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【連載小説4/5】 ✈️勲章とドレス

第一話 ジューヌとルルーの冒険
第二話 空賊ルルーと、白い船
第三話 栄誉と金と、昇進と

前作から、だいぶ間が空いてしまいました😅💦

あの頃の俺と、今の俺。
地続きなのに、少しずつ違う。

18歳の俺と、28歳の俺は、細胞も全て入れ替わり、考え方だって変わっている。

なのに何故だ、胸が痛いのは。
18の俺に引きずられてるだけなのか。

例えばあの頃憧れた飛行機の模型。
今それを手に入れたところで、
あの頃のようには喜べない。

けれど、彼女は。

手に入らなかったものを、手に入れたい。
ただの執着なんだろうか。

『ただの、過去の切れ端だぜ』

今の俺が囁く。
色褪せてボロボロになった布切れ。

『やめとけよ、せっかく忘れたんだろ?
あの頃の苦しみを忘れたのかよ』

忘れるのは辛い。
けれど、もう一度夢を見て、また諦める方が何倍も。
希望を持つなんて、そんな恐ろしいこと、
俺にはできない。

「本当に行くのかよ。人違いかもしれないぜ?」
テオの声が揺れている。

わたしは、荷物をまとめながら頷いた。

「うん、だって、いたんだもの。
あの空に、間違いなく」

あれは、絶対にジューヌだった。
見間違えるわけがない。

何度も何度も、夢の中で追いかけて、
いつも胸の片隅に存在する人。

リン、と魂が震える音がしたんだもの。

「わたしは行く。必ず出逢ってみせるわ」

宿に着いて、荷物を降ろす。
身体中の緊張が解ける気がした。

わたしはお尋ね者。
だから、いつもの格好ではだめ。

貴族の娘を装い、小綺麗な服装に身を包んだ。
滑るように軽い生地。
着慣れない上質な服は、わたしには不釣り合いで笑ってしまう。

「いいご身分だこと」

宿の眼下に遠く見える、スラムの路地は暗い。
あの場所では、パンひとつも買えない子どももいるのに。

このレースひとつで、
どれだけの子どもが腹を満たせるのだろう。

考えても仕方のない大きな隔たりに、
夜は暗く、月明かりも見えなかった。

年に一度、警官隊がパレードをする。

市民の人気取りのための、
派手な見世物だ。

俺は今回先頭で歩く。
この一年で立てた功績のお陰だってさ。

ゴテゴテと飾り立てた、
勲章だらけの制服に袖を通す。

「ジューヌ、素敵よ」
甘い薔薇の香りとともに、ローズが入ってくる。

裕福な商人の娘。
ブルネットの豊かな髪に、グレーの瞳。
この甘い微笑みに、狂わされる男はこの街にどれほどいるだろう。

「ありがとう」

礼を言い、彼女の手を取り口づけをする。
いつもの仕草だ。

俺が育ってきた世界では、
そんな気取った仕草はなかった。

ルルーはいつも全力で抱きついてきて、
俺はその身体を真っ直ぐに受け止めていた。

……いかん、
また意識が過去へと飛び出している。

ローズはいつものように顔を寄せる。
赤い、肉感的な唇が近づいてくる。

……ふい、と顔を逸らしてしまった。

しまった、と思った時には遅かった。
ローズは眉をひそめ、釣り上げ、
ぷいと横を向いて部屋を出ていってしまった。

「しまった。亡霊に気を取られ過ぎた」

制服を整え直し、前を向いた。

パレードの先頭は良く観衆が見える。
俺は馬に乗って辺りを見下ろした。

子どもたち、寄り添う老夫婦。
腹を抱えた妊婦。ハンチングの労働者の男。

貴族、商人、市民たち。

草臥れた麻のシャツに、履き潰した革靴の男。
新聞を売る少年。片脚のない軍人。

大輪の花のように美しいローズ。
薄赤色のドレスに柔らかく身を包んでいる。
ぷい、と顔を背けている。

ああ、まだ怒ってるな。

その時、視界の端に、青いドレスの女が目に入った。
金の髪を結い上げ、華奢な腰は今にも折れそうだ。
ドレスと同じ青い瞳は、意志を持って
俺を見つめていた。

飛空艇が空を横切り、
風が聴衆の髪を揺らす。

けれども。

彼らの間だけ、
まるで時が止まったかのように、
静かに、音が消えていた。

(第5話へつづく)


第5話は、明日公開予定です。



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