成瀬レクチャーシリーズ「認識・思考・言語」(5)「山田さんには子どもが二人いる」と”Mr. Yamada has two children.”
(↑のつづき)
「山田さんには子どもが二人いる」と”Mr. Yamada has two children.”
ここからは別の例をみながら、日本語の「人」の視点」と英語の「天」の視点での認識、思考、表現の本質的な違いについて考えてみましょう。
ここで用いる例は、以下のものです。
「山田さんには子どもが二人いる」
”Mr. Yamada has two children.”
この日本語と英語の表現は、いずれもほぼ同じ内容を言葉として表していると考えてよいでしょう。
では、日本語の世界と英語の世界では、それをどのような認識、思考、言語形式として表現しているのでしょうか。
「山田さんには子どもが二人いる」の認識、思考、言語形式
まず、日本語の「山田さんには子どもが二人いる」からみていきましょう。
この内容に対する日本語のイメージ構造図はこのようになります。

日本語の「人」の視点からみた認識において、この日本語文でまず認識されているのは、「山田さんには」という話題(トピック)です。
日本語の場合、トピックを「~は」という言語形式を用いて表現します。

この「~は」のことを「心の日本語文法」では「トピックマーカー」と呼んでいます(なお従来の日本語文法では「取り立て助詞」と呼ばれています)。
ここでは、その「~は」というトピックマーカーのもとで「山田さんに」の部分がトピックとして取り立てられているわけです。
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トピックマーカー/取り立て助詞である「~」は、文法でいうところの「格助詞」ではありません。
2つの実体のあいだの関係性を示す客観的な「格関係」という文法概念の表現形式ではありません。
「~は」とは、話し手/書き手の主観的な「意図」(ここでは何をトピックに取り上げるかということ)を示すものであり、文法の概念でいえば、「対事的モダリティ」のひとつです。

ところが、ここでまたややこしい話なのですが、
日本語の「~は」というトピックマーカーは、「対事的モダリティ」概念である「トピック」を表すと同時に、「命題的」概念である「格関係」を示す助詞のうちの「~が、~を、~に、~の」についてはその役割を兼務することができる
のです。
さらにややこしいのは、「~は」による「~が、~を、~の」の兼務の場合には「~が/~を/~の→~は」の兼務という「完全置き換え」式になります。
山田さんがカレーを食べる
→山田さんはカレーを食べる
カレーは山田さんが食べる
象の鼻が長い
→象は鼻が長い
ただし、「~は」による「~に」の兼務の場合には、「完全置き換え」式のほかに、「付け足し」式も用いることができます。
山田さんに子どもが二人いる
→山田さんは子どもが二人いる
山田さんに子どもが二人いる
→山田さんには子どもが二人いる
なお、「~が、~を、~の」以外の格助詞についてはすべて「完全置き換え」式が使えず、「付け足し」式だけの使い方になります。
A社からB社に関する情報があった
→A社からはB社に関する情報があった
チリで地震があった
→チリでは地震があった
骨組みまで完成した
→骨組みまでは完成した
(つづきは↓)
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