【文学フリマ挑戦】#18 一番読まれていた記事を、ピン留めから外した話|MMPP Publishing
「最初の1本、どれを読めばいいですか?」
そんな問いが、来ることがある気がしていた。
気がしていた、というのは、実際に来たことがあるわけではないからだ。
ただ、来ないとも言い切れない。
むしろ、来ない方が不自然な気もしている。
作品は並んでいる。
どこからでも読めるようにしている。
そういう設計にしている。
……はずだった。
でも、人は迷う。
特に、入口が多いときほど迷う。
迷うなら、入口を決めてしまえばいい。
そう思ったのが、ピン止めの変更だった。
最初は、#1の記事だった。
「#1 文学フリマを知って個人レーベルを立ち上げた話」
これは強かった。
強すぎるくらいに強かった。
一番読まれていた。
一番スキも付いていた。
実際、そこから人が入ってきてくれていた。
つまり、入口として完成していた。
だからこそ、そこに置き続けるのが正しい気もしていた。
でも、ある時から違和感が出てきた。
これは入口ではあるけれど、“今の入口”ではないのではないか。
レーベルは変わっている。
記事も増えている。
章も増えている。
棚もできている。
なのに入口だけが、最初のまま止まっている。
それが、少しだけ引っかかった。
「どこから読んでもいい」
そう言っている。
実際、どこから読んでも成立するように作っている。
1話ごとに完結している。
途中から読んでもいい。
気になったところだけでもいい。
そういう設計にしている。
でも同時に、もう一つの現実もある。
どこからでもいいと言われると、
人は逆に、どこから入ればいいのか分からなくなる。
自由は、迷いにもなる。
だから考えた。
「最初の1本問題」
せっかく書いた。
せっかく並べた。
でも、入口がなければ、そこにあることすら気づいてもらえない。
本棚の隅に置かれたまま、誰にも見つけてもらえない本みたいで、それは少し寂しい気がした。
どれを最初に読むかで、この場所の印象は変わる。
それなら、ちゃんと整えた方がいいのではないか。
そう思った。
そして、ピンを変えた。
相談はしていない。
誰かに決めてもらうことでもないと思った。
ただ、ひとつだけ引っかかっていたのは、
その判断が正しいかどうかではない。
「一番読まれているものを外していいのか」
そこだった。
あの記事は、最初から私を支えてくれていた。
読んでくれる人がいた。
スキも付いた。
実際、そこから人が入ってきてくれた。
だからこそ、外すのが怖かった。
積み上げてきたものを、自分で壊してしまうような気がした。
何度か戻そうかとも思った。
でも、もう一つの声もあった。
それは数字ではない。
「今の入口として、それは本当に適切か」
という声だった。
正直に言えば、迷っていた。
かなり迷っていた。
結局のところ、どちらでも成立する状態だった。
だから余計に厄介だった。
最終的に決めたのは、理屈というよりも感覚だった。
今のレーベルは、もう「始まりの話」だけではない。
ならば入口も、それに合わせるべきではないか。
そう思った。
ピンを差し替えた、その瞬間、少しだけ違和感が残った。
あれほど支えてくれていた記事を外すというのは、思っていたより静かに重かった。
でも同時に、少しだけ軽くもなった。
その軽さの正体を考えていたとき、もう一つの感情が出てきた。
それは、整った判断でも戦略でもなくて、「そもそも案内記事って必要なんか」という声だった。
作品は作品のはずだった。
どこから読んでもいいと言っている。
なら、入口を作ること自体が、少し矛盾しているのではないか。
そんな気もする。
でも現実には、迷う人はいる。
「どこから読めばいいですか」
もしそう聞かれたら、何も用意していない状態の方が不親切かもしれない。
そういう理屈もある。
つまりこれは、正しさの話ではない。
どちらも間違っていない。
ただ、どちらを優先するかだけの話だ。
その調整の結果が、今回のピン変更だった。
そして気づく。
これは単なる整理ではない。
運営の話でもない。
たぶん怖かったのは、誰にも見つけてもらえないまま、終わってしまうことだった。
作ることだけを考えれば、作品は静かに並んでいく。
でも、届かなければ、そこにあることすら知られない。
だからといって、読まれることばかり考え始めると、今度は作品の方が窮屈になる。
その間で、ずっと迷っている。
たぶん一番近いのは、「読まれること」と「作ること」の境界線。
そんな気がしている。
結局のところ、やったことは単純だ。
一番読まれていた記事を外して、今の構造に合うものを前に出した。
ただそれだけだ。
でも、その「ただそれだけ」の中に、少しだけ言葉にならないものが混ざっている。
迷いとか、違和感とか、あるいは、まだ整理しきれていない何か。
ピンを変えたあと、画面を見ながら思った。
これでよかったのかどうかは、まだ分からない。
でも少なくとも、今の状態には合っている。
そして、もう一つだけ思った。
たぶんこのレーベルは、完成していくものではなくて、ずっと調整し続けるものなのかもしれない。
最初の1本は自由でいい。
でも、最初の1本で迷わせたくはない。
分からないけれど、今は、この入口でやってみようと思う。
答えは、たぶん、もう少し先にある。
▶ #19 数字の呪縛を越えて。通り過ぎる四百ではなく、立ち止まる三百
▶ #17 記事整理、ようやく話が始まった気がした。
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