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【第15回】「物語で動かす」営業の力~『ドキュメント 戦争広告代理店』から学ぶ、PRと意思決定のメカニズム🤔【エンタープライズ営業のヒント】

はじめに

28年エンタープライズ営業のロールを企業を変更しながらやってきました。振り返ると色々な気付きがあるのに、企業秘密保持の観点から、これまで公開を控えてきました。その反省の上に少しずつ気付きをまとめてみたいと考えたのがきっかけです。少しでもヒントがあれば幸いです。(👇自己紹介はこちら)

今回も、本棚より一冊。高木徹氏の著書「ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争」を参考にエンタープライズ営業を含め営業としての学びをまとめてみました。

営業は勝ち負けにこだわる事が多くPRは関係ないと考えていた時代があったのですが、この書籍を紹介頂き読んだ事でガラッと意識が変わりました

1.戦争とPRという異色の組み合わせ

「戦争に広告代理店が関わっている」——この一文を初めて目にしたとき、正直なところ現実感がなかった。まるで映画のような話だ。しかし、2002年に出版された『ドキュメント 戦争広告代理店』は、まさにその“映画のような現実”を描いたノンフィクションである。

著者はNHKディレクター・高木徹氏。1990年代のボスニア紛争を取材し、PR会社が国際世論を操作する様子を克明に記録した。戦争の裏側に「情報戦」があり、その情報戦を仕掛けたのがPR会社だったという事実は、営業や広報に携わる私を含めて多くの人達にとっても、非常に示唆に富んでいると考える。皆さんご存じと思いますが、PRに関しても触れておきます。

「Public Relations」の略。PR企業のビジネスとは、さまざまな手段を用いて人々にうったえ、顧客を支持する世論や企業の良い評判を作り上げること

2. PRは「事実」より「物語」で動く。そして嘘はつかない。

本書の中で最も印象的だったのは、湾岸戦争時の「ナイラ証言」だ。クウェート侵攻の際、15歳の少女が「イラク兵が病院で赤ん坊を殺した」と涙ながらに証言し、世界中のメディアが報道。結果、アメリカの軍事介入の世論が形成された。

ナイラ証言

ナイラ証言(ナイラしょうげん、Nayirah testimony)とは、イラクによるクウェート侵攻の後、「ナイラ」を名乗る少女が行った証言。
イラク軍兵士がクウェートにおいて、新生児を死に至らしめていると涙ながらに述べたこの証言により、国際的に反イラク感情とイラクへの批判が高まり、湾岸戦争の引き金ともなった。しかし後に「ナイラ」なる女性は存在せず、クウェート・アメリカ政府の意を受けた反イラク扇動キャンペーンの一環であったことが判明し、今ではプロパガンダの一例としてしばしば取り上げられる。
しかし後に、この証言はPR会社が仕掛けた「演出」であり、少女はクウェート大使の娘で、実際には現地に行ったことすらなかったという事実が明らかになる。

出典:ウィキペディア(Wikipedia)

ただ、嘘をついてはいけない。嘘の証言によって湾岸戦争を巻き起こし、アメリカは戦争によって多額の利益を得ました。この虚偽による情報操作によって、PR会社のイメージも「金のためには真偽を問わずなんでもする奴ら」と失墜しました。

虚偽、倫理、モラル問題には敏感になり、実務に落として考えると、情報発信をする際の裏どりは完璧にやる必要があるということ。

その上で、その事実をうまく生かしてどう情報発信をするかがPRマンや営業の腕の見せどころとなると考えます。

この事例から得られる営業的な学びとは、以下2点と考えます
・人は事実ではなく、物語で動く
・嘘はつかない。裏どりした事実で情報発信する

エンタープライズ営業では、製品スペックや価格だけでは意思決定は動かない。顧客の課題に寄り添い、未来の姿を描く「物語」つまりストーリーが必要と言われています。

次に効果測定で使う数値の多面性という印象に関しても見てみましょう

3.数値の多面性効果

以下に顧客とのKPIを設定する場面でのサンプルとなる数値を見て比較してみましょう。Afterと改善効果の指標を見てどちらがあなるの心に響くでしょうか?

1:トラブル初動対応時間
Before:約2日 After:約1.8時間改善効果:約95%

2:短縮品質クレーム件数(年間)
Before:120件 After:84件(▼36件) 改善効果:約30%

3:減少現場報告の処理時間
Before:1件あたり45分 After:1件あたり15分 改善効果約66%短縮

同じ結果にも関わらず、以下の数値は印象が深いと感じましたでしょうか?

