#048 答えを探していたら、問いが変わった。
答えを探していたはずなのに、考えるほど問いが変わっていく。
それは迷っているのではなく、見えている構造が変わったからかもしれません。
今回は、問いと構造の関係を考えます。
フレームワークで整理したのに、なぜか前に進まない
会議で議論が散らかってくると、「一度、フレームワークで整理しましょう」という言葉が出ることがあります。
SWOT、3C、ロジックツリー、2軸マトリクス。枠を置いて情報を書き込んでいけば、それまでバラバラだった話が整理され、抜けていた観点にも気づきやすくなります。
ところが、きれいに整理されたはずなのに、その先へ進めないことがあります。情報は並び、分析もした。それでも、「結局、何が分かったんだっけ?」という感覚が残る。
そんなとき、問題はフレームワークの使い方ではなく、もっと手前にあるのかもしれません。
そもそも、何を明らかにするために考えていたのでしょうか。
問いが変われば、必要な「考え方」も変わる
たとえば、「売上が落ちている」という同じ現象を見ても、そこから立てられる問いは一つではありません。
なぜ売上が落ちたのか。どの顧客層で落ちているのか。競合との違いはどこにあるのか。営業プロセスのどこで顧客が離れているのか。それとも、市場そのものに変化が起きているのか。
出発点となる現象は同じでも、問いが変われば、その後に必要な考え方も変わります。
顧客の違いを見たいのであれば、意味のある単位に分ける必要があります。原因を知りたいのであれば、要素を因数分解し、それらの関係や機序を追う必要がある。複数の選択肢から何かを決めたいのであれば、比較できる軸を揃えなければなりません。
つまり、「どのフレームワークを使うか」を考える前に、本来はもう一つ決めることがあります。
今回、何を分かる状態にしたいのか。
ここが定まって初めて、対象をどのように切ればいいのかが見えてきます。
フレームワークは、複雑な現実を考えられる大きさに切る
問いが定まったら、その問いに答えられるように対象を切っていきます。
ここで、フレームワークが力を発揮します。
たとえば3Cであれば、複雑な市場を「顧客・競合・自社」という三つの領域から見ることができます。セグメンテーションであれば、ひとまとまりに見えていた顧客や市場の中にある違いを捉えられる。プロセスで切れば、時間の流れの中でどこに変化が起きているのかを見ることができます。
フレームワークによって役割は違いますが、共通しているのは、複雑な現実に構造を与え、考えられる状態にすることです。
ただし、対象を切っただけでは、まだ答えが出たわけではありません。
たとえば3Cで市場を見た結果、顧客側に変化がありそうだと分かったとします。そこで「顧客」の欄に情報を書き足し続けても、何が起きているのかはなかなか見えてきません。
今度は、その中をさらに分けていく必要があります。
売上であれば、顧客数、購買率、購買頻度、単価などに因数分解できるかもしれません。そこで「新規顧客はそれほど減っていないが、既存顧客の購買頻度が落ちている」と分かれば、最初に見えていた問題とは景色が変わります。
「なぜ売上が落ちたのか」ではなく、
「なぜ既存顧客の購買頻度が落ちたのか」
という、次の問いが生まれるからです。
さらに購買行動を見て、比較段階での離脱が増えていると分かれば、「なぜ比較段階で選ばれなくなったのか」へと問いは変わっていきます。
対象を切り、その中を分け、要素同士の関係や機序を見ていくほど、答えだけではなく、
次に問うべきことも見えてきます。
考えるほど、問いも変わっていく
ここまでの流れを、少し引いて見てみます。
最初に「何を明らかにしたいのか」を問う。その問いに必要な軸や範囲で対象を切り、大きすぎるものはさらに因数分解する。そして、分けたもの同士がどのようにつながり、何が何に影響しているのかを見ていく。
先ほどの例に重ねるなら、こんな流れです。
1|問う
なぜ売上が落ちているのか。
2|切る
顧客・競合・自社という視点から市場を見る。
3|分ける
顧客側の売上を、顧客数・購買率・購買頻度・単価などに因数分解する。
4|つなぐ
既存顧客の購買頻度低下と、購買行動や競合、商品などの変化との関係を追う。
5|問い直す
なぜ既存顧客が、以前ほど選ばなくなったのか。
ここで注目したいのは、最初と最後で問いが変わっていることです。
最初の問いが間違っていたわけではありません。その問いから考え始めたからこそ、それまで見えていなかった構造が見え、より具体的に問えるようになった。
つまり、考えることは、最初に立てた問いから答えへ一直線に進むことではありません。
問いが構造を見る方向を決め、見えた構造が問いを更新する。
その往復によって、問題の解像度は少しずつ上がっていきます。

最初から、完璧な問いを立てなくていい
課題設定力や質問力というと、最初から鋭い問いを立てられることのように見えることがあります。
もちろん、最初の問いの質は重要です。ただ、まだ十分に分かっていない対象について、最初から「本当に解くべき問い」を言い当てられるとは限りません。
考える前には見えていなかったものが、対象を切り、分け、関係や機序を捉えることで見えてくる。だからこそ、問いも変わります。
そう考えると、最初の問いは答えを固定するものではなく、
思考を始めるための仮説
くらいに捉えてもいいのかもしれません。
フレームワークも同じです。
知っている型に現実を当てはめるのではなく、問いに応じて必要な構造を選び、そこから見えてきたものを使って、もう一度問いに戻る。
そうすれば、フレームワークは情報をきれいに並べるための箱ではなく、問いの解像度を上げるための道具になります。
問いを立て、構造を見る。構造が見えたら、もう一度問いに戻る。
その往復を重ねることで、最初はぼんやりしていた問題が、少しずつ「本当に解くべき問い」へ近づいていきます。
考えるとは、問いに答え続けることだけではなく、問いそのものを育てていくことでもあります。

次に読むなら
問いが変われば、見える構造も変わる。では、集めた事実そのものは、何を教えてくれるのでしょうか。
事実を理解することと、その事実が「何を意味するのか」を考えることは、同じではありません。
次は、事実を判断につなげるための「意味づけ」を考えます。
あなたの「問い」も、聞かせてください。
仕事や組織、AI、これからのこと。
まだ言葉になっていない違和感でも構いません。
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