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脇町はうだつ85棟の町か、消えた駐車場60台の町か

徳島県美馬市脇町。江戸中期から昭和初期の伝統的建造物が85棟、南町の通りに建ち並ぶ。防火壁を兼ねた「うだつ」は約50個現存するという。この数字だけ見れば、間違いなく全国屈指の密度だ。

だが今回、脇町について「景観を守るため住民の駐車場を廃止した」という話を調べようとして、僕は行き詰まった。美馬市の公式発表・文化庁のデータベースのどちらにも、この経緯を裏付ける一次情報が見当たらなかった。以下は、確認できた事実と、確認できなかった事実を切り分けた上での構造分析だ。




脇町とはどんな町か——85棟とうだつ50個の中身




脇町南町は「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されている。美馬市公式サイトには「江戸中期~昭和初期の85棟の伝統的建造物が建ち並んでおり」とある。

重要伝統的建造物群保存地区とは、文化財保護法にもとづき市区町村が定めた保存地区のうち、国が特に価値が高いと選定したものを指す。選定されると、外観にかかわる変更行為に規制がかかるのが一般的な仕組みだ。

脇町が藍商の町として成立した背景も見逃せない。全国伝統的建造物群保存地区協議会の記録によれば、脇町は「阿波特産の藍の吉野川中流域の集散地として繁栄」した町だという。うだつは単なる意匠ではなく、藍商たちが富を可視化する装置として競って上げたものだ。85棟のうち約6割にうだつが乗っている計算になる(独自算出)。この密度こそが、汎用的な町並み整備とは違う脇町固有の差別化要素だと思う。




「駐車場廃止」は本当にあったのか


ここが今回いちばん書きにくいところだ。

僕が探した範囲では、住民駐車場の廃止という具体的な経緯・時期・合意プロセスを裏付ける公式発表は見つからなかった。美馬市サイト、文化庁サイト、伝建協ページのいずれにも記載がない。

一方で、確認できたのは「市観光駐車場」と「道の駅藍ランドうだつ駐車場」を合わせて計60台分が無料で使える、という観光情報サイトの記載だ(こちらも一次ソースではなく参考値として扱う)。

重要伝統的建造物群保存地区に選定された地区では、建物の外観だけでなく、敷地内の工作物や駐車場のような屋外空間の現状変更も、保存条例にもとづく許可の対象になることが一般的にある。だから「景観のために駐車スペースが制約された」という話が生まれること自体は、制度の仕組みとしては不自然ではない。**ただし、それが脇町で実際に「住民の駐車場を廃止する」という形で起きたかどうかは、今回僕が確認できた公開情報の外側にある。**

これは看過できる話ではない。「成功事例」として語られる景観保存の裏側で、誰が何を我慢したのかという部分こそが一次情報から一番抜け落ちやすい。棟数やうだつの数のような「守った成果」の統計は公開されていても、「誰の利便性が削られたか」という代償の統計は、どの自治体サイトにも載っていない。




なぜ景観保存は「不便」との交換になりうるのか


ここは一般論として書く。伝統的建造物群保存地区の指定は、建物単体ではなく「群」としての一体的な景観を対象にする。だから駐車場やアスファルト舗装、電柱、看板といった、建物以外の要素にも規制が及びやすい。

「再開発・整備すれば人が集まる」という前提が、駅前や商業地の活性化ではよく語られる。だが脇町のような伝建地区が向き合っているのは逆の論理だ。便利にしないことこそが、景観という資産の希少性を維持する手段になりうる。駐車のしやすさを削ってでも町並みを守るという判断があるとすれば、それは「便益の最大化」ではなく「資産価値の防衛」という別のロジックで動いていることになる。

もっとも、この論理には限界条件がある。60台分の無料駐車場が受け皿として機能しているかどうか、観光客のアクセスがどこまで犠牲になっているかは、今回の公開情報だけでは判断できない。景観保存が観光振興に直結するという前提自体、駐車場不足がむしろ来訪離れを招くという逆の解釈も成立しうる。




あなたのまちなら、この交換を飲めるか


自分の自治体に伝統的建造物群保存地区、あるいはそれに準じる景観条例があるなら、条文のどこかに「駐車場・舗装・工作物」への現状変更許可の規定があるはずだ。それが実際にどこまで運用されているか、住民の利便性とどう折り合いをつけているかは、条文だけでは見えない。

美馬市の場合なら、教育委員会の文化財担当部署に直接確認するのが一番早い。稟議で使うなら、「85棟の伝統的建造物」「うだつ約50個」という美馬市公式発表の数字はそのまま引用できるが、「駐車場廃止」の経緯は未確認情報として扱う必要がある。

よくある質問


**Q. 脇町のうだつ町家は何棟あるのか。**
美馬市公式サイトによれば、江戸中期から昭和初期の伝統的建造物が85棟建ち並んでいる。うだつ自体は約50個現存するとされる(観光情報サイト記載)。

**Q. 住民の駐車場は本当に廃止されたのか。**
現時点で美馬市・文化庁の公開情報からは確認できていない。市観光駐車場と道の駅の計60台分が観光客向けの無料駐車場として案内されているが、これが住民駐車場廃止の代替措置かどうかは未確認だ。

**Q. 自分のまちで同じことを調べるにはどうすればいいか。**
自治体名+「伝統的建造物群保存地区」+「保存条例」で検索すると、指定範囲や現状変更許可の規定が出てくることが多い。運用の実態は担当部署への確認が必要だ。




「景観を守った」という物語は聞こえがいい。だが、その物語の主語が誰で、誰が何を差し出したのかを一次情報で追えないなら、それは物語であって検証済みの構造ではない。あなたのまちの「成功事例」、誰が何を我慢したかまで説明できますか?

※ 出典
- 美馬市公式サイト「うだつの町並み」 https://www.city.mima.lg.jp/kanko/udatsu/
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 全国伝統的建造物群保存地区協議会「脇町南町」 https://www.denken.gr.jp/archive/mima-wakimachiminamimachi/index.html

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