会社のAIがCopilotだけになったとき、あきらめる前に確かめてよかったことが3つあります
「会社ではChatGPTもClaudeも使えないんです」
AIの話をすると、会社員の方からいちばんよく返ってくる言葉です。
セキュリティの都合で、会社で許可されているAIはMicrosoftのCopilotだけ。 個人で契約しているAIを業務に使うのは禁止。
病院やクリニック、薬局のような医療系の職場なら、なおさらだと思います。 職場のパソコンでは決められたツール以外そもそも開けない、という環境は珍しくありません。
「だから仕事ではAIは使えない」——そこで止まっている人が、本当に多いと思います。
実は私も、同じ状況です。ある時期から、会社で使えるAIはCopilotだけになりました。
そして最初に思ったことも、たぶん皆さんと同じです。
正直に書くと、当時の私はAIとのチャットの中でこう言っています。
「業務では使えるようなものはでてこないポンコツ」
当時の本音そのままです。
ただ、私はそのまま諦めるのも悔しくて、愚痴を言った相手にこう続けました。
「情報システムのプロとして、この状況を打開してください」
先に正直に書いておくと、この移行はまだ途中です。「Copilotで全部解決しました」という話はできません。
それでも、途中まで来て「先に確かめてよかった」と思えたことが3つあります。同じ状況で立ち止まっている方に、そこだけ先に渡します。
結論:スキルはツールではなく、「手順書」に宿る
打開策の核になったのは、ひとつの発想転換でした。
私が積み上げてきたのは「Claudeの使い方」ではなく、「仕事の手順書」だった——ということです。
私は普段、記事制作やレポート作成のような繰り返し発生する業務を、AI用の手順書(プロンプト)の形にして何度も使い回しています。
ここで価値があるのは、ツールの機能ではなく、手順書の中身のほうでした。
何を入力して
どういう順番で処理して
何をチェックしてから出すか
この部分は、ChatGPTだろうがClaudeだろうがCopilotだろうが、同じように通用します。
だから、特定のツールに依存しない書き方に直しておけば、ツールが変わっても**「貼り付け先を変えるだけ」**で載せ替えられる。
「Copilotしか使えなくなった」は、「積み上げたものがゼロになった」ではありませんでした。
ツール非依存の手順書は、この6要素で書く
具体的には、手順書を次の6つの要素で書きます。そのまま型として使ってください。

■ 役割:あなたは〇〇(例:マーケティングの実務担当者)です
■ 目的:この作業のゴールは〇〇です
■ 入力:私が渡すもの(例:会議メモ、集計表)
■ 手順:1.〇〇 → 2.〇〇 → 3.〇〇 の順で進めてください
■ 出力形式:見出し構成・表の形・文字数の目安
■ チェック:出す前に確認すること(例:数字の転記ミス、名前の表記ゆれ、根拠のない断定)
ポイントは最後の「チェック」です。
多くの人の指示には「何をしてほしいか」しか書かれていません。 でも実務で事故を起こすのは、だいたい出す前の確認が抜けたときです。
私は薬剤師免許を持っていて、いまは製薬会社で薬の安全性を確認する仕事をしています。「出す前に確認する」が染みついているのはこの仕事のせいで、その癖をそのまま手順書の最終項目に入れています。
この6要素で書かれた手順書は、「〇〇というツールの上手な使い方」ではなく「誰が(どのAIが)やっても同じ結果になる作業指示」になります。だからツールを選びません。
私の環境では、無料枠のCopilotでもPythonが動きました
もうひとつ、調べていて意外だったことを共有します。
私の環境では、無料枠のCopilotでもCode Interpreter(Pythonをその場で実行する機能)が使えました。
つまり、「計算やデータの整合性を、AIの"雰囲気の回答"ではなくプログラムで確かめる」という使い方が、追加費用なしでできたということです。
私はこれを使って、AIの出力を検証するスクリプトをCopilotの中で走らせる自分用の運用パックを作りました。
