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毎日不幸とかウケる。ウズベキスタン珍道中【第5話】~永遠にカトラリーが出てこない件について語りたい~

※本作品は全10話の連載エッセイです。
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心が死ぬ瞬間

ホテルに戻り、チェックイン。
サマルカンドのトリプルルームと比べるとどうしても狭く感じてしまうが、元がマドラサであったことを考えるとこんなものだろう。むしろこの狭さも大好物の”ちんまり”要素で加点となるため、プラマイはゼロだ。

それにしても調度品が可愛すぎる。木製ベッドのデザインとか、ウズベキスタン刺繍のスザニのベッドカバーとか、可愛さの戦闘力がいちいち高い。
ルームキーには、どこか気の抜けた表情をしたラクダのぬいぐるみがぶら下がっている。っていうか、ホテルのルームキーにこんなデカいぬいぐるみが付いていること自体ちょっと面白い。

可愛い要素を存分に浴びまくったところで、再び観光へ出かけることにした。
ところがこのホテル、鍵の開け閉めが独特で、なかなか上手くいかない。閉まった感覚はあるのに、確かめると閉まってない…みたいなターンを10分くらい繰り返していたら偶然どうにか閉まった
閉め方に確信を持てないままだったので、果たして帰って来た時にちゃんと開けられるのか不安だったが、豚山の「とりあえず行こっか」の一声に流され出発。

まずはホテル近くにある、4本のミナレットが特徴的な建物『チョル・ミナル』へ。
チョル・ミナルのすぐ横に幼稚園があり、爆音を鳴らしながら園児がお遊戯をしていた。そこそこの年数を生きているが、それは私の知っているお遊戯ではなかった。パリピな音楽を爆音…!である。周りは割と閑静な住宅地なのだが、爆音に気を取られて肝心のチョル・ミナルとの対面の瞬間を覚えていない。

チョル・ミナルの近くに骨董品を扱うお店があった。私好みの店である。
気に入ったメダルがあったので店主に値段を聞いてみたところ、75,000スムと言われた。想定していた価格より高かったのと、他にも商品をじっくり見たかったのでとりあえずペンディングとし、また店内をひと回りすることに。
デザインの素敵な花瓶とトレイを見つけたので、さっきのメダルと合わせた価格を再び店主に尋ねてみた。すると、先ほど75,000スムだったメダルが200,000スムになっていた。花瓶は250,000スムである。トレイも同じくらい。

いや、マジで価格設定おかしいだろう

このままだと店主の適当な価格設定に飲まれてしまう。私が換算電卓を手に価格交渉を始めると、めちゃくちゃキレながらその価格である理由を言ってきた。そして電卓の操作をミスってイライラしたのか、チッと舌打ちされた。
その瞬間、私の購買意欲は死んだ

結局、私は何も買わずに店を後にした。
余談になるが、この店で250,000スムと言われた花瓶と同じものを、後日タシケントで30,000スムで手に入れることになる。
ぼったくりにも流儀があるべきはずだ。少なくとも私はそう思う。


カトラリーをください

今日はラビハウズ周辺のみの散策予定だったが、思ったより時間が余っていたため、もうひとつの観光エリアであるポイ・カロン周辺まで足を延ばしてみることにした。

『ウルグベク・マドラサ』、『アブドゥルアズィス・ハン・マドラサ』とマドラサ見学が続く。暑さと疲れもあったが、正直もうどれがどれだかわからなくなり始めている。
絶対言っちゃいけないんだけど…みんな同じじゃない?

時折アイス休憩を挟みながら、街歩きとショッピングにシフトすることにした。ブハラはお土産屋がそこかしこに並んでいるのだ。
サマルカンドのホテルで気に入っていた「S」のタペストリー。それと似たようなものが売っていそうな店を「S屋」と命名し、S屋っぽい店を見つけるたびSに似たものを探した。

S屋

そんな活動をしているうちに、夕暮れを迎える時間となってきた。
ブハラのマジックアワーを食事でもしながら見たいね、となり、屋上テラス席のあるレストランに入ることにした。

入り口にいた店員に屋上の席は空いているか尋ねてみると、大丈夫とのこと。案内されるまま屋上へ上がる。
すると今度は、屋上に控えていた別の店員から「屋上はもう予約でいっぱいだ」と断られてしまった。まぁ予約もしていないし仕方ないか…と下に降りようとすると、その間に店員同士で連絡を取り合ったようで「やっぱり屋上に座っていいよ」とのこと。ラッキー!
好きな席に座って良いと言われたので、一際眺望の良さそうな席を選んで座る。メニューを開き、ここから見るマジックアワーは綺麗だろうな~などと想像を膨らませていると、店員がやって来た。
「やっぱ屋上だめ。下に降りて」

ねぇ、意見何転するん?

