見出し画像

毎日不幸とかウケる。ウズベキスタン珍道中【第9話】~飛行機飛ぶ気配なさすぎて深夜の空港で詰み~

※本作品は全10話の連載エッセイです。
【第1話】から読む
【全10話・目次】
【マガジン】を読む

会いたくて震えるタシケント

旅8日目の朝。昨夜私たちを苦しめた爆音はいつの間にか収まっていた。
ホテル ウズベキスタンでの朝食は、1階のレストランが会場のようだ。これだけ大規模のホテルなのでとにかく人が多く、席を取るのもひと苦労だ。

朝食をとりながら改めてホテルを眺める。
このホテルに泊まる最大の魅力はソビエト建築を内部からゆっくり見れることに終始するだろう。有名なホテル前面のデザインを部屋側から見るのは新鮮だったし、内部の共用廊下や階段のデザインも味わい深いものだった。段階的に改装が行われているようなので、ソビエト建築に興味がある方には是非とも早めの宿泊を推奨したい。


チェックアウトを済ませ、荷物を預かってもらいホテルを出る。
ホテル ウズベキスタンのすぐ近くには地下鉄のアミール・ティムール・ヒヨボニ駅があった。今日はそこから地下鉄を乗り継いでバザールに向かう計画だ。

初めて乗るウズベキスタンの地下鉄。構内はどこか殺伐としており、少しだけ怖い印象を受けた。
ウズベキスタンでは地下鉄に乗る際にも持ち物検査がある。前の人の見様見真似で検査を通過。改札はクレジットカードのタッチ決済で通ることが出来た。

バザールに行くには途中で地上線への乗り換えが必要だった。だがここで手こずってしまい、計画変更。地上に出てYandexタクシーを呼ぶことにした。
ところが私たちが呼び出した位置が悪かったのか、迎えに来たタクシーと会えない。例によってドライバーからの着信が鳴る。「お前どこにおるん?」と聞かれるが、自分がどこにいるのかがわからない。振り返るとバス停があったのでその名称を伝えると、電話は切れ、間もなくタクシーがやって来た。
こちらがポンコツでも、結構どうにかなる。Yandex Goは総じて優秀だった。


タクシーを降りると、バザール特有のあの匂いが辺り一面に立ち込めていた。いつもこういった場所では私が先を歩くことが多いのだが、なぜだか今日は珍しく豚山が私を先導した。
せっかく来た場所なのでゆっくり見たい気持ちもあったが、そんな私の気持ちをよそに豚山はぐんぐん先を進んで行った。
どうも、例の腹痛でトイレに行きたかったらしい
それは大変だ。ひとまず先にトイレ休憩としよう。豚山のトイレタイムを待っている間、周りを見渡す。

私が調べた事前情報によると、このバザールにはどうやら野犬がいるらしかった。
野犬とか、普通に激ヤバ案件ではないか。海外のバザールといえば、警戒すべき最たる敵は”スリ”であることが鉄板であるが、ここに限っては”野犬”である。

私が周囲に目を光らせていると、豚山が爽快な表情で帰還した。トイレがこの旅イチの強烈さだったらしく、その惨憺たる状況を一生懸命私に説明している。この話を聞き、私は腹がよじれるほど笑った。間違いなくこの旅一番大笑いした話であるが、なにせ内容がとんでもなく汚い。機会があれば書きたいが、今はその時ではないと判断し割愛する。

豚山のお腹の調子も落ち着いたところで、バザールに本腰を入れよう。
もう今日はウズベキスタン最終日、手持ちのスムはすべて使い切っていい。気になるものを見つけたら片っ端から価格交渉していった。
そうしてこのバザールでは、花瓶3つ、可愛らしい柄の布生地、綺麗なガラス皿を購入した。ブハラの店で250,000スムと言われた花瓶が30,000スムで購入出来たのもこの場所である。
楽しすぎてかなりの時間を費やしてしまった。すっかり忘れていたが、野犬もスリも結局おらず、至極安全なバザールであった。

そろそろ次の目的地へ向かうとしよう。
バザール近くの駅から電車に乗り、Besh Qozon(ベシュ・コゾン)を目指す。ここはかつて”中央プロフセンター”と呼ばれていたプロフで有名なレストランだ。ここでタシケント風プロフを食べれば、この旅でのミッション”4都市すべてのプロフを食べ比べする”が完遂される。

だが、またもやここで乗り換えがうまくいかないトラブルが発生。駅を出て、Yandexタクシーを呼ぶ。すると朝と同じように、迎えに来たタクシーとなかなか会うことが出来ない。ドライバーからの着信再び。
「お前どこにおるん?」
なんだか朝と同じようなことをしているなぁと思いながら後ろを振り返ると、朝迷った場所と同じ駅だった

