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カーブドッチ物語 #37|夏こそビール、そしてぶどうと水のお話

新潟市西蒲区にある滞在するワイナリー「CAVE D'OCCI(カーブドッチ)」創業者の掛川 千恵子(かけがわ ちえこ)です。

前回の投稿から少し間が空いてしまいました。実は、これまで書き溜めた「カーブドッチ物語」を、「note 創作大賞2026」に応募していたからです。

そして今回は、この夏に発売したクラフトビールのご紹介と、続く酷暑の中で、ぶどうの水は大丈夫なのかというお話です。

このnoteをはじめて読む方へ



note「創作大賞2026」

昨年5月からスタートした「カーブドッチ物語」。気がつけば、たった一年で36話。ちょっとした長編ものにと、膨れ上がりました。

思いのままに綴ってきたので、「この辺で一度整理しようかな」と思った矢先、目に飛び込んできたのが、note創作大賞。締め切り5日前のことです。


もっと多くの方に見つけてもらいたい

創作大賞はエッセイ部門、小説部門、漫画部門など、17の部門に分かれています。

さて、「カーブドッチ物語」はどこに入る? どこにも入らない…ということで、オールカテゴリ部門に決定。タイトルを整え、何とか駆け込みで締切に間に合わせました。

今や、一千万人以上のクリエイターがいると言われるnote。先日発表された応募総数は、なんと17万作品。昨年の2.5倍とすごいことになったようです。これはもう、ちょっとしたお祭りですね。

「いったいどうやって審査するの?」と、こちらが心配になるほどの数です。もっとも「カーブドッチ物語」は全部に目を通していただくには、あまりにも長いので、受賞ははなから諦めています。

それでも応募したのは、少しでも多くの方に見つけてもらいたかったから
露出が増えれば、目に触れる機会も増える。それだけ十分です。

最近では、お仕事で初めてお会いする方から、「noteを読んでから来ました」と言われることも増えました。これは本当にありがたい。

さて、創作大賞の中間発表は9月中旬。17万作品のうち、どのくらい残るのでしょうか。

7月中は、読者のみなさんによる「応援期間」です。「カーブドッチ物語」の中からお気に入りの一編を見つけたら、ぜひ「スキ」で応援してください。 


カーブドッチの新作ビール

単一ホップでつくる缶ビール、SOLO(ソロ)

前にお伝えした通り、この7月、カーブドッチから初めて缶タイプのクラフトビールが登場しました。その名も「SOLO」。

ワインはぶどうの品種にこだわり、その個性を最大限引き出します。ならば、ビールも同じようにできないだろうか。そう考えて、私たちが向き合ったのが「ホップ」です。

複数のホップを合わせ、華やかさや厚みを競うのが今のクラフトビールの主流。でも、あえて一種類のホップだけでつくってみるその個性を、じっくり味わってみる。「単一」という意味から、名前は「SOLO」としました。

楽器のソロ演奏のように、素材そのものの音色を際立たせ、余計なノイズをそぎ落とし、透明感のある味わいを目指します。

ワイン醸造家が造るビール。ぜひ一度、お楽しみください。

ビール三兄弟

■Glint(グリント)

ニュージーランドのソーヴィニヨンブランの醸造手法から着想を得たビール。トロピカルフルーツやパッションフルーツ、ライム、モヒートなどの複雑なアロマと、ジューシーな果実感が特長です。

価格:¥682(税込)365ml
ホップ:モトゥエカホップ
スタイル:NZ Pale Ale

■Whisper(ウィスパー)

フルーティーでアロマティック。それでいて、かなりドライ。食事との相性もよく、クローブや白胡椒のようなスパイシーさと、白ワインを思わせる香りが楽しめます。

価格:¥726(税込)365ml
ホップ:ネルソンソーヴィンホップ
スタイル:Saison

■Linger(リンガー)

オレンジやグレープフルーツジュースのような果汁感に、心地よいほろ苦さ。最後には爽やかな酸味が余韻として残ります。フルーティーで軽い飲み口の爽やかなビールです。

価格:770円(税込)365ml
ホップ:マンダリナバーバリア
ホップスタイル:Sour IPA

もうすぐ、ぶどう🍇が大きくなるね


ぶどうと水の面白い関係

ところで、みなさんはぶどうの原産地がどこかご存知ですか?