マジックアワーは諦め、2階の席に移った。
一瞬のぬか喜びであった。


気分を切り替え、料理を注文することに。このレストランは家族経営らしく、2階で私たちのテーブルを担当するのは息子さんのようだった。

しばらくすると料理が出てきた。温かいボルシチ、温かいシャシリク、温かい丸ごとトマトのチーズ焼き…。
さぁ食べようとしたそのタイミングで、テーブルにカトラリーが無いことに気付く。ナイフも、フォークも、スプーンも、何も無いのだ。
このあと持ってきてくれるのかと少し待ってみたが、来ない。仕方ないのでこちらからお願いしに行くと、私たちのテーブル担当の息子さんはそこにはおらず、妹と思われる若い女の子の店員が立っていた。その女の子に、カトラリーが欲しいことを伝え、席に戻る。

…が、いくら待ってもカトラリーは来ない。テーブルの上で冷めていく料理…旅のテンションはだだ下がりだ。
するとそこへ息子さんが小走りで登場!
やっと食べられるよ~と安堵したのも束の間、ケロッとした表情で「追加注文ですか?」と聞いてくる息子。当然その手にカトラリーは無い。

マジで連携!!
さっきからこの店連携どうなってんの!!

本当に悪気が無いのはわかるし、こういう感覚の違いこそ海外というものなのだろう。
だが今日は続きすぎた。チョル・ミナルの近くの骨董品店から不幸が続きすぎたのだ。

その後、事態を把握した息子さんによってカトラリーは無事届けられたが、私の記憶は悲しくもそこで途絶えている。

ちなみにこれは後日談であるが、このレストランで会計時に使用したクレジットカード決済が3回分請求されていた。2回ならまだしも3回。(涙)
この旅行中起きたいくつかの不幸な出来事の中でも、まぁまぁ厳しめの不幸であったと認識している。

一瞬の屋上席

そんな調子の夕食だったので大して盛り上がるはずもなく、レストランを出る時間は予定より早いものとなった。外はちょうどこれからマジックアワーに差し掛かるというタイミングだった。不幸中の幸いとはこのことだ。

そのままブハラの街のシンボルである『カラーン・ミナレット』方面に行ってみると、想像していたより数段大きなミナレットが綺麗にライトアップされていた。あまりの美しさにしばし見とれてしまう。
気付けばカラーン・ミナレットだけではなく、街全体がキラキラとライトアップされていた。とてつもない綺麗さである。

夢の世界のようなブハラの街で、豚山は猫のクッションカバーにハマってしまったらしく、あーでもないこーでもないと言いながら店をハシゴしていた。
私はというと、引き続きS探しの活動に忙しかった。
時折気に入ったものを見つけては店主に価格を聞いてみたが、そのたびに想像の5倍くらいの金額を提示され心が折れた。

その後もいろいろ見て歩いたが決め手に欠け、結局何も買わないままホテルへ戻ることにした。


ホテルまでの帰り道は光と歓声のお祭り騒ぎで、サマルカンドの夜よりずっと頭おかしい感じがした。
奇声を発しながらウェイウェイやってる人波をかき分けながら、私の中にはややうんざりとした気持ちが渦巻いていた。
「なんかこの街しっくりこないな…」
完全にメンタル不調である。

ホテルに戻ると、穏やかでエレガントなオーナーが例のウィスパーボイスで「鍵を直しておきました」と迎えてくれた。
夕方ホテルを出る際、部屋の鍵を閉めるのに手こずっていた私たちを見ていたらしい。鍵穴に鍵を差し込むと、綺麗に一発で扉が開いた。
いろいろあった一日だったが、なんだか最後に救われた気がした。

マジでありがとうだよ…
エレガント・オーナーに感謝しながら、私のブハラ1日目は幕を閉じた。

デカない?



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