【夫婦関係】 仲がいいから聞かない
近所に仲のいいご夫婦がいる。
毎週金曜日の昼は、二人で必ずランチに出かける。
でも、この夫婦には、何年も夫婦生活がないと聞いている。
奥様が、夫に対する、ある種の不信感があるからだ。
それでも、奥様はそれを問いただそうとはしない。
問いただせば、今の生活が今のままではいられなくなるからだ。
だから、聞けない。
喧嘩をしない夫婦は、仲がいい夫婦だと思われやすい。
長く一緒にいれば、相手のどこに触れると面倒なことになるか、だんだん分かってくる。だから、そこには触れなくなり、喧嘩は減る。
それは、成熟という評価ができるのかもしれない。
あるいは、ただ超えてはいけない一線を、お互いによく知っているだけかもしれない。
この夫婦の場合、その一線は、はっきりしている。
ランチは、続いている。
それは、二人の関係がまだ壊れていないことの証拠のように見える。
不信感に触れないから、ランチが続いているのではない。
ランチを続けるために、不信感に触れない。
最初からそうだったわけではないのだろう。最初は、ただ二人でランチに行くのが好きだっただけだったはずだ。それが、いつからか、二人の今の関係を保つための習慣にもなっていたのかもしれない。
守っているのは、夫婦の関係そのものではなく、いつの間にか「今の生活の形」になっている。
誰も、嘘をついているわけではない。奥様は本当に、金曜日のランチを楽しんでいるのだと思う。ご主人も、おそらく同じだろう。
一方で、定期的に喧嘩をして、朝までやりあう夫婦もある。
何時間話しても、結局どちらも納得しないまま、朝になることもある。
別に何も解決していない時もある。
それでも、この夫婦は、向き合うことをやめない。
穏やかでいることよりも、向き合うことの方を、選んでいるのだろう。
そこには、少なくともお互いに向き合った時間が残る。
分かり合えなかったとしても、分かり合えない場所がどこにあるかは確認できる。
一線を引いてしまうと、なかなかたどり着けない場所でもある。
問いただせば、今の生活は今のままではいられなくなるかもしれない。
だから、聞かない。
今週も、仲良くランチに出かける。
二人でおいしいものを食べて、写真を撮る。
その時間は、本物かもしれない。
でも、その時間が本物であることが、他の何かに触れなくて済む理由になっているのかもしれない。
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