ただし、Copilotは契約プランや会社側の設定で使える機能がかなり違ううえ、機能の名前や提供範囲もよく変わります。「うちでも使えるはず」と決めつけず、自分の環境で実際に試して確かめてください。(何かを断定せず自分で確かめる——この記事で言いたいことと同じ段取りです)
文章を作るのもAI、検算するのもAI。ただし作る役と確かめる役は分ける。 この「分ける」の具体的なやり方は、近いうちに1本にして書きます。
ただし、境界線だけは最初に引いてください
最後に、道具の工夫より先に決めておくべきことを1つだけ。
会社のデータは、会社が許可したAIにしか入れない。

私は「会社業務はCopilot、副業・個人の作業は個人契約のClaude」と線を引いていて、会社のデータに個人契約のAIで触れるような使い方は、便利かどうかを検討する前の段階で全部NGにしています。
Copilot縛りへの不満から、こっそり個人のChatGPTに社内資料を貼る——これがいちばんやってはいけないやつです。
医療系の職場なら、扱っているのは患者さんの情報です。「便利だから」で越えていい線ではない、というのは説明するまでもないと思います。
工夫はルールの内側でやる。それが職場でAIを長く使い続けるための前提だと思っています。
正直な現在地も書いておきます
ここまでの3つは「確かめてよかったこと」です。 ではいま、移行がどこまで進んでいるか。——正直に言うと、苦戦しています。
手順書の移し替え自体はやりました。Copilot上にエージェント(手順書を覚えさせた、専用の相棒のようなもの)も作りました。
でも、思ったようには動いていません。
私の使い方の範囲で言うと、エージェントに渡した手順の一部を、Copilotが「ここは要らない」と勝手に判断して飛ばしてしまうことがあります。資料を読ませると、書いていないことをそれらしく答えてくる(いわゆるハルシネーション)こともあります。そこそこのものは出ます。ただ、物足りない部分が多いのが現状です。
白状すると、冒頭の「ポンコツ」はあの日一度きりの言葉ではありません。エージェントが手順を飛ばすたびに、いまも小さく言っています。
前のやりとりの記憶や、資料を参照して答える精度・量も、個人で使っているClaudeと比べるとまだ届きません。スケジュール管理やプロジェクト単位の機能もなく、Microsoft製品との連携は上位プランでないと使えないものがあります。
なので今は、会社にアップグレードの要望を出して、返事を待っているところです。
「工夫すれば全部なんとかなります」とは書けません。でも、「何もできない」でもありませんでした。6要素の手順書、無料枠のPython、境界線——この3つは、ツールやプランが変わっても持ち越せる資産です。
まとめ
「Copilotしか使えない」は、積み上げがゼロになることではない
スキルはツールではなく手順書に宿る。役割・目的・入力・手順・出力形式・チェックの6要素で書けば、どのAIにも載せ替えられる
無料のCopilotでもPython実行が使える。検算役を任せられる
ただし境界線が先。会社のデータは許可されたAIにしか入れない
「ポンコツ」と言った日の自分に伝えたいのは、ツールの性能を嘆く前に、渡す手順書と、越えない境界線を先に整えること。それから、嘆く時間があったら要望を出すこと。ここまでが、いまの時点で言える答えです。
アップグレードの返事が来たら、うまくいったこともいかなかったことも、また実録で書きます。
このnoteでは、薬剤師×マーケターの私が、AIで実務を仕組み化する過程を実録で書いています。
昨日は、AIの間違いが怖い人向けに、私が守っている検証ルール3つをコピペできる形で書きました。今日の「手順書」と組み合わせると、Copilot縛りでも安心して回せるようになります。
今日の「手順書」の考え方がどこから始まったのかは、チャット履歴をAIに監査させた話に書いています。
この連載がどこから始まったのかは、初回の自己紹介に書いています。
AIに任せた仕事の確認に、まだ時間を取られている方は、フォローしてもらえるとうれしいです。
