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「シンプルに考える人」と「短絡的な人」は、同じことを言う

会議で「売り上げを伸ばすために、営業担当者を増やしましょう」と誰かが言う。商談は来ている。現場も忙しい。参加者がうなずき、話は採用人数へと進んでいきます。分かりやすい提案です。会議が早く終わりそうなところも、たいへん魅力的です。

ただ、ここで気になった。「シンプルに考える人」と「短絡的に考える人」は、何が違うのでしょうか。どちらも、まったく同じ提案をすることがあります。

大きな違いは、複雑な事情を理解したうえで重要な点に絞っているか、そもそも複雑さに気づいていないかです。 結論だけを聞いても、その違いは見えません。差が表れやすいのは、実行して、思いどおりに進まなくなったときです。

その「だから」の間に、何があるか

「商談はあるのに、人が足りない。だから増員しよう」。ちゃんと理由もあります。私も、ここまで考えれば十分だと思ってしまいそうです。でも、その「だから」は、いくつかの条件を飛び越えているかもしれません。

商談が増えたのは、一時的なキャンペーンの影響ではないか。担当者が忙しいのは、事務作業に時間を取られているからではないか。新人の教育で、今いる人がさらに忙しくならないか。採用した人が戦力になる頃にも、商談は十分にあるのか。

これらを確かめると、事務作業を減らすほうが先かもしれません。期間を限って応援を頼む手もあります。反対に、商談が継続して入り、作業を見直しても対応しきれず、育成する余力もあるなら、増員を選ぶ理由が強くなります。

その検討を経て「今回は増員が必要です」と伝える。聞こえてくる結論は、最初と同じです。しかし、別の可能性を検討したうえで絞ったのか、最初に思いついた答えで止まったのか。そこには大きな差があります。

ピカソの雄牛は、最初から線が少なかったわけではない

ピカソの《雄牛》の連作を見ると、この違いをイメージしやすくなります。1945〜1946年に制作された石版画では、量感のある雄牛から、少数の線による表現へと姿が変わっていきます。最終段階だけを見ると、ずいぶん簡単そうです。つい「これなら自分にも」と言いたくなる。仕事でもo同じです。すごい人の提案を聞いて「あ、それ、わたしも思っていた!!」と思うのに似ています。

けれど、途中の変化を見ると印象が変わります。何を残せば雄牛として伝わるか。その選択を重ねた先に、あの少ない線がある。

考えることにも、似たところがあります。重要な要素の関係が分かっているから、今回の判断に必要な部分を選べる。省いた部分が重要になったら、そこへ戻って考え直せます。

最後の少ない線だけをまねしても、その線を選ぶ力までは手に入りません。 仕事でも、結論の短さだけをまねると、その後に必要な判断が抜け落ちてしまいます。

会議では同点でも、実行すると差がつく

たとえば、増員を決めたものの、採用が予定どおりに進まなかったとします。商談は待ってくれません。「採用を頑張っています」という報告だけでは、目の前の対応漏れは減らない。会議では満場一致だった提案も、現実には拍手だけで動いてくれません。

事務作業の量や育成の負担まで調べていれば、次の手を考える材料があります。「採用には時間がかかる。先に定型作業を他部署に移せないか」「その時間で既存の担当者が商談に対応できないか」。移せる作業と受け入れ先を確かめ、小さく試し、対応件数が増えたかを見て修正する。採用を待つ間にも、前に進めます。

一方、「人が足りないから増やす」というつながりしか捉えていないと、採用が止まったところで次の手を失いやすい。「採れないので仕方がない」と待ち続けたり、「増員案が間違いだった」と理由を確かめず別の案へ飛びついたりする。

もちろん、十分に考えても予想外のことは起こります。すべての前提を網羅できるわけでもありません。それでも、何を変えれば成果につながると考えたのかが分かっていれば、うまくいかない箇所を調べ直せます。

増員で変えたかったのは、商談に対応できる量です。実行中も、採用人数だけでなく、対応漏れが減ったか、受注や売り上げにつながったかを見る。前提を理解することは、考え込むためだけに必要なのではありません。実行を止めず、成果に近づけるためにも必要なのです。

「要するに」のあとに、もう一文

とはいえ、会議であらゆる条件を並べればよいわけでもありません。「人によります。時期にもよります。状況次第です」。確かにそうです。でも、それだけでは次に何をすればよいか分からない。「一概には言えません」で、会議時間だけは一概に延びていきます。

そこで、提案するときには、結論と一緒に「その判断が成り立つ条件」と「見直すきっかけ」を短く添えてみる。たとえば、こうです。

「今回は営業担当者を増員しましょう。商談が継続して入り、作業改善だけでは対応しきれない、というのが前提です。来月、商談数と対応漏れを確認し、この前提が崩れていれば採用人数を見直します」

さらに、実行上の壁には次の手を用意します。「採用が遅れる場合は、定型作業を移して対応時間を確保できないか試します」。判断の前提が崩れたときと、手段が行き詰まったときで、変えるものを分けておくのです。

明日の会議では、まず「何をするか」を言う。そのあとに、「何を確かめ、いつ見直すか」を一文添える。自分でも答えられなければ、そこが次に調べる場所です。

シンプルな結論を、実行できる提案にする。そのために残しておきたいのは、うまくいかなかったとき、次の一手を選べるだけの理解です。


参考資料:MoMA《雄牛》作品解説


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