タクシーとなかなか会えないこのスポットはドゥストリク駅である。もしここからタクシーを呼ぶ機会があれば、その先の難航もほぼセットで付いてくることを覚悟されたい。


旅終盤、遂に発症

Besh Qozon(ベシュ・コゾン)に着くと、その観光客の多さにまず驚かされた。レストランというよりもはや一大観光地である。ここではタシケント風プロフ、肉の盛り合わせ、トマトとキュウリのサラダ、ナン、コーラを頼んだ。これでめでたく4都市のプロフ制覇である。

肝心の味であるが、実際食べ比べをしてみて思ったのは「どれも美味しい」ということ。各都市によって結構違いがあるのだが、それぞれに良さがあった。個人的な好みで言えば、バランスの良かったブハラ風が推しプロフである。念のため、私が書き殴ったプロフメモを披露させてもらうと、タシケント=パラパラ、サマルカンド=チャーハン、ブハラ=甘い、ヒヴァ=桃屋、と記されていた。

Besh Qozon(ベシュ・コゾン)を出て、楽しみにしていた『ウズベキスタン国立応用美術館』へと移動した。少し外れた場所にあるため空いているのかと思いきや、現地へ行くと観光バスが何台も駐車するほどの人気スポットであった。

展示されているウズベキスタンの工芸品も見応えがあるし、建物自体も素晴らしい美しさだったが、少し人疲れしてしまい併設のカフェで休憩することに。お気に入りのタプチャン席でまったりグリーンティーを飲んでいると、あいつは突然やって来た。
そう、腹痛である。

旅終了まであと1日。なんとか逃げ切れると思っていたが、その願いは儚く散った。
豚山と発症に時差があるため原因が絞りにくいのだが、自分では多分ではないかと考えている。

しばらく休んだあと、近くにあるスーパー”コルジンカ”に行ってみることにした。
コルジンカはこれまで訪れたスーパーと比べ、かなり大型の店舗であった。商品の陳列も現代風で、見ているだけでワクワクする。
日本で予習してきた量り売りチョコの買い方も、ここでようやく日の目を見た。現地の小学生女児に混じり、大量のチョコを購入。他には綿花のハチミツ、ペンやノートなどの文房具、歯磨き粉などを購入した。豚山はポテチなどのスナック菓子やクッキー、パンケーキなど、お菓子系を充実させているようだった。
たくさん買い物をしたのでスーパー前のベンチで荷物を整理していると、隣で豚山が買ったばかりのお菓子を「ウズベキスタンのどら焼き!」と言いながら美味しそうに食べていた。自由なやつである。

どら焼き?

次の目的地はタシケントの超有名バザールである『チョルスー・バザール』だ。コルジンカから最寄りのコスモナフトラル駅へ歩き、そのまま地下鉄でチョルスー・バザールのあるチョルスー駅を目指す。

タシケントの地下鉄は各駅が異なるデザインになっており、その美しさは”地下美術館”と呼ばれるほどだ。地下鉄の駅巡りはタシケントの観光予定にしっかり組み込んでいたが、もう体力も気力も時間も無く、私たちの限界は近かった。

そんな状態で辿り着いたチョルスー・バザール。豚山はもはや歩く屍状態である。瀕死状態だったSIMも遂に使い切ってしまったらしい。
ここでは何も購入せず、雰囲気だけを見て帰ることにした。もう少し肉体に余裕があれば、ゆっくり見たかったバザールである。

Yandexタクシーで、荷物を預けているホテル ウズベキスタン方面に戻る。ホテル前のアミール・ティムール広場へ寄り道し、最後の力を振り絞ってホテルの全景写真を撮影した。
改めてひしひしと感じるホテル ウズベキスタンのデザインの良さよ。どの角度から撮影してもビジュは最強。最後まで惚れ惚れしてしまうソビエト建築であった。


飛ばない飛行機

ホテルで荷物を受け取り、タクシーでタシケント空港へと向かう。私たちの乗る便は22時発の予定だったが、事前に”出発が2時間遅れる”との連絡が届いていた。しかしチェックインは従来通りの時間に来るようにとのこと。私たちは20時に空港へ到着し、早々とチェックインを済ませた。

この時点で22時のフライトが24時になっている訳だが、待機している間にさらに遅れるかもしれないとの情報が入った。搭乗ゲートも変更になり、みんなでゾロゾロと移動をする。
ところがもうすぐ24時が近付いているというのに、一向に搭乗が始まる気配が無い。これ本当に飛ぶのか?最初のうちは大人しく並んでいたが、疲れと眠気が限界で、もう立っているのもツラくなってきた。そこから出発時刻は遅れに遅れ、タシケントを飛び立ったのは夜中の1時40分であった。

機内で周りを見渡すと、皆一様にげんなりとした表情を浮かべていた。出発してしばらくすると食事が出てきたが、その時の時刻は深夜2時過ぎ。多分全員が(いらねー)と思っていたと思う。

強烈な睡魔と薄れゆく記憶の中で最後にぼんやり覚えているのは、そんなプルコギの残像だった。



【第8話】 |【目次】【第10話】



いいなと思ったら応援しよう!