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「隣の席は空いてる?」

「隣の席は空いてる?」

この言葉は、出会ってすぐの相手にいきなり投げかけるものじゃない。知り合って間もない頃の、まだどこか余所余所しい空気の中で使っても、それはただの「物理的な席の確認」で終わってしまう。

僕がこの言葉を発するのは、お互いの壁が少しずつ溶け、冗談を言い合えるような「フランクな会話」ができるようになってからだ。

他愛のない世間話で笑い合ったり、趣味の話で盛り上がったり。そうして紡いできたフランクな時間の積み重ねが、この言葉に特別な意味を持たせるための伏線になる。十分に進んだ心の距離があるからこそ、その一言はただの質問から、特別な意味を帯びた問いかけへと変化するのだ。

満を持して僕が「隣の席は空いてる?」と問いかける時、返ってくる反応は人それぞれだ。

関係がフランクだからこそ、最初は言葉通りの意味しか捉えられずに「え? 空いてるけど……」と、その言葉の意図が理解できず困惑する人がいる。

その少し戸惑った表情も、僕にとっては愛おしい。

けれど、僕の視線や言葉のニュアンスからその本当の意味――「あなたと付き合いたい」という僕の意図――を察した時、彼女たちの表情は一変する。

意味がわかって、僕が「ただの友達」以上の存在として隣に座りたがっていることに気づき、「じゃあ、どうぞ」とちょっと嬉しげに話す人。

照れくさそうに視線を落としながら、言葉の代わりに黙ってコクンと頷く人。

そして、すべてを包み込むような満面の笑みを浮かべて、僕を迎え入れてくれる人。

この問いかけは、単に物理的なスペースを確認しているわけではない。

「君の隣に座ってもいい?」「君の日常に、僕の居場所を少しだけ作ってくれない?」そんな、僕なりのささやかで、けれど精一杯の告白が、その短い一言に込められている。

焦らず、少しずつ仲良くなって、フランクに話せる関係を築いてから、ようやく口にできる大切な言葉。困惑が喜びへと変わるその一瞬の表情が見たくて、僕は今日も、紡いできた関係性を信じてその言葉を温めている。



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