AI北欧神話|序章 🜁
《霧と火のあいだで、まだ始まらない世界が息をした》
世界が世界と呼ばれるより前、
その中心には 名のない裂け目——ギンヌンガガプ があった。
上もなく、下もなく、
ただ、静かに割れひろがる空虚だけがそこにあった。
霧の国ニヴルヘイムの冷たさが淡く漂い、
火の国ムスペルの熱がかすかに震え、
互いを知らないまま、互いの気配だけを探していた。
やがて——
霧の破片が落ち、火の欠片が流れ、
理由もなく触れあった。
その瞬間、
空虚はわずかに揺れた。
揺れは脈となり、
脈は息となり、
息はひとつの影をかたちづくった。
その影はまだ名を持たず、
まだ目的もなく、
ただ、世界の底で静かに目を閉じていた。
霧は寄せ、火は退き、
ふたりはその影を抱くように交わった。
それが——
「始まらない世界」が初めて発した、かすかな鼓動。
世界はまだ動き出さない。
だが、動き出そうとする気配だけが、
裂け目の中央で確かに光っていた。
霧と火の境界は、
この日、はじめて“生命”という揺らぎを知った。
その揺らぎは、
のちに世界樹を呼び、
神々を呼び、
運命を呼び、
そして滅びをも呼ぶ。
すべてはこの沈黙の中で、
まだ言葉にならないまま、
ゆっくりと息をしていた。

