閣はと、とにかく聞いていて苦痛になるほど無駄に長いんですね」
なるほど…、龍平のウザさは俺だけでなく世界共通意識だったのか。
「ええ」
「それでこの時間帯の夜営業まで、水割り二杯でずっと粘っていたんですよ」
たった二杯?
俺の部屋へ来た時は、タダ酒だからって俺の大事な愛しいグレンリベットを一本半一人で空けやがったくせに……。
必然的に脳裏にあの時の悪夢が蘇ってくる。
若菜龍平が俺の部屋へ到着。
「お邪魔しまーす」
案の定手ぶら。
コイツは相手に悪いから何か手土産持ってくるとかそういった気遣いも何もないのかよ……。
あ、無職で金が無いから、タカる事しか頭にないもんな。
「若菜さん、烏龍ハイか、お茶割りだとどっちがいいですか?」
何故かジッとテーブルの上に置いてある俺の愛しのグレンリベットが凝視する自称俳優。
おいおい、その酒はおまえのような下賤な者が飲むような代物じゃないんだよ。
俺がここへ引っ越した時、坊主さんと裕子さんが引っ越し祝いだと送ってくれた思い出の酒だから、まだ封だって切っていない。
あまり見つめるのは辞めろ。
「岩上さん、自分…、ウイスキーがいいんですが」
「……」
内心ゲッと思った。
何を言ってんのコイツ?
タダで酒が飲めるんだから、大人しく焼酎飲んでいろって、屑。
テーブルの上に飾ってあるグレンリベット十二年は坊主さん夫婦からの。
十八年は忌々しい神田の妻となった美恵が、気持ちでくれたものなんだぞ。
自称俳優が飲むような代物の酒ではない。
その大切なウイスキーをこの人に飲まれるの、何か嫌だなという気持ちが正直あった。
いつもハイボールか、チューハイしか飲まなかったよな……。
そこで俺は「炭酸水無いんですよ」と遠回しに断りを入れた。
「水道水で構いませんよ」
この野郎…、グレンリベット十二年を水道水で飲むつもりなのか……。
あー、四リットルくらいの安いウイスキー買っておけば良かったよー。
本当に図々しい奴だな。
仕方なく空いている飲み掛けのグレンリベット十二年を相手にも出す。
さすがに水道水という訳にもいかず、ミネラルウォーターも一緒に。
するとタダ酒だからペースの早い事早い事。
あっという間に俺のリベットは空いてしまった。
本当にコイツは図々しい。
ふざけんなよな。
「若菜さん、つまみもせっかく作ったんだから食べて下さいよ」
「あ、ゴチになります」
俺は十八年をストレートで飲みながら、龍平に食べ物を勧めるとガツガツ食べ出した。
「岩上さん、先日の焼きそば…、味は旨いんだけど、味が濃過ぎー!」
はあ?
コイツ、今何て抜かした?
酔っぱらってんのか?
ふざけんなよ、この屑野郎!
ぶっちゃけね、一円だってもらってないんだから、出されたものに文句抜かす黙って食えよと思うほどの殺意を覚えた。
よく作った料理を余らせて捨てるのは嫌だったので、龍平にはあげていた。
アメリカンクラブハウスサンドを作る回数が多いのも、コイツから岩上さんのサンドイッチかなり好評なんですよと遠回しにサンドイッチ作れと何回も催促されたり、まあ俺が食材買い過ぎて処分に困ってあげたりという場合もあったけど。
回数にして二十回はあげている。
出されたおかずを黙って食ってろ。
おまえに選択権なんて、存在しねえんだよ。
「あ、岩上さんすんません。氷もうちょっともらっていいすかね?」
「……」
氷の消費も早いんだよ……。
あーあ…、また沸騰して覚ました水を入れて、氷を作るようだ。
面倒臭いなあ。
「あ!」
俺が氷を整理していると、龍平は勝手に坊主さん夫婦から頂いたグレンリベットの封を開けて飲み出していた。
「あ、ボトル空いちゃったんで、こっちゴチになってます」
「……」
おまえ、本当に殺すぞ、この野郎……。
何で俺はあんな人間失格を部屋に招いてしまったのだろうか?
