サロン楽屋話138:0.47秒の真実。なぜ「考えて」打つと間に合わないのか?
時速181kmの爆速フォアが届くのは、0.47秒後。
「テイクバック」と呟く間に、ボールは脇を通り過ぎます。
なぜプロは間に合うのか?
それは「考えていない」からです。
思考というマニュアルを手放し、感覚で反応する「無手勝流」のテニス。
その本質をまとめました。
▶「考えるプロ」という幻想
「(前略)次に何が起こるかを考えたりしている。そうして初めて、自分の手について考えられるんだ」とアルカラス。
この発言を真に受けて「プロはものすごいスピードで考えることができるんだ」などと思い込むと、テニスはややこしくなります。
フォームも同じです。
プロだから、頭のてっぺんから足のつま先まで、意識を及ばせることができる。
スタンスを意識し、テイクバックにも気を配って、インパクトは遅れないように注意しながら、リバースに振り切るフォロースルーを頭で考えて操作している――
そんなふうに思いがちです。
▶プロは「意識高い系」なの?
プロは意識が高いから、テニスが上手いのでしょうか?
決してそうではありません。
同じ人間です。
プロでも、人としてできないことはできないのです(関連記事「人間の認識システムの話」)。
空は飛べません。
▶錦織圭や大坂なおみに聞いてみよう
言い換えれば私たち一般プレーヤーも、人としてできることは、できるのです。
プロは特別だと思い込まないこと(関連記事「『選ばれた人』というバイアス」)。
プロは、グリップ名なども熟知していて、状況に応じて使い分けるのでしょうか?
ここはイースタンだ、ここはセミウエスタンだ、などと――
いえプロたちは、私たちがスクールで初日に教わるグリップ名すら、ホントは全然知らないのです(関連記事「おまけ・※注1について。プロは「グリップ名」など知らない」)。
機会があったら錦織圭や大坂なおみに聞いてごらんなさい。
「フォアハンドは何というグリップで握っているの?」
答えられるはずがないのです。
▶0.47秒に「言語」は間に合わない
インプレー中に考えている猶予はありません。
フォンセカの放った時速181キロのフォアハンド(関連記事「速いのに、なぜ入るのか?」)は、単純計算した場合、こっちのベースラインからあっちのベースラインまで、約0.47秒で到達します(空気抵抗や重力を無視した単純な等速直線運動の計算)※。
たとえば、「テイクバック」と1秒かけて言語化しているうちに、ボールは脇をすり抜けていくのでしたね(関連記事「考えると遅くなる」)。
フォンセカのフォアは、確かに爆速だったけれど、多かれ少なかれ事情は一般プレーヤーも同じ事。
「ここはスクエアスタンスで踏み込んで打とう!」などと考えているうちに、ボールは脇をすり抜けていくのです。
※実際には初速直後から減速が始まり、バウンド時に勢いは減衰しています。
物理的に「間に合わない」と分かっている世界で、なぜプロは平然と打ち返せるのか。
そこには、私たちがしがみついているマニュアルを手放す無手勝流の極意があります。
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero
