見出し画像

夜の熱中症を、少し甘く見ていないだろうか

──身体の「水を保つ力」と、暑さに適応する力


熱中症というと、

炎天下。

高温な真昼の屋外。

激しいスポーツや練習中。

そんな場面を想像する人が多いと思います。


でも、

今年のように高温多湿の日が続くと、

僕が少し気になるのは、

むしろ夜です。

日が沈んでも、

気温が十分に下がらない。

湿度も高い。

風もない。

そんな部屋で、

何時間も眠る。

身体からすれば、

夜だから安全なわけではありません。

むしろ、

危険な時間帯になることもあります。



熱中症は、

単純に「暑かったから」起きるものではありません。

そして、

「熱中症=熱射病」でもありません。

熱中症とは、

暑さによって起こる身体の障害の総称で、

その中でも重篤な状態が熱射病です。

身体では常に、

熱をつくることと、

熱を逃がすことが行われています。

身体を動かせば、

筋肉は熱をつくる。

体温が上がれば、

皮膚の血流を増やし、

汗をかき、

その熱を外へ逃がそうとする。

ところが、

湿度が高くなると、

汗をかいても蒸発しにくくなります。

ベタベタするのは、

そのせいです。

汗は、

かくだけでは身体を十分に冷やせません。

汗が蒸発するとき、

気化熱として皮膚から熱を奪うことで、

大きな放熱につながります。

高温多湿な環境が厄介なのは、

この「熱を逃がす」という働きが、

うまく進みにくくなることです。



そして、

もう一つ大切なのが、

身体の中にある水分です。

人間の身体は、

かなりの量の水を蓄えています。

その中でも、

筋肉は水分を多く含む組織です。

だから、

年齢とともに筋肉量が減っていくと、

身体の総水分量も減少する傾向があります。

若い頃と同じ身体ではない。

同じ暑さ。

同じ室温。

同じ湿度。

同じ水分摂取。

それでも、

身体の中に持っている「余裕」は、

年齢によって違ってきます。



さらに年齢を重ねると、

暑さや喉の渇きを感じにくくなり、

体温を調節する能力も低下していきます。

つまり、

身体には熱がこもっているのに、

本人はそれほど暑いと感じていない。

水分が減っているのに、

本人はそれほど喉が渇いていない。

「喉が渇いたら飲もう。」

では、

遅れることがあるわけです。

これは、

夜になるとさらに厄介です。

眠っている間は、

何時間も水分を取りません。

それでも、

不感蒸泄といって、

呼吸や皮膚から水分は失われています。

高温多湿の部屋で、

十分に身体を冷やせない状態が続けば、

夜間でも熱中症は起こり得ます。

さらに、

寝る前に多量のアルコールを飲む習慣があれば、

脱水という意味でも注意が必要です。



では、

運動している人なら大丈夫なのか。

ここも、

少し注意が必要です。

日頃から身体を動かし、

暑さの中で適切に活動している人は、

暑熱順化が進みます。

暑さに身体が慣れてくると、

汗をかき始めるタイミングが早くなり、

循環も暑さへ対応しやすくなります。

つまり、

適度に身体を動かし、

適切に汗をかく習慣には、

暑さへ適応する意味があります。

でも、

これは、

「運動しているから熱中症にならない」

という意味ではありません。

むしろスポーツでは、

筋肉が大量の熱を生みます。

暑い。

湿度が高い。

運動強度が高い。

水分が足りない。

条件が重なれば、

鍛えている人でも、

身体の放熱能力を超えることがあります。

そこに湿度の高さが加わると、

リスクはさらに高まります。



だから、

夏を元気に乗り切るために必要なのは、

水を飲むことだけではないと、

僕は思っています。

適度に身体を動かす。

筋肉を保つ。

日頃から心地よく汗をかく。

暑さに少しずつ身体を慣らしておく。

スポーツをする人なら、

必要に応じてアイススラリーなどを使い、

身体の内側からクーリングする。

そして同時に、

無理な暑さには、

きちんとエアコンを使う。

特に夜は、

「寝ているだけだから大丈夫。」

とは考えない。

寝室の温度と湿度を確認する。

寝る前に適切に水分を取る。

必要なら、

すぐ飲める場所に水を置いておく。

汗を多くかいた時には、

水だけではなく、

状況に応じて塩分も補う。

暑さに慣れることと、

危険な暑さを我慢することは、

まったく別の話です。



めまい。

頭痛。

吐き気。

強い倦怠感。

筋肉のけいれん。

いつもと違う大量の発汗。

さらに、

受け答えがおかしい。

自力で水が飲めない。

意識がもうろうとする。

そこまで来れば、

「少し休めば大丈夫。」

と様子を見る段階ではありません。

特に意識障害がある場合は、

熱射病を疑い、

すぐに救急要請と身体の冷却が必要です。



身体には、

熱をつくる力があります。

そして、

熱を逃がす力もあります。

水を蓄える場所があり、

汗を使って体温を調節する仕組みもある。

でも、

その能力には限界があります。

年齢。

筋肉量。

体水分量。

発汗。

暑熱順化。

睡眠。

その日の体調。

そして、

温度と湿度。

熱中症は、

一つの原因だけで起きるものではありません。

だからこそ、

「水を飲んでいるから大丈夫。」

「運動しているから大丈夫。」

「家の中だから大丈夫。」

ではなく、

今の身体と、

今いる環境の両方を見る。

今年のような暑さでは、

その視点が、

いつも以上に大切なのだと思います。



いいなと思ったら応援しよう!