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#038 見ているだけでは、見えないこと

見ているだけでは、見えないことがあります。

考えて、構造を捉えて、それから動く。けれど実際には、少し働きかけてみたからこそ、初めて見えてくるものもあります。

今回は、そんな「理解と行動の往復」について考えます。


朝、家を出る時間が近づいているのに、子どもの準備がなかなか終わらない。

「昨日のうちに準備しておけばよかったのに」

そう思って、次の日から前夜に持ち物を揃えるようにしてみる。これで少しは早くなるだろうと思ったのに、翌朝になってみると、今度は着替えの途中で止まっている。

それなら服も前日に決めておけばいい。そうしてみると、たしかに少し早くなった。それでも、なぜか家を出る時間はそれほど変わらない。

そこで改めて朝の様子を見てみると、朝食を食べ終えてから次の行動へ移るまでにも、ずいぶん時間がかかっていることに気づく。

最初は、ただ「準備が遅い」と見えていた。

ところが、一つ変えてみるたびに、その言葉の中に隠れていた別々の景色が、少しずつ見えるようになってくる。


動かしてみたから、見えたもの

仕事でも、似たようなことがある。

会議でメンバーから意見が出ないと、「もっと発言しやすい雰囲気にした方がいい」と考える。そこで、「遠慮せず何でも言ってほしい」と伝えてみる。

ところが、あまり変わらない。

それなら問い方なのかもしれないと、こちらから質問を増やしてみる。発言は少し増えたけれど、肝心なところになると、やはり誰も踏み込んでこない。

ここで、「発言しやすいかどうか」だけを見ていたことに気づく。

もしかすると彼らが気にしているのは、発言する瞬間ではなく、発言したあとに何が起きるかなのかもしれない。

意見を言えば仕事が増える。反対すれば説明を求められる。以前何かを言ったときも、結局何も変わらなかった。

それが本当の理由なのかは、まだ分からない。

ただ、こちらから働きかけても思ったように動かなかったことで、それまでとは違う問いが生まれている。

最初に見えていた「意見が出ない」という景色そのものが、少し変わっている。


世界から返ってくる反応

何かを変えようとするとき、私たちはその結果を見て、うまくいったか、いかなかったかを判断する。

けれど、返ってきているのは結果だけではない。

会議時間を短くしても議論が変わらなければ、「長すぎることが原因だ」という見立ても揺らぐ。「自由に話していい」と伝えても意見が出なければ、発言の許可とは別のところに何かがあるのかもしれない。

思った場所が動くこともあれば、別の場所が動くこともある。ほとんど何も起こらないこともある。

その一つひとつが、こちらが見ていた構造についての情報になる。

押すことは、変えることだけではない。見ることでもある。

見え方の変化

日常には、小さく動かせるものがたくさんある

もちろん、世の中のすべてを「とりあえずやってみよう」で済ませることはできない。

集められるだけの情報を集め、真因を考え、構造を整理したうえで、それでも残る不確実性の中で決めなければならないこともある。

けれど、私たちの日常を見渡してみると、そこまで大きな決断を必要としないこともたくさんある。

会議の問い方を少し変えてみる。仕事の渡し方を変えてみる。置き場所を変えてみる。いつもとは違う順番でやってみる。誰かに一言、声をかけてみる。

どれも、それだけで世界を大きく変えるようなことではない。

だからこそ、少し動かしてみることができる。

そして面白いのは、その小さな働きかけによって、目の前の問題が解決することだけではない。

思ったように動かなければ、「ここではなかったのかもしれない」と見方が変わる。予想外のところが動けば、それまで気づかなかったつながりが見えてくる。

何かを変えたことで、変えようとしていた対象だけでなく、こちらの見え方まで変わっていく。


もう一度、同じ景色を見る

「よく理解してから動こう」という考え方は、間違っていない。ただ、日常のすべてを理解し切ってから動く必要もない。

誰かに話しかけたときの反応から初めて分かる距離があり、仕事を任せてみたときに初めて見える境界があり、仕組みを一つ変えたときに初めて現れる関係がある。

理解したから、動ける。
そして、動いたから、次の理解が生まれる。
朝、また同じように子どもの支度を眺めている。

昨日までなら、「今日も準備が遅い」と思っていたかもしれない。でも今日は、その同じ景色の中に、少し違うものを探している。

持ち物なのか、着替えなのか、次の行動への切り替えなのか。それとも、まだこちらが気づいていない何かなのか。

答えはまだ分からない。

また一つ、変えられそうなところを変えてみる。

そのとき返ってくる反応を見れば、次に見るべきものが、また少し変わるかもしれない。

理解を深める螺旋行動

理解が行動をつくり、行動が次の理解をつくる。


次に読むなら

外から見ているだけでは、見えないことがある。
では、実際に関わり、互いの見方を持ち寄ったとき、答えはどこにあるのでしょうか。

次は、「答えは最初から存在している」という前提を考え直します。

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