和歌・短歌・俳句の日英翻訳(8)「大君の 命かしこみ 出で来れば 我の取りつきて 言ひし子なはも」(天皇の仰せであるから遠くやって来たけれど、私が出発する時に私に取りすがって泣いていた妻は、今どうしているだろうか)
(↑のつづきです)
「万葉集」のなかの一首。大君(天皇)の命によって九州を防御する防人(さきもり)に任ぜられた上総の国(今の千葉)の青年が詠んだ歌です。
意味は
「天皇の仰せであるから、謹んでお受けして遠くやって来たけれど、私が出発する時に私に取りすがって泣いていた妻は、今どうしているだろうか」。
妻を思う心情が、ひしひしと伝わってきます。
「我の取りつきて」というのは、当時の東国の方言であったようです。
こうした素朴かつ素直な歌いぶりが、万葉集の大きな魅力のひとつです。
万葉集には、天皇の歌から、このような当時の庶民にあたる人々の歌までが、すべて区別なく収納されています。この状況を渡部昇一は「歌の前の平等」と呼び、この平等性が存在していた国は日本以外にないことを指摘しています。
さて英語です。私なりにつくってみました。
At the command of the Emperor
I have been far away from home
I am awfully anxious about my wife
who clung to me with tears in her eyes
直訳すると
「天皇の命令で故郷からはるか遠くにきてしまったが、
目に涙をためて私にすがりついていた妻のことがとても心配だ」。
awfullyはveryと同じく「とても/すごく」という強意の副詞です。ただ、もとの名詞のaweが「畏怖、畏敬(尊敬と恐れの交錯した感情)」という意味ですので、畏れのイメージおよび精神的なイメージがあります。
anxious about…は「~が心配である」。
clung toはcling to(すがりつく)の過去形。
with tears in her eyesは、非常によく使われる表現なので、覚えていて損はないでしょう。
(つづきは↓)
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