ルーツは、コーカサス地方や中東、中央アジアといった、雨の少ない乾燥した地域にあるとされています。ぶどうは水が少なくても育つ植物なのです。

人間はそんなぶどうを、最初はみずみずしい果物として食べていました。そして、いつしか気づきます。「これはお酒にできるぞ」と。

そこから、ぶどうと人間の長い付き合いが始まりました。


ローマ帝国とキリスト教、そしてワインの普及

では、なぜワインはこれほど世界中に広がったのでしょう。その背景には、宗教や戦争、そして人々の暮らしが深く関わっています。

古代ローマ帝国の拡大とともに、ぶどう栽培やワインづくりはヨーロッパ全域へと広がっていきました。そうして、兵士たちの遠征とともにワインがフランス、ドイツへと運ばれていきました。戦争の戦略的にも、ワインは切っても切れない存在だったのです。

さらに、大きな役割を果たしたのが、キリスト教でした。洗礼の儀式や聖餐式などでワインが使われ、「キリストの血」を象徴するものとして、ワインは特別な意味をもつようになりました。

教えが広がるにつれて、ワイン造りもまた広がっていく。修道院ではミサに使うため、また巡礼者をもてなすために、製造技術が何世紀にもわたって磨かれてきました。

こうしてワインは、宗教と文化のなかに深く根を下ろしていったのです。


日本では考えられないヨーロッパの水事情

でも、宗教や戦争だけで、ワインはここまで定着したのでしょうか?
実はもうひとつ、とても切実な理由がありました。

それが「水」です。

中世ヨーロッパには、現在のように安心して飲める水がなかったのです。衛生環境が整っておらず、生の水には病原菌が含まれていることもありました。

一方、ワインは発酵によってつくられ、保存もできます。そのため、水分を補給するための水代わりに重宝されました。当時のワインは、現在よりアルコール度数も極めて低く、飲む時に水で割ることもあったそうです。

また、ヨーロッパの広大な土地は石灰質が多く、日本の軟水とは水質も違います。ヨーロッパを旅したことがある方なら、「水道水をそのまま飲まないで」と言われた経験があるかもしれません。

飲み水は大変に貴重な存在。今でもフランスのスーパーでは、ミネラルウォーターを買うよりも、デイリーワインを買う方が安かったりします。ですから、昔の人々にとって、ワインは酔うためのお酒というだけでなく、貴重な水分補給でもあったわけです。


水のおかげで花開いた日本酒文化

では、ひるがえって日本ではどうでしょう。

山からは清らかな水が流れ、地下水が湧き出て、そのまま飲めてしまう。日本は、本当に水に恵まれた国です。だからこそ、ぶどうからお酒をつくろうという発想は生まれなかった。美味しい果物としてそのまま食べるのが一番でした。

その代わりに日本で花開いたのが、日本酒文化です。日本酒はお米を発酵させてつくりますが、最後には必ず美味しい「水」を加えて仕上げます。つまり、水がふんだんにある場所だからこそ、日本酒がここまで発展したのです。


水から考える、命の尊さ

世界には今も、たった一杯の安全な水を得るために毎日遠くまで歩き、時には命がけで水を取りに行かなければならない場所があります。

日本に暮らしていると、蛇口をひねれば、当たり前のように水が出てくる。私自身、東京から新潟に移り住んだ時に「なんてお水が美味しいんだろう」と深く感動したものですが、この恵まれた環境は決して当たり前ではありません。

水がないからこそ、水の代わりに長く飲み継がれてきたワイン
水が豊かな土地だからこそ、米と水から生まれた日本酒

そう考えると、お酒というものは、実はその土地の自然や暮らしと深く結びついているのだと気づきます。

ワインを一杯、グラスに注ぐ。その向こうには、乾いた大地があり、長い歴史があり、人々の暮らしがあります。そんな背景を知ると、グラスの中のワインが、ほんの少し違った味わいに感じられるのだから不思議です。


さて、次回は久々に本にまつわるお話です。「ライターズ・イン・レジデンス」三作目、恩田陸さんの作品の書籍化がいよいよ始まりました。その速報をお届けします。

次回もお楽しみに。

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