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#022 昔うまくいった「正解」、いつまで正しいですか?

一度うまくいったやり方は、その後も「正解」として残り続けることがあります。

今回は、世界が変わる中で「正解」をどう見ればいいのかを考えます。


月曜の朝、メールを開く。

未読のメールがいくつか並んでいる。
一つ開いてみる。

自分が直接対応する話ではなさそうだ。
でもCCに入っているので、一応読む。

次のメールもCC。
その次もCC。

過去のやり取りまで少し遡ってみたけれど、結局、自分がすることは何もなかった。

そんなメールを何通か読んだあと、本当に自分が対応すべきメールが出てくる。

でも今度は、少し危うい。

さっきまでの「念のため共有」と、見た目がほとんど変わらないからだ。

「CC、多くない?」

そう思ったことがある人は、少なくないかもしれない。

でも、なぜこんなにCCが増えたのだろう。

最初から、

「とにかく全員をCCに入れよう」

と思っていたわけではないはずだ。

以前、こんなことがあったのかもしれない。

「その話、聞いていません」
「もっと早く共有してほしかった」
「次からは関係者も入れておいてください」

だから次から、関係しそうな人をCCに入れた。

すると、問題は減った。

情報が届くようになった。
「聞いていない」も減った。

つまり、

そのやり方は、正しかった。


間違っていたから、残ったわけではない


今だけを見れば、

「CCを減らせばいい」
「無駄なルールをやめればいい」

と思うかもしれない。
でも、それではこの問題の半分しか見えていない。

関係者をCCに入れる。

そのやり方は、当時の問題をちゃんと解いていた。
だから残った。

次もそうした。
別の案件でもそうした。
新しく入った人にも、そのやり方が引き継がれた。

やがて、それが当たり前になる。

ここには、少し意外な構造がある。

古いやり方は、間違っていたから残っているとは限らない。

むしろ、

正しかったからこそ、残っていることがある。


世界は動く。正解は残る。


最初にあった問題は、

「必要な情報が届かない」

だった。

だから、

「関係者をCCに入れる」

という方法をとった。

情報共有は改善した。

この時点では、
世界と正解が、ちゃんと合っている。

ところが、時間が経つ。

案件が増える。
関係者が増える。
メールが増える。
組織も変わる。
使うツールも変わる。

世界の方は、少しずつ動いていく。

一方で、

「関係者はCCに入れる」

というやり方は残る。

なぜなら、それは一度うまくいった方法だからだ。

共有される。
標準になる。
引き継がれる。
仕組みの中に入っていく。

つまり、

世界は動く。
正解は残る。


最初は重なっていた二つが、時間とともに少しずつ離れていく。

そして、あるところまで離れると、
かつて問題を解いた方法が、別の問題を生み始める。

「情報が届かない」を解くために増やしたCCが、

今度は、

「情報が多すぎて、大事なものが届かない」

を生み始める。

正解が突然、間違いに変わったわけではない。

正解と世界の間に、ズレが生まれた。

世界は動く。正解は残る。



会議にも、同じことが起きる


たとえば、あるチームで情報共有の不足が問題になったとする。

そこで、

「毎週、関係者全員で集まろう」

と決める。

最初は効果がある。

認識が揃う。
問題を早く見つけられる。
判断も速くなる。

だから、毎週の定例会になる。

一年後。

情報共有の仕組みは整った。
メンバーも仕事に慣れた。
当時頻発していた問題は、ほとんど起きなくなった。

それでも毎週、同じ時間に同じメンバーが集まっている。

誰かが間違えたわけではない。
会議そのものが悪いわけでもない。

ただ、

会議が必要だった世界の方が、変わっている。


これは、CCや会議だけの話ではない


同じ構造は、いろいろなところにある。

承認フロー。
KPI。
業務ルール。
組織の役割。
在庫の持ち方。

家庭にもある。

子どもとの約束。
家事の分担。
お金の使い方。

個人にもある。

仕事の進め方。
勉強の仕方。
キャリアの選び方。

私たちは、毎回すべてをゼロから考えることはできない。

だから、うまくいった方法を残す。

ルールにする。
仕組みにする。
習慣にする。

それ自体は、とても合理的なことだ。

問題は、

正解を残している間にも、世界は動き続けている

ことにある。


正解が古くなったことを知らせる通知は来ない


しかも、世界の変化はたいてい静かだ。

CCが5人から、ある日突然50人になるわけではない。

5人が6人になる。
6人が8人になる。

メールも少し増える。
案件も少し増える。

一つひとつを見ると、

「やり方を変えるほどではない」

ように見える。

だから、昨日の正解を今日も使う。
今日使えたから、明日も使う。

そうして気づかないうちに、ズレは少しずつ大きくなる。

正解が古くなったことを知らせる通知は来ない。


正解にも、寿命がある


ただし、

「3年経ったルールは古い」

という話ではない。

10年前に決めたことでも、今の世界に合っているなら使えばいい。

逆に、昨日決めたことでも、世界が大きく変われば見直す必要がある。

つまり、

時間が経ったから、正解が古くなるわけではない。

世界が動く。

その結果、
正解と今の世界との間にズレが生まれる。

そのズレが大きくなったとき、
かつての正解は、今の正解ではなくなっていく。


AIが変えるのも、正解だけではない


AIによって、資料を作る時間も、情報を探す時間も変わり始めている。

新しい技術が生まれるということは、これまでの正解を支えていた世界も動くということだ。

新しい正解を探す前に、

古い正解とのズレが、すでに生まれていないだろうか。


ときどき、正解と世界を並べてみる


すべてのルールを疑う必要はない。
昔から続いているからといって、捨てる必要もない。
新しいものに変えれば、正しくなるわけでもない。

見るべきなのは、

正解と、今の世界がまだ合っているか。

CCに人を入れるとき。
毎週の会議に参加するとき。
いつもの数字を追いかけるとき。
「昔からこうしている」に出会ったとき。

少しだけ、問いを変えてみる。

「これは正しいか?」

だけではなく、

「この正解は、今の世界にも合っているだろうか?」

世界は動く。
正解は残る。

だから、ときどき二つを並べてみる。

そこに生まれた小さなズレが、
次に変えるべきものを教えてくれるかもしれない。

正解と世界の「ズレ」を見る


正解ではなく、正解と世界の「ズレ」を見る。

なぜ生まれた?
何が変わった?
まだ合ってる?


次に読むなら

世界は動いている。

でも、その変化はいつも、目に見える形で起きるわけではありません。「変わった」と気づく、そのずっと前から、何かが積み上がっていることがあります。

次は、見えにくい「変化」の正体を考えます。

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