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映画感想文『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』 虚実混在昔話

監督:クエンティン・タランティーノ/2019年 米

テレビ俳優として人気のピークを過ぎ、映画スターへの転身を目指すリック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)と、リックを支える付き人でスタントマンのクリフ・ブース(ブラッド・ピット)。目まぐるしく変化するエンタテインメント業界で生き抜くことに神経をすり減らすリックと、いつも自分らしさを失わないクリフは対照的だったが、2人は固い友情で結ばれていた。最近、リックの暮らす家の隣には、「ローズマリーの赤ちゃん」などを手がけて一躍時代の寵児となった気鋭の映画監督ロマン・ポランスキーと、その妻で新進女優のシャロン・テート(マーゴット・ロビー)が引っ越してきていた。今まさに光り輝いているポランスキー夫妻を目の当たりにしたリックは、自分も俳優として再び輝くため、イタリアでマカロニ・ウエスタン映画に出演することを決意する。そして1969年8月9日、彼らの人生を巻き込み、ある事件が発生する。

映画.comから

※ごく個人的な感想です。ネタバレあったらごめんなさい。

公開時以来の再鑑賞。
いや、わざわざ観る気はなくてですね、たまたまテレビ放送していたので、「そういや公開時は意識してなかったけど、シャロン・テート役はマーゴット・ロビーなんだって!」ということを確認しようと、チラ見だけの予定でした。ほら、マーゴット・ロビー好きだから。

そしたらさ、マーガレット・クアリーも出演していたことに気付いてしまったわけですよ。プッシー・キャット。
ほら、マーガレット・クアリー好きだから。

オースティン・バトラーまで出ていたとは!

かくして、最後まで観てしまったわけですが、再鑑賞したら、メチャクチャ面白かった。
いや、公開時も面白く観たんですよ。
でもほら、衝撃のラストなわけじゃないですか。
シャロン・テート事件を知っていると、「ええっ!!」って。
マーゴット・ロビーが自身の映画を観て、観客が笑っている様子に喜ぶ。
ちゃんと「死亡フラグ」を立ててるんですよ。
車で帰宅する時のBGMは「カリフォルニア・ドリーミング」。なんなら、その時点で泣いてましたよ。その先の悲劇を勝手に想像して。
ああ、それなのに、それなのに……

いやまあ、『イングロリアス・バスターズ』(2009年)で史実大改変はやってますけどね。
ああ、これ、ブラピだったか。
デカプーは『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012年)でしたもんね。
デカプーとブラピの共演だけで、映画史に残る映画ですな。
アル・パチーノに現実を突きつけられて、デカプーがメソメソ泣いてるのとか、超面白い。

それで、再鑑賞したら、思っていた以上に「虚実混在」の伏線が張られていたんです。
例えば、デカプーはめ込み合成の『大脱走』(1963年)。
これ、必要以上に長々見せるんだけど、ただの面白シーンではなくて、タランティーノ流「虚と本当が混在してますからね宣言」だと思うんです。
タランティーノが「不必要に長々見せる時」は、「必要」なことを描いていたりするんです。
他には、ブラピがブルース・リーを、あえて“ぶちのめしたことにしてしまう”回想シーンとかね。
こんなシーン、無くたってストーリー上不都合が生じないんだもん。

ところが、このブルース・リーぶちのめし事件でクビにすることで、ほぼ一心同体だったデカプーとブラピを物理的に引き離すんですね。

その結果、フリーで行動できるようになったブラピが(無駄に上半身裸になって)アンテナ修理のために屋根に登り、隣家の不審者を目撃する。

マーガレット・クアリーに誘われて、マンソン・ファミリーのコミューンに行く。
その、かつて西部劇撮影に使用された場所のシーン。
公開当時は、ダコタ・ファニングばかり目が行ってましたけどね。
改めて観ると、実に面白い。
まるで西部劇のような撮り方なんですよ。
(ちなみに、マンソン・ファミリーが西部劇撮影用の場所に、盲目の老人の地権者を世話しながら住んでいたのは実話だそうです)

ブラピとマーガレット・クアリーが「お前、未成年じゃねーだろうな?」的なやりとりをしますよね。
実際、マンソン・ファミリーの少女がヒッチハイクしてウンヌンというエピソードもあるようですが、ポランスキーの暗喩でもあるんでしょう。

「事件」の直前、同じレストランでニアミスするんですよね、シャロン・テートもデカプー&ブラピも。
私が思うに、ここが一つの「運命の交差地点」じゃないかと思うんです。
人間交差点ヒューマンスクランブル。矢島正雄原作・弘兼憲史作画(<言いたいだけ)

タランティーノ映画はバイオレンスの印象があるかもしれませんが、本当は驚くほど「良識的」な倫理観ある作品だと思うんです。
実は彼の作品で、理不尽な殺戮はほとんどない。
殺される人間は、殺されるだけの理由をきちんと描いている。
これはね、『デス・プルーフ in グラインドハウス』(2007年)の時に気付いたんです。
そう言う意味では、シャロン・テートが殺される理由はどこにも見当たらない。
この映画で殺される(あるいはブラピに半殺しの目に遭う)のは、悪意を向けてきた者だけなのです。

結論:タランティーノは、世界一過激な「良心の人」(笑)

(2026.03.08 NHK-BS4Kにて再鑑賞 ★★★★★)

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