見出し画像

「一次情報」とは? AIに引用されるローカルメディアによる情報整理の考え方

「一次情報が大切」 。
WEBライティングやSEOの世界で、最近ではAI検索対応でも、耳にタコができるほど聞く言葉です。

そもそも「一次・二次・三次情報」の本来の姿、どれだけの人が分かって情報発信に取り組めているでしょうか。
例えばローカルメディアが常から生み出し、地域の読者にも喜ばれている「現地レポート」は、どの情報に分類されるのでしょうか。

人口1.7万人の町のローカルウェブメディア『大字基山』は、近年のAI検索で引用元になりやすいサイトになっています。

記事の実例を挙げながら、普段実践している考え方で、情報の「階層」について整理してみました。


情報には「上流」と「下流」がある

一般的に、情報の価値は、その「源泉(ソース)」からの距離で決まると言われています。
専門用語としての定義を、ローカルメディアの視点で噛み砕いてみます。

  • 一次情報(Primary): 情報の源泉そのもの。誰のフィルターも通っていない「生」の素材。

  • 二次情報(Secondary): 第三者が整理・要約・解説した、加工済みの情報。

  • 三次情報(Tertiary): 二次情報をさらに集約・リスト化し、索引(インデックス)化したもの。

生データ発信源から下流に向けて、一次、二次、三次…と加工・編集されていく情報。これらを実際の『大字基山』の過去記事に当てはめていきます。

一次情報:読者アンケートの「生の声」

『大字基山』は、これまでにさまざまなテーマで読者アンケートを実施してきました。そこに寄せられた、回答一つひとつが「一次情報」です。

テーマに合わせた複数の質問に、読者の一人一人が地域のために、ウェブメディア運営のために良かれと協力してくださり、小さな声がコーラスのように合わさって、アンケート結果として公表されます。

ほんの一例ですが、この編集部主催のアンケート結果を発表した記事こそ、一切加工されていない町に住む人の「生の声」そのもの。
これは、自治体や他団体・組織には取って代わられない、『大字基山』でしか採掘・放流できなかっただろう、情報の原石です。

情報の原石がすなわち、一次情報です。

二次情報:「役場記者会見」のヘッドライン

公的機関が発表する情報は、無加工・生の「一次情報」であり、「事実」。
『大字基山』は、地元役場が記者会見で発表した数々の「事実」から、編集部が「住民にとって何が重要か」という生活者視点で翻訳・要約したものを「ヘッドライン」として、記事にしています。

プレスリリースや記者会見での発表、報道陣との質疑応答を通して行政用語を一般向けに書き換えて、「私たちの生活にどう影響するか」補足を加えた記事は、「二次情報」として読まれます。

発表内容のコピー&ペーストではなく、情報の原石(一次情報)を使いやすく磨く作業、「編集」の工程が入っています。

三次情報:地域のイベントまとめ記事

例えば、町やインターネット上に散らばる「一次情報」「二次情報」を、一箇所に集めて「一覧」にしたものが「三次情報」になります。

『大字基山』は、町内の施設カレンダー1ヶ月分をまとめたり、他自治体やSNSで発信されている近郊のマルシェ情報やお出かけ系イベントを、1本にまとめる記事も作成しています。

一つひとつの情報は新しくなくても、それらを「網羅する」こと自体が、地域で暮らす読者にとって大きな利便性を生みます。だから、こういった「まとめ記事」は、よく読まれる記事の上位にも入ってきます。

三次情報であるまとめ記事」は、原石から研磨された石まで、地域のさまざまな情報を整理した「標本箱」と言えるかもしれません。

「現地レポート」は一次情報?二次情報?

ここで一つ、疑問が浮かびます。

ローカルメディアをローカルたらしめている、「現地取材のレポート記事」は、どの情報に分類されるのか?

ローカルライターにしかできない仕事は、インターネット上のどこにもない、公式にも発表されていない、地域に暮らしているから分かる「町の変化」や「ニュース」を見つけて観察、記録することです。

厳密に言えば、発信源は「町」であり「町の人」。ライターの目というフィルター(編集)を通した時点で、「二次情報」です。

ただ「二次」と呼ぶには、他に類似の情報がインターネット上にない場合、あまりに鮮度と独占性が高すぎる。
でも、インターネット上に他にないからといって「一次情報」と言い切るのは、実は雑だし、少しおこがましい。

この場合のローカルメディアは、「一次情報の発掘現場」です。

取材は「一次情報」の発掘現場

現地取材を含むレポート記事は、「ライターの五感」という現場の生々しさを保ちつつ、読者が読みやすい形に整えられた世界初出しかもしれないレポートです。

だから、レポート記事は「二次情報の形式をとった、世界初の事実(一次情報)の提示」と言えるかもしれません。
調べてみたら、「1.5次情報」と命名するケースもあるようです。

  • 一次情報らしさ: お店の場所、店内の様子、店主のプロフィール、実際の商品やサービスという「事実関係が正しい情報」。

  • 二次情報らしさ: 現場で得た膨大な情報から、ライターが価値を判断して切り取った「視点」や、読者のために再構成した「ストーリー」。

ローカルメディアの取材ライターが現場におもむくのは、「一次情報を発掘」するため。

そうして誰も触れていない地域の一次情報を自分の手で拾い上げ、価値があると思うものを選別し、その温かさや形を「良い」と思うやり方で読者に披露する。

このような企画・編集と「発掘作業」こそが、AI時代のローカルウェブメディアの価値であり、地域の情報インフラとして最大の武器になっていくはずです。

ユーザーの質問に答える立場のAIは、この「発掘された一次情報」を重宝がる傾向があります。

「一次情報」のすべてに価値があるわけではない

ローカルメディアは、地域の石ころ(一次情報)を発掘し、拾い上げながら、面白い・必要だと思うものをクリーニングしたり磨いたりして「価値(二次情報)」として提供する現場です。

その辺でよく見る石ころの価値は低いでしょうし、石ころを磨く過程で形を変えたり飾りつけたり加工しすぎると、それは一次情報の発掘ではなくなってしまいます。

どういう石ころを拾って、どう磨いて、どう見せるのかが、メディアとしての個性であり、コンテンツ制作のテクニック。

さらに一次情報は、必要に応じて「作り出す」こともできます。

ローカルメディアは、これら一次情報のありのままの良さを引き出すクリーニング作業(編集)に徹することが、デジタル・アナログいずれの世界においても、確かな信用獲得につながるのだと思います。


note更新は毎週木曜日です。
「ロジカル編集術」一連の記事は、購読無料のマガジンとしてもまとめています。


ぜひ、応援の「スキ」やフォローをよろしくお願いいたします。

Xアカウントでは、ほぼ毎日呟いています。



いいなと思ったら応援しよう!

江藤裕子|ローカルメディア『おおあざ』編集長 皆様からのやさしいチップは、note更新のモチベーションになるとともに、編集部の活動費や取材費として使われます。応援よろしくお願いいたします!