禁じられた空想建築 #01|成り立ち編
#01 「一方通行のイエ」は、どうして生まれたのか
こんにちは、ソラカタチ・ラボです。
わたしは、こんなことを書いています。
建築設計を続ける中で、ふと感じることがあります。
「プロの仕事とは、正解を探す作業になっていないか?」と。安全で、合理的で、誰にでも説明がつく。それはプロとして不可欠なことですが、同時に、自由な発想の幅を少しずつ狭めてしまっていないか。
あえて逆のことを考えます。 「建ててはいけない空想の建築」を、本気で設計しようと。
日常の「こうあるべき」から少し離れて、空想してみる。「禁じられた空想建築」ではそんな空想の面白さや、そこから浮かび上がるものを綴っています。
今回は、「禁じられた空想建築」の成り立ちをふりかえる、成り立ち編として、空想の記録を追体験してもらえるようにしたいと思います。
リアルを考える自分と、空想を飛ばす自分と、二つの人格にわけてみようと思います。リアル担当のリアと、空想担当のソラです。
それでは、成り立ち編スタートです。

1:はじめに考えたこと。
リア:今日は、あの問題作「一方通行のイエ」についてふりかえりましょう。後戻り禁止、一方通行のルールは、不便そうだし、まさに「禁じられた」にふさわしいルールね。単なる意地悪でこのルールを考えたの?
ソラ:いや。実は真面目に考えたつもりです。。。
リア:?。まともなルールとは思えないけど。最初は何を考えてたの?
ソラ:家って一番身近な建物だよね。身近過ぎて、特に新しいアイディアもなかったんだ。とりあえず、自分がしていることを書き出してみることにしたよ。
リア:まあ、頭の中で分かっていることを、あえて淡々と書いたわけね。
ソラ:すると「小学生の夏休みの計画」で描くような、一日の過ごし方を円グラフで描いてみた。

ソラ:じつは、家って過ごす時間のほとんどは、外で、寝てる時間が大半だという、当たり前のことを再認識したよ。また、同時に、起きてるときしている時間は短く、とても円グラフには書ききれないということも分かった。着替えたり、お風呂行ったり、ご飯食べたり、洗面所いったりって忙しい。家って、思ったより歩いてるなと思った。
リア:まあ、確かに帰宅時間が遅いとか、ママとかもうご飯作って、洗濯物したりとか、いそがしく移動してるよね。
ソラ:そうだよね。あれやって、これやって、やれやれって感じで寝るのが僕の一日です。
リア:淡々と書くとなんか、すごい寂しい時間を過ごしているみたいね。
ソラ:うん。すごく豊かな暮らし、自由な時間を過ごしてると見せかけて、決まったルーティンをこなしているようにも感じ始めない?
リア:うっ
ソラ:そこで、決まったルーティンが部屋として並ぶほうが素直なカタチなのではと思い始めたわけ。

2:「行ったり来たり」を禁止して、空想してみる
リア:それで、一方通行。
リア:普通の家では、ありえないけど、ソラのなかでは、意外と成立しそうと思っているのね。
ソラ:そう。空想してみてよ。”玄関開けて、靴脱いで、服脱いで、お風呂入って、ご飯食べて、寝る。起きて、顔あらって、トイレいって、ご飯食べて、支度して、行く。” だいたい多少の違いがあっても、この並びだよ。
よくドラマで「ご飯にする?お風呂にする?」なんて聞かれるシーンあったようだけど、ほぼ、決まっているでしょ!そこに選択肢はないよ!(目が物語ってる。)」むしろ悩まず、この並びで、部屋が並んでくれたほうが、スマートじゃない?人のほうが、部屋にあわせて動いているよ。そういう意味では、普通の家は、行ったり来たりの家といえるね。
3:でも、実際は。
リア:じゃあ、「行ったり来たり」を禁止したとして、実際に家にしてみるのね。世の中にないだけの理由があるわよ。
ソラ:そう、すぐ困った。
リア:わかった、水回りでしょ!
ソラ:そう、空想とはいっても、トイレは生理現象だし、いつも決まったタイミングとはいかないしね。
リア:どうしたの?
ソラ:風呂やトイレやキッチンは、建物の中央に置いて、その周りに食堂やリビング寝室を並べることにしたよ。大きく後戻りすることは避けてみた。
リア:どのシーンからも水回りに行けるように、中心に水回りを据えて、その周囲を回遊するU字型にしたんだ。

4:さらに空想を広げる
ソラ:Uの字になると、また少し面白いことも空想できたんだ。
外とのつながりを考えた。家の中だけで一周して終わるんじゃなくて、外に出て、また別の場所から戻ってくる。発射装置のようにも思えてきた。
リア:すると?
ソラ:一日の生活そのものを空想すると、広く一周する感じになった。
リア:それこそ、サーキットみたいね。
ソラ:そう。朝、起きて、食べて、支度して、外出。会社行って帰宅して、着替えて風呂入ってねる。また。。。。

リア:まさに、「円グラフ」をそのままカタチにしたイエね。
ソラ:さらに家族の家だったとしても、大人も子供も、同じサーキットを回る。まるでスピードの違う惑星のようにぐるぐると。
リア:……一日が一周する家。
ソラ:皆の一日が、ちがうスピードでまわっているイメージ。一人だと寂しそうだけど。。。
リア:皆の動きまで空想して広げるとなんか、そうね、不思議と寂しい感じは、なくなってきたかな。むしろ、応援したくなってきたわ。私は私のスピードで、あなたはあなたのスピードでお互い、がんばろうと。
ソラ:宇宙飛行士が地球を眺めている感覚に近いのかもね。想像だけど。
5:まとめ
こうして振り返ってみると、「一方通行のイエ」は、最初から決められた形ではありませんでした。いくら手探りで考えてもしかたがなさそうなので、いつもやっていることをそのまま、家の中の行動を観察した。
そこで、人が思った以上に家の中を歩き、物を動かし、場所の使い方を変えていることに気づいた。そこから、「行ったり来たり」を禁止してみる。
という空想が生まれた。でも、それだけでは家にならない。
水回りなど、共有したい場所が出てきた。それらを中心に置き、その周りに生活をつないでいった。結果として、U字型になった。
そして外とのつながりまで考えると、家が、一日のサーキットになった。
たぶん、これがこの家の成り立ちです。
今回の「空想の記録」
今回の思考を、あらためて並べてみます。
・観察する/頭でわかってても、あえて書き出す。
・気づく/観察から意外性を抽出する
・空想する/意外性を「正」として空想してみる
・禁じる/禁止してみて、組み立てなおす
・困る/当然、困るポイントを明確にする
・組み直す/当然、困るポイントを解決する方法を考える
・形にしてみる。/多少強引でもカタチにするのが大事
・さらに空想する/対象を少し広い範囲で俯瞰して空想する
完成した家を見ると、一見すると「変わった形の家」に見える。
でも、その形の中には、こんな小さな思考の積み重ねがありました。
6:おわりに
あなたは、家の中で、今日一日、どんなふうに歩きましたか?
もしよかったら、朝起きてから眠るまでの行動を、順番に書き出してみてください。意外とルーティン化できませんか?一方通行のイエありかもと、なりませんでしたか。幸せなルーティンを描けると、それが理想のイエかもしれません。空想してみてください。
「これを禁止したら、どうなる?」
もしかすると、そこからあなたの「空想の種」が生まれるかもしれません。
成り立ち編、次は、#2 外を見ない「窓」のイエも書いていこうと思います。どんな成り立ちか、空想してもらえると嬉しいです。
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