1:改善効果:約95%

2:After:84件(▼36件)

3:改善効果約66%短縮

このように、同じ内容をどの様に表現するかによって相手の印象や捉え方が異なります。以前あるインフレンサーの方が提示した例が腹落ちしたので紹介します。

能のお面でもこんなに違う

全く同じお面でも光の当て方によってその姿は全く異なります。数値や情報にはこういう多面性があるので、心躍る物語に加えて定量的な裏付けがある数値とインパクトを加えることで、提案の説得力は格段に高まると考えます。一多面性の効果をご理解頂けましたでしょうか?

4.実例:ある提案での「物語化」

ある大手製造業の事業役員の方に対してソリューションの提案を行った際、最初は「既存の仕組みで十分」との反応で先に進まなかった。そこで、基本の徹底と情報収集強化し、現場の課題をヒアリングをし以下のような「物語」を構築した。

  • 登場人物:現場の検査員、品質管理部門、経営層

  • 課題:紙ベースの報告により、品質トラブルの初動が遅れる

  • 転機:モバイル端末で即時報告・分析が可能になれば、初動対応が2日→2時間に短縮

  • 未来像:品質クレームの件数が年間で30%減少、ブランド価値向上すると仮説をたてた。

このストーリーをもとにPoC(概念実証)を実施し、初動対応の短縮化が品質クレーム減少との相関関係を示す事ができました。また、初動対応時間が平均1.8時間にさらに短縮される効果もご理解頂き、経営層から正式導入の承認を得ることができた。

定量的な箇所は2ヵ所です
・初動対応が2日→2時間に短縮
・仮説:品質クレームの件数が年間で30%減少、ブランド価値向上

仮に、”初動対応の短縮” だけで上申をすすめていたら正式承認のゴールを迎えたか分かりません。”品質クレーム件数減少によるブランド価値向上” することが経営テーマとの相関が示せたストーリーがあったことが決めてになったと考えています。

後日、多くのステークホルダー(株主含め)の矢面に立つ事業役員の琴線にふれた事をお聞き納得しました。

現場から上がる数値と事実から構成する提案ストーリーの必要性をご理解いただけましたでしょうか?

5.PRマンの矜持から考える営業の心構え

『戦争広告代理店』の主人公であるPRマン・ジム・ハーフ氏は、ボスニア政府の支援を受け、国際社会にセルビアの非道を訴える情報戦を展開した。彼は「事実をもとに、クライアントに有利な情報だけを選び、戦略的に発信する」ことを徹底していた。

この姿勢は、営業にも通じる。私たちは「すべての情報を伝える」のではなく、「顧客にとって意味のある情報を選び、伝える」ことが求められる。もちろん、虚偽や誇張は許されない。しかし、情報の編集と構成は、営業の重要なスキルである。

6.営業に活かす3つのポイント

  1. 事実よりも「物語」で語る
    顧客の課題→転機→未来像の流れで構成することで、意思決定者の共感を得やすくなる。

  2. 現場の声を拾う
    経営層だけでなく、現場の課題をストーリーに組み込むことで、導入後の納得感が高まる。

  3. 裏付けされた数値の見せ方は腕の見せ所
    物語だけでなく、PoCや実績データで効果を定量化し、物語にそった数値で説明すること。ただし嘘は厳禁。

7.情報戦の時代に営業が持つべき視点

世間ではトランプ現象やSNS時代が浮き彫りになり、本書の終盤で述べる「オルタナティブ・ファクト」についても教訓となりつつある。情報が氾濫し、AIからも情報を取得する現代において、私たちは「真実に近づく努力」をしなければならない。

営業も同様だ。顧客は日々膨大な情報にさらされている。その中で、私たちが届ける情報が「信頼できる」「意味がある」と思ってもらえるかどうかが、すべての起点になる。

そのためには、単なる製品説明ではなく、「顧客の未来を描く物語」を語ること。そして、その物語が「事実」と「数字」に裏打ちされていることが重要と考えます。

「事実」と「数値」があるのは顧客の現場です。事実を1個づつ集めることも日々の営業活動では重要なことだと考えます。

私達がご支援した事例
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まとめ:営業は「情報編集者」「ストーリーテラー」である

『戦争広告代理店』は、PRの力を通じて「物語が世界を動かす」ことを教えてくれる。営業においても、製品のスペックや価格ではなく、「顧客の未来を描く物語」が意思決定を動かす鍵だ。

営業は単なる説明者ではない。情報を編集し、構成し、届ける「情報編集者」であり、「ストーリーテラー」でもある。だからこそ、私たちは日々の提案において、物語の力を信じ、磨いていく必要があると考えます。


次はこちらの記事をどうぞ!
A.ストーリーは描いて表現もできる

B.熱量ある推進者を探せ

エンタープライズ営業の道は深いな 😉



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