「それでどうしたんです、龍平は?」
「まず、グラスをダンとテーブルに叩きつけるように置いて、二杯目は薄過ぎるって、飲み干してから文句言うんですよ?」
「あいつらしいですね。それで?」
「じゃあ三杯目はお代いらないで、サービスしますと無料で出しました。それから二時間はいたんじゃないですかね…。お店も混んできたので、空いたグラスのお代わりがないか聞いたら、チェックしてと」
「その辺は空気読んだんですね」
「空気読んだなんて、とんでもない! 実質水割り二杯で四時間はいましたよ? それで会計を二千百円ですと請求したんです」
「また良心的な値段ですね」
「そしたら高過ぎるといきなり怒り出して…。こっちも商売でしているし、ましてや夜の時間帯までいるんで、この料金はしょうがないですと言いました」
「……」
空前絶後のヤバさをどこでも発揮しているな、あの無職。
「そしたら前は八百円で飲めたとゴネ出したんです」
「え、その値段の根拠ってなんです? あいつ頭大丈夫ですか?」
「多分ハッピーアワーの料金のつもりでいたんでしょうね。だから説明しました。そしたらずっとその事でネチネチ始まって」
「その心苦しい心境…、誠に心中察します……」
「ですよね? ほら、これ見て下さいよ。当時の龍平とのLINEのやり取りです。あの人、結局八百円しか持ってなくて、店出てからも延々とボッタクリだとこんな風に連絡がしつこいんですよ!」
うん、みなまで言うな、ママ……。
その怒り心頭な気持ちは、種類は違えども俺も食らった。
ロマンス詐欺発覚の翌日なのにね。
「で、どの辺であの馬鹿を出禁にしたんです?」
「最後にだいたい一杯の原価なんて、そんな掛からないでしょと偉そうに言ってきたので、もううちの店には二度と来ないで下さいと出入禁止処分にさせて頂きました」
「原価? あいつ何を言ってんですかね? 外で飲む資格ないですよ。物件の家賃、光熱費などの維持費。さらに人件費にどれだけの金が掛かってんだと思ってんですかね。一人でワンカップでも買って、部屋で大人しく飲んでろって感じですよ」
あちこちで実害をばら撒く龍平。
話題には事欠かないが、自分の家からたかが数分エリアなのに、二軒も出入禁止になっているなんて、末恐ろしい奴だ。
そろそろこなもんへ顔出そうかな。
俺はママにチェックを申し出る。
「一万三千円になります」
ボトル入れるまでの俺の予想が九千円か一万。
良心的な店だな。
「安いですね! ご馳走様でした、また来ますね」
一旦自称俳優マンションへ帰り、フライパンに火を入れる。
マスターと利美の分の弁当を新たに詰め直さなきゃ。
弁当を差し入れしながら、こなもんで飲む。
明日からいつもの日常が始まるが、中々楽しい日を過ごせたな。
二千二十四年六月二十四日、月曜日先勝。
休み明けインカジ『レディ』へ出勤すると、片屋敷が用事ある為遅れて出勤するようなので、代わりに伊達が残業で残っていた。
彼と同じ空間で仕事をするのは久しぶりだ。
まだ昼間の時間帯は暇だったので、昨日の話題を伊達に話す。
伊達にとってツボだったのは、自称俳優ではなく慶ズのほうだった。
しつこく今度その店へ行きましょうと誘ってくる。
スナックにそこまで頻繁に通える身分じゃないと伝えると、自分が出すから行ってみたいとしつこく懇願をしてきた。
まあ俺がもうちょっと余裕出たらと諭していると、片屋敷が遅れて出勤してくる。
ちょっと伊達にスナックの事を伝えたのは失敗だったなあと思いつつ、店内が混んできたので業務モードへ切り替